2020/02/15

RFID Journal 抄訳 2020/02/14号

今週興味深かった記事はIEEE 802.15.4ベースのオープンなIPメッシュネットワーク標準を開発しようとするプロジェクト。Zigbee AllianceのほかAmazon、Apple、GoogleといったIT業界の巨人たち、そしてユーザー企業が参加しているようで、今後の展開が楽しみです。

レストラン向けのセルフ注文用NFCキオスクの話も興味深かったです。この手のソリューションはタブレットを流用しちゃえばと思っていたのですが、画面が大きい方が売上高や収益が向上するそうで、最近は大型スクリーンの需要が増えているのだとか。

なお、元記事はこちらになります。

RFID Brings Visibility to Ballots for Elections Board

オハイオ州スターク郡の選挙管理委員会は投票箱などの選挙用機材の管理にRFIDを利用します。導入したのはMetalcraft社子会社のUHFパッシブ製品で、投票終了後に器材が存在することの確認に用いられます。

Unipac Increases Inventory Accuracy to 98 Percent via RFID

ブラジルのプラスチックメーカーUnipac社は会社の資産管理のためにRFID、BLE、QRコードを組み合わせたソリューションを活用しています。このソリューションはCIAg社が開発しました。

With NFC Kiosk, Your Order Is Ready

Grubbrr社とFreedomPay社は共同してNFC支払いに対応したレストラン向けのセルフ注文端末を開発しています。端末はクレジットカードの磁気スワイプにも対応していますが、NFC払いの方が高速に処理できます。近年の調査により注文画面のサイズと売上高、収益に関連が分かってきたため、注文端末は大型のスクリーンを搭載するようになってきています。

IoT Companies Moving to Open Standards

Zigbee AllianceはオープンなIoT接続プロトコルの標準を作成するプロジェクトProject Connected Home over IP (Project CHIP)を立ち上げました。Project CHIPはIEEE 802.15.4規格に基づいたIPベースのメッシュプロトコルThreadを用います。Project CHIPにはZigbee AllianceのほかAmazon、Apple、Google、Schneider ElectricおよびSignify(元Philips Lighting)が参加しています。

RFID News Roundup

  • Confidex社とThales社が公共交通機関チケット向け薄型ICカードで提携
  • Kerlink社とSmart Traffik社がLoRaWANを利用する小売分析ソリューションを発表
  • Swissbit社が組込式IoTセキュリティ製品を発表
  • Impinj社がIoTソリューション向けのエンタープライズ級RFIDリーダーを発表
  • Altizon社とDeloitte社がHIL社の産業向けIoT対応工場で提携
  • Industrial Internet Consortiumがコミュニティフォーラムを解説
  • Connect&GO社がKool Replay社を買収
  • Altair Semiconductor社のIoTチップセットがDeutsche Telekom社のグローバル認定を取得

IoT Security Challenges In 2020 and Beyond

5Gの世界ではIoTデバイスの大規模な普及が予想されますが、IoTに関するセキュリティプロトコルが標準化されていないことが大きなセキュリティリスクになります。IoTデバイスが脅威と必要な対応を能動的に学習、対処できるようにしたり、ブロックチェーンを用いた分散型の検証を活用することが必要になります。

RFID Tracks Fish at High Speed in Washington Dam(有償記事)

アメリカ海洋大気庁(NOAA)はワシントン州にあるコロンビア川のダムでの鮭の通過状況をRFIDで計測します。毎年放流される100~200万匹の鮭にLFタグが取り付けられ、ダムの水路の底にリーダーが埋め込まれています。

 

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2020/02/08

RFID Journal 抄訳 2020/02/07号

今週興味深かった記事はCheckpointのオムニチャネル対応のIoTプラットフォーム。BOPISをハンドヘルドリーダーで行うための機能を標準で搭載しているそうで、こういう製品がどんどん普及してオムニチャネルを牽引すると良いなと思います。

NRF Big Show 2020関連では記事が2本。Under Armourが登壇したユーザー側のセッションの話と、編集後記でのRFIDベンダーの動向。どちらも一読しておく価値はあると思います。

DHLのレポート、”Rethinking Packaging”も気になります。スマートパッケージ以外にもいろいろ記載されているようで、読まなければ…。

なお、元記事はこちらになります。

Under Armour: RFID Is a 'Must Have'

Under Armour社がNRF Big Show 2020のRFIDセッションに登壇し、RFIDの取り組みについて発表しました。同社はサプライチェーン部門主導で今年の秋冬シーズン向けの全ての衣類についてRFID貼付を始め、現在店舗部門に取り組みが広がっています。同社は小売業が次のレベルに進むためにはRFIDの利用は「あった方が良い」ではなく「不可欠」と述べています。

DHL Survey Reveals the Future of Packaging

DHLは”Rethinking Packaging”というレポートを公表しました。このレポートには企業へのアンケート結果が掲載されていますが、それによるとスマートパッケージソリューションが3つの主要な関心分野に含まれています。近年スマートパッケージングはバッテリー不要の通信モジュールやセンサー、表示モジュールの高度化などの進化を遂げています。

Retailers Deploying New Omnichannel Functionality With RFID

Checkpoint社はIoTプラットフォームHALOの最新版をリリースしました。このバージョンはオンラインで注文された商品の店舗ピックアップ(BOPIS)をサポートするための機能を搭載しており、店舗の担当者はハンドヘルドリーダーで必要な商品のピックアップを行うことができます。

Hybrid IC Adds Content Access to UHF-NFC Product Label

EM Microelectronic社はNFCとパッシブUHFの両方に対応したRFIDチップの新製品em/echo-Vを発表しました。これにより、同一のラベルを在庫管理と顧客エンゲージメント管理の両方で利用することができます。

Janam Offers Contactless Self-Credentialing Solutions With NFC

Janam Technologies社がセルフサービス式のNFC入場認証システムの新製品を発表しました。この製品はAndroidを搭載したタブレット型の端末で、設置スタンドと共に提供されます。

RFID News Roundup

  • Semtech社が社がスマートホーム用IoT向けのLoRaデバイスを発表
  • MachNation社がIoTプラットフォームのパフォーマンス試験用ソフトウェアを発表
  • STMicroelectronics社とFieldscale社がスマートデバイスにタッチ操作対応を追加
  • Roambee社が荷主向けサプライチェーン自動監視ツールで資金調達
  • DeltaTrak社がリアルタイムロガーを発表
  • PVH Corp.社がTommy Hilfiger社向け店舗案件のRFIDコーディネーターを募集

RFID at NRF's Big Show 2020

NRF Big Show 2020にはさまざまなRFIDベンダーがソリューションやデモを出展しました。それらベンダーの展示をABC順にご説明します。

Undeniable Benefits of Level Monitoring in the Oil and Gas Sector

石油・ガス業界にとって、タンクの液面計をIoT化し、残容量をリアルタイムでモニターしたり変化にアラートを発信することは有用なアプリケーションとなります。

RFID Tracks Jewelry Inventory, Shopping With Smart Tray(有償記事)

香港のジュエリーメーカー周大福はRFID対応のジュエリートレイを利用して顧客のエクスペリエンスを向上させることに取り組んでいます。同社が導入したのはConverge Retail社のソリューションで、ジュエリーに取り付けられたRFIDタグを用いて在庫管理を行うほか、顧客に見せるジュエリーをスマートトレイに置くことで顧客に見せた履歴の収集を行い、加えて関連情報をディスプレイに表示させることができます。

 

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2020/02/01

RFID Journal 抄訳 2020/01/31号

今週興味深かった記事はNTTドコモとソニーによるおサイフケータイのタッチレス対応実証実験。日本では12月に報道が出ていたようですが見落としていました。スマホへのUWB搭載が視野に入る中興味深い動きで、今回はぜひ日本初の規格が世界標準を取ってほしいです。

特集記事はアメリカでの家畜タグの導入状況。連邦政府による義務付けの撤回について知りたいと思ったのですが記述は少なくさらっと流されていました。RFID Journalとしてはこのあたりは書けないんだな、別ソースに当たるのは重要だな、と改めて感じました。

小ネタですがクリケットボールのスマートボール化、当初はゴルフボールで考えていたがロストボールが発生しなくなると困るボールメーカーの協力が得られずクリケットを選んだ、という記述にニヤリとしました。どの国、どの業界でもディスラプションは難しいですね。

なお、元記事はこちらになります。

RFID Powers Smart Balls, Luggage Tags

球技用のスマートボールを開発するSportCor社は、クリケットボールのメーカーKookaburraとセンサー付きのクリケットボールを開発しました。このボールは加速度などのセンサーを搭載し、取得したデータをBLEでスマホに送信します。ボールの充電はPowercast社が利用する2.4GHzワイヤレス給電システムを利用しています。

Blockchain Protects Sicilian Oranges

シチリア島のオレンジ生産者は偽造防止のためにNFCとブロックチェーンを活用します。利用されているのはAlmaviva社のソリューションで、オレンジの箱に貼付されたNFCタグにブロックチェーン情報が格納され、スマホで読み取ることで真贋確認に加えて商品情報にアクセスできます。

Partnership Targets Flexible, Low-Cost NFC for Pharma

Schreiner MediPharm社は医薬品に貼付するUHFパッシブRFIDとNFCのラベルを製造しています。NFCラベルはPragmatIC社のプリンテッド技術を用いた製品ConnectICシリーズを採用しており、シリコンチップのタグでは貼付できないような小型の製品に貼付可能なものになっています。

Mobile Phone Companies to Demonstrate UWB Payments

NTTドコモとソニーはおサイフケータイのタッチレス対応の実証実験を開始しました。これはUWBを利用するもので、NXP社のチップセットSR100Tが利用されます。現在スマートフォンへのUWB搭載の動きが進んでおり、iPhoneへの搭載に加え、Samsung社が参加するFiRa Consortiumなどが立ち上がっています。

RFID News Roundup

  • SensThys社とConvergence Systems社がハンドヘルドRFIDソリューションで提携
  • STMicroelectronics社がZigbee Allianceに参加
  • Conectis社とIgor社がヨーロッパでスマートビルディングソリューションを提供
  • iDTRONIC社がHF RFIDリーダーのWiFi、イーサネットインタフェースを改善
  • Nerf ChallengeがConnect&GO社のスマートリストバンドを採用
  • IoTdc社が南アでKerlink社のIoT solutionsの販売店契約を獲得

A Brief Look at Near Field Communication

NFCは短距離デバイス間通信のためテクノロジーで、当初からの決済利用に加えて現在では非決済利用が市場の拡大を牽引しています。

U.S. States Further Livestock RFID Use Despite USDA Pause(有償記事)

米農務省は州をまたいで取引される牛のトラッキングにRFIDタグの利用を義務付けるという規制を取り下げましたが、多くの州は引き続きRFIDタグの利用を推進しています。

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2020/01/29

RFID World Watcher Monthly December 2019

12月のRFID Journalは複数の休暇を挟むのでもともとの記事が少なめ。その中でも会社動向的な記事が多く、製品やユースケースの記事は少なめでした。この月のニュースで一番大きなものは、やはりAvery Dennison社によるSmartrac社のRFID事業買収でしょうか。

RFID World Watcher Monthly December 2019(PDF形式、207KB)

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2020/01/26

RFID Journal 抄訳 2020/01/24号

今回印象に残った記事はアルゼンチンでの国民IDカードのスマホへの取り込み。読み取りがNFCではなくBLEというのが興味深いです。NFCだと対応スマホが限られるとかの事情なのか、あるいは遠距離読み取りがユースケースで想定されているのか。

救世軍の社会鍋がNFC支払いに対応したという話、これもご時世なのかという感じで面白いですね。Edyでお賽銭が支払える、という感じでした。

Roundupにはサトーと村田製作所が登場。日本企業が登場すると励みになります。

なお、元記事はこちらになります。

Hospital Prevents Contamination and Gains Efficiency via RFID

アルゼンチンのSanatorio Finochietto病院ではRFIDによる制服とシーツの管理を行っています。管理対象は約8万個で、Telectronica社がソリューションを導入しました。このソリューションにより紛失が減少すると共に適切に洗浄されていない制服やシーツが利用されるリスクが低下しました。

Holiday Donors Use NFC for Salvation Army Kettle Pay

アメリカの慈善団体Salvation Army(救世軍)は街頭募金で利用する社会鍋でApple PayとGoogle PayによるNFC支払いに対応しました。これはBraintree社のオンライン支払いソリューションを活用したもので、募金者が救世鍋の横の看板に貼付されたNFCタグをタップすることで支払い画面が開き、金額を指定して募金を行います。このソリューションはシアトルなどでトライアル導入され、このクリスマスシーズンに全国展開されました。

Transport Companies in Miami, Philadelphia Opt for Contactless Payments

公共交通機関でのNFC非接触決済の利用が広がっています。フィラデルフィアでは地下鉄やバス、マイアミではバスで、それぞれNFC対応が開始されました。

Digital IDs Accessed on Smartphones via BLE

アルゼンチンでは国民IDカードをスマートフォンに取り込むソリューションが利用されています。このソリューションはHID Global社のgoIDを活用したもので、ID情報はスマホとリーダーの間でBLEで送信されるため、セキュリティが確保されると共に携帯電話が通じない場所でも利用が可能です。

RFID News Roundup

  • 村田製作所が工具向けの金属タグを発表
  • サトーがRFIDラベルプリンターの新製品を発表
  • Schreiner MediPharm社がRFIDラベルやサプライチェーンセキュリティソリューションを発表
  • STMicroelectronics社がLoRa IoT向けのSoCチップを発表
  • Bluebird社がIoT、RFIDの新製品を発表
  • NFC Forumがエラーの多い環境での通信を改善する新規格を公表

What Problem Does Your RFID Product Solve?

多くのRFIDスタートアップ企業は自社の製品が技術的に優れていることがセールスポイントになると考えていますが、実際にセールスポイントになるのはその製品が顧客のどのような問題を解決できるかです。

Get Ready for Real Smart Packaging

デジタル印刷技術の発展により、企業は製品のパッケージを消費者とのコミュニケーションメディアとして活用できるようになりました。

Texas Hospital Expands RFID-based Condition and Asset Management(有償記事)

テキサス州で複数の病院を運営するCovenant Health System社は、食品や医薬品の保管温度・湿度をRTLSと連動させて取得するソリューションを導入しています。このソリューションはTagnos社が開発したもので、WiFiと独自プロトコルの900MHzアクティブRFIDを併用します。

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2020/01/19

RFID Journal 抄訳 2020/01/17号

今週興味深かったのは店舗内の商品の所在をハンドヘルド機器を用いてマップに表示するソリューション。AI技術を用いて単体で店舗マップを生成することができるようです。

サトー、ヤマトグループ総合研究所、ドローンメーカーのAeroLion社が行った倉庫内利用向けのRFIDリーダー搭載ドローンの事例も面白かったです。まだ実証実験の段階とのことですが、早く製品が出てきて欲しいですね。

Aerolion1

特集記事はRFID業界の主要企業へのインタビュー。読む値打ちのある記事だと思います。

なお、元記事はこちらになります。

RFID Tracks Oil and Gas Equipment As It Is Rented and Returned

石油ガス器材のレンタルを行うRedback Energy Services社は器材管理にRFIDを利用しています。同社はUHFパッシブRFIDタグを器材に貼付し、ハンドヘルドリーダーで読み取ることで棚卸し、入出荷管理、ガイガーカウンター機能による倉庫内での器材の発見などに利用しています。ソリューションはA2B Tracking社が開発し、ハンドヘルドリーダーにはZebra Technologies社のRFD8500を利用しています。

AI, RFID Technologies Point the Way to Tagged Inventory

StealthMatrix社は店舗内の商品の所在をハンドヘルドデバイスで検索するためのシステムを開発しました。このデバイスはAIを用いて周囲の画像から店舗の3Dマップを作成し、そこにUHF RFIDタグの読取結果の位置をマッピングすることができます。現在このソリューションはマンハッタンの匿名の百貨店でトライアルが行われています。

RFID Saves Auto Parts Factory Money on Raw Materials

ブラジルの自動車部品メーカーR2A社は工場での製品管理にRFIDを導入しました。採用した技術はUHFパッシブRFIDで、出荷の正確性を確認することが最大の目的でしたが、製品のピックアップ支援にも活用されています。

RFID Reading Drone Tested in Asia Warehouses

サトー、ヤマトグループ総合研究所、ドローンメーカーのAeroLion社の3社はドローンを用いて倉庫内でUHFパッシブRFIDタグの読取を行う実証実験を行いました。ドローンを用いてRFIDタグを読み取る製品は市場に存在しますが、大型のため倉庫内での利用には適していません。今回利用されたドローンは搭載重量1キログラム、フットプリント70センチメートルで、作業員が片手で持ち運べます。実証実験はタイとシンガポールで行われ意図した結果が得られました。今後は製品の発売に向けて調整が行われる予定です。

RFID News Roundup

  • IntelliGuard社とEpic社が麻酔科医向けのRFID在庫管理システムを発表
  • マレーシアでTouch 'n Go社の高速道路料金システムが稼働
  • Tencent Cloud社とSTMicroelectronics社が中国のLoRaWAN IoTプラットフォームで提携
  • Resideo社がZigbee Allianceのボードメンバーに参加
  • Industrial Internet Consortiumが産業向けIoTのファシリテーションサービスを開始
  • SiFive社とCEVA社がIoT向けの機械学習プロセッサーを発表

Is This the Year of Artificial Intelligence?

2020年はAIにますます注目が集まりそうですが、AIが正しい結果を出力するためには現実世界の正しい情報を入力する必要があり、そのためにはRFIDを用いた情報の取得が重要になります。

The Coke Example

Coca-Cola社は産業廃棄物削減のためにIoT技術を用いたさまざまな取り組みを行っており、包装業者は同社のような取り組みを新たな事業機会と考えています。

RFID Industry Predicts Growth, Diversification(有償記事)

RFID業界の主要企業に今後の業界の展望につき意見を聞きました。昨年RFIDはアパレルを中心に成長しましたが、今後は成長のドライバはヘルスケア、製造業、航空などに多様化していくと期待されます。

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2019/12/30

2019年RFID十大ニュース

今年のRFID関連のニュースは久々に豊作で、重要ニュースが10本集まった。技術分野ではAppleのUWB採用など実用レベルの技術での大きな動きがあり、ユースケースではフットウェアなどの新たな業界が注目された。ベンダー側ではAvery DennisonによるSmartracRFIDインレイ事業買収によりいよいよゴリラ企業が登場することになる。来年はこれらが更に面白い方向に展開してくれればと願う。


(1)UWBに注目集まる(iPhone 11のUWB採用)

今年最も注目度が向上したRFID技術は何といってもUWBだろう。UWBは超広帯域に低出力で信号を創出する技術であり、実は10年以上前から商用化がなされていてそれなりの歴史がある(RFID a GoGo!:UWB RTLS)。普及速度は早くなく、じわじわとユースケースを積み上げながら業界で標準化が進められてきたが(例えば標準化団体UWB Allianceが今年発足した RFID Journal:UWB Alliance Aims for Interoperability)、今年注目を集めた理由は何といってもiPhone 11での採用。入射角(AoA)技術を利用し、他のiPhoneや紛失防止タグAirTagの所在を±3°の測角性能と±10cmの測距性能で検出できるという能力はスマホの測位アプリの世界を変えることは必至で、注目を集める意味がある。iPhone 11に搭載されるUWBタグはアップルの独自開発だがNXPも同レベルの機能を開発しており(NFC World:NXP unveils NFC, UWB and secure element chipset)、Androidなど他社の製品への展開も期待できる。

(2) UHFパッシブRFIDを利用した高精度測位ソリューション

UHFパッシブRFIDタグの読み取り信号の高度な解析(例えばマルチパス信号の積極的な解析)を行うことで従来は特殊なアクティブRFIDタグを使わないと取得できなかった情報を取ろう、という動きは2018年から出ていたが、2019年はその分野でのフォーカスが測位に絞られてきた感じを受ける。MIT、ミシガン大、ワシントン大といった有名大学が基礎研究に軒並み取り組んでいる(動いている物体の位置をRFIDタグ無線技術で高精度に測定 MITが発表、ロボットやドローンに応用RFID Journal:University Research Tracks Everyday Activities via RFID)ほか、具体的な応用事例としてUHFパッシブRFIDタグを複数貼付した手袋(もしくはシール)をPC操作デバイスとして利用するという研究が出てきている(タトゥーのように貼り付けて使える指先入力デバイス! RFIDタグ搭載でバッテリー不要)。従来のパッシブRFIDとは少し違うジャンルの用途だが、RFIDの利用分野を広げるものだと思う。

(3) エコタグの普及

環境意識の高いアパレル業界での普及が進むにつれ、RFIDベンダーは「グリーンな」タグを供給することが求められるようになった。ここで言う「グリーン」とは、サブスレートにPETではなく紙を用いること、アンテナには銅などの重金属を用いないこと、製造プロセスをなるべく環境負荷の低いものにすること、などが含まれる。Smartrac、Stora Enso、SMLといった大手のベンダーが相次いでグリーンタグに対応しており(RFID Journal:Smartrac to Sell Its Smallest Green InlayRFID Journal:Stora Enso Releases Paper-Based Sustainable LabelsRFID Journal:SML Offers Sustainability With New Products)、世界的もこの流れが進んでいくのだろう。

(4) RFID業界にゴリラが誕生

RFID業界にはデファクトスタンダードを自ら作ることができる企業(ジェフリー・ムーアの言う「ゴリラ」)が存在しないことがキャズム越えを阻んでいると言われてきたが、Avery DennisonがSmartracのRFIDインレイ事業を買収することでまずハードウェア分野でゴリラが誕生することになった(Smartrac to Sell its RFID Inlay Business to Avery Dennison)。ただゴリラ企業の意義はトータルソリューションを提供することでマジョリティ企業を安心させること。Avery Dennisonはゴリラとしての地位を生かして他企業と提携しトータルソリューションを提供することが期待される。

(5) フットウェア業界へのRFIDの普及

業界としてRFID導入がもっとも進んでいるのはアパレル業界だが、今年はフットウェア業界でのRFIDの利用のニュースが目立った。NIKEが出荷したフットウェアのほぼすべてにRFIDタグを貼付するようになった(RFID Journal:Authentic Feet Manages Nike Stock via RFID)ことや、Pumaがニューヨークの旗艦店でRFIDを導入し在庫管理と顧客体験提供に活用している(Essential Retail:Puma flagship enabled by RFID and new retail technology)ことなど、大きな動きが一気に出てきた感じがある。在庫管理などの面でRFIDとの相性が良い製品ではあるだけに、このペースで普及が続いていくことを期待したい。日本でもシティーデジタルが偽造防止のためにRFIDを試験導入したというニュースが出てきている(シティーデジタル社のRFIDタグが、12月20日よりスニーカーショップ「アトモス(atmos)」にて試験運用開始!)。

(6) 航空業界でのRFID利用広まる

IATAによる航空手荷物追跡管理のためのRFID利用の義務付けが近づく中(RFID Journal:IATA Mandates RFID Use on Baggage for Airlines, Airports)、航空会社とベンダーは共にRFIDの利用を広げている。興味深いのは手荷物タグそのものではなく周辺分野での利用も広がっていること。ブリティッシュ・エアウェイズや中国東方航空、中国南方航空はタグ情報をBluetoothで描き込むことができる電子ペーパー搭載の再利用式手荷物タグを販売しており(RFID Journal:British Airways Offers RFID Luggage TagChina Daily:Two airlines to use e-tags at Daxing Intl Airport)、アメリカン航空はパスポート情報をNFC対応スマホで読み取り空港でのチェックインを行う機能の提供を開始した(アメリカン航空、アプリでパスポートスキャン可能に NFC活用、空港では直接ゲートに)。個人的にはこの種の動きが日系キャリアにも広がってほしいところ。

(7) コンビニRFID計画の進展

経産省肝煎りのコンビニRFID計画はいくつかの面で展開を見せている。2月にコンビニ・ドラッグストアで実証実験を行い、その結果を公開したこと(ICタグ(RFID)を活用したサプライチェ-ンの効率化に向けた実証実験の成果報告)、がコンビニRFID計画のサポートを拡大するとのプレスリリースを出したこと(Impinjがコンビニ、ドラッグストアの電子タグ導入推進サポートを拡張)、電子レンジ対応タグ、1枚4円(1ロット1億円の場合)の低価格タグの発表など。ただこの計画の肝はプリンテッドタグの実用化とそれによるソースタギングで、その部分については報道がほとんど見られなかったことは留意する必要がある。

(8) RFID対応超小型無人コンビニ

Amazon Go!とその中国版ワナビーのブームが終焉した裏で、RFIDに対応した超小型無人コンビニ(本体は自動販売機サイズ)への注目が密かに高まっている。世界的にはStora Ensoがヨーロッパや中国でトライアルを行っているが(RFID Journal:New Retail Kiosk Enables RFID-based Sales)、ビジネスモデルとしては日本の「600」の方がずっと洗練されていると思う(日経クロストレンド:超小型無人コンビニが東京でひそかに増殖 狙うは10兆円市場)。超小規模商圏のデータを取るために小型化し、そのオペレーションを可能にするためにRFIDを選ぶというアプローチはニッチを掴むための王道だろう。まだ普及期に入ったとは言えないだろうが今後の展開に注目していきたい。

(9) NFCのB2C展開の強化

AppleがNFCのリーダー機能の制限を解除したことを受け、決済以外のスマホでのNFC利用が広がりつつある。従来はこの分野でのNFC利用は勝手アプリ的に使われていたが、NFC Forumはこの分野での利用の標準化や広報に積極的に取り組んでいくと述べている(RFID Journal:NFC Forum Aims to Popularize Taps)。日本でもJR東日本やソニー、大日本印刷がアクアビットスパイラルズのタッチ対応サービスの共同技術検証を開始する(JR東日本など、NFCタグで各種タッチ対応サービスを技術検証--交通や決済で活用へ)するなど、メインストリームへの本格進出が期待される。

(10) NFC決済の日本での普及

その一方で、オリンピックを控え日本でのNFC(非Felica)決済も着実に普及を広げている。VISAカードの多くがタッチ決済機能を導入するようになり、店舗側では「すき家」などゼンショーグループ各店舗がNFC非接触決済を導入した(ゼンショーグループ各店舗で非接触決済が利用可能に!キャッシュレスの選択が広がり、お買い物がますます便利で快適に)。今まで対応の遅れていたスマホでも、三菱UFJの独自アプリに続きGoogle Payでも一部デビットカードでNFC決済が可能になった(ITmedia Mobile:Visaデビットカードが「Google Pay」に対応 一部カードでタッチ決済が可能に)。今後は一般のクレジットカードにもスマホでのNFC決済対応が広がっていって欲しい。

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RFID World Watcher Monthly November 2019

11月のRFID Journalで気が付いたのはサステナビリティ対応のUHFパッシブタグの記事が3社(Stora Enso、Smartrac、SML)含まれていたこと。この分野での変化が早くなっているだろうことに気づかされます。他にもUWBの記事やSIMを使ったIoTがらみの記事もあり、バラエティに富んだ内容になっています。

RFID World Watcher Monthly November 2019(PDF形式、230KB)

 

 

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2019/12/29

RFID Journal 抄訳 2019/12/27号

今回の記事で興味深かったのは携帯モデムを使ったプラスチック製クレートの所在管理ソリューション。このレベルのソリューションに携帯モデムが降りてきていたことが驚きでした。LoRaWANなどの普及を考えると今後の輸送部材管理ではクラウド直結型が増えてくるんでしょうね。

小ネタですが小規模ランニング大会で利用できるRFIDタイム測定システムも興味深いですね。日本でも扱うところが出てくるといいのにと思います。

識者投稿は2020年のIoTトレンド。技術的なものから大きなビジネストレンドまで幅広くカバーされています。

なお、元記事はこちらになります。

Retailers Track Reusable Crates via the IoT

輸送器材レンタルを行うSensize社は携帯モデムを使ってプラスチック製クレートの所在管理を行っています。同社が利用しているのはArm社の接続ソリューションです。このソリューションによりクレートの改修漏れや破損、紛失などを検出できると共に、接続したセンサーを用いて温度や振動などの追加データも取得できます。

Baby Atacadao Boosts Sales via RFID

ブラジルで子供用品店を営むBaby Atacadao社はRFIDを用いた店舗の商品管理を行っており、在庫管理や精算に利用しています。

Donaldson Provides IoT-Based Filter Management

濾過装置のメーカーDonaldson社は客先に納入した濾過機の稼働状況を携帯モデムを利用してリアルタイムで取得するシステム、iCueを導入しています。iCueはVodafone社の携帯ネットワークを活用しており、顧客は通信料を含めた月額料金で利用することができます。

RaceKit Pro Offers RFID Race Timing in a Box

Agee Race Timing社はSensthys社と提携して小規模ランニング大会で利用できるRFIDタイム測定システムを販売しています。ランニング大会向けのRFIDタイム測定システムは従来から存在していますが、参加者が千人未満の小規模なレースではコスト面や運用負荷の面で利用が困難でした。両者が提供している製品は安価で経験の少ないスタッフでも利用可能です。

RFID News Roundup

  • RFIDチケットのFineLine Technologies社がConsolidated Printing社を買収
  • Datamars社がRFID対応コインランドリーのソフトウェアを開発
  • ViewTag社が航空手荷物用のRFID-BLEタグにPowercast社のチップセットを採用
  • Telensa社とLIGMAN社がアジア太平洋地域でスマートな街灯・センサーを提供
  • Pulse Secure社とNozomi Networks社がセキュアな産業向けIoT接続で提携
  • KORE社がIntegron社を買収
  • IKEA社がZigbee Allianceの役員メンバーとして参加
  • Ergosense社とThingstream社がIoTによる施設管理ソリューションで提携

Opportunities for Label Converters

RFID業界はここ5~10年で大きく拡大し、特定の用途でのタグの利用ボリュームも大きく拡大しています。これは特定の用途向けにカスタマイズしたラベルを製造・供給することに大きなビジネスチャンスが生じていることを意味します。2020年のRFID Journal LIVE!でAvery Dennison社がこのテーマでの無料セミナーを開催します。

IoT Trends: What Will 2020 Bring?

2020年のIoTのトレンドとしては以下のようなものが想定されます。

  • MQTTがIoTメッセージングプロトコルの標準になる
  • 産業向けIoTの規模がコンシューマー向けIoTを凌駕する
  • IoTとブロックチェーンの統合ソリューションの利用が始まる
  • コンシューマー向けIoTの技術がオフィス利用に進出する
  • 5Gの登場により複数の通信手段が乱立する状況が強まる

Intelligent Packaging: On the Rise at Large Companies(有償記事)

スマートパッケージングの国際業界団体AIPIAは今年の総会AIPIA World Congress 2019をアムステルダムで開催しました。Carrefour社やCoca-Cola社、Nestle社などが登壇し、リサイクルや顧客体験などのソリューションについて発表を行いました。

 

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2019/12/21

RFID Journal 抄訳 2019/12/20号

今週目を惹いた記事はレコピック。やはり日本のベンダーの記事をRFID Journalで見かけると嬉しいですね。北野病院での事例を機に海外への露出を増やそうとしているようで、良い結果が出ればと思います。

Ynvisible Interactive社の超低消費電力の表示デバイス。RFIDタグからのエナジーハーベスティングと組み合わせ、リーダーが無い環境での状況表示に利用することが考えられているようで、面白い使い方が期待できそうです。

Ynvisible1

識者投稿はIoTプラットフォーム、三大ベンダーとしてPTC、Software AG、日立の名前が挙げられていました。海外記事でも名前が出てきてちょっと驚きました。

なお、元記事はこちらになります。

Japanese Hospitals, Stores Deploy RFID Smart Shelves

帝人はシート型のUHFパッシブRFIDアンテナを用いたスマートシェルフのソリューション、レコピックを販売しています。レコピックは病院や図書館などに導入されています。

Smart Display Solution Finds a Match in RFID

カナダのYnvisible Interactive社はエナジーハーベストで動作する超低消費電力の表示デバイスを開発しました。このデバイスはパッシブRFIDタグの電力供給機能で動作するため、RFIDリーダーが存在しない環境でタグの状態を伝えるために利用することが出来ます。

German Mail Carrier Tracks Letters via RFID, GSM Trackers

ドイツの郵便配達会社Postcon社は郵便の配送状況を確認するためにRFIDを利用しています。郵便物にUHFパッシブRFIDを貼付すると共に、リアルタイムの輸送状況を調査するためのダミーの郵便物にGSMモデム搭載の機材を入れることで、どこでボトルネックが発生し、どこで郵便袋の積み込み間違いが発生したかなどの調査を行うことが出来ます。

SML Opens U.K. RFID Ideation Space

RFIDベンダーのSML社はイギリスのコルビーにRFIDのアイディエーション施設をオープンしました。同社のアイディエーション施設としては本社のあるテキサス、そして上海に続いて3つ目になります。同社のアイディエーション施設はアパレルを中心とした小売りを対象にしています。

RFID News Roundup

  • Smartrac社が産業向け、家畜識別向けのLFタグの新製品を発表
  • STMicroelectronics社が小型・省電力の開発ボードを発表
  • CAP-XX社が村田製作所のスーパーキャパシタ生産ラインを買収
  • LORIOT社がLoRaWANのパブリックサーバーの設置を発表

The United States Explores Food Traceability Options

アメリカ食品医薬品局(FDA)は食料品トレーサビリティーの開発プログラム「A New Era of Smarter Food Safety」へのパブリックコメント募集を終え、来年中にプログラムを発表します。私はFDAが特定の自動認識技術を推奨するのではなく、データの標準化に集中すべきだと考えます。RFIDはその過程で自然に選ばれるようになるでしょう。

How to Implement an IIoT Platform in Your Manufacturing Plant

産業向けIoTを工場に導入する場合、運用管理やセキュリティーのためにIoTプラットフォームを利用するという選択があります。汎用的なIoTプラットフォームを提供するベンダーとしてPTC、Software AG、日立の3社があり、それ以外に特定業界向けのニッチな製品を提供する小規模ベンダーもいます。大規模ベンダーはセキュリティ機能に強くて標準的なデバイスを幅広くカバーしているというメリットが、小規模ベンダーには特定の業種やそこで固有のデバイスに強いというメリットが、それぞれ存在します。

RFID Journal LIVE! Europe 2019 Report(有償記事)

RFID Journal LIVE! Europeがロンドンで11月13日に開催され、200人の参加者を集めました。そこで発表されたプレゼンテーションの資料と動画を閲覧することができます。

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