2009年11月 9日 (月)

よみがえる浮世絵-うるわしき大正新版画展@江戸東京博物館(2009/11/08)

この週末は母が上京してきており、普通の観光案内のつもりで江戸東京博物館に連れて行った。そこで面白そうな企画展が開催されているのを見つけ、そちらも廻るように急遽予定変更。

新版画とは江戸時代の浮世絵版画と同様の技法によって製作された大正から昭和初期の木版画。日本ではまだジャンルとしては確立してはいないが、欧米での評価を受けた逆輸入という形で評価が始まっているという。実は僕がこのジャンルを知るのは初めてではなく、ニューヨーク在住時代の2004年に、スミソニアンのサックラー・ギャラリーで行われていた日本近代版画の展示会を見ている。この時代の日本にこのような芸術があったのかという驚きを強く感じたのを覚えている。今回の展覧会ではそのサックラー・ギャラリーの所蔵品、ムラー・コレクションが始めて里帰りするというのも話題になっている。

展示作品数も非常に多い、とても見ごたえのある展覧会だった。大正・昭和の浮世絵?と半信半疑の人もいるかもしれないが、作品のレベルはとても高い。特に人物画が秀逸で、西洋絵画の影響を受けた構図やテーマを浮世絵版画の技術を使って表現することにはこれほどの可能性があったのか、ということを作品を見れば感じると思う。もちろん風景画も優れたものが多く、ロバート・ムラーがコレクションを開始するきっかけとなった川瀬巴水の「清洲橋」は青色の扱いが素晴らしいリリカルな作品だ。

久しぶりに図録も購入。本日が展示最終日で、偶然に見ることができてとても幸運だった。

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2009年11月 6日 (金)

諏訪敦展@キドプレス(2009/11/04)

ここしばらく清澄のギャラリービルに出かけておらず、次回の越中島での学会も旅行と重なり参加できないことが分かったので、夕方に出かけてみることにした。このビルに入っているギャラリーはどこも夜7時まで開いているのがありがたい。

今日は展示換え中のギャラリーも多く足を運んだ割にはピンとくるものが少なかったんだけれど、その中で印象に残ったのがキドプレスでの諏訪敦展。キドプレスは名前の通り版画を扱うギャラリーなのだが、ギャラリースペースの横に工房も併設しているのが面白い。この工房は普段は写真や絵画作品を制作しているアーティストに版画作品を作らせるという活動もしており、今回の諏訪敦展でも作家は版画に初挑戦だったとのこと。

ギャラリースペースは広くないので展示作品は4つ、うち一つがオリジナルで3つが版画だった。オリジナル作品は吸い込まれそうな濃密な描写でこれは文句無しだったのだけれど、版画はそれに比べると…という感じだったかな。この作家独自の個性が出ており、なおかつ版画ならでは、という作品というのは簡単にできるものではないのだろう。

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2009年11月 2日 (月)

新・根津美術館展@根津美術館(2009/11/01)

根津美術館はうちの近所にある美術館。それほど足を運ぶ機会はなかったが雰囲気が好きな美術館の一つで、引っ越してきたときには気楽に通えるようになると楽しみにしていたのに調べてみると階層で長期休館中でずいぶんがっかりしたのを憶えている。この改装がようやく終わり、10月7日にリニューアルオープンした。しばらくバタバタしていてなかなか足を運べなかったのだが、ふと調べてみるとリニューアル記念展が来週で終わってしまうことに気づき、あわてて出かけることに。

改装された建物と中の空間はジャパニーズモダンでスタイリッシュなものになっていた。サントリー美術館みたいだな、と思ったら何のことは無いどちらも設計が隈研吾氏。余談ながら氏の事務所も南青山にあり、近辺では比較的小さな建物でも氏が設計したものをちらほら見かける。開館一ヶ月になるというのに館内はかなりの混雑。あまり美術館慣れしてなさそうな人の比率が高かったのだが、テレビで取り上げられたりしたのだろうか。

今回は趣旨からいって当然ながら所蔵品展。そのレベルの高さに圧倒された。展示会のサブタイトルにもなっている国宝・国宝那智瀧図に加えて重要文化財がずらりと並ぶ。デザイン性の高さと写実性を兼ね備え、今の目で見てもはっと足を止めさせるものばかり。僕が特に惹かれたのが吉野龍田図。吉野の桜と龍田川の紅葉とを一双とした作品で、そのきらびやかさに圧倒された。動物物の写実性ももちろん高く、猫を描いた作品が多かったのだがどれも個性的で面白かった。

これから月代わりぐらいで展示があるようでとても期待している。あとはもう少し混雑が落ち着いてくれるといいんだけどな。

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2009年10月 6日 (火)

森村泰昌スペシャルイベント@草月ホール(2009/10/05)

今夜の森村泰昌のイベントはギャラリーからの案内メールで知った。映像作品の中で彼がマリリン・モンローの扮装をしてピアノを演奏するシーンがあり、その観客役のエキストラで参加するという、彼の作品を知らない人にはなかなか説明が難しい(笑)イベント。メールで申し込んでしばらく忘れていたのだが先週に案内のメールが届いた。

彼の知名度からすると当然なのだろうが草月ホールは満員。ステージには赤いピアノが置かれている。ヨーゼフ・ボイスのパフォーマンスなど、戦後の日本の前衛音楽の歴史をずっと見てきたベーゼンドルファーだそうだ。

この作品は彼が現在取り組んでいるシリーズ「なにものかへのレクイエム」の最後を飾る作品として来年に巡回する展覧会で発表されるそう。なのでネタバレ的なことはあまり書かないが、芸術作品の公開制作の場の緊張感というのは僕のようなライブ好きにはいいものだ。自分が出ているという贔屓目を抜きにしても良い作品になるだろうし。

お土産に作品の一シーンを元にしたサイン入りの写真も貰ったし、大変満足。来年の展覧会が楽しみだ。

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2009年10月 3日 (土)

エルネスト・カイヴァーノ展@小山登美夫ギャラリー(2009/10/01)

本日は会社の創立記念日で嬉しい平日のオフ。何をしようかと考えて、清澄のギャラリービルでやっている展覧会を見逃していたことに気付いて出かけることに。どこの展示もそこそこ面白かったんだけど、小山登美夫ギャラリーの展示が一番印象に残った。

現在開催中なのはエルネスト・カイヴァーノというスペイン人の画家の個展。とても緻密なドローイングで、どことなく古典的というか中世的な印象がある。カラーのドローイングも出展されていたのだが、僕はモノクロの作品の方が好みだったな。

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2009年10月 1日 (木)

原美術館コレクション展@原美術館(2009/09/30)

今夜はオフィスを出たのが大倉山水曜コンサートに間に合わない時間だったので、久しぶりに原美術館の夜間開館に。

現在開催中なのはコレクション展。ここのコレクション展は毎年感心する。この一年に開催した企画展からの作品を中心としつつも全体としてバランスの取れた展示になっており、レベル自体も非常に高い。それでいて毎回印象がまったく違う。

今年は写真作品の比率が高く、展示の最初と最後はやなぎみわとアラーキーという大物を配置して、途中には先日個展を開催した米田知子の作品を。中国人作家の作品も目に付き、現在森美術館で個展を開催中のアイ・ウェイウェイの作品が合ったのにはへぇと思った。個人的に一番ツボだったのはツァオ・フェイのRMB City!去年ロンドンで見たこの作品にまさか原美術館で再会しようとは思わなかった。

一通り見た後はカフェダールで一休み。派手ではないがいかにもブティック美術館らしい展示でいいものだった。

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2009年9月27日 (日)

森万里子展@SCAI THE BATHHOUSE(2009/09/24)

今日の夕方は社外で会食。7時開始なのでギャラリーでも覗いていこうかと思い立った。出かけたのはSCAI THE BATHHOUSE。谷中にある銭湯を改修したギャラリーで、質の高い展示に定評がある、東京で注目すべき現代美術ギャラリーの一つ。とか言いつつも出かけるのは今日が初めて。銭湯時代の作りをそのまま生かした入り口はユーモラスだが、内装を完全にホワイトキューブにしちゃったのは評価が難しいところだな。どんなアーティストでも紹介できるようにあえて、というポジティブな判断の結果ととりあえずは捉えておこう。ちなみにカウンターはちゃんと番台の場所にある。

現在開催中なのは森万里子の個展。立体作品の「フラットストーン」を中心に絵画・ドローイングを展示している。「フラットストーン」は記憶にあるなと思って調べてみたら、2年前にニューヨークのDeitch Projectsで見ていたことが分かった。その時はTom Na H-iuというより大規模な立体作品(しかもLEDで光るようになっていた)と併せての展示だったので、今回はそれと比べると少し地味に感じたのはやむをえない。彼女は派手な展示が似合う作家なので、もっと派手な作品をガツーンと出せば良いのに、と思うが、そういう展示をするなら美術館で、というクラスの人なのかな。

ともあれ中々楽しめた展示で、駅からはちょっと遠いが谷中の街並みをぶらぶら散歩するのも悪くない。平日の夜も19時までやっているのでこれからは時々冷やかしに来よう。

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2009年9月24日 (木)

ステッチ・バイ・ステッチ 針と糸で描くわたし@東京都庭園美術館(2009/09/23)

連休最終日は少し遠出して目黒に出かけてきた。まずは庭園美術館。「針と糸で描くわたし」というタイトル通り刺繍を用いた現代美術展で、今週末が会期末。庭園美術館で刺繍で現代美術?とちょっと懐疑的だったのだが、その不明が恥ずかしくなるような素晴らしい内容だった。

エントランスでは手塚愛子の作品が迎えてくれる。まずは香水壷の部屋の床に敷き詰められた作品を見てほぉ薄い布を使って刺繍の裏側の糸も見せる趣向かと思ったところで、カーテン状の作品の横を通り過ぎたところでガツンとやられる。そして最後の部屋にはパンフレットに使われた清川あさみの作品。こちらも写真に刺繍がなされた異様な質感は印刷では伝わるべくもない。どことなくフリーダ・カーロの自画像を思い出させる世界観の作品群だ。

もちろん途中の作品にも目を引くものが多い。特に面白かったのが伊藤存の作品で、刺繍の良い意味での質感を持たない糸の単調な線表現を用いることで、焦点の定まらないイメージを上手く表現していた。

特筆すべきは美術館の空間を上手く生かしたインスタレーション。刺繍を表現として使う現代美術作品はどうしてもデコラティブな側面が制作意図を隠してしまうと思うのだが、庭園美術館の空間を上手く使ってその効果を中和している。見事なキュレーションだと思う。

刺繍愛好家というより現代美術ファンにこそ勧めたい内容。どうやら巡回しないようなので(上に書いた理由で難しかったのだろう)、気になった方は今週末出かけて欲しい。

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2009年9月23日 (水)

ルイス・バラガン邸をたずねる@ワタリウム(2009/09/22)

今日も遠出をせず自宅の周りですごしているが、昼食のついでにワタリウムに出かけてきた。現在はメキシコの建築家ルイス・バラガンの展覧会を開催中、というか、彼の邸宅をワタリウムの中に再現するというのがコンセプトで、彼の邸宅に残る家具や骨董品、また彼の友人であり協力者でもあったマティアス・ゲーリッツ、チューチョ・レイエスの作品も展示されている。この邸宅は2004年に世界遺産に登録されているとのこと。

いかにもワタリウムらしい、センスも思い切りも良い企画なのだが、正直資料性の展示が少なく(これが多いとそれはそれで鬱陶しいけど)、建築に疎い人が予備知識を持たずに行くと見所が分からず困ってしまうかもしれない。少なくとも僕はそうだった。来年の1月までと長い会期なので、予習をしてもう一度出かけてみよう。

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2009年9月 8日 (火)

美しきアジアの玉手箱~シアトル美術館所蔵日本・東洋美術名品展@サントリー美術館(2009/09/06)

以前に招待券を貰っていたサントリー美術館シアトル美術館展の開催が今日までということに気づき、あわてて出かけることにした。最終日ということもあってか館内はかなりの賑わい。

美術展の内容はタイトルの通りで、シアトル美術館の所蔵品展。何か明確なコンセプトの元にキュレーションをしたというよりは、ジャンルを問わず良さそうな作品を持ってきました、という感じになっている。率直に言うと土偶だったりタイの仏像だったりは展示に入れないほうがすっきりしたのではないかと思った。

一方で素晴らしい作品もいくつか展示されていた。特に目を引いたのが烏図と鹿下絵和歌巻。前者は金と黒の対比が息を呑むほどスタイリッシュな作品であり、なおかつカラスはデザイン柄ではなく細部まで特徴が書き込まれている。これほどの作品なのに作者不詳というところがまた特徴的で、外国の美術館のコレクションならではという感じもする。後者は本阿弥光悦の書と俵屋宗達の画のコラボレーションで、特に鹿の絵は21世紀のイラストレーションとしても最高のレベルで機能すると思う。どちらもいかにもサントリー美術館好みという作品だが、これからいくつか美術館を巡回するそう。この2点のためだけでも足を運ぶ値打ちがあると思う。

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2009年8月21日 (金)

アメリカン・ハイ@滋賀県立近代美術館(2009/08/20)

日曜日から大阪に帰省している。帰省中はどうしても家族や友人と過ごす時間が優先になりライブやギャラリーは後回しなのだが、今日は一日フリーになったのでちょっとした遠足に出かけてきた。目的地は滋賀県立近代美術館。実家を出てから2時間半かかり、こんなに遠かったかとちょっと驚いた。

現在開催中の展覧会「アメリカン・ハイ」は開館25周年を記念した戦後アメリカ美術の所蔵品展。滋賀近美の戦後アメリカ美術のコレクションの中心は50年代・60年代中心、そしてウォーホルやリキテンスタインなどのポップ・アートに比較してロスコやニューマンなどのカラー・フィールド・ペインティングの比率が高い。僕は大学の合宿所が瀬田にあった縁でこの美術館に足しげく通い、今の現代美術の好みはほぼここの所蔵品で作られたと思っている。

今回の展示には国立国際美術館の所蔵品もあわせて展示されているのだが、それも含めて今までに何度も見たことがある作品であり初見のインパクトというものはあまりない。が、まとめて見てみると、やはりこのコレクションは素晴らしいと思う。おそらくアメリカでも地方の美術館でこれだけのコレクションを持っているところは多くないのではないだろうか。まぁ、さっきも書いたように、自分の好みがこれら作品群を見ることで作られたという贔屓目もあるのだろうけれど。どうやら巡回はしないようなので、アメリカ現代美術に興味のある人はぜひ足を運んでみて欲しい。きっと後悔しない内容だと思う。

余談ながら、美術館2階にあったレストラン「フラミンゴ」が潰れて休憩スペースになっていたのは結構ショックだった。学生時代、少し財布に余裕があるときにはここでケーキセットを頼んでゆっくり過ごすのは至福の時間だったのに…。次に来るときにはレストランかカフェが復活していて欲しい。

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2009年8月 6日 (木)

アイ・ウェイウェイ展-何に因って?@森美術館(2009/08/04)

本日は展覧会に一度の森美術館MAMCナイト。今回の展示はタイトルから創造できるとおりの中国人作家の個展。前半はギャラリーツアーで学芸員の説明がついたのだが、出てくるどの作品も説明の必要が無いほど分かりやすい「中国のコンセプチュアルアート」。プーアル茶葉で作った小屋、中国伝統の寄木工法で作った机を組み替えて直角の角度を付けた彫刻、中国一のブランドの自転車をくみ上げて作った円環…。現代美術がこれほど分かりやすくていいのだろうか、と怯んでしまうほどだが、これは非常に意識的なものだと思う。現代の中国には「中国のコンセプチュアルアート」という形でこそ伝えなければならないことがいくつもある。そのためには衒ったりする余裕はないということなのだろう。それを強く感じたのは展示エリアの最後の辺りにある《漢時代の壺を落とす》というモノクロ写真の三連作。タイトル通りの内容で、意図も背景も違うものを安易に比べるのはフェアじゃないと思いつつ、どうしても村上三郎の《紙破り》とかを思い出しその違いを考えざるを得ない。

MAMCナイトのスペシャルイベントは北京オリンピックのメインスタジアム「鳥の巣」の建設過程のドキュメント映画。この映画の中でもアイ・ウェイウェイはその複雑な素顔を垣間見せている。彼はこのプロジェクトに総顧問として関わったのだが、人権活動家として国威発揚に対して批判的であり、また海外の建築家が持ち込むデザインをそのまま中国で物質化することにも単純でない思いを持っている。それでありつつ、文化的な摩擦や無理なプロジェクト管理などの解決をサポートしていくのは、どのようなモチベーションによるものだったのだろうかと考えてしまった。

映画終了後に展望台をぶらつく。今日は空気が重いので夜景はぼやけているのかと思っていたら思っていたよりはるかに鮮明で驚いた。森美術館も、MAMCナイトだけでなく何度も来ればいいんだけれど、つい出かけ損ねてしまうんだよなー。反省。

本展の解説記事: (六本木経済新聞)・(CINRA)

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2009年7月27日 (月)

4つの物語|コレクションと日本近代美術@川村記念美術館(2009/07/26)

川村記念美術館は欧米の20世紀美術、特にアメリカの戦後抽象絵画の優品を所蔵することで知られた美術館。このジャンルが好きな僕はずいぶん前から一度は訪れてみたいと思っていたのだが、佐倉駅から送迎バス30分という立地が災いしてなかなかチャンスがなかった。思いついてふらっと出かけるには遠すぎるし、かといって美術館を目的とした旅行(たとえば直島の地中美術館への旅行みたいな)を企画するには近すぎる。成田からの帰りに立ち寄って、と思ったこともあったが海外帰りにそんな元気が残っているわけもない。このままではいつまでも出かける機会がない!と思い切り、同じく佐倉にある国立歴史民俗博物館と合わせて出かけることにした。

上に書いたとおり送迎バスに30分載って到着した美術館は静かな庭園の中にある。美術館の建物はそれほど大きくはないが展示の密度は濃い。入って最初のヨーロッパ近代美術の展示室からはっとするような作品が並ぶし、ジョセフ・コーネルの《鳥たちの天空航法》は彼の作品中の白眉だと思うが、やはり圧巻は2つの専用展示室、ロスコ・ルームとニューマンズ・ルームになる。

ロスコ・ルームはマーク・ロスコのシーグラム壁画作品を7つ展示した部屋。去年の10月に現存するシーグラム壁画作品をすべて並べた展示をTate Modernで見たが、今回見た展示はその時よりも良かったと思う。窓のない小さな部屋に作品を並べて照明は暗めに。Tate Modernでの展示とは違い作品は椅子に腰掛けたときにほぼ目の高さとなるよう作家の意思に忠実に配置されている。ロスコの作品の赤色は鉄の赤。赤錆の色、アメリカの砂漠の砂の色であると同時に、ベンガラの色、そして血の色でもある。それらのさまざまな赤色がグラデーションをあやなす作品がひどくアメリカ的であると同時に懐かしくも見えるのは当然なのだろう。

もう一つのニューマン・ルームはロスコ・ルームの真上、階段を上がった場所にある。展示されている作品は階段を上がる途中で目に飛び込んでくるバーネット・ニューマンの《アンナの光》のみ。グラデーションのない赤一色の長方形でよく見るとキャンパスの左右に白の余白があるだけのシンプルな作品なのだが、外光を取り入れた開放的な空間に置くと異様なまでの存在感を発する。窓の外はレースのブラインドを通しても分かる灼熱の夏日。それとクールで外界との交渉を突き放すような《アンナの光》との対比の緊張感は圧倒的だった。この二つの部屋の取り合わせほどアメリカ抽象絵画の持つ精神性を表現しきった展示を僕は知らない。しゃべりながら部屋に入ってきた観客がみなとたんに無口になるのが印象的だった。

で、タイトルは現在開催中の小企画展。同館所蔵の欧米の作品を4ジャンル選び、それに関連する日本の作品と並べて展示するというもの。面白い試みだと思うが、常設展が凄すぎた後だったので正直印象は薄かったかな。

ともあれ、足を運んだ甲斐は充分にあった一日だった。場所が場所だけにそうそう頻繁には訪れられないが、いつかまたロスコの、そしてニューマンの作品を眺めに来たい。

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2009年7月26日 (日)

佐伯洋江展@タカ・イシイギャラリー(2009/07/25)

今日は久しぶりに越中島で学会の勉強会があり、ということは清澄のギャラリービル巡りの日でもある。どこのギャラリーも力の入った展示で満足だったのだが、考えるところがあったのはタカ・イシイギャラリーの佐伯洋江展。

彼女の作品はシャープペンシルを使ったドローイング。作品自体はかなり抽象的なものなのだが、ちょっと草間弥生を思わせるようなハニカム模様、鉛筆の濃淡が美しい黒一色の平面、また高いテクニックが伝わる綿というか毛髪状の構造などが大きな余白の中に描かれ、そこに銀や赤のインクがわずかに使われてアクセントになっている。とにかく作品の質感は無条件にクールで、今年開催された話題の現代美術展、サントリーミュージアム[天保山]の「インシデンタル・アフェアーズ」展、原美術館の「ウィンター・ガーデン」展、そして行きそびれてしまったが上野の森美術館の「ネオテニー・ジャパン」展に軒並み出展していたのも頷ける。気鋭の作家という表現がふさわしい。

今回は個展ということで出展作品の幅も広く、とても楽しむことができたのだが、でもねぇ、とも思うのだ。こういう自閉的な作品が、これほどの高い評価を受けていいものなのだろうか。作家が不誠実であると言いたいわけでは決して無い。今の世の中、自分が引き受けられるリアリティはこれなのだ、という覚悟はちゃんと伝わってくる。だけれど、例えば商業コミックスの世界では同様の高いテクニックを持つ作家がポピュラリティを獲得するために悪戦苦闘しているわけで、それと比較すると「テクニックと覚悟は分かるけれど、それ+αは?」と問うのが見る側の責任ではないかしらん。もちろん自分のことは棚に上げて言っているのだが。

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2009年7月20日 (月)

アロイーズ展@ワタリウム(2009/07/20)

この三連休は初日が会社のイベントで潰れたり書き物が溜まっていたりであまり遠出もせずに過ごしている。今日は書き物が一段落したので食事のついでにワタリウムに出かけてみることにした。考えてみるとギャラリーには一ヶ月以上も足を運んでいなかったことになる。

現在開催中の展覧会はアロイーズ展。先日原美術館で大規模な回顧展のあったヘンリー・ダーガーと並び、アウトサイダー・アートの代表作家らしい。で、ヘンリー・ダーガー展を見たときにも思ったのだが、今日の展覧会を見てやっぱり「僕はアウトサイダー・アートは苦手だ」と思った。僕はきっと奔放な感情や想像力そのものより、それを押さえ込んで作品にまとめる知性の働きのほうにピンと来るんだろうな。展示会には、精神病院に入院後独学で絵の才能を開花させた彼女が、絵が売れて表現方法を押し付けられるようになると絵を書けなくなっただけでなく健康を害し6ヶ月で亡くなってしまったというエピソードが書かれていた。そこまで分かっているのならなぜそっとしておいてやらない、という言葉が喉元まで出てきてしまった。

ただ、ヘンリー・ダーガー展を見たときには正直言って陰惨さしか感じなかったのだけれど、このアロイーズ展ではある種の強烈な官能性を感じたこともまた事実。興味がある、という人は足を運んで自分の目で確かめてみてもきっと後悔はしないだろう。

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2009年6月20日 (土)

常設展@福岡アジア美術館(2009/06/18)

出張で福岡にやってきた。今回はフライトの都合でアポの時間よりかなり早く到着したのと、空港から市内へのアクセスが予想より良かったのとで、30分ほど空き時間がある。喫茶店にでも入って時間を潰すかと思ってふと上を見たら向かいのビルに福岡アジア美術館という看板を発見。名前は聞いたことがあったのでちょっと見ていこうと立ち寄った。

ここはアジアの近現代美術を専門とする美術館。カバーする地域は中国・インドから東南アジアまで幅広い。全般的にとても意欲的だし意義深い施設だとは思うが、やや不満も。各国の近現代美術史を概観するには展示の規模が小さすぎるし、かといって一点豪華主義で個別の作品の力を軸とした展示にもなっていない。Webで所蔵品リストを見ると展示されていない名作も多く、館内のレイアウトからは常設展示室はもうちょっと広げられそうに思えるのだが、難しいのだろうか。

ともあれ、アジア近現代美術に詳しくない人には特に足を運ぶ価値のある美術館だと思う。中州天神駅前と場所も良いので他の用事の合間にでも立ち寄ってみてほしい。

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2009年6月15日 (月)

エカテリーナ2世の四大ディナーセット展@東京都庭園美術館(2009/06/14)

東京都庭園美術館は近所(マンションの目の前のバス停からバス一本で行ける)なのでなるべく毎回出かけることにしているのだが、現在開催中の展覧会「エカテリーナ2世の四大ディナーセット」はあんまりピンと来ないかもなー、と思って今まで足を運んでいなかった。今日は出かける合間に時間が出来たのでちょっと覗いていくことに。 余談になるがエカテリーナって英語ではキャサリンなんだね。パンフレットのアルファベットが先に目に入ってきて、"Catherine the Great"って誰かと思ったぜ。

サブタイトルが「ヨーロッパ磁器に見る宮廷晩餐会」となっていて、国立エルミタージュ美術館所蔵の4つのディナーセットが出展されている。結論から言うとやはり個人的なストライクゾーンではなかった。僕の好みの陶磁器はやはり高麗青磁を筆頭とする東アジアのもので、ヨーロッパスタイルの磁器は手間や技術が投入されていることは認めるにしてもあまり深みがあるように感じられない。だけれど、好みを離れれば良いものが展示されているのは分かるし、特にガラスケースの中ではなくテーブルに並べて展示されているのは裏でハードな交渉があったのではないかと頭が下がる。お好きな人はぜひ。

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2009年6月 1日 (月)

お姫さま展@いがらしゆみこ美術館(2009/05/31)

この週末には勉強仲間の年に一度の懇親会があり、成田から倉敷に直行して参加した。日曜昼からは観光ツアーということで、岡山在住の仲間の案内で美術館巡り。倉敷なので目玉は当然大原美術館でそれはそれで良かったんだけれど、強烈に印象に残ったのはいがらしゆみこ美術館。外見からして強烈で、倉敷の街並みのなかでまことちゃんハウスのごとき存在感を放って屹立している。中に展示されているのは基本的に各種原画とサイン色紙で、なまじペンだとか手紙だとかの資料的な展示がされていないのが潔い。

何と言うか、「いがらしゆみこ」と聞いてパッと頭に浮かぶものを一切の照れがなく表現した美術館になっているのが実に好感が持てる。ネタ的な印象を持たれるだろうし、それが違うと言う気は無いが、見に行って損をした気にはならないことは保証する。ミュージアムショップのグッズも実に世界観に合ったものが揃っており、お土産もお勧め(笑)。

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2009年5月23日 (土)

ウィンター・ガーデン:日本現代美術におけるマイクロポップ的想像力の展開@原美術館(2009/05/22)

この展覧会は日本の現代美術の新世代を国際舞台に紹介する目的で企画され、今年の秋からのヨーロッパ巡回を前に急遽原美術館での開催が決定したものだそう(参照:カイカイキキ国際交流基金)。「マイクロポップ」とは本展のキュレーター松井みどり氏の造語で、90年代後半から00年代前半のアーティストが持つ、断片を組み合わせたり時代遅れ・凡庸なものに新たな用途や意味を与えて独自の世界観を表現する芸術行為のこと。

で、美術展の感想だが、一言でいうと「悪くはないがなぜ原で」。現在の日本の美術シーンの切り口としてコンセプトはしっかりしている上に新規性はあるし(海外巡回が前提ならなおさら)、展示されている作品もそのコンセプトをしっかり裏打ちできるものだと思う。だけれど、出展作品がどれも比較的押し出しの弱いもので(コンセプトからして当然だが)、原美術館のスタイリッシュな雰囲気が干渉して妙に浮いてしまったり逆に埋没してしまったりと展示全体のレベル感・統一感がやや欠けてしまっている印象があるのだ。この展覧会はホワイトキューブで展示されるべきものではなかろうか。

そんな中印象に残った作品は、まずは落合多武の猫が坂道をずり落ちていく絵。シルエットだけのモノクロの図柄でそこはかとなく流れるユーモアが気に入った。ほかにはタカノ綾のスケッチの小品が原美術館の雰囲気の中で目立っていたのが印象深い。

なお、本日はオープニングレセプション。若手作家が多数出る日本の現代美術展ということもあってか、普通の美術ファンはあまりいなかった気がするけど業界の方々がそこかしこで挨拶を交わしてた。なんか見ていて飽きなかった(笑)。

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2009年4月22日 (水)

万華鏡の視覚:ティッセン・ボルネミッサ現代美術財団コレクションより@森美術館(2009/04/21)

今夜は森美術館の友の会イベントMAMCナイト。現在開催中のティッセン・ボルネミッサ現代美術財団コレクション展はなかなか面白そうで早く見に来たかったのだが、せっかくなのでということで今夜まで待っていた。

イベントの前半は本展のキュレーターによるギャラリーツアー。日本初公開に近い作家の作品も出ているそうだが、原美術館で個展を見たジム・ランビーやオラファー・エリアソンなど、日本でおなじみの作家の作品も出展されている(ジム・ランビーの個展は現在もまだ開催中)。出展作品の多くはとても見やすい作品が多く、去年のターナー賞展のようなエログロナンセンス系の作品はほとんど見当たらない。場所柄この美術館はこういう路線でいいと思うんだけどなー。見やすいといっても浅薄というわけではなく、とてもレベルの高い作品が並んでいたのだが、一番の作品はロス・カルピンテロス(英語にするとザ・カーペンターズ)のものにしておこう(写真右)。芸術は爆発だー。パンフレットに使われているカールステン・フラーの作品(写真左)は、非常に写真写りは良いけれど実物はちょっとがっかりかも。

後半は南條史生館長による世界各国のプライベートコレクションの紹介。実は僕は先日生まれて初めて現代美術作品というのを購入したので、うっかりこの先に進んでいくとこういう世界が待っているのかとちょっと冷や汗をかいた。いやま、そんなことができるような財力なんてもとよりないんだが。

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2009年4月12日 (日)

田口和奈 そのものがそれそのものとして@シュウゴアーツ(2009/04/11)

先日のギャラリーショーが良かったので絶対見に行こうと思っていたシュウゴアーツでの田口和奈の個展、メーリングリストでオープニングパーティーの案内が届いたので出かけてみることにした。日本のギャラリーのオープニングパーティーに行くのは今回が初めてでちょっと怖かったが、ニューヨークに比べてこれはこれはまーまーまーまー度は高いと思うけど邪魔になるほどでは無かったのでほっと一息。今夜は清澄のギャラリービル内の他のギャラリーも一斉にレセプションをやっていてまとめて見て廻ることができ、見に来る側にとってはありがたい。あと、びっくりしたのは外人比率の高さ。そういう種類のギャラリーなんだというのは知っていたけど、普段見に来るときよりも全然比率が高く、大体三分の一は外人さんではなかったろうか。

今回の個展は正直ちょっと肩透かし。展示作品の絶対数が5点と少なく、そのうちギャラリーショーで衝撃を受けたポートレート作品は1点だけだったのだ。残りのうち3点は銀河の天体写真を思わせるもので、もう一つは枯れ木をモチーフにしたもの。よく見るとどちらも複雑な製作プロセスが垣間見られるのだが、ぱっと見のインパクトも、プロセスを考えさせる力も、正直ポートレート作品の方が上だと感じた。展示スペースは余っているように見えたので、ギャラリーショーのときの作品も一緒に出展すれば良かったように思う。

で、オープニングなので当然作家さんも来ていたわけだが、ローライズジーンズに長袖ピタTという今風の格好をした娘さんだったのが微妙に衝撃だった。いやまぁ、1979年生まれという年齢を考えると全然おかしくはないのだけれども…。

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2009年4月10日 (金)

歴史の天使 アイ・ラブ・アート10@ワタリウム(2009/04/10)

本日は休みを取って溜まっていた家事を片付けている。昼食を済ませた後、少し息抜きをしようとワタリウムに。

現在開催中の展覧会はコレクション展「アイ・ラブ・アート」の第10回。「歴史の天使」というサブタイトルの写真展だ。タイトルからは報道写真が中心のような印象を受けるが、そこは一ひねりされている。

3つの階に分かれた展示スペースごとにコンセプトが分かれており、2階はマン・レイからアウグスト・ザンダー、ロバート・メイプルソープへと流れていく、いわば写真表現の歴史を追う王道の展示。ルネ・マグリッドの写真が展示されており、僕は彼の写真家としての側面を知らなかったので非常に参考になった。そして、今回展示されているメイプルソープの作品はカラー。あまりに有名な作品たちで知識としての驚きは無かったが、生で見ると改めて迫力に圧倒される。

3階の展示の中心は佐藤玲。彼女は2004年にニューヨークのMarianne Boesky Galleryで開催された「東京ガールズブラボー」が実質デビューのようで、見に行ったんだけれどあまり印象が無いんだよなぁ。作品としては風景写真にドローイングを重ねる手法のものが現物と写真とで展示されているのだが、インスタレーションとして「千歳緑」というユルめのカフェスペースが出展されている(毎週土曜午後には実際にカフェになって作家がコーヒーを出すとのこと)。2階・4階が非常にスタイリッシュな展示なので、ここで一息つけるようになっている。

最後の4階は、ホルスト、ヘルムート・ニュートン、ジャンルー・シーフといったヴォーグ系のファッション・ヌード写真を中心とした展示。作品数がやや少なく、印象の違う作品も少し配してはいるが、それでも強い世界観を持つ作品でまとめられているので強いインパクトがある。

アート写真好きの人なら興味のあるジャンルに関わらず楽しめる写真展だと思う。ちょっと残念だったのは今日は日差しが強すぎて外からの光が鑑賞の邪魔になったこと。夕方か曇りの日を狙って行くのがいいかも。

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2009年3月21日 (土)

インシデンタル・アフェアーズ@サントリーミュージアム天保山(2009/03/20)

本日は墓参りのため大阪の実家に帰省。墓参りと家族での食事を終えた後、夕方まで時間があったのでサントリーミュージアム天保山を覗いていくことにした。東京の美術館で現在開催中の企画展のパンフレットを拾って現代美術展だと知り、この美術館にしては珍しいと気になっていたのだ。図録によると、やはり開館15周年にして最初の本格的な現代美術展だったらしい。

野心的な企画だと思うがとても成功したのではないか、というのが感想。絵画・写真から映像・インスタレーションまで第一線の現役アーティストの作品を集め、それが「サントリーミュージアム天保山の名前で足を運んでくれる来訪者に現代美術を紹介する」というコンセプトとマッチしている。

大作が揃っているので印象に残った作品を選ぶのは難しいのだが、それでも一番に来るのは宮島達男の「MEGA DEATH」だろう。時の連鎖シリーズに連なる作品なのだが、部屋の広さとデジタルカウンターの色・サイズのバランスが良く今までの作品の中でも格別に美しい。そしてタイトルの「MEGA DEATH」、連鎖を断ち切る形でいきなり訪れる闇とそこからの回復は、「時の連鎖」というコンセプトを完成させたものと言って良いのではないか。

もう一つはさわひらきの映像作品「Going Places Sitting Down」。これは小さな木馬が洋風の部屋の中を動き回り、それが草原や海原のイメージと重なり合うという幻想的な作品。実は僕はこの作品をニューヨークのギャラリーで見たことがあり(正確な時期と場所は失念)、懐かしいなーという印象があった。今回は大型の3面スクリーンを使った展示で、より非日常的でゆったりとした世界に浸ることができる。

コアな現代美術ファンも、現代美術は難解そうでちょっと…という人も、どちらも納得できると思う展示。巡回はしないそうなのでぜひ大阪で足を運んでみて欲しい。

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2009年3月 8日 (日)

田口和奈@シュウゴアーツ(2009/03/07)

本日も越中島での学会前に清澄のギャラリービルに寄り道。清澄って用事がないと出かけるのが億劫な場所なので、他の用事と合わせて定期的に出てこれるというのは嬉しいことだ。今回も一通りのギャラリーを廻ったのだが、一番目を引いたのは1月に来たときと同じくシュウゴアーツ

今回はギャラリー・ショーで複数作家の作品が展示されていたのだが、その中でとりわけ目を引いたのが田口和奈。どこかはかなげな女性を写したモノクロ写真だけれど、作品のインパクトはPCの画面では絶対に伝わらない。メディアとしてはゼラチンシルバープリントとなってはいるが、その吸い付くような質感はまるで暗闇で見る粘膜のよう。そして、写真にしてはあまりに絵画的な存在感がどのような手法によるものかと思っていたら、なんと自ら描いた画を写真に撮っているということ。参った。そういう風な表現手段があり、それによってこんな効果が得られるのか。アートの可能性は本当に広い。

シュウゴアーツの次の展示はこの田口和奈の個展。学会と重ならなくてもぜひ見に行かなくては。

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2009年2月12日 (木)

ジム ランビー : アンノウン プレジャーズ@原美術館(2008/2/11)

今日は祝日。特に用事も無く見たいライブも無いのでゆっくりとギャラリーで過ごそうかと原美術館に行ったらかなりの混雑。行列ができるほどではないがどの部屋にも何人も人がいる。何かあったんですか、と学芸員に尋ねたら先週の日曜美術館で紹介されたらしい。

現在開催中なのはジム・ランビーの個展。イギリスの現代美術作家で、床にテープを貼る作品で知られている。今回会場に入ったらチケットブースの裏側にまでぴちっとテープが貼られていて笑ってしまった。彼は虹のようなカラフルなテープを使うこともあるが、今回のテーピングは白と黒。同心円の弧を重ね合わせた眺めはまるで流れる水のようで、そこにコンクリートキューブを配した姿はイギリス人による枯山水の解釈としてベタ過ぎるかもしれないが強い説得力がある。もう一つ、これは歩いて見ないと分からないのだが、テープを踏んだときのぬめっとした感触はとても官能的だ。

印象的だったのは2階の作品で、もちろんテーピングとコンクリートキューブのインスタレーションがなされた上で、3つの部屋ごとに1つの扉と1つのポスターが配されている。扉は原色に塗られてノブがいくつも付いており、半開きになっていて扉の動きを示す部分にもテーピングがなされている。そして、ポスターには油絵の花がコラージュされている。で、赤のドアの部屋は、ドアの作品名がMaybellene"でチャック・ベリーのポスター、黄色のドアの部屋はドアは"Plastic Ono"でジョン・レノンのポスター、そして青のドアの部屋のドアは"Kinda Blue"でマイルス・デイヴィスとビリー・ホリディのポスター。このストレートさが気持ちいい。

作品を見て知識をつけるというよりは空間を楽しむ展覧会で、3月末の会期末までにぜひ再訪してみたい。あえて難を付けるとすれば、原美術館の常設作品とのコラボレーションを見たかった。レイノーズ・ルームとか、テーピングで印象が変わるところを見てみたかったのだが…。

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2009年2月 9日 (月)

複々製に進路をとれ 粟津潔60年の軌跡@川崎市市民ミュージアム(2009/02/08)

久しぶりの川崎市市民ミュージアム。今日は昼間にゆっくり時間を取れるので出かけてみようと思い立った。普通は武蔵小杉駅からバスに乗るのだが、今日は川崎駅からの直通バスで40分。ちょっと風情のある下町を通るバスで悪くない。

現在開催中なのは粟津潔の個展。この展覧会は開館20周年記念展で、彼は川崎市市民ミュージアムでロゴマークのデザインを手がけたり資料収集委員長を務めたりと非常に深い縁があるらしい。今回の展示会は彼のアーティスト活動60年間を振り返るものになっているそうだ。

僕は彼の名前を知らなかったのだが、展示には見覚えのある作品が出ていた。「心中天網島」のポスターなどの60年代の一連のグラフィック作品がそれで、実は僕はこれらの作品は横尾忠則の作品だと思っていた。展示は時代ごとに区切られており、他の時代にはペインティングだとか写真だとか普通のポスターだとか版画だとかが並んでいる。どの時代にどのような作品が作成されたかが解説が付いていて親切だった。

僕のような人間が予備知識無しにぱっと見ると時代ごとに「まんま横尾忠則」とか「まんまウォーホル」とか「まんま靉嘔」みたいな作品が並んでいて、正直ちょっと困る。一方で美術史的には存在のある人なんだろうなぁ、と言うのがなんとなく見当がつく。今の視点から見ると手垢の付いた表現でも、新しいスタイルとして世の中に出てきた時にそれを解釈して位置づける人は必要だったんだろう。確信犯的な展覧会タイトルもそのへんのことを語っているような気がする。

そんな訳で、個人的にはちょっと外したかな、というところだった。

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2009年1月30日 (金)

島袋道浩展:美術の星の人へ@ワタリウム(2009/01/28)

今夜は久しぶりのワタリウム。考えてみれば引っ越してきてから水曜日の夜間開館って引っ越してきてから初めてかもしれない。

現在開催中なのは島袋道浩の個展。現在ベルリンを拠点に活動しているパフォーマンス系のアーティストなのだが、正直言って僕が非常に苦手なタイプだった。「面白いイラスト」「ユーモラスなビデオ」とは理解できるのだが美術作品として受け入れられないので作品との距離が取れないのだ。例えば、今回出展されていた「自分で作ったタコ壺でタコを捕る」。ビデオ作品で、イタリアの海辺の町の展覧会で陶器の作品を作るよう招待されたのだが、タコ料理を見てタコ壺でタコを捕ることを思いつき、地元の漁師と漁に出るというもの。ビデオは漁に出てる部分を描いたまんまぁで、例えば世界ウルルン滞在記とどう違うんかと。

ただ、今回の展覧会ではワタリウムの屋上が開放されていて、それは非常にお値打ちだった。キラー通りの真っ直ぐ先に見える六本木ヒルズ、眼下に広がる北青山のちょっとレトロな街並み、案外遠い表参道、この眺めを見るために足を運ぶというのも悪くないと思う。

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2009年1月25日 (日)

藤本由紀夫 遠/近@シュウゴアーツ(2009/01/24)

今日は午後に越中島で用事があったので少し早めに出て清澄のギャラリービルを冷やかす。どこもちょっと地味目の展示をやっていると思ったのだけれど、その中で一番良かったのがシュウゴアーツの藤本由紀夫展。

藤本由紀夫というと音響インスタレーションのイメージが強いのだが、今回の展示はビジュアル作品のみ。だが、展示されていた作品は彼らしいものだった。出展されている作品は文字、それもドットで構成された文字が描かれているのだが、濃淡をつけたドットを複数重ねることでまるで文字が動いているような錯覚を起こさせるもの、白色で塗りこめたキャンバスに針の穴で文字を書いたもの、一番面白かったのが、アクリル板とキャンバスの2層になっているもので、アクリル板に孔を開けて文字が書かれているのだが、光が斜め上から当たっているので孔の部分が陰になりキャンパスには黒く文字が表示されるというもの。

タイトルの"遠/近"は遠近法から取ったそうで、ひょっとしたら何かもう一つ捻った意図があるのかもしれないが、コンピュータ技術者の僕としては「点の集まりを文字と認識する」ということの曖昧さ、不思議さに気付かされた展示だった。こういう知的な刺激に出会うことはギャラリーめぐりの醍醐味の一つだと思う。

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2009年1月21日 (水)

チャロー!インディア~インド美術の新時代展@森美術館(2009/01/20)

現在森美術館で開催中なのはインド現代美術展。インドはイギリスの影響を受けてちゃんとした画壇というか美術界があり、いかにもというクラシックな現代美術をやっている作家もいるそうなのだが、この展覧会に出展した作家は1960年代以降生まれの新世代の人々だそうだ。インド現代美術展としては過去最大級のもので、森美術館のあとは韓国・オーストリアに巡回するのだとか。

森美術館の展覧会は毎回友の会メンバー向けの展示日MAMCナイトを設けており、僕もそれに合わせて訪問した。前半は館長の南條史生氏による充実したギャラリーツアー。インドの現代美術というと、欧米や中国のものと比べ、どうしてもエキゾチック・エスニックなものを想像してしまうが、展示されている作品はバラエティーに富んでいる。路上の貧困などある意味イメージどおりの手間を取り上げたもの、逆に国籍不明でどこの国の作者だと言われても納得してしまいそうなもの、金箔細工などの伝統的な工芸技術を利用したもの、そして僕がITエンジニアとして知る同世代の若いインド人の生活感覚を感じさせるもの。中でもインド作家ならではという印象を受けたのはプシュマパラという女性写真家の作品。彼女の作品は新聞や書籍などに登場するありふれたイメージに自分が登場して写真を撮るというもので、方法論的にはシンディ・シャーマンとかが採用していたものだ。が、シャーマンの作品がアメリカのパブリックイメージの匿名性を際立たせるものになっていたのに対し、プシュマパラの作品はインドの多様性を強く感じさせるものになっている。同じ手法を用いてもバックグラウンドが違うとこれだけ違うテーマになるものかと感心した。

南條館長のトークもなかなか面白いもので、普段のギャラリートークではここまでの話は出ないんじゃないかなというネタがいろいろ出てきた。例えば展覧会タイトルの「チャロー!インディア」。「チャロー」ってヒンディー語の中でも語呂が良いしタイトルにいいかな、という軽いノリで最初は発案されたらしいのだけれど、インド人に聞くと歴史に詳しい人の中に「日本での展覧会のタイトルにはちょっとどうかな…」という人がいたらしい。実は、太平洋戦争中に日本に協力してインド独立を目指したインド国民軍のスローガンが「チャロー!デリー」だったそうなのだ。企業だとそういう話が出た時点でこのタイトルはボツだろうと思うのだが、館長はこの話を聞いてそれはインドと日本の関係を含む意義深いタイトルだということで押し切ったらしい。

MAMCナイトの後半はシタール奏者ヨシダダイキチ氏のライブ。シタールのライブというと古典音楽かはたまたボリウッドかと思っていたのだが、今日の編成はシタール、ラップトップ、手拍子&合の手×2というかなりコアなもの。編成のイメージどおりまるでStoneRouletteかというようなエクスペリメンタルなライブだった。ミュージアムライブで音響はかなり悪かったが、低音が本格的に出せる場所で演奏したらこれは結構トベると思う。後で調べてみると、このヨシダダイキチ氏はボアダムスのヨシミと「サイコババ」というユニットを組んで何枚もアルバムを出していたとか。さもありなん。30分ほどのライブだったが無料とは思えないいいものを聴けた。

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2008年12月31日 (水)

純粋なる形象-ディーター・ラムスの時代展@サントリーミュージアム天保山(2008/12/29)

帰省で大阪に帰ってきている。今夜は飲み会で早めに街に出てきて買い物をしていたが、思ったよりも時間が余ったので久しぶりのサントリーミュージアム天保山に。ここからの大阪港の眺めは相変わらず素敵だ。工業港の詩情って妙な表現かもしれないが、他の港では感じられない独特の雰囲気がある。

現在の展示はブラウン社の製品デザイナーであるディーター・ラムス氏の業績をたどるもの。彼は戦後のインダストリアルデザインの方向を決定づけたほどの巨匠とのことで、展示も彼の作品だけではなく前後・周辺の作者の作品も含むものになっている。個人的に好みのど真ん中のデザインばかりで、どれも欲しくて困った、って何てベタな感想(笑)。ひょっとしたらミュージアムショップに出てないかな、と期待していたらトラベルクロックだけは置いてあった。普通の家電価格なのでお土産にぜひどうぞ。デジタル腕時計が特に気に入ったんだけど、こういうデザインの物ってどこかで売ってないのかなぁ。

興味深かったのは、上に書いた時計類やドライヤー、調理器具などの使い方が明確なものについてはデザインの力が今でも全く衰えていないのに対し、オーディオ製品などの複雑なユーザインタフェースを必要とする製品群は技術とデザインのバランスが崩れている時期があること。インダストリアルデザインというのはやはり製品の機能あってのものなんだな。

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2008年12月21日 (日)

1930年代・東京~アール・デコの館(朝香宮邸)が生まれた時代展@東京都庭園美術館(2008/12/20)

東京都庭園美術館では開館25周年記念展を開催中。テーマは美術館の建物、朝香宮邸が建てられた1930年代の東京ということで、今回足を運んでみた。展示品は美術品・工芸品が多いのかと思っていたが、どちらかというとファッション・広告デザインの比率が高かった印象。先月見てきた「関西のグラフィックデザイン展」と重なる対象も多く、一層興味深く見ることが出来た。関東大震災からの復興直後の時期であり、どことなく新開地の気負いを感じさせる、というのは関西人の思い込みかな。美術・工芸作品として展示されていたものも含め、作品そのものが圧倒的な強度を感じさせるというものはほとんど無かったが、展示会全体として時代の空気が伝わってくるものだった。

もう一つ、この展示会では普段は展示されない朝香宮邸の家具や部屋も後悔されている。特に興味深かったのは今回初公開という中三階の倉庫(納屋)。元の用途からして当然ながら他の部屋のように華やかな装飾があるわけではないが、古い建物の機能的なスペースとしてなんとも言えない味がある(昔の食糧ビルとかこんな感じだった気が)。今後は資料展示や講演会に使っていきたいとのことだけれど、それはちょっと勿体無い。美味く使えばキュレーションの幅が広がるだろうに。

余談ながら、この展覧会はモガ・モボにちなんでか帽子をかぶって来館すると2割引してくれる。事前には知らず単に寒いから毛糸の帽子をかぶっていっただけなのに割り引いてくれてかなり得した気分だった(笑)。

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2008年12月12日 (金)

吉岡徳仁ディレクション 「セカンド・ネイチャー」展@21_21 DESIGN SIGHT(2008/12/10)

21_21は東京ミッドタウンのデザインギャラリー。サントリー美術館とは違いビル群の外、北側の庭に半ば地中に埋まるような形で存在しているので存在に気付かない人は気付いていないのではと思う。近所なのでもちろん存在は知っていたのだが今まで出かける機会が無かった。今日は仕事で展示会を見に東京ミッドタウンに出てきたのと、企画展「セカンド・ネイチャー」の出典作家にニューヨークで見て記憶に残っていた安部典子が入っていたので帰りに立ち寄っていくことにした。

21_21の展示スペースはコンクリート打ちっぱなしのある意味いかにもという感じの空間なのだが、仕切りの入れ方が独特なのであまりベタさは感じない。出典作品のそれぞれはかなり薄味で主張が強くなく、安部典子の作品もかなりの小品だった。むしろ、展覧会タイトルにあるように、デザイナー吉岡徳仁が出典作家の作品(自作も出展している)を使って作り上げた空間そのものが作品ということだろう。

展示会の見所は一番大きな部屋に展示された吉岡の作品群。天井からは長さの違う透明なファイバーを吊り下げたインスタレーションが雲のような効果を出しており、そこに展示された作品は塩の結晶がびっしりと張り付いた椅子。そして、その作品を作成する過程の水槽に入れられた素材や、ある音楽を聞かせて成長させたと言う結晶の作品。ある種ハプニング・アート的な作品で、インパクトの大きな部分を結晶という素材に頼っている面もあるのだが、部屋全体としての展示には強いインパクトがある。

難しく考えなくても、ファイバーで作られた部屋の中の雲と、きらめくような結晶、そして泡がたゆたう水槽という空間は冬に相応しいちょっとした異世界。東京ミッドタウンに来る機会があれば、30分ほど時間を取ってぼんやり眺めてみてはいかが?

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2008年12月 7日 (日)

安藤忠雄建築展[挑戦-原点から-]@ギャラリー・間(2008/12/06)

久々のギャラリー・間では安藤忠雄の個展が開催中。いつもは渋好みのこのギャラリーでずいぶん派手な企画を、と思ったら、TOTO出版にて刊行中の『安藤忠雄の建築』の出版を記念しての開催ということらしい。なので彼の仕事、「光の教会」のような小規模のものから副都心線渋谷駅"地中船"、はたまた中東やイタリアでの都市プロジェクトを写真、イラスト、模型などで紹介しているのだが、今回の展覧会の目玉は別にある。彼の実質的な最初の仕事、「住吉の長屋」の実寸大模型が展示されているのだ。

長屋一件分のスペースの中央三分の一を中庭として開放したこの住宅は、雨の日には傘をさしてトイレに行かねばならないなど普通に考える生活の便利さを犠牲にした設計で、長く毀誉褒貶のあった作品とのこと。僕も存在ぐらいは知っていて、正直どうかなぁとは思っていたのだが、実物大のものを見てみたら実は「好きなら住めるんじゃないの」という気がした。各部屋は案外広いし、中庭はおそらく風は防いでくれるので雨だけなら慣れれば何とかなりそうだ。僕のように図面や模型から生き生きと実物を想像することが出来ない素人は、建築は実物を見てみるものだと思った。

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2008年11月24日 (月)

美しい 青い風が - I Love Art 9@ワタリウム美術館(2008/11/24)

現在ワタリウムで開催中なのはコレクション展。ここの企画展はかなり癖が強く、合わない展示は開催の意義は認めざるを得ないにしても正直あまり楽しめなかったりするのだが、今回の展示は現代美術館のコレクション展としてはなかなかのもの。アンディ・ウォーホル、キース・ヘリング、ヨーゼフ・ボイスといったこの美術館のパブリックイメージに合った作家の作品はもとより、張洹や黄永砅といった中国の作家、はては駒井哲郎や瀧口修造のようにこういう人たちとの付き合いがあったのか、という作家のものまで多彩。美術館としての基礎体力を感じさせる展示だった。

現代美術に興味のある人なら誰でも楽しめると思うが、特にアンディ・ウォーホルやキース・ヘリングが日本に紹介された頃をリアルタイムで体験したような(そしてその後は現代美術動向を追いかけきれていない)世代、僕より少し上かな、そういう人たちに足を運んでみてもらいたい。展示に添えられた館長の和多利氏によるエピソードも併せ、結構ぐっと来るのではないだろうか。

なお、ワタリウムの向かいの建物からは看板が外されキース・ヘリングの壁画が10年以上ぶりに眺められるようになっている。こちらもお見逃しなく。

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2008年11月17日 (月)

関西のグラフィックデザイン展・1920~1940年代@西宮市大谷記念美術館(2008/11/16)

学芸員の友人から招待状を頂いていたこの展覧会。この時期関西は行けないかなーと思っていたのだが急に予定が変わって出かけられることになった。会場の大谷記念美術館は昔西宮に通学していたり住んでいたりしたのでその当時は結構通ったのだが、最近はずいぶんご無沙汰していた。閑静な文教地域の中にある落ち着いた佇まいは以前と変わらずほっとする。到着したらちょうどギャラリートークが始まる時間で、展示をたっぷり堪能することができた。

招待券を貰った時点で、そこで使われていたポスター「近畿の名宝を蒐めて 福の神大展覧会」のニヒルな大黒様の笑顔にノックアウトされてしまったのだが(しかし何故に関西の福の神のポスターで主役がえべっさんでなくて大黒様?)、その路線以外にもいろいろな興味深い作品が展示されていた。戦前の関西って知っているようで知らない点が多く、今のヨシモト的なパブリックイメージを当時に当てはめるのは論外としても、じゃあ「細雪」だけかというとそれも違うような気がする。この展示会では何となくそのヒントになりそうな作品があったように思う。いわゆる大正モダンというイメージから微妙にずれた作品、先述の大黒様もそうだし、女の子の目がパイカットアイの宝塚のイラストポスター、早川源一作の阪神電鉄の一連のポスターなど。そのあたりを言葉にしろと言われると難しいのだが…。

その他にも、軍事イベント・戦意涵養系のポスターや、短納期・低予算の映画ポスターなど、単品としてはパッとしなくても同時代のものと並べて見ると全体の中での位置づけが分かるものも展示されているし、もちろん化粧品や清酒などの王道の美人ニッコリのポスターも。

本展はこの週末の連休まで開催中。大黒様の笑顔を見るためだけでも足を運ぶ価値あり(笑)。ご近所の方はぜひどうぞ。

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2008年11月10日 (月)

アンドリュー・ワイエス展@Bunkamuraザ・ミュージアム(2008/11/09)

Bunkamuraに出かけてくるのは結構久しぶりになる。東急沿線に住んでいた頃はメンバーシップを持っていたこともあるのだが、最近は無意識のうちに駅から遠いのを億劫に感じているような気がする。俺もジジィになったなぁ。渋谷センター街とか歩くとなんか狩られそうな気がして身構えてしまうよ(笑)。

現在開催中のアンドリュー・ワイエスは僕が一番好きな画家の一人。日本に来た巡回展は大体見たと思うし、アメリカでは彼の生家の近くにあるBrandywine River Museumまで足を延ばした。2006年にフィラデルフィアで開催していた大規模な個展は別の用事で街に出かけたのに時間が取れず心残りになっている。

そんな訳で今回の展覧会も楽しみにしていたのだが、予想とは違う、だがとても見ごたえのある展示だった。出典作品のうちテンペラ画の完成作品は多くなく、スケッチや習作が多い。スケッチからテンペラ作品という流れで展示されているのだが、肝心の完成作品は写真で参考展示というパターンもいくつもあるのだ。が、これら習作、特に水彩作品が素晴らしいのだ。テンペラ画の緻密なテクスチャーの裏の生々しい意識や感情が匂ってくるようで、かといって最終作品の準備というにとどまらない完成度を持っている。正直、テンペラ作品よりいいかも、という水彩・ドライブラッシュ作品がいくつもあった。

完成作品と習作とを何度も見比べることになるのでじっくりと時間を取っておくと良いと思う。いいものを見させてもらった。

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2008年11月 3日 (月)

アネット・メサジェ:聖と俗の使者たち展@森美術館(2008/10/31)

今日の夕方は六本木一丁目で用事があり、終わった後にせっかく六本木に出てきたのだからと森美術館に寄っていくことにした。現在開催しているのはアネット・メサジェの個展。11月3日までなのでギリギリ間に合ったことになる。

彼女はフランスの女性アーティスト。噂を聞く限りなんとなくゴリゴリの現代美術で見るだけで疲れそう…という先入観を持っていて、それが最後まで足を運ばなかった主な理由だったりしたのだけれど、作品を見てみるとまるっきり印象が違った。布や糸といった女性らしい素材を中心に使った軽やかな作品が並ぶ。ちょうど今日はハロウィンで、まるでこの日のために飾り付けたようだ。会場の入り口に展示してあるのは鳥の剥製に布で作ったぬいぐるみの頭部をかぶせた作品。言葉にするとグロいし、なんとなくヨーゼフ・ボイスっぽい作品を思い浮かべてしまうが(あっちは野兎の死骸とフェルトだっけか)、実際にはユーモアの方が強く感じられる。

まぁドイツ人男性とフランス人女性を比べたらそりゃぁ…と思われるかもしれないが、女性の現代美術作家がこういう女性らしい素材を扱うのって実は難しくて、通俗的になってしまったり反対にフェミニズム的なメッセージが前に出すぎてしまうのだが、彼女の作品は非常にバランスが取れている。イマどきの現代美術のフォーマットを踏まえ、見て楽しいというポピュラリティーを持ち、それでいてきちんとメッセージ性もある。ポップすぎると嫌う人もいるかもしれないが、僕は支持したいな。見逃さずにすんで幸運だった。

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2008年10月26日 (日)

米田知子展@原美術館(2008/10/22)

原美術館では現在写真家の米田知子の個展を開催中。今回展示されている作品は、一軒何気ない風景に見えて実はワケあり、という風景写真が中心。ノルマンディー上陸作戦の舞台になった海岸だったり、中朝国境の川だったり、北アイルランドなどの紛争地だったり。現代美術の作品としては「あり」なんだろうけれど、個人的にはあまり納得が行かない作品が多かった。写真の方が本当に何気ない風景写真で、キャプションを見て始めて納得が行く、というのでは写真を表現手段として使う意味が無いと思うのだ。普通の風景写真にしか見えないのだが何か異様なものを感じて…、というのが無ければ。展示写真の中では朝鮮半島のDMZやサラエボのサッカー場を題材にした「地雷原」(タイトルの通りその風景の地面の下には地雷が埋まっている)はそれに成功していると思う。ま、「いや、他の写真もそういうオーラを出している。気が付かないのはお前が鈍いだけだ」と言われちゃうとぐぅの音も出ないのだが。

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2008年9月23日 (火)

サイトウ・マコト展@金沢21世紀美術館(2008/09/22)

友人の結婚式が北陸であり、それに合わせて休みを取って金沢に足を伸ばした。もともとは夕方に着く心積もりでいたのだが予定が早まってしまい、時間を持て余したので金沢21世紀美術館に出かけた。

現在開催中なのはサイトウ・マコト展とコレクション展。前者は著名なグラフィックデザイナーである作家が絵画表現に進出して初の個展とのこと。映画から切り出したシーンをフォトショップで加工したような、というのが作品の手法についての解説になる。この種の手法にありがちな甘さは全く無く、緊張感を持った現代美術作品になっているのだが、個人的にはちょっとピンとこなかった。

どちらかというとコレクション展の方が面白かったかな。非常に癖のある箱だけにコレクション展のキュレーションはなかなか難しいと思うのだが、バランスの取れた展示に仕上がっていたと思う。個人的には奈良美智の"I will ROCK YOU! / Broken Heart Bench yngm:k version"が良かったな。この作品は彼のレジデント展の時の作品なのだが、その時には全然気づかなかった。

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2008年9月17日 (水)

アヴァンギャルド・チャイナ展@国立新美術館(2008/09/15)

中国の現代美術20年の歩みを何人かの代表的な美術家に焦点を当てて構成した展覧会。行っておかなきゃ、と思っていたので、遠出する予定の無い今日に出かけてきた。場所は国立新美術館この前行ったエミリー・ウングワレー展からもう2ヶ月ほどになるのか。早いなぁ。

登場アーティストは16人。いずれも基本的に複数の作品を出展していてそれぞれのアーティストの顔が見える展示となっていた。僕は中国の現代美術は作家の古典はいくつか見たことがあるものの全体を見たことが無く、どういうものかに興味があったのだが、全体の印象としては日本の戦後美術にとてもよく似ていた。わざと狙ったのでなければとても興味深い話だと思う。同じアジア人だから、というのはもちろん無くは無いのだろうが、それよりも抑圧的・閉鎖的な体制が短い時間で開放され、一気に外国の文化が入り込んできた、という状況が似ているのではないかと思う。その意味ではある程度美術に馴染んだ人のほうが楽しめる展覧会だろうか。

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2008年8月29日 (金)

舟越桂・夏の邸宅展@東京都庭園美術館(2008/08/25)

東京都庭園美術館舟越桂の個展、もともと行かなければいけないとは思っていたのだが、今週は8時まで夜間開館していると言うことなのでさっそく出かけることにした。美術館に着いたのは7時頃。まだ少し雨が降り続いていて、草の匂いの強さに驚かされる。

会場に入って驚いたのは客の少なさ。夜間開館の初日だからか、月曜日は美術館は休みだとみんな思っているからか。小部屋の中には客は僕一人というこの贅沢!他の客もこの空間に感動しているのか、騒いだりすること無く静かに鑑賞している。

で、展示作品、彫刻だけではなく版画やドローイングの比率も高く、さらに彫刻も最近の挑戦的な「スフィンクス」シリーズが多いので、人によってはちょっとイメージが違うと感じるかもしれない。ただ、そういう人でも庭園美術館のインテリアの中での舟越桂の作品の存在感には圧倒されるのではなかろうか。どうしても装飾的な作品の展示会と合わせられがちなスペースで、実際そういう使い方も悪くないのだけれど、今回の、特に1階の展示は美術作品と展示スペースの組み合わせの可能性について考えさせられた。眼福とはこういうものをいうのですよ。人が多いとここまで楽しめないと思うので、ぜひ空いていそうな時間に!

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2008年7月23日 (水)

エミリー・ウングワレー展@国立新美術館(2008/07/21)

エミリー・ウングワレー展は絶対に見に行かなきゃと思っていた展覧会。会期終了が来週末に迫っていたので暑い中国立新美術館に出かけてきた。見に行かなきゃ、と最初から思っていたわけではない。この展覧会までは名前を知らなかったし、ポスターに採用されていた作品は個人的にはピンと来なかった。展覧会が始まってから、別にアートの専門家ではない、ライブでのMCだったり普通の友人だったりからの噂を聞くようになったのが関心を持った理由だ。

エミリー・ウングワレーはアボリジニの女性。居留地を離れることなく、もちろん西洋美術の教育を受けることも無いまま、ずっと儀礼のためのボディ・ペインティングを書いていたのだが、80歳ごろからカンヴァス画を描きはじめる。その亡くなるまでの間に数千点の作品を残し、現代抽象主義に通じるモダンな作品は民俗学的な観点を超えてオーストラリアを代表する画家として世界的な評価を受けている。

さて、そんなキャッチコピーを読んでどう感じるだろうか。正直、ある種のクリシェ的なイメージが僕の頭の中にあったのだが、出かけてみるとそんな先入観はあっさりと吹き飛んでしまい、凄い作家がいたものだと溜息が出てしまった。まず、先住民族の民俗儀式に根ざした作品ということから連想される要素は、少なくとも中期の作品以降には全く見られない。いずれも途方も無く洗練された作品ばかりだ。そして、初期の点描からモネのような色彩構成、ポロックを思い起こさせるブラッシュストロークから最晩年のロスコのような平面構成の作品と、キャリアの中で作風を変化させてきたことは、伝統的なアボリジニの作風が「たまたま」現代抽象画に見える、という考え方を否応無く否定する。

展示の中では彼女の作品がアボリジニの伝統的な文化やライフスタイルにルーツを持つことがくりかえし説明されていて、それは実際事実なんだろう。だが、僕にとっては作品自体がこれほど完成度の高い抽象絵画作品に見えてしまうと、アボリジニ文化との関連性をどう解釈していいか、ちょっとわからない。もちろん、作品としてすぐれているからこそそういう安易な解釈を許さない、と言う物言いはあるのだろうけど、それはなんとなく違う気がするし…。

ともあれ、非常にお勧めの展覧会。会期は上に書いたとおり来週の月曜日までだが機会のある人は是非。

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2008年7月11日 (金)

オスカール大岩展@東京都現代美術館(2008/07/06)

インパクトのある作家名で以前からなんとなく気になっていた展覧会。なんとなくペンネームっていうか芸人っぽい名前ではあるが、作者はブラジル生まれの日系二世なのでそういう失礼なことを言ってはいけない。

彼の作品を見てなんとなく既視感があり、誰だったろうとしばらく考えて思いついたのが横尾忠則。手法自体が似ているというわけではないのだけれど、何と言うか、センスや感性は通じるものがあると思う。その一方で現代のラテン圏の作家だなという雰囲気もあり、かなり面白い体験だった。

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2008年7月 6日 (日)

アートスコープ2007/2008@原美術館(2008/06/29)

今回の原美術館の企画展はダイムラーの芸術支援活動の発表会。日本とドイツからそれぞれ2人アーティストを選んで互いの国に派遣し、異文化の中で作品を作ってもらおう、というプログラムらしい。

正直な話ドイツ側の2人についてはあまりピンと来なかったのだが、日本側の作家は面白かった。入り口の部屋に展示されていたのは照屋勇賢。彼の作品はニューヨークで何度か見ていて、電話帳や紙のショッピングバッグに切れ目を入れて草や木を作るというもので、コンセプトとテクニックの融合がとても面白かった。今回は趣向を変えたインスタレーション作品も出していたが、絵本と切り紙作品でメッセージを連動させたものが面白かったな。

もう一人、加藤泉の作品はアフリカのプリミティブアートのような木彫の人物作品。個人的には苦手なタイプの作品なんだけれど、作品の持つ生々しいエネルギーは認めざるを得ない。

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2008年6月23日 (月)

英国美術の現在史:ターナー賞の歩み展@森美術館(2008/06/16)

森美術館のメンバーシップが今月で切れるのでその更新を兼ねて出かけてみた。現在開催中の展覧会は、イギリスの現代美術賞・ターナー賞の歴代受賞者をフィーチャーしたもの。初期の受賞者こそギルバート&ジョージとかリチャード・ロングとかのそれなりのビッグネームだが、最近になるにつれて気鋭としか言いようが無い作家が受賞するようになっていく(物議を醸す、という意味ではない。念のため)。これほどの先鋭的な現代美術展が国民的なイベントになっているというのだから、イギリスのアートの層の厚さに驚く。大体が、開催しているのがテート・ブリテンなのだ。世界最高の現代美術館であるテート・モダンで開催しているというのであれば実に納得なのだが、これらの作品がテート・ブリテンに並んでいるさまというのはちょっと想像がつかない。

デミアン・ハーストの牛を縦にぶった切った作品が良くも悪くも注目を集めるこの展覧会だが、それだけのイメージを持ったままというのは惜しい。現代美術好きはぜひ足を運ぶべきと思う。

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2008年6月 4日 (水)

オールドノリタケと懐かしの洋食器展@東京都庭園美術館(2008/06/01)

以前から気になっていたのに気がついたら終了直前になっていた展覧会。会場の東京都庭園美術館が近所にあると思って気を抜いているとこういうことがある。あぶないあぶない。

オールドノリタケとは、明治から戦前にかけて日本の陶器メーカーノリタケの前身の会社がアメリカに輸出した陶器類。アールヌーボー・アールデコの影響を強く受けており、これが陶器?しかも量産品?!と目を疑うこと必至。僕は食器類はモダンなデザインが好きで、その趣味にストライクの作品は決して多くなかったんだけれど、それでもどの作品にも最高の技術とデザインが投入されていることが分かる。まして食器好きにはたまらないだろうなー。きっといくら時間があっても見飽きないと思う。

結構混雑していたけれど、宝石類と違ってある程度離れて見ても楽しめるのでそれほど苦にはならなかった。お勧めの展覧会。

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2008年5月29日 (木)

ファブリス・イベール『たねを育てる』展@ワタリウム(2008/05/28)

連休が明けてから美術館全然行ってなかったなー、と思い出し。久しぶりのワタリウムに。現在はファブリス・イベールの展覧会を開催中で、「たねを育てる」というタイトルどおり、長い会期(8月31日まで)を生かして青山近辺の洒落たカフェやブティックの店頭で野菜を育ててしまおう、というもの。美術館本体での展示は3階あり、ミツバチやミミズを飼育している階、何の変哲も無いのっぱらを再現した階など、それはちょっとどうかという展示もありながら、ウィットに富んだドローイングや立体作品でまぁいいかなと思わせてしまう。

ともかく、実にワタリウムらしい展覧会。今年の夏はちょくちょく野菜の育ち具合を確かめに行ってみよう。

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2008年5月 5日 (月)

天にささげる器-朝鮮時代の祭器-@大阪市立東洋陶磁美術館(2008/05/04)

しばらくぶりの東洋陶磁美術館。何度も見ている作品なのだが、陳腐な表現ながら見るたびごとに新しいことに気付く。日本にこういう美術館があることにしみじみ感謝したくなる。

今回は小企画展が開催されていた。朝鮮時代の祭器、ということで、日常の用の美とはまた別の、現代の芸術作品に通じる自由な形に驚かされる。

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2008年5月 1日 (木)

エドヴァルド・ムンク-二人の姉妹@青山ユニマット美術館(2008/04/29)

青山ユニマット美術館で企画展が入れ替わった、ということで出かけてみた。ムンクの「二人の姉妹―ラグンヒルとダグニー・ユール」という作品(このエントリの写真)をフィーチャーしたチラシだったのだが、行ってみるとムンクの作品はこれだけだったのでちょっと拍子抜け。

ただ、前回印象派展の作品が展示してあった2階の作品が入れ替わっていたのが良かった。結構面白い作品を持っているんだね。シャガール作品は完全に常設にするにしても、エコール・ド・パリのセクションは入替にすればいいのに、と思った。

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2008年4月29日 (火)

冒険王・横尾忠則展@世田谷美術館(2008/04/27)

今月は全然ギャラリー・美術館に出かけられなかったが、最後になってようやく少し時間が取れたので世田谷美術館に。現在開催中なのは横尾忠則展。グラッフィックデザイナーとしての作品はともかくアーティストとしてはあまりピンと来ない、というか正直苦手なのだが、最近脳の働きが消耗しているのでこの作家のエネルギーを貰いたい、ということで足を運んだ。

今回の展覧会の出展作品は画家宣言後の作品と、グラフィックデザイナーとしての作品の二本立て。画家宣言後の作品については、まぁ上に書いたとおりで、まとめて作品を見てもやはりアーティストとしてはピンと来ないなぁと思いつつもエネルギーは充分に吸収できた。でも原画の展示はオリジナル作品と全然噛みあっていなかったような気がする。原画を展示するならオリジナル作品も同時代のものにした方が良かったんじゃなかろうか。

最近世田谷美術館に行くといつも原画とか資料とかの展示が目立っていて、そういう美術館としての個性を持つことはとてもいいことだとは思いつつ、今ひとつ自分的にピンと来ないのがちょっと惜しい。

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2008年4月 2日 (水)

アートは心のためにある:UBSアートコレクションより@森美術館(2008/04/01)

森美術館で結構前から開催されていた展示会で今週末に終了になってしまうのだけれどメンバーシップ会員オンリーのイベントMAMCナイトが今夜だというので足を運ぶのを待っていたイベント。まぁ、メンバーシップに入っているので何度行ってもタダなんだけれど、2月3月は忙しかったということで。

今回の展示はタイトルにも書いたとおり大手金融機関であるUBSのアートコレクションを展示したもの。ジョナサン・ポロフスキーのポスターがインパクト強すぎでアウトサイダー・アートの展示会か?とか思っていたのだが実際にはかなりクールな現代美術展。UBSにはオフィスに展示する現代美術の購買担当者がいるそうで、その目的で集められたコレクションらしい。展示室にはデザイナーズブランドのオフィス家具が設置されており、美術作品とのコラボレーションが試みられている。現代美術好きの僕としてはこういうオフィスで働いてみたいとしみじみ思った。

今夜は特別企画として展示デザイナーによるギャラリートークもあり、展示に込められた意図とかも解説してくれて満足。抽選でグッズのプレゼントもあったのだがそちらは残念賞だった。

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2008年3月23日 (日)

リサ・ライター展@タカ・イシイギャラリー(2008/03/22)

午後に越中島で学会の部会があるので、ちょっと早めに出かけて清澄のギャラリービルに立ち寄ってみた。こういう水辺のエリアは今の時期気持ちがいい。

いろいろ面白い展示を見られて足を運んだ甲斐があったと思ったのだが、その中で特に印象に残ったのがタカ・イシイギャラリーリサ・ライター展。写真を元にしたペインティングで、輪郭線を強調しあり得ない色調で彩られたそれは塗り絵のようなというかウォーホル作品を連想させるというか。今回の出典作品に描かれているのは人物、それも多くは群衆で、イベントに参加しているらしくこちら以外のどこかを向いたりカメラを構えたりしている。その無防備な姿と奇妙な色調とが不思議な緊張感を作り出している。

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2008年3月 9日 (日)

建築の記憶展@東京都庭園美術館(2008/03/08)

東京都庭園美術館で現在開催中のこの展覧会のサブタイトルは"写真と建築の近現代"。芸術表現としての建築と写真の関係を、建築の記録手段として始まった黎明期から、建築模型の撮影などのプレゼンテーションでの共同作業、あるいは建築物を対象としながらも写真家独自の解釈により魅力を引き出した作品など、多面的に検証している。

テーマは野心的だし、展示は考えれられている。展示作品数が少ない印象を受けたが期間中に展示替えがあるのでそれでフォローするという考え方なのだろう(複数回入館割引もある)。また、アールデコ様式の旧朝香宮邸という会場を生かし、普段の展覧会では使わないエリアに展示品を置いたりもしていた。。ただ、それでもやっぱり専門的なテーマなんだよなー。良い企画なんだろうなー、とは感じつつ、個人的にはちょっと消化しきれなかった。

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2008年3月 5日 (水)

コレクション展@原美術館(2008/03/05)

原美術館で半年振りのコレクション展。前回見たコレクション展はいかにも原美術館らしい作品と日本の戦後美術の重要作品が並んでここのコレクションの厚さに感心したんだけれど、今回もいかにもという作品に加えてちょっと意外な作品が並んでいた。後者のテーマはエスニックかな、アジア・アフリカ・ラテンアメリカといった地域の地域性を感じさせる作品が展示の雰囲気を引き締めていた。

また、伊香保のハラミュージアムアークに古美術コレクションを展示する別館・観海庵を建築中だそうで、その建築模型に加えコレクションの円山応挙の絵巻が展示されていた。ハラミュージアムアークも一度は行ってみたいと思いつつなかなか機会がない。

あと、原美術館は現在改装中で、中庭に入れなかったりカフェの見晴らしが悪かったりでちょっと残念。3月19日に一旦工事が終わるらしいので、スケジュールを調整できる人はできればそれからの訪問にするのがお勧め。

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2008年2月26日 (火)

印象派展@青山ユニマット美術館(2008/02/24)

青山ユニマット美術館は青山霊園の北にある美術館。今の住まいからはワタリウムと並んで近くにある美術館なのだが、何となくスノッブな感じがして今まで足を運ばなかった。やっぱ一度見ておくかな、と思い立ち、初めて出かけてみた。ビルの1階から4階が美術館になっていて、1階がミュージアムショップ、2~4階が展示室になっている。ビルがあまり大きくないので、展示室を全部合わせてデパートの屋上美術館の半分弱の広さになるだろうか。

展示自体は思ったよりもずっと良かった。常設展示のシャガール、エコール・ド・パリ、そして企画展の印象派だが、見応えのある絵が並んでいる。小品やスケッチなどの展示は無く、CDでいうとベスト盤のような大味さがないわけではないが、このタイプ、このサイズの美術館というかギャラリーに求めることではないのだろう。というか、そういった作品を入れた総合的な展示にすればちゃんとした美術館のかなりの規模の企画展として充分通用すると思う。

むしろ気になったのは展示スペースがやや窮屈だったこと。絵を見ながら、あるいは見終わった後にくつろげるようなスペースをしっかり取ることが客層を考えると重要なのでは。確かに廻りは青山なので外に出ればその手の店はいくらでも見つかるが、1,000円という安くはない入場料を取るわけだし。

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2008年2月18日 (月)

流しの写真屋、渡辺克巳、写真展@ワタリウム(2008/02/17)

引っ越してからはじめてのワタリウム。南青山に住むようになったら入り浸るだろうな、と思っていたので自分でも意外。微妙に普段歩くエリアから外れてるんだよねぇ。

今回の展示は高度成長期の新宿の人々のポートレイト。「流しの写真屋」とは、盛り場を廻り、街の人々の写真を撮って金を受け取る商売。もちろん観光客がうろうろするエリアではなく、主な被写体はヤクザやゲイ、娼婦達。ともかくギラギラしたエネルギーに圧倒される。荒木経惟とかが好きな人はピンと来る部分があると思うが、芸術写真はちょっとという人にも伝わる要素が多々あると感じた。

芸術性とはあまり関係の無い部分だが、この10年ほどの写真もいくつか展示されていて、それを見ると普通の日本人のスタイルというか体形が高度成長期から全く変わってしまったことが良く分かる。仮に今同じコンセプトで写真を撮ることができたとしても、女性がキレイすぎて高度成長期の写真の味は出ないんだろうなー。

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2008年2月14日 (木)

チェン・ルオビン展@タグチファインアート(2008/02/14)

先週出かけたgallery.sora.がなかなか良かったので今週も昼休みの後に茅場町のギャラリーに。今日出かけたのはタグチファインアート。とても雰囲気のある、おそらく戦前の小さなビルに入っているギャラリーで、小さめの会議室ほどの大きさ。そもそもエレベーターも無いビルなのでギャラリーばかり大きくても作品を搬入できないかもしれない。窓のある部屋で、磨りガラスで外が見えないのはちょっとさびしいが外光が入るのが開放的で良い。

現在展示中の作家はチェン・ルオビン。漢字で書くと陳若冰、って感じにしなくても中国人って分かりますよね。写真では幾何学模様を描いているということしか分からないと思うけれど、作品は絵の具を何層も塗り重ねた、ちょっと複雑なマチエールを持っている。図形と地の部分の境界の微妙な滲みや絵の具の跳ねの他、絵の具を塗り重ねていることによって下絵の色がかすかに見えていることが不思議な印象を与える。

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2008年2月12日 (火)

MAYA MAXXのさようなら展@岡本太郎記念館(2008/02/11)

岡本太郎記念館は南青山にある氏の生前のアトリエ兼住居だった建物。以前から存在は知っていたのだが今回MAYA MAXX展を開催するということで足を運んだ。1階には庭とリビング、そしてアトリエに氏の彫刻作品が無造作に、というかこれでもかという密度で展示されている。ただでさえ濃い氏の作品なのにこれほどの数をまとめて見せられるとエネルギーに圧倒され、ほとんど頭がクラクラするような状態になってしまう。

2階が普通の展示室になっている。面積的にはさほどの広さは無く、ちょっと狭めのギャラリーぐらいの感じ。部屋は2つあり、片方の部屋に岡本太郎の平面作品が、そしてもう片方の部屋に今回の企画展のMAYA MAXXの作品が展示されていた。MAYA MAXXの作品は僕が知っていたCHARAやThe Pillowsのジャケットとはちょっと違う、かなりアクションペインティング的なものになっていた。展示作品数もそれほど多くないので、彼女の作品が目当てであればちょっと拍子抜けするかも。

展示を見終えて庭に出てみると壁の向こうにブルーノートが見える。こんな洒落た場所にこういうエネルギーの塊みたいなギャラリーがあるというのは良いものだ。表参道で時間が空いたときには是非足を運んで欲しい。

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2008年2月11日 (月)

ロートレック展@サントリー美術館(2008/02/10)

久しぶりのサントリー美術館。開館以来ずっと和モノの展覧会が続いていたサントリー美術館初の西洋作家の展示会になる。最初の洋モノがロートレックというのはいかにもサントリーらしい。彼の生涯を俯瞰することができるフルボリュームの展示だったが、いろいろな工夫があり飽きさせなかった。彼の作品に影響を与えた浮世絵を併せて展示、というのは浮世絵の方の作品数が少なくて中途半端だったかもしれないが、彼の作品のモデルとなった女優・芸人たちの映像やモデルの写真はとても興味深かった。ロートレックの作品だけ見ているとこんなもんか、と思っていたが、実物の写真を見てみるとずいぶん美人イケメンだったりして、度を越したカリカチュアライズとしてモデルが怒ったというのもさもありなん。あと、サラ・ベルナールを描いた作品があるというのは意外だった。僕はサラ・ベルナールというとミュシャのイメージがどうしてもあったもので。

12時ちょっと過ぎに入ってその時点で結構混雑していると思ったのだが、出てくると更に混雑が増していて入場15分待ちとかになっていてびっくり。出かけられる方には早めの到着をお勧めする。

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2008年2月 9日 (土)

Mario Garcia Torres展@gallery.sora(2008/02/07)

この展覧会は1月に清澄のギャラリーに行ったときに案内のハガキを拾ってきていたのを週末に発見し、毎週打ち合わせに出かけている相手先の過ぎ近くにあるのに気が付いて昼休みに寄ってみた。会場のgallery.sora.は新川の倉庫街の真ん中にあるギャラリー。住所から雑居ビルの中に入っているのかと思いきや、プレハブの一戸建ての建物だった。しかも扉は窓が無くまるで飲食店の裏口のような扉で、他に窓が無く「ここから入れというのか…」とかなり怯んだ。妙な客に入って欲しく無いのかもしれないがもうちょっとフレンドリーな外見でも良いと思った。

今回はMario Garcia Torresという作家の展示で、案内のハガキには白地に小さく日付だけが書かれていたので河原温のようなスタイルなのかと思っていたが中に入ってみるとその作品は展示されていない(ちなみに張った画像もまた別の作品)。壁面に2枚、キャンバスに引っかき傷をつけたような作品が展示されている、と思って良く見たら、プロジェクターで投影されている映像。しかも、キャンパスと見えた部分は本物(というか壁とは物理的に異なる素材)で、引っかき傷の部分だけをプロジェクターで投影していた。

2作品ということでちょっとボリューム的には淋しかったけれど、意欲的な展示だったかな。これからも気をつけて覗いてみるようにしようか。

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2008年1月27日 (日)

パラオーふたつの人生、鬼才・中島敦と日本のゴーギャン・土方久巧展@世田谷美術館(2008/01/26)

引っ越し後初の世田谷美術館。表参道から乗り換え無しで用賀まで行けるので楽ちんだ。先週の清澄白河もそうだし、今の住まいはアート関係の施設には妙に足の便が良い。

今回の展示はタイトルを見ただけではコンセプトが良く分からなかった。土方久巧の方は作品に記憶があったのでああアレはパラオだったんだねとすぐにピンと来たのだが、中島敦は作品は何作か読んだことはあるが経歴は結核で夭折したというぐらいしか知らず、パラオとイメージが結びつかなかったのだ。中島敦と土方久巧はパラオでの滞在が8ヶ月ほど重なっていて、一緒に旅行に出かけるなどの親交があったらしい。

両者とも世田谷区に住んでいたそうで、土方久巧の絵画・彫刻作品の他に両社の多数の手紙や生原稿が展示されていた。ぼくは文芸資料の展示にはあまりピンと来る方ではないのだが、それでも戦時下という時代に日本統治下のパラオで、接点のなさそうなこの二人が出会って親交を暖めていたということに、何か不思議な感慨を感じてしまう。中島敦の作品をこれから読むときには今までと違う陰影が見えてくるような気がする。

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2008年1月21日 (月)

森村泰昌 荒ぶる神々の黄昏/なにものかへのレクイエム・其の弐@シュウゴアーツ(2008/01/19)

シュウゴアーツは清澄にある現代美術のギャラリー。昔佐賀町の食糧ビルの周りに集まっていたギャラリーが取り壊しのあと清澄に移ってきたらしい。このエリアには行ってみたいと思いつつもなかなか足を運ぶ機会が無かったが、今回は森村泰昌の個展があるということで足を運んだ。

清澄という住所から漠然と東京都現代美術館の近所かと思っていたのだが、清澄白河の駅からは全く反対側にあり徒歩20分。街としての一体感もないエリアで、ちょっと意外だった。会場のシュウゴアーツの入っているビルは隅田川沿い、清洲橋のたもとにある。ビルには特に名前は無いようだが、他にも小山登美夫ギャラリーなどいくつかのギャラリーが入っている。倉庫を改装した、というか下の階は現役の倉庫のビルで、Chelseaのギャラリーにとても似た雰囲気。廻りには採算が厳しそうな小規模の倉庫がいくつかあり、ギャラリーエリアとしてブレイクすればかなりのギャラリーを集積できそうなのだが、今のところはこのビルにしかギャラリーは入っていないようだ。

今回の森村泰昌の個展は、20世紀の荒ぶる世界で活躍した男たちを、報道写真を元にしてセルフポートを取った作品が展示されている。毛沢東、チェ・ゲバラ、トロツキー、レーニン、ヒトラー、アインシュタインという題材だけでメッセージ性強すぎ(先日横浜美術館で見た三島の作品もこのシリーズの一環らしい)。ヒトラーやレーニンはちょっと捻りすぎかとも感じたが、ゲバラや毛沢東の作品では時代の熱さ、男臭さが噎せ返るほど伝わってくる。見ておくべき展覧会かと。

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2008年1月 6日 (日)

上海-近代の美術-@渋谷区立松濤美術館(2007/01/05)

渋谷区立松濤美術館は名前の通り松濤の閑静な住宅街にある小さな美術館。以前に何度か来たことがあるがニューヨークにいる間は訪ねたことがなかったので随分久しぶりになる。この美術館の展示で面白いのは、2階にある喫茶室をメインの展示スペースの一部として使っていること。ゆったり座って紅茶を飲みながら作品を眺めるのは格別だ。

今回の展覧会は清朝末期から中華民国初期にかけての上海の美術シーンを概観するもの。僕は書や印鑑の良否は分らないので絵画だけいうと、結構ハズレが混じっている、というと棘があるなら、シーンの全体像を俯瞰できるよう出展作品が選択されている。中国近代美術に興味が有る人は当然だが、中国近代史に興味のある人には博物学的な展示としても楽しめるだろう。

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2007年12月24日 (月)

北斎~ヨーロッパを魅了した江戸の絵師~@江戸東京博物館(2007/12/24)

江戸東京博物館は両国国技館の隣にある。常設展も充実しているので企画展をやっていなくても楽しく時間を潰せる。建物が無駄に大きいのは今の目で見るとちょっと痛いが、1992年開館というバブルの絶頂期の建物なのでしょうがないか。中に入っちゃえば関係ないしね。

で、今回の北斎展は開館15周年記念の特別展らしい。僕は去年の4月にワシントンDCのSackler Galleryで大規模な北斎展を見ているが、その時とは全く別の展覧会に見えるのが凄い。富嶽三十六景を初めとする風景版画だけでも凄いのだけれど、北斎漫画や肉筆画を見ていくと、日本人の描く絵は北斎が作った枠を超えられないのでは無いかと思ってしまう。時代を超えた魅力、というと、普通は流行に囚われないテーマやテクニックによる作品を言うのだが、北斎の作品のいくつかは今この時代のために描かれたとしか思えない生々しさを持っている。何と言うか、こういう作品を見せつけられると、画家にならなくて良かったと思うな。

一般的に知名度の高い作品もずらりと並んでいるので、絶対に足を運ぶ値打ちのある展覧会だと思う。これを見逃すのは正直言って惜しい。

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2007年12月15日 (土)

ピピロッティ リスト展「からから」@原美術館(2007/12/09)

ちょい久しぶりの原美術館。今日は六本木からバスで行くことにした。品川駅から歩くとちょっとかかる原美術館だが、最寄のバス停「御殿山」を通る路線(反96)は、五反田駅と六本木ヒルズの間を走っているのだ。知らなかったでしょ。六本木ヒルズから御殿山まで30分ほど。1時間に3~4本は走っているので結構おすすめ。

現在開催中なのはピピロッティ リストの個展。スイス人女性アーティストで、今回は大型の映像インスタレーション作品が展示されている。関係記事を見るとどうもフェミニズムの文脈で解釈されるべき作品が多いようなのだが、そこまでは個人的には良く分からない。出典作品で面白いと思ったのは、多くの作品で映像を映す、あるいは受け手となる世界が通常と違うものであること。箱庭を作ってそこに映像を映す、巨大なソファーやリモコンを配し、観客はそこに座って通常のサイズのテレビの画面を眺める(オリジナルのインスタレーションは部屋全体を巨大に作ったらしい)、地味な所では2インチモニタを、しかも壁に垂直に取り付けて観客が妙な体勢で覗き込まなきゃいけないようにする、など。

観客はいつもにも増して外国人客が多かった。海外ではそんなに有名な作家なのだろうか。おかげでカフェも人が溢れかえっており、観覧後コーヒーを飲まずにそのまま立ち去った。

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2007年12月 1日 (土)

世界を魅了したティファニー1837-2007展@東京都庭園美術館(2007/11/18)

ティファニーの展覧会が開催中ということで出かけることにした。会場が東京都庭園美術館ということで何となくルイス・コンフォート・ティファニーのガラス工芸の展示かと思っていたのだけれど、実はティファニーで朝食を、の方のティファニー。ということで会社の歴史に沿ってジュエリーが多量に展示されている(ルイス・コンフォート・ティファニーのジュエリー作品も何点か展示されている)。展示が展示だけあって女性客が多くかなりの混雑。そしてどの展示ケースの前でもみなさん立ち止まるので流れも遅い。

展示されている作品は実際に量販されたものが多く、Vサインや軍用機をかたどった第二次世界大戦中のジュエリーなどインパクトの強いものもいくつかあったが、全体にそれほど尖った作品はあまり展示されていない(女性の視点から見るとまた違うのだろうけど…)。近くでじっくり見ないと本当の価値が伝わってこない作品だから、この混雑の中で見るのは辛いなぁ。時間を調整ができる人は平日の朝一番とかに行くのがいいかも。

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2007年11月 4日 (日)

音の間 ことばの魔@神奈川県民ホールギャラリー(2007/11/02)

現在神奈川県民ホールギャラリーでは塩田千春展を開催中。彼女の作品は今年の春に東京国立近代美術館で見て、かなり強い印象を受けた。ある種の宗教的な敬虔さと大地に根付いたとでも表現すべき確かな手触りとを同時に持った人で、僕が見たことのある作家の中ではマグダレーナ・アバカノヴィッチの印象に近いかもしれない。
この企画展は、インスタレーション空間を使ったコンサートやダンスなどのイベントを多数組んでおり、今回はその一つとなる。多和田葉子氏による自作詩の朗読と、高瀬アキ氏によるピアノ演奏。塩田氏も含めて全員がベルリン在住だそうだ。

現代美術に現代詩のリーディング、ピアノのインプロと相当に敷居が高いイベントだと思うのだが、前売券は売り切れで立見の出る盛況。コンサートが行われる空間には焼けたピアノと焼けた椅子を天井からの糸で結びつけたインスタレーションが設置されている。今回はその焼けたピアノの横に本物のピアノが置かれた。

ニューヨークでは純粋なポエトリーリーディングこそ見に行ったことは無かったが、この手のイベントはStoneやTONICで結構馴染みがあった。が、日本語でやっているのを聴くとやはり良いものだ。言葉の持つ力にダイレクトに体が反応する。それを支えるピアノも素晴らしく、1時間強の演奏を立見で、ということを意識しないほどあっという間に時間が経ってしまった。

実はコンサートにくれば展示も全部見れるのかと思っていたが、見ることが出来たのはコンサートスペースのインスタレーションのみ。展示を別の日に見に来ることができるかな。うーん。

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2007年10月29日 (月)

みんなのデザイン展@川崎市市民ミュージアム(2007/10/28)

学芸員の友人から貰ったチケットで川崎市市民ミュージアムに出かける。今回の展示はグッドデザインの設立50周年を記念して、Gマーク選定製品の他に時代背景を物語るポスターや雑誌などをあわせて展示するという内容。数十年も前の製品なのに全く同じデザインのまま現在でも使い続けられているものが結構たくさんあったのには感心した。それに比べ、テレビやオーディオなどの電化製品は、今の目で見るとデザインもひどく古臭く感じてしまう。印象に引きずられているのか、あるいは機能は陳腐化したがデザインの破壊力は衰えていない、なんてことはそもそも工業デザインにはありえないのか。

同時に展示されていたポスターや雑誌は面白かったは面白かったが展示としては邪道で、こういうものを並べて昭和ブームに乗ろうという安易な企画が他の博物館でも目立つのは個人的にはどうかと思う。まぁ、最近引退したアクティブな高齢者に美術館・博物館に行く習慣をつけてもらう、ということで、しばらくはやむを得ないのだろうか。

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2007年10月28日 (日)

六本木クロッシング2007@森美術館(2007/10/25)

今夜はあんまり気合い充分じゃなくて、展望台のついでにまぁ見ておくかと寄った森美術館。現在は3年に一度のシリーズ展・六本木クロッシング2007の開催中ということで、美術館の全エリアを使った展示となっていた。

このシリーズ展のテーマは日本の現代美術。このテーマを扱いながら、良く言えば黴臭さを感じさせない、悪く言えばバブル臭がほのかに漂う森美術館の華やかさはやはり唯一無二だと思う。面白いアーティスト・作品が散見されたのだが、一番気になったのが横山裕一という作家の作品。フォーマットは一般的なストーリー漫画の物を使っているのだが、まるでビデオインスタレーションを見ているようなトリップ感に誘われる。上手く言葉に表現できないのがもどかしいが、ともかく衝撃的だった。もう一度ゆっくり見に来よう。

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2007年10月14日 (日)

仙厓展―禅画にあそぶ―@出光美術館(2007/10/12)

仙厓は江戸時代後期の禅僧。博多の聖福寺という臨済宗の名刹の住職を20年勤めた。引退してからも多くの禅画を残し、ユーモラスかつ自由奔放な作風にファンが多い。出光美術館は仙厓作品のコレクションで知られており、仙厓展を定期的に開催している。

仙厓の作品は何枚か見たことはあるのだが、まとめて生で見てみるとその斬新さ・大胆さに圧倒される想いがする。ちょっとした人物画・花鳥画なども良いのだが、僕は禅の公案がテーマのものの前で足が止まった。イメージを貼ったのは「指月布袋画賛」。例えば吉田戦車が強い影響を受けているだろうな、というタッチの作品で、布袋さんも連れの童子も無心に楽しんでいるように見える。この画題は有名なもので、布袋が指差す先にある月は指を見ても見えないように、経典に囚われ経典ばかり見ているようでは悟りが見えなくなる、というもの。そう思うと月を見て無心に喜ぶ童子が尊く見えてこないだろうか。ちなみに他の指月布袋画ではたいてい布袋しか描かれていない。

今回は引退後の仙厓の生活を追う、とかで、旅行先だとか奇石のコレクションだとかを展示してあったが、それはちょっと余計というかマニア向けだったかな。ともあれ、看板コレクションに相応しい良い展覧会だったと思う。近くに来た際には是非。

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2007年10月 8日 (月)

クマグスの森展@ワタリウム美術館(2007/10/07)

今日は午後ずっと青山界隈を歩き回っていて、その途中でワタリウム美術館に立ち寄った。南方熊楠展が本日から開催だ。興味のある人物だったし、ワタリウムで好んで取り上げそうな思想家でもあったのでさてどんな展示になるかと期待していたらちょっと予想とは違う方向にベクトルが向いていた。僕はもっと南方マンダラとかのほうに重点が置かれていると思っていたのに、展示で目立つのはきのこ図譜。美的な価値はあると思うけれど、個人的には地味でちと期待はずれだった。

ワタリウムのこの種の展示は講演会込みで評価すべきかなと思う物があり、今回も興味深いイベントがシリーズで企画されている。そちらの方も興味のある方はどうぞ。

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2007年9月29日 (土)

長谷川潔展@伊丹市立美術館(2007/09/22)

帰国してから神戸の方に足を運べてないし、三連休が続くあたりで一度行っておくかなということで出かけてきた。今日はとくに当てもなく、新大阪駅の乗り換えで来た電車が福知山線行きだったので久しぶりに伊丹市立美術館に行くことに。

伊丹市立美術館は小振りな美術館。展示スペースはそれほど大きくなく、ちょっと大きな市民ホールのギャラリースペース程度だけれど、近代風刺画・彫刻のコレクションはたぶん日本屈指。企画展も良い物が多く関西に住んでいるときは結構通った。久しぶりに来てみると美術館そのものはあまり変わっていなかったが周辺一帯が文化ゾーンとして整備されていてかなりいい感じになっている。

現在の企画展は長谷川潔展。彼の代表作であるマニエール・ノワール作品だけでなく、初期の木版画を含む多くの技法での版画作品が出展されていた。ビュランで描かれた作品は白くて無造作にも見えるが、よく見ると線の強さや確かさに息をのむ思いをさせられする。そして、ごく初期の木版画の黒の表現が後期のマニエール・ノワール作品と同じ印象だったことも今回の発見。

長谷川潔の作品は知ってるつもりだったがこの展覧会ではいくつも発見があった。文化エリアの観光も含め、芸術の秋のお出かけにお勧め。

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2007年9月18日 (火)

福原信三と美術と資生堂@世田谷美術館(2007/09/15)

世田谷美術館は昔はずいぶん通った美術館だがしばらくご無沙汰していた。自宅からの直線距離は決して遠くは無いのだが事実上渋谷を経由しないとアクセスできないこと、駅から歩くと結構あることからどうしても出かけるのが億劫になってしまう。今日は久しぶりにどうしても見ておきたい展示会があるので思い切って足を運んだ。

もう6年ぶりぐらいになるはずなのだが美術館の印象は昔通り。あぁやっぱ砧はいいなぁと思う。今日の目当ての企画展は資生堂の近代企業としての創業者の福原信三と美術とのかかわりに焦点を当てたもの。ニューヨーク・パリに遊学し広告宣伝の重要さを学んで「リッチで、スマートで、モダンで」という企業イメージを作り上げた経営者としての顔のほか、幼少時から絵画を学び写真家としても重要人物であった芸術家、また芸術家のサロンを作り彼らの発表の場所として資生堂ギャラリーを作ったパトロンとして、実に多彩な顔を持つ。僕のような人間にとってはうらやましさを通り越してしまうような人物でただ溜息が出る。今の日本の財界にも、探せばこんな人がいるのだろうか。展覧会としてはちょっと散漫で、上記に描いたような彼の多彩な側面の他に、関係したアーティストの作品や資生堂の広告史まで展示されていたのではやむを得ないか。こういう展覧会は図録をじっくり読んで納得するものなんだろうな。

美術館の前から田園調布行きのバスが出ているのを見つけ、乗ってみると道がかなり混雑していたにも関わらず30分ほどで到着。このルートなら億劫じゃないな。また通う頻度を上げてみようか。

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2007年9月 5日 (水)

コレクション展@原美術館(2007/08/29)

今日は久しぶりに大倉山水曜コンサートに行こうと思っていたのだが夕方の会議が長引いて間に合わなくなった。他には特に行きたいライブも無かったので、たまには水曜日を別の使い方をするかということで原美術館の夜間開館に。

現在の展示はコレクション展。原美術館のコレクションは結構懐が深く、ある意味企画展より驚きが大きいこともしばしば。今回も、2階の展示は奈良美智とかやなぎみわとかの原美術館のパブリックイメージらしいものだったんだけれど、1階には今井俊満とか工藤哲巳とかの「ザ・日本の戦後美術」みたいな作品がずらりと並んだ。へぇこんな作品までコレクションしてたんだと感心することしきり。

ここの夜間開館の唯一の難点はカフェで食事を出してくれないことなんだよねぇ。どうせならケーキではなくて軽く食事をしてしっかり雰囲気を楽しみたいんだけれど。

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2007年9月 1日 (土)

美の求道者・安宅英一の眼@大阪市立東洋陶磁美術館(2007/08/23)

大阪市立東洋陶磁美術館は中之島にある美術館。安宅コレクションの中国・朝鮮陶磁を中心としている。この美術館を訪れたときの「人間はこれほどまでに美しいものを作ることができるのか」という感動は今も忘れない。この日記を読んでくれている人は僕の嗜好が音楽についてもアートについても普遍性より同時代性に向いていることをご存知だろうけれど、陶磁器だけは別だ。

そんな安宅コレクションを、蒐集者である安宅英一に焦点を当てて眺めてみるというのが今回の展示会。館蔵品展ではあるけれども作品の地域・時代別ではなくコレクションとしての蒐集時期別に眺めてみるとまた別の面白さがある。コレクションに関する逸話なども併せて多数展示されており、見ごたえは充分以上。関西在住の人はぜひ出かけて欲しい。

残念ながらこの美術館は10月から半年間工事のために閉館になる。その代わりこの展覧会が全国を巡回するので、他の地方の人も近くに来たときに足を運ぶことをお勧めする。

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2007年8月27日 (月)

慈覚大師円仁とその名宝@滋賀県立近代美術館(2007/08/21)

今週は一週遅れの盆休みで帰省中。実家での用事を片付けたので滋賀県立近代美術館に出かけてきた。
僕は大学時代はボート部で瀬田川に合宿してボートを漕いだりマネージャーに転向していた後は合宿所で庶務をしたりということをずっと続けていた。滋賀県立近代美術館は合宿所からほど近い場所にあり、隣にそこそこ大きな県立図書館が併設されていることもあって結構出かけた。在学中の企画展にはほぼ全部出かけたのではないかと思う。駅からは便利の悪い公園の中にある適度な非日常感、ゆったりした展示スペース、センスの良い常設展、そして結構ちゃんとしたレストランと、今でも僕の中で中規模の美術館の基準になっている。たまに出かけてもこの印象はあまり変わらないのが嬉しい限り。

今日の常設展は天台がらみの仏教美術の名品展だったんだけど、個人的にはあんまりピンとこなかったかな。南大阪育ちの僕としては密教というか平安仏教ではやっぱり真言の方がなんとなく分かりやすいというかしっくり来る気がする。ま、外れというわけではなかったので、常設展と併せればわざわざ来た甲斐もあった。

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2007年8月16日 (木)

美のかたち身近な美術@資生堂アートハウス(2007/08/12)

今日はつま恋でのフェスのため掛川に出てきている。掛川なんてあまり来る用事のない場所だから何かついでがあればと思ったのだがたいした観光ポイントも名物料理も思いつかない。そこでふっと資生堂の大きい工場が新幹線から見えたことを思い出し、検索してみたら企業資料館とギャラリーが併設されていることがわかった。残念なことに企業資料館は金曜のみ一般オープンなのだがギャラリーの方は日曜も開いているので寄ってみることに。

掛川駅からの公共交通手段はなさそうで、歩いてみると20分強。気候の良い時期なら気分のいい散歩だろうが今日はさすがに少々暑い。が、館内は外の不愉快さを感じさせない空間。さすがは資生堂の施設で、さほど広くないとはいえ手入れやクリンネスが実に行き届いている。

現在の展示は資生堂が主催した工芸作品展の優秀作をあつめたものらしい。展示作品数は多くはないが人間国宝の作品がずらりと並び、典雅だがコンサバすぎない作品ばかりだった。

わざわざ出かけるにはちと不便だが、つま恋に行くついででもあればぜひお勧めしたい。企業資料館の方も面白そうだが…

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2007年8月11日 (土)

La Chaine-日仏現代美術交流展@BankART(2007/08/05)

BankARTは横浜市が推進する文化サポートプログラムで、歴史的建造物を芸術や社会人教育などの文化発信の拠点としていこうというもの。最初に対象とした建物が旧第一銀行(BankART1929)と旧富士銀行のものだったのでこの名前が付いたらしい。現在は旧富士銀行の建物が別の用途に使われたため閉鎖され、代わりに日本郵船の倉庫(BankART NYK)が利用されている。建物をアーティストのレジデンスにしたり、労務者地区である寿町に拠点を設けたりといった運営方針はとても共感できるし応援したい。

現在開催中なのは日本とフランスの作家によるインスタレーション作品展。目玉はクリスチャン・ボルタンスキーの新作で、クラシックな建物の内装を上手く取り込んでスケールの大きなものになっている。他の作品は正直やや小粒だったかな?でもまぁ、歴史的建造物を使ったインスタレーションというだけでも見ておく値打ちはあるかも。また、BankART NYKにはちょっとしたバースペースがある。つまみや凝ったカクテルは出さないようだが地ビールもあるしちょっと酒を飲むには十分。ギャラリーの外にもテーブルが置いてあり、運河の向こうにはみなとみらい地区が見える隠れ家的なロケーションはアートに関心の無い人にも興味深いはず。

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2007年8月 4日 (土)

MAMプロジェクト006:西野達@森美術館(2007/08/01)

最近ちょっとバタバタしているのでナントカと煙としては高いところに昇ってみるかということで東京シティービューに。ここは森美術館と同じチケットで入れるのでMAM コンテンポラリーメンバーの僕は無料で入れることになる。森美術館のほうは前回入ったル・コルビュジエ展が続いているのでパスしてもいいかと思ったのだが、ギャラリーで西野達の小プロジェクトの展示をやっていると言うのでそれだけ覗いてきた。

西野達はドイツをに活動するインスタレーション作家で、今回の作品のメインは「東京時計」という作品。ビルの53階にあるという森美術館のスペースを生かし、窓から望めるビルの屋上にヘタウマな文字で書かれた大時計(実際に動く)を配置して望遠カメラで映し出し、その窓の反対側となる展示スペースの入り口の壁に巨大な時計を設置して対比させるというものだった。

作品としては、うーん、どうなんだろう。バッドテイストものを風景インスタレーションとしてやった、ということになるのかな。彼は似たような作品をドイツで作成していたということで、おそらくドイツの都市風景の中でならアートとしての緊張感もあったと思うんだけど、東京は何でもありの街だからなぁ。六本木という街のカオスに負けていた感はやや否めず。

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2007年7月18日 (水)

野田弘志展@北海道立近代美術館(2007/07/14)

この週末は用事で札幌に。土曜日の昼からだったのだが手配時にはすでにフライトの予約が取れず、金曜日の午後に半休を取って札幌に入ることになった。せっかくだからどこかライブハウスにでも行ってみるかと思って調べてみたがどこも休みで唯一見つけたハコに出かけてみたらsold out。地方都市だとライブハウスも少ないし仕方がないのかな。

その代わりに、と言うわけではないが、土曜日の午前に北海道立近代美術館に出かけてきた。野田弘志という具象画家の巡回展で、東京にも来ていたようなのだが全然気が付かなかった。ともかく細密でリアルな描写で、いわゆる「写真のような絵」なのだが、スーパーリアリズム作品のようなドライな虚無感はない。作品の持つテイストは時代によってまちまちで、初期の黒バックの作品は長谷川潔、頭蓋骨をモチーフにした作品はジョージア・オキーフと、他の作家とのかなりの類似を感じるものもある。かといって模倣品という印象はあまり受けないのは、作家の意識の中心にあるのが「もの」の質感を表現しきるための画力だからなのではなかろうか。白い壁に白鳥の羽、クジラの骨に貝殻という白だけの作品が出展されていたのだが、それぞれの質感を完全に描き切られていたのには唸った。

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2007年7月 2日 (月)

大正シック@東京都庭園美術館(2007/07/01)

東京都庭園美術館は目黒にある美術館。旧朝香宮邸を改装したアールデコ様式の建物はあまり広くはないが内装自体に美術的な価値があり、展示スペースの半分くらいが元の部屋そのものを見せる常設展示になっている。その意味では癖の強い展示スペースなのだが、雰囲気を上手く生かした展覧会を開催している。余談ながらミュージアム・コンサートなどをやると抜群に雰囲気が良い。

今回の展覧会、大正シックもこの美術館によく似合ったもの。これはホノルル美術館のコレクションから大正期の日本美術の名品をアメリカ人のキュレーターが選んで企画したもの。アメリカで巡回して各地で好評を博したらしい。日本人の目から見ると、大正期の美術と漠然と思っていたものとのギャップが面白い。この時期の美術というと竹久夢二とかモボ・モガがテーマの広告だったりが頭に浮かぶのだが、今回出展された作品の多くは美人画。そのくせ小道具にカメラや自動車が使われていたり、表情が妙に現代的だったりする。作品解説を見ると日展などで活躍した作家ばかりで同時代的にはむしろこちらの方がメインストリームだったようだ。作品は地味な物が多かったのだが、面白いものを見ることができた。

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2007年6月30日 (土)

ヘンリー・ダーガー展@原美術館(2007/06/27)

ヘンリー・ダーガーはアメリカのアウトサイダー・アーティスト。親から捨てられた後に知的障碍児施設に知的な問題が無いまま送られて教育を受ける機会を奪われた。17歳で施設を脱走した後、社会的には友人も親類もないまま病院の雑役の仕事と教会のミサのみで81歳の生涯を終えた。だが、没後に1万5千ページの長編小説「非現実の王国で」と、その挿絵としての数百枚の絵画が発見された。 今回の原美術館での展覧会は待っていた人も多いらしい。

正直言うと、僕はアウトサイダー・アートはあまり得意ではない。今回の展覧会に出展されていた作品も、多くの人が芸術性を認めるだろうということは分かるが、僕個人が審美的な側面から驚嘆した、というわけではない。が、何と言うか、作品そのもの、あるいは作品の世界観というより、こういう作品が存在するということの不条理に対して強い印象を受けた。根本敬流に言えば因果鉄道というか特殊アーティストというか。ハイアートの約束事を越えてなお普遍的な美を感じさせる、というわけでは(上に書いたように僕にとっては)無い。かといって直接に憎しみや残酷さが現れているわけでもない。ただ、自分の想像力を未消化のまま表現行為をせざるを得なかったことは痛いほど伝わってくるし、知性の残酷さというものを強く感じてしまう。致命的な重傷を負ってなお即死せずにもがき苦しむ生き物を見て生命という力の残酷さを思うように。

無理に軽い話に振ると、ダーガーは生まれる時代を間違えた。絵を描き始めるまでのキャリアは同じでも、21世紀の日本であれば自分の作品がアートになる、というか自分の表現行為をアートの文脈に位置付けられるようなキャリアパスはあったろうに。先日のニューヨーク訪問時にミスターの個展がチェルシーのギャラリーで開催されていたのを見てきた僕はそんなことを思ってしまった。敬虔なクリスチャンだったという彼には不本意な評価かもしれないが。

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2007年6月22日 (金)

常設展@地中美術館・ベネッセハウスミュージアム(2007/06/16)

ベネッセが瀬戸内海の直島に宿泊施設と一体となった現代美術館を作った、というニュースは結構早い時期に目にしていたと思う。美術手帳のモノクロ半ページほどの記事で、ベネッセではなく福武書店と書いてあった記憶もあるからそれが正しければオープン直後のニュースだったのだろう。その後折りに触れて思い出してはいたのだが、ニューヨークに行く前の時期はわざわざ東京から出かけて宿泊するだけの(主に気持ちの)余裕が無かったし、ニューヨークにいる間は帰省の合間に時間を割くゆとりがなかった。今年の春に金沢21世紀美術館に行ったときに地中美術館との共催のキャンペーンを見つけ、出かけてみたかったことを思い出した。いつの間にか人気のある施設になっていたらしく(海外の旅行誌Conde Nast Travellerにまで大きく取り上げられたとか)、週末はずいぶん先まで埋まっている。母を連れて行くつもりだったのだが空いている日をエイヤと予約した後に都合を聞いたら旅行の先約が入っていて、一人で行くことになってしまったのがちょっと勿体無い。

地中美術館は直島のアートプロジェクトの中でも比較的新しい、2004年にできた美術館。美術館、ではあるのだが、特定の作品8点だけを展示するように設計されたスペースになっている。モネの「睡蓮」シリーズを4点、彫刻を1点、そして光のインスタレーションを3点。それだけだ。モネの「睡蓮」シリーズは晩年のもので、若いころのフレッシュな色合いは欠けており、通常の美術館で他の作品と並べられていたらあまり目には留まらないかもしれないが、この作品のために設計された部屋で、しかも自然光で鑑賞すると、滋味のようなものが伝わってくる。ジェームズ・タレルの光のインスタレーション2点も、地下ならではの外光を完全に遮断された空間で見ると、仮設の展示スペースとは違った迫力がある。

ジェームズ・タレルの作品のもう1点、「オープン・スカイ」にはナイト・プログラムが用意されている。この作品は要するに正方形の部屋の屋根の部分にさらに小さい正方形に開いている、というもので、金沢21世紀美術館で初めて見たとき、そして昼間に見たときには単なる休憩スペースにしか思えなかった。が、この部屋には間接光をコントロールする設備が付いている。それを使って日没前後の45分間、光の移り変わりを眺めようというのがナイト・プログラムだ。派手なプログラムではなく、間接光の変化もそれとは気づかないくらいゆっくりなのだが、色や強さが空の明るさに合わせて変化していき、空の色が昼の青から紫へ、そして漆黒から夜の青へと移り変わるように見える。とても印象の強いプログラムだし、この美術館が地中と自然光という一見矛盾する要素にこだわっている理由も良く分かると思うので、地中美術館を訪れる機会があるのなら夜まで粘ってぜひ参加してみて欲しい。

オリジナルの施設であるベネッセハウスミュージアムも良い美術館だった。宿泊施設と一体になった美術館、というと、共有スペースに多くの美術品が並んでいる、いわゆる「美術館のようなホテル」を想像するかも知れないが、ここは本当に美術館として設計された建物で、その隙間に宿泊室がくっついているという印象。東京で言うなら原美術館の2階テラスの部分に宿泊室があるような感じ、と言うとイメージが伝わるかもしれない(ただし全体的にはもう少し広い)。もう一つ特筆すべきは、こちらも作品のほとんどを自然光で見るように設計されていること。僕が今回宿泊したのは別の場所にある宿泊専用棟だったのだが、ミュージアム棟に宿泊して時間ごとの変化を見たいと強く思ったし、宿泊して一日に何度か見れたとしても別の時期にまた訪れてみたいと思うだろう。

ともあれ、良かった。また来たいなぁ。ちなみに写真はモネゆかりの植物を植えているという地中の庭(ただし地上にある)。

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2007年6月21日 (木)

アートで候。会田誠・山口晃展@上野の森美術館(2007/06/15)

友人から頂いたチケットで出かけた展覧会。特に会田誠の作品はずっと気になっていた割に今までまとめて観る機会がなく、とても楽しみにしていた。

上野の森美術館に入るといきなり若い人の長い行列が。何かと思ったらサイン会をやっていた。横をすり抜けて会場に入る。小品が飾られた通路を通り、会場に入って最初に目に付いたのが紐育空爆之図。この絵とは2003年にホイットニー美術館で観て以来の再会になる。その時は日本の知識人の悲哀というかひ弱さといったことを強く感じたのだが今回はそうでもない。美術作品の印象はキュレーションのコンテクストでずいぶん変わるものだ。

他にも戦争画リターンズからもう一作のほか、彼の代表作であるあぜ道(HALCALIのアルバムジャケットがこの作品を盗作したと騒ぎになりましたね)、本展のチラシにも使われた美少女物、などなど。中でも見れて良かったのがポスター(18連作)。低学年の小学生が描く(描かされる)ポスターを模した作品群で、捻った毒のある作品もあるがまんまやないかという何の捻りもない作品も混じっていて凄みがある。

なんというか、彼の作品から感じられるアートに対する居心地の悪さ、もう少し広く特権的な立場に対する居心地の悪さと言ってもいいけど、これにはとても共感するものがある。日本の現代美術のホープとしてしばしば比較される村上隆とは、ある意味全く反対のアプローチではないだろうか。どちらが良い、と言っているわけではないし、村上隆的な才能は日本ではしばしば活動しづらい空気もあると思うからむしろそちらを応援したくはあるのだけれど。

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2007年6月20日 (水)

ル・コルビュジェ展@森美術館(2007/06/14)

2回目の森美術館。メンバーシップが入会費無料、と書いてあったので学生のうちに申し込んでおくかとカウンターに行ってみたら「本日入場券を購入された方の入会費無料です」とのこと。微妙…。ちなみに入会費は2,100円、入場券は通常1,500円。ま、入会したら六本木ヒルズの図書館・アカデミーヒルズの1日パスをくれたし良しとしよう。

現在開催中なのはル・コルビュジェ展。なんか彼の展覧会は2年に1度くらいどこかでやってるような印象があるのだが、よほど日本人の琴線に触れるところがあるのだろうか。今回はゆったりした展示スペースを利用して、彼のギャラリー、集合住宅の一間、そして最後の時間を過ごした8畳ほどの別荘と、合計3つもの実物大の模型がある。建築展の花と言えばやはり実物大模型だろうし、その意味では今回の展覧会は今までのものと比べて見ごたえがあると思う。会場内にさりげなく置かれた椅子も実はル・コルビュジェのファクトリーの製品のようだ(あるいはコピーかレプリカかもしれない)。

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2007年6月10日 (日)

蒼海・副島種臣 全心の書@五島美術館(2007/06/09)

五島美術館は上野毛にある日本の古美術の美術館。東急大井町線の沿線に住んでいたことがあり、その後もずっと東急沿線での生活が長い僕は当然存在は知っていたが、今まで足を運ぶ機会がなかった。豪邸が並ぶ閑静な住宅街の中にあり、展示スペースはギャラリー程度でこじんまりしている。

現在の展示は副島種臣の書の企画展。維新の元勲として名前が知られている彼だが、蒼海の号で多くの書を残している。そのことを知ったのは確かギャラリーフェイクだったか。司馬遼太郎の幕末・明治物を読み返せばどこかに載っていたかもしれない。

上に書いたようにさほど広い展示スペースではなかったのだが、書体のバラエティーに驚いた。ゴツゴツした印象の豪放な書はかといって隅々まで知性を感じさせるし、象形文字を思わせる丸っこい書はジョアン・ミロあたりと並べて違和感がなさそう。どんな作品にも共通しているのは作者の気概・気品がにじみ出ていることで、書道には全く詳しくない僕だが神韻というのはこういうものを言うのかと思った。世の中、自分の知らないすごい物がいくらでもあると感じる。

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2007年6月 3日 (日)

オフ・ストライプ@川崎市市民ミュージアム(2007/06/02)

川崎市市民ミュージアムはサッカーのスタジアムもある緑地の中にあるギャラリー兼博物館。駅からバスで行くというやや不便な場所にあるけど、最寄り駅の武蔵小杉が寮から便利な場所にあるので昔からちょくちょく足を運んでいた。

現在開催中のオフ・ストライプ展は縞をテーマにした現代美術の展覧会。それも縞そのものではなくて縞の繰り返しのパターンが崩れたときに現れるもの、というのがコンセプトらしい。アンディ・ウォーホルのゼブラ、ジャスパー・ジョーンズのウスユキといった古典作品から、日本の現代作家の作品、そしてオルガンの音を縞に見立てた音響インスタレーション作品など意欲的だが独りよがりにならない展示で楽しむことができた。

実は今回足を運んだメインの目的は昭和ブギウギという戦後初期の風俗の展覧会だったのだが、そちらの方は正直イマイチ。ただ単に普通の人が見たいだろうものをそのまま並べただけで展示の意図が明確に伝わってこなかったのだ。川崎市市民ミュージアムはどちらかと言うと民俗博物館という色彩が強いし、そういうアプローチもありなんだろうけど…

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2007年5月30日 (水)

肉筆浮世絵のすべて@出光美術館(2007/05/26)

今日は東京駅で昼に待ち合わせの約束がある。ちょっと早起きをしてその前に寄り道、と思い、日比谷にある出光美術館に。ここはオフィスからは非常に近いのだがいつでも行けると思うと案外足を運ぶ機会がない。欲を言うなら金曜の夜間開館(7時まで)をもう少し遅くまでやってほしいのだが、それは無い物ねだりというやつだろう。 現在開催中の展覧会は肉筆浮世絵。出光美術館の浮世絵の所蔵品はすべて肉筆浮世絵だそうで、そのコレクションの全貌を見せようという趣旨だそうだ。実際充実した内容で、浮世絵の黎明期から幕末の最盛期までを、北斎や広重の名品を含めてカバーしている。版画のポップさとはまた違った色使いや筆遣いを楽しむことができた。 ずいぶん久しぶりだったが皇居を臨むゆったりとしたロビーは記憶にあるまま。ことしの夏にさらに整備をするらしい。どう変わるかが楽しみ。

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2007年5月27日 (日)

日本を祝う@サントリー美術館(2007/05/24)

サントリー美術館は赤坂見附にあるころから折に触れ足を運んでいた。日本の美、というコンセプトがしっかりしていて展示にハズレが無かった、というのが一番の理由だけれど、和風のしっとりした内装が気に入っていたというのも大きかった。東京ミッドタウンに移転した、という話を聞き、そういう雰囲気が損なわれていなければいいなとは思っていたが今日まで足を運ぶ機会が無かった。

館内に足を踏み入れてみてその心配は杞憂だったと分かった。以前と同じように和のテイストを取り入れた落ち着いた内装だが、天井が高くなったことで開放感がぐっと増している。二階建てになり窓に向いた休憩スペースがゆったりと取られている点はサントリー美術館でも天保山の方を思い起こさせる。3階という比較的低層にある点も落ち着いた雰囲気を醸し出すことに一役買っている。いろいろな意味で森美術館と好対照をなすアートスペースだと思う。

現在開催中の展覧会は所蔵品点。これぞサントリー美術館!という感じの作品がずらりと並ぶ。外国人客の比率が高かったがさもありなん。もしニューヨークの友人が東京に来ることになったら絶対に足を運ぶことを勧めると思う。今後どんな展覧会をホストしていってくれるか、楽しみ。

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2007年5月21日 (月)

澁澤龍彦-幻想美術館@埼玉県立近代美術館(2007/05/19)

バタバタしていた生活が少し落ち着いたのでしばらく足を延ばせなかった通勤経路から離れた美術館に出かけようかと思った。友人から貰っていたチケットを持って埼玉県立近代美術館に。この美術館に出かけるのは7年ぶりくらいだろうか。どちらかと言うと好きなアートスペースになるのだけれど、北浦和という微妙に不便な場所にあるので、どうしても出かけるのが億劫になってしまうのだよねぇ。

現在開催中の企画展は澁澤龍彦の世界を美術の面からたどろう、というもの。彼が愛したヨーロッパの幻想絵画と共に、彼と交流のあった戦後日本のサブカルチャーの旗手たちとの交流の内容を展示し、それらを澁澤龍彦の世界という視点から一つの展覧会にまとめてしまっている。

僕は澁澤龍彦といえば河出書房から文庫で出ているエッセイを何冊か読んだ程度のごくごくライトな読者なのだが、それでも(いや、それだからこそ、か)ヨーロッパの幻想絵画については彼のパブリックイメージに合致しているように思えた。幅広いジャンルの作品を彼の美的世界を表現するためによく集めたなぁ、と感心する。

が、個人的に強い興味を持ったのは日本の演劇・美術の世界との交流。こちらの方は、例えば「腰巻お仙」のポスターのように言われてみればああ確かに、というものもあったのだが、基本的には予備知識が全くなかったので新鮮だった。そのエリアに出展されている作品が発する強力な昭和のオーラにもうクラクラ。昭和の文化って、知ってるつもりで全然知らないんだなぁと実感。

ちなみにこの展覧会、埼玉・札幌・横須賀という微妙な巡回のしかたをする。澁澤龍彦ゆかりの土地、というわけでもなさそうだけれど、はて。

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2007年5月 2日 (水)

洋上のインテリア@日本郵船歴史博物館(2007/04/30)

日本郵船歴史博物館は横浜にある海事博物館(英文名称はNYK Maritime Museum)。今回足を運んだのはちょっと気になる企画展があったため。パンフレットによると「今回の企画展では、オフィスビルと客船のインテリアデザインの変遷に注目し、近代日本において海運会社が産業・技術の発展だけでなく、建築やデザインといった文化面の成長にも深く関わっていたことを、…豊富な展示品とともにご紹介いたします」とある。これは面白いものが見られるかもしれない、と期待したのだ。

企画展の展示スペースは細長いが折りたためば中規模の会議室に収まる程度か。日本郵船が各地に持っていたオフィスビルの写真と装飾物などのゆかりの品、そして20世紀前半の客船のインテリアデザインのカラースキーム(インテリアデザイン原画)や模型・写真などが展示されている。展示物そのものはなかなか面白く、せいぜい30年ほどの間に無個性なヨーロッパ風のインテリアから日本の独自のデザインを取りこんでいく過程をうかがい知ることができた。が、キュレーションの方がやや弱い。先に引用した部分のような展示意図なのであれば、一般社会のインテリアデザインと客船の内装との相互作用を、できれば社会的な背景まで踏まえたうえで展示して欲しかった。さほど広くは無い展示スペースで、しかも海事博物館であることを考えると、この要求はちょっと酷かもしれない。が、例えばINAXギャラリーなどは狭いスペースでハッとするようなキュレーションの妙を見せてくれるわけで…。

とはいえ展示品はなかなか一般の目に触れることが少ないだろうもので、華やかな客船のインテリアを眺めているだけでも十分楽しめる。そして、いよいよ日本独自のインテリアデザインが本格的に花開こうという時点で太平洋戦争がすべてを断ち切ってしまった、ということに切ない気分にさせられる。このあたりは常設展と見比べてみてほしい。

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2007年4月25日 (水)

レオナルド・ダ・ヴィンチ-天才の実像展@東京国立博物館(2007/04/21)

東京圏では広告なども大々的に打っているこの展覧会、気になっていたところに友人からチケットを頂いて有難く出かけることに。考えてみれば東京都国立博物館に行くのは初めてかもしれない。東京都美術館や国立西洋美術館には何度か出かけたことがあるのだが。上野公園の中にあるうえに敷地内にもゆったりとスペースが取ってあって感じのよい空間。

今回の展覧会の目玉は「受胎告知」の展示。11時前に着いたのだが既に40分待ちという表示が出ていて、もうちょっと早く出るべきだったとちょっと後悔。ま、あれだけ広告している展覧会だもんなぁ。入場制限自体は手際よく行われていて、この作品だけが置いてある第一会場の中はそれほど不愉快ではなかった。でも、個人的にはこれほどの混雑に巻き込まれるのであれば一生のどこかでフィレンツェに行ったときに見られればそれでいいかと思うなぁ。

第二会場の方がある意味この展覧会のテーマ「天才の実像展」に沿った展示がなされている。ルネサンス的天才と呼ばれるダ・ヴィンチの芸術・科学の双方にまたがる活動の全体像を捉えようというもので、ウフィツィ美術館で行われた展示の一部を日本に持ってきたそうだ。興味深い展示だったのだが不満も少し。ある程度事前知識のある側面については面白く見ることができたのだが、全然知らない分野についてはなぜその展示がなされているかがピンと来なかったのだ。「天才の実像展」と銘打つからには全体像(の仮説)からトップダウンで展開していく展示であっても良かったのではなかろうか。あるいは音声ガイドを借りてじっくり展示を見れば印象が違ったのだろうか。

個人的には第二会場に飛行機械が展示されていなかったのがポイント低い。理系男子の僕としては、レオナルド・ダ・ヴィンチといえばモナリザでも最後の晩餐でもなくもちろん受胎告知でもなく、その昔に全日空の尾翼マークだったあのグルグルの回転式飛行機械なのだ。飛行機械の模型は二つ出展されていたのだがどちらも羽根式のもの。なぜだろう。

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2007年4月18日 (水)

マグナムが撮った東京展@東京都写真美術館(2007/04/12)

東京都写真美術館はまだ正式オープンする前のバラックのころから結構足を運んでいたのだがニューヨークにいる間は足を運ぶ機会がなかった。久しぶりに出かけてみると変わりように驚く。アメリカ橋のあたりはどことなくWilliamsburgのQBEをまたぐ橋を思い起こさせたり。

現在開催中の作品展は、江戸から明治にかけての関東の古写真展、昨年の広告写真展、そしてマグナムによるこの半世紀の東京をテーマにした写真展。どれも興味深かったのだが一番面白かったのはマグナム展かな。

進駐軍が街を歩いていた時代から安保デモにバブル、大葬の礼を経て21世紀へと。展示されている作品はどれも時代の雰囲気を十分に伝える優れた作品ばかりであり、それゆえに東京と言う街の変化を際立たせる。平成大停滞だとか格差社会だとかいう言葉が流行り、昭和中期を懐かしむような空気があるが、東京という街は今日までずっと魅力を増し続けてきたということを。実力ある写真家たちが撮ったデモの学生たちや若き日の長嶋茂雄が持つ奇妙なほどの生々しさは新鮮だが、それでもなお新世紀の東京を写した作品の持つエネルギーには及ばない。最後のセクションにフォトコラージュとして展示されているクリス・スティール=パーキンスの作品は現在のTokyoの魅力を圧倒的に伝えている。

全体ではボリューム的にちょうど良いとはいえ、時代ごとに見るとちょっと作品数が少なかったのが物足りない。時代ごとの展覧会を開催してくれたりするととても嬉しいのだが。

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2007年4月10日 (火)

MICHAEL THOMPSON FIFTY CUTS展@パルコミュージアム(2007/04/08)

ファッション写真展というのは全然柄では無いんだけれど、「ニューヨークを中心に活躍する」というキャッチコピーに惹かれてパルコミュージアムに足を運んでしまった。MICHAEL THOMPSON FIFTY CUTSということで、展示会の公式ホームページまである気合の入り方。タイトルの通り写真作品50点を展示している。それだけで入場料500円?とはちょっと思わないでもなかったけれど、作品をみてまぁまぁ納得した。

作品はファッション写真からスティルライフまでかなり幅の広いもの。その中でも目を引いたのはやはりセレブリティのポートレート。グウィネス・パルトロウやクリスティーナ・アギレラといったスターたちのショットは圧倒的にゴージャスだ。余談になるが、日本の女性タレントって、どんなに綺麗な人でもこういうゴージャスさって出せないんだよなー。NYLONの表紙モデルはオッケーだけどWやVanity Fairのモデルはお呼びでない、っていうか。もひとつどうでもいいけどNYLONってあっちの人が「日本の女性誌みたいなかわいい雑誌が欲しいよね~」って作ったものなのに、それの日本語版が出るってちょっと捩れてるよね。
あぁ話が逸れた。で、そういうファッション写真の裏づけになる実力を感じさせるのがアーティスティックな写真。特に「Ode to Matisse(マティス頌歌)」という連作は、マティスの作品の持つ単純で大胆な線や色使いをメークや衣装で再現して見せたもので、作者のセンスを感じさせる。

しかし、ニューヨークにいるときはこういうゴージャスでハイソな世界ってずっと避けていて、もっとカジュアルな世界で暮らしていたのに、戻ってくるとむしろこういう作品の方にニューヨークを感じてしまうんだよな。不思議なものだ。

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2007年3月31日 (土)

リアルのためのフィクション展@東京国立近代美術館(2007/3/30)

東京は桜の盛り。帰りに千鳥ヶ淵の桜を見て帰ろうと思い、金曜は東京国立近代美術館が夜間会館していることを思い出した。今日から靉光展(←フォントあるのか)をやっているのだが、あまり時間も気力も余裕が無いのでということで常設展のみ覗いてみた。

ここの所蔵品コーナーを見るのは6年ぶりくらいか。こんなに凄かったっけ、というのが最初の感想。重要文化財クラスの作品がずらりと並ぶし、作品のバランスも取れていて日本の近代美術の流れを押さえることができる。戦争画まで展示されていたのには驚いた。まさに美術の教科書がそのまま展示されている感じ。が、展示としてはちょっと日本の近代美術に閉じてはいないか。例えば、日本の現代のアート(商業美術も含む)に興味のある外国人が来て楽しめるか、というと難しいところもあると思う。でもそういうのは民間の企画に任せるべきなのかなー、うーん。

で、今日の目当てだったのが小企画展の「リアルのためのフィクション」展。若手女性作家4人の90年代の作品を集めたもので、やなぎみわが参加しているので気になっていた。今回出展された彼女の作品は量産型エレベーターガールが登場するパブリックイメージどおりのもの。生で見ると視覚的なインパクトはやはりある。が、今回の出物は塩田千春のパフォーマンス作品(DVD)。バスタブに泥を張ってそこに入り、洗面器で頭から泥をかぶるというもの。言葉にするとどうということが無いように聞こえるが、見てみるとなんともいえないインパクトがある。できればディスプレイがもう少し大きいと良かったのだが。

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2007年3月21日 (水)

アトリエ・ワン展@ギャラリー・間(2007/03/20)

ギャラリー・間は乃木坂のTOTOショウルームの上にある展示スペース。主に建築やインテリアを中心とした展示を行っているようだ。全体的な展示スペースは広くないがオープンスペースもあり面白い展示ができそう。また出版などにも力を入れている様子。

現在の展示はアトリエ・ワンという建築事務所、というか大学の先生によるプロジェクトなのか。グローカル・デタッチド・ハウスという個性の強い戸建住宅と、マイクロ・パブリック・スペースというアドホックな公共空間という2つのプロジェクトを展示していた。

現代美術を見るものからするとマイクロ・パブリック・スペースの方がある意味分かりやすい。これは、布やベニヤ板といった素材を用いた仮設の構築物や、あるいや屋台や人力車(!)といった移動物によって本来他の目的に利用されている場所に公共スペースを出現させるというもの。建築展という文脈からすると意図を誤読しているのかもしれないが、美術のインスタレーション作品と考えればまずまず表現したいことは分かる気がする。

どう理解すればよいのか戸惑ったのはグローカル・デタッチド・ハウスの方。これはある意味では普通の住宅(の模型)で、完全に住めなくなるような構造をしている訳ではないのだが、明らかに住みにくいだろうという設計をしているのだ。例えば狭小住宅なのに建物の底面積を狭く取っていて、エレベーターも付けずに5階建て、といった風に。上に書いたように純粋に実験的なインスタレーションであれば、あるいはモニュメントとしての巨大建築であれば理解できる。が、こういう居住を前提としている(そして実際に住居として建設が進んでいる)住宅をどう評価したものか。まぁ、こういう展示は商業建築家に刺激を与えることで間接的に社会に還元されることが主な目的なのだろうが…。建築モデルを見るのは雰囲気だけだが嫌いではないので、素人でも楽しめるコツのようなものがあれば身に付けたいものだ。

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2007年3月18日 (日)

やなぎみわ展@パラボリカ・ビス(2007/03/16)

パラボリカ・ビスは台東区は柳橋というちょっと粋な場所にあるギャラリー。先日森美術館に行ったときにイベントのフライヤーを拾い、やなぎみわの展示があること、そして入場料を取るスペースだというのに興味を持ち出かけてみることにした。

パラボリカ・ビスまでは浅草橋駅から徒歩5分ほど、細い路地を入っていった先の、2階建ての古い店舗用の建物をギャラリーに改装した感じ。あんまりギャラリーギャラリーしていない、ニューヨークだとWilliamsburgあたりで見かけるスペース。ショップとカフェを兼ねた一角が設けられているのも楽しい。

僕はやなぎみわの作品はエレベーターガールのイメージしかなかったので、今回展示されていた作品には軽いショックを受けた。「Fairly Tale 老少女綺譚」出版記念ショーイング、ということだったので、タイトルから予想をつけることはできたのだけれど。原始的な面をかぶった女性と素顔の女性とのツーショットの写真。カラーではなくモノクロなのだが表面の艶やかさには過去の作品との連続を感じさせる。展示された作品数が少なくちょっと消化不良だった。もう少し纏めて見ることが出来れば作者の意図が腑に落ちるかも、と思ったのだが。

この展示会は三浦悦子の人形展と同時開催、というかそちらのほうがメインだったよう。こちらはハンス・ベルメールを思い起こさせる球体関節人形が耽美というかゴスロリというかそういう感じに仕上げられている。個人的にはピンとこないジャンルではあった。

今日出かけたときはキャンドルを点灯するパフォーマンスの準備中とかでバタバタしていたのが残念。こういう耽美的な作品を扱うのは日本の方が先に行っているのではと思うが、僕はWilliamsburgのDollhausを思い出した。野心的なギャラリーだと思うし、これからもイベントには気をつけていこうか。

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2007年3月13日 (火)

奈良美智展-月夜曲@金沢21世紀美術館(2007/03/11)

今回金沢に来たのは金沢21世紀美術館奈良美智展が目当て。金沢21世紀美術館は旭川動物園と並び行政ハコモノによる地域活性化の成功例ということになっているらしく、そちらの側面も気になっていた。個人的には、公立の現代美術館というのはなかなかに難しいと思うのだ。これが近代美術館であれば、印象派の絵の2・3枚を展示の目玉にして、あとは地元の洋画家の作品を収集・研究していれば関係者は納得する、という面もあるだろう(現実はそこまで甘くないことは理解してます)。が、現代美術は一般レベルでの評価が固まっていないからこそ現代美術なのであって、オーナーの趣味の私立美術館や、あるいはビジネスとしてリスクを取るギャラリーとは違い、納税者に納得してもらうというのは簡単には行くまい。展示の適切性というレベルだけでも退廃芸術展みたいな騒ぎになりかねないし、まして投入する公費の正当性を証明する、というのは…。一つのオーソドックスな手法は、現代美術作品の作品の価値を美術史の文脈を踏まえなおかつ目で見える形で証明するため、評価の定まった作品をも含む大胆なキュレーションの常設展を持つ、というものだろう。が、口で言うのは簡単だがこれはそう簡単なことではない。僕の乏しい見聞の範囲ではこれができているのは世界でもロンドンのテート・モダンぐらい。大陸欧州の現代美術館はポンピドー・センターにせよモダン・ピナコテークにせよコレクションに偏りがある。アメリカだとDCのハーシュホーン美術館はコレクションの層は厚いしスミソニアンの一部門であるから豊富なコレクションを自由に使えるはずなのにキュレーションが保守的過ぎる。ニューヨークのグッゲンハイムも展示は意外に保守的だしP.S.1は常設展を持っていない。まぁニューヨークはギャラリーシーンが分厚いので都市のアートシーンの中で美術館が担うべき役割は小さいのだろうが…。

そう考えると、今回の奈良美智展のようにレジデンスというアプローチを通し、アーティストと現代美術館、そして背景にある街そのものが相互に影響しあうことで作品に関わる、というコンセプトは案外本道なのかもしれない。奈良美智の小屋は原美術館やニューヨークのMarianne Boesky Galleryで既に見ていたが、金沢21世紀美術館での展示が「小屋」というコンセプトにもっとも自覚的だった気がする。美術館自体がプロジェクト工房を持っているということは、基本コンセプトの時点からこのような展示を考えており、奈良美智展はたまたま作家と方向性が一致した、ということなのかもしれない。実は奈良美智展自体は思っていたよりも展示品が少なかったのがちょっと残念だったのだが…。

奈良美智展のほかにも面白い企画展・常設展が開催されており、全体としては足を運んだ甲斐があった。それらは結構普通の現代美術展、つまり普通の人にとってはそれなりに敷居の高いものだと思うのだが、会場は大いに賑わっていて失礼ながらあまり美術に興味のなさそうな人も興味深げに覗きこんでいる。市民と現代美術の距離を縮める、という意味ではこの美術館は確実に成功しているのだろう。現代美術ファンとしては心強い限りだ。

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2007年3月 3日 (土)

日本美術が笑う@森美術館(2007/03/01)

森美術館は言わずと知れた六本木ヒルズの中にある美術館。僕がニューヨークに行ってからの開館なので訪れるのは今回が初めてとなる。現在開催中の展示は日本美術展の「日本美術が笑う」と現代美術展の「笑い展」。どちらかと言うと後者が目当てで足を運んだのだが印象は圧倒的に前者の方が強かった。

展示されているのは登場人物が笑っているか、あるいは自然に笑いを誘うような作品。時系列的には古代の埴輪から大正の美人画までと幅広い。既に評価の定まっているマスターピースばかりが並んでいるという訳ではなく、カタログによれば今回が初公開という作品も多い。日本美術にこんな側面があったのか!と軽いショックを受けた。笑う埴輪から入ってからさまざまな時代の作品に表れた笑いを眺め、最後に仏画仏像に滲み出た笑い(ヨーロッパや中国の宗教画にはほとんど無いという)を見せることで、日本人の本性の一つを垣間見たような気分になる。

これに比べると「笑い展」は普通の現代美術展で、普通に興味深い作品が揃ってはいるが全体を通したメッセージはあまり伝わってこない。どうせなら「日本美術が笑う」と正面から向き合うような企画にすれば面白かったのに。

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2007年2月17日 (土)

アドリアナ・ヴァレジョン展@原美術館(2007/02/17)

原美術館はもう20年近くお気に入りの美術館。けっして広い展示スペースをもっているわけではないが、美術シーンの動向を押さえた上で見てちゃんと楽しめる企画展をいつも開催していてハズレがほとんどない。また、宮島達男の「時の連鎖」や奈良美智の部屋などの見飽きない常設展示もありいつ足を運んでも楽しめる。
品川駅から歩いて15分と駅からやや遠いのが難点だが、ちょっと高台にあり木立に囲まれていて都会の喧騒から離れた気分になれる。 特に御殿山ヒルズの中庭を望むカフェはそれだけのために足を運ぶ価値あり。

今回の企画展のアドリアナ・ヴァレジョンはブラジルの現代美術作家。ちょっとデヴィッド・ホックニー風のプールの絵に惹かれて足を運んでみた。が、会場で作品を見比べてみると何か違和感がある。プールの外と中はタイルが一面に張り詰められているのだが、プールの底のタイルの線がありえない歪みかたをしていて、水面のうねりだけでは説明できないのだ。さらによく見てみると、人物はおろかカランや水栓すら描かれていない。つまり、プールの外の整然とした世界とプールの下のカオティックな世界とを対比させるというのが作品の意図らしい。一見イラスト風の作品なのにこういう意図を込められるというのは面白い。展示を見て行くと過去の作品のなかでの試行錯誤が見てとれ、今の洗練された表現にたどりつくまでの過程がわかる。展示されている作品の数は少ないが見応えがあった。

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2007年2月11日 (日)

居城純子「入れ子の庭」@大阪府立現代美術センター(2007/02/10)

大阪府立現代美術センターはそこそこの広さのあるギャラリースペース。10年程前には中ノ島にあり、営業の外回りの間に時間が出来た時などに時々寄り道していた。今回調べてみると大手前の府庁の下に移動していて時の流れを感じる。展示スペースは二つに分かれて広くなったが、近畿一円の美術展のパンフレットを手にとって寛げるようなスペースは減ったかな。

今回見に行ったのは居城純子の作品展。普通に描かれた油絵の風景画なのだが、そのところどころが空白になっている。誘われるように絵に近づいてみると、その空白が白い絵の具でもなく塗り残されたものでもなく一旦描かれた後に剥がされたものだということが判る。古い建物の金属部分でペンキが浮いてペリペリになっているのを見たことがあるだろう。空白部分と絵の具の部分の境界にあるのはそれだ。絵の具が乗っている部分はきちんと仕上げられているだけに絵の具の物質性が際立つ。その効果はブラッシュストロークを強調して絵の具の物質性を浮き上がらせようというのとは異なるものだ。

今回展示された作品では、さらに剥がした絵の具(まさにパリパリに剥がれたペンキだ)を絵の前の床に置き、小さな人形と組み合わせてインスタレーションとしてある。本来は壁に掛けられた絵の一部を構成するはずのペンキが、剥がれ落ちて別の世界の一部になっている、という構造は、なんとなく大樹が落とした枯葉とそこから生えたキノコというイメージを想起させる。

絵画の物質性という古くかつ大きいテーマに対し、これほどの解答を21世紀になって出せるとは思わなかった。他の作品を見ていると他にもキャンパスの一部を燃やしたりといった手法も取っているよう。これからが楽しみ。

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2007年2月10日 (土)

内藤多仲と三塔物語展@INAXギャラリー大阪(2007/02/09)

INAXギャラリーはINAXのショウルームの中にある展示スペース。中程度の会議室ほどの、本当にささやかなスペースなのだが、キュレーションのシャープさがそれを感じさせない。生活に関わる博物学的なテーマを取り上げ、直接同社の製品のパブリシティにはなっていないと思うのだが、それでもレベルの高い展示を長年続けているのには頭が下がる。リストラ圧力などに負けずにこれからも頑張って欲しいものだ。

今回の展示は、通天閣・東京タワー・名古屋テレビ塔という三大都市の代表的なタワーと、その共通の設計者である内藤多仲に関するもの。大阪人の僕としてはやはり通天閣の展示に目が行った。塔の設計図や建築中の写真などはそれほど出ていなかったのでそちらに興味のある人にはやや食い足りないかもしれないが、散歩中にちょっと立ち寄る、というのには適切なボリュームだろう。本町界隈に出かけることのある人にはぜひお勧めしたい。

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