日曜の夜にブラウザでライブハウスのリンクを整理していたら、今夜7th FLOORで元ハートバザールの五月が出るイベントがあるのを見つけた。彼女もここしばらくノーマークだった、というか活動休止していると思っていたのでかなりびっくり。月初でバタバタしていたのだが何とか会場に駆けつけた。
会場に着いたときに歌っていたのは依布サラサ。井上陽水の娘さん、ということでフライヤーに載っていた記事を記憶していた。実際に生で見て歌を聴いてみるとそんな煽り文句なしでも普通に良いシンガーだと思う。ルックスと歌との組み合わせで僕はつじあやのを連想したが、彼女よりはコケティッシュな印象があるかな。まだあまりライブはやったことが無いとかで、これからが楽しみ。
次に登場したのはThe 606。女性ボーカルの4人バンドで、初めて聴くのだが結構僕好みの音を出す。ボーカルの声質とちょっとひねくれた楽曲の組み合わせが、どことなくハートバザールを思い起こさせる部分があって懐かしかった。
続いたのは芙咲由美恵。割と普通のボーカリストさんかなー、と思って聴いていたのだが、ライブの後半で会場からお題を貰ってアドリブで曲を作ります!というのでちょっとびっくり。「チューリップ」と「出会い」というテーマで曲を作り、なかなかの出来だった(もちろん歌詞付き)。ジャズやキャバレーでは時々見たことはあるがポップスでは初めて。やるなぁ。
ラスト手前はつるうちはな。彼女への感想は以前書いたとおり。もうガールポップ馬鹿としか言いようが無い。最高!
で、ラストが五月。
僕は以前にこんなことを書いたことがある「この日記を読んでいる方には自明のことだが僕はよくライブハウスに足を運ぶ。座って聴くことができてセットが短いジャズクラブはともかく、時間の見当が付かず、セットチェンジで1時間近くぼんやり待たされ、おまけに立って見るしかないロック系のライブはこの年になると正直辛い。じゃぁ何で出かけるのか、と正面切って聞かれると実は困る。ただ、聴き手としての醍醐味と言うものはある。その最たるものは、アーティストの変身の瞬間に立ち会うことだろう。何十本に一本という確率だし、事前に予想できるものでもないのだが」。
僕にとって、その原風景となったライブがハートバザールだ。2001年9月15日の仙台 CLUB ennでのワンマン。もちろんそれ以前からファンだったし、だからこそわざわざ仙台まで足を運んだのだが、それまで斜に構えた「不思議ちゃん」的なイメージだったのに、このライブではまるで人が変わったかのようにまっすぐな歌を歌っていた。この後に出た唯一のメジャーアルバム「さいはて」、そしてラストシングル「アイ」は今でも名盤だと思っている。ハートバザールは結局翌年の春に解散してしまうのだが、ニューヨークに着任していた僕はわざわざ解散ライブのために帰国した。5年間ニューヨークにいたがライブのために日本に帰ったのはこの時だけだ。
その後、五月のインタビュー記事などを読み、彼女が鈴木玲史の作りこんだ壮大な楽曲ではなく、自分で書いた曲に自分の詩と声を乗せたいために解散を選んだ、ということを知った。彼女がその後に組んだバンドであるハッカは帰省とスケジュールが合ったので一度ライブを見に行き、音源も通販で買ったのだが、「方向性は分かるけどまだ結果は出てないな」と思ってそのままになっていた。後は最初に書いたとおりで、2006年の末に音楽サイトで活動を休止するという記事を見かけていた。
で、今日のライブ。冒頭に「今日は五月の最後のライブなので精一杯歌います」というMCが。昔からこういう寒いMCをする人だったので今回もそうなのか、と思っていたら客席の誰も笑わず食い入るようにステージを見つめている。そうか。そうなのか。
弾き語りで始まったライブには途中からハッカ時代のメンバーが入りバンド編成に。聴いていて何となく「あぁ、届かなかったんだね」ということを思った。ennで見えて、あぁこれを追いかけるんだと思って、だけれども結局見えたものを掴むことはできなかった。芸術だものな、見えたものを掴めなかったのが不幸、ではなく、7年かけてなお届かなかったものを確かに見たことは幸せ、だったのかもしれない。まるでベテラン野球選手の引退試合のように端然と歌い、端然とステージを終えた。イベントなのにアンコールがあり、最後に「ハミングバード」を。
なんというか、最後のライブを見ることができて良かった。彼女のこれからの人生に幸あれ。
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