2017年3月20日 (月)

「君の名は。」@場所はヒューマントラストシネマ渋谷(2017/03/16) ※メタ設定の考察メモ付き、ネタバレあり

昨年夏からずっと評判を聞いていた映画「君の名は。」、映画館で見たいなと思いつつしばらく忘れていたところ、先日四谷界隈をぶらぶら散歩していて須賀神社への聖地巡礼にぶつかり、ああそういえばと思い出して出かけることにした。場所はヒューマントラストシネマ渋谷。ちょっと小ぶりだけれど趣味の良い映画をやっているとても良い映画館。

でまぁ、凄かった。映像美に圧倒されてその夜は良く眠れなかった。こういう経験ってどれぐらいぶりだろう。週末にかけていろいろなサイトを見たり舞台になった場所を再訪したりしてしまった。これほどの美しい映像を、おそらくどのシーンを切り出してきても美術として成立する密度で投入し、しかもその美しさに意味がある、ということには圧倒される。

設定も脚本も凄く良い。「無理な設定を映像美とRADWIMPSの音楽で強引に押し切っている」という感想もWebで見かけたけど、おそらく逆で「設定と脚本に絶対の自信があるからこれほど映像美と疾走感に没入できる演出ができた」んだと思う。

でもまぁ、僕が感じてきた東京の空の広さを肯定してくれたという点が、僕がこの映画に一番感動した点。高村光太郎にケンカを売るわけじゃないけど、この映画の東京での主な舞台、赤坂御用地から神宮外苑、新宿御苑から青山霊園という一帯は、本当に空が広いんだ。主人公の瀧君の行動は設定にある「新宿区若葉に住み都立青山高校に通う高校生」らしい行動をきちんとロケハンして作っている(つまり、別の場所を風景として借りてきていない)ので、そのあたりが日々の散歩の範囲である僕には一々刺さる。できればDVD/Blu-ray化時の特典映像として、同じエリアを大人目線で見たときの映像とか入れてくれたら、本当に泣いちゃうよなぁ。

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ここから先は作品中の設定の謎についての自分勝手な考察。自分勝手な、というのは一回しか見ていない上に公式ビジュアルガイドも小説も買っていないという意味でもあるし、そもそも作品を見るうえで気づかなくても全く構わない(むしろこの種の設定があると気付かせないために無理を重ねてある)という意味でもある。それが分かっていても「解けた!」と思うと書いてみたくなるんだよね。

表現の具体的な部分や考察のかなりの部分を下記サイトに負うています。感謝。

mark23 Logbook 3rd Edition:映画「君の名は。」考察メモ 第2版

・主人公としての瀧と三葉は異なる時空(マルチバース)に存在している(以下、瀧の時空をα、三葉の時空をβとする)
 ※「出会うはずのない二人。」というコピーはそういうこと。

・αとβはほとんど同じ時空で、ほぼ同じ人(「沙耶香」が「早耶香」になる程度のブレはある)がほぼ同じ人生を送っている。但しα時空とβ時空は3年離れて隣接している。

・α時空にも三葉が、β時空にも瀧が存在する。瀧も三葉もα時空とβ時空でほぼ同じ人生を送っているが、α三葉は瀧のことを、β瀧は三葉のことをそれぞれ知らない。
 →雪の振る歩道橋のシーンは、「α瀧とα三葉」「β瀧とβ三葉」のそれぞれの組み合わせでのすれ違いを2つのシーンを前後で繋いだもの。
 →最後の階段のシーンは、「α瀧とα三葉(すれ違い)」「β瀧とβ三葉(まだすれ違い)」「α瀧とβ三葉(君/あなたのの名前は!)」を繋いだもの。3番目の状況は何で、なぜ起きたのかは後述。
 ※α瀧にとってのα三葉は「とても懐かしい感じがするけど、でも魂から感じられる波動が違う」人、α三葉にとってのα瀧は上記の通り全く知らない人。β三葉とβ瀧の関係も同様。

・歴史の改編は分岐ではなく、同一時空内で行われる。隕石で死ぬ前のβ三葉が歴史改変で生き延びた別の時空でβ´三葉になるのではなく、歴史改変後もβ三葉のまま。

・瀧が奥寺先輩とのデートの失敗を三葉に報告しようとする電話、そして東京に出てきた三葉が瀧にかける電話で流れるメッセージ「おかけになった電話番号は、現在電波の届かない場所にいるか、電源が入っていないため~」はiPhone(iOS 7)の着信拒否メッセージ。お互いの電話に自分の番号を登録するとき、おそらく電話をかけてワン切りしたはず。だが、α三葉とβ瀧にとっては知らない番号からのワン切りメッセージだったので速攻で着拒に入れた。

・2016年10月3日が「休日」の件は、瀧は学校の創立記念日でお休み、奥寺先輩は大学生だからなんとでもなる、と考えれば矛盾は出ない。これは「瀧は休日、三葉は平日」という状況にするために必要だった。映画の中の親密度の流れだと、デートを日曜日に設定していたら三葉が「私も東京に行くからダブルデートにしよう!従妹が東京に遊びに来てるとか説明してさ」と考えた筈だから、それを防ぐ必要があった。ただ、瀧だけの休日という説明を作中で省いた理由は不明(両者の時間の流れの違いに関する違和感を観客に与えるためか)。

・α瀧とβ三葉は夢で入れ替われるが、組紐の力を借りて「自分のカレンダーと同じ日付の相手の時空」に移動できる。

・作中で時空移動が起きたのは、2013年に三葉が上京した時、2016年に瀧が糸守に出かけた時、2022年に三葉が瀧と再開するとき。

・時空移動が起きる/起きようとしていることを示す表現として、移動中の左右の反転が使われている
 →2013年:東海道新幹線の東京タワーの逆行。四ツ谷駅で「出口は右」のアナウンスなのに左側ドアが開く。
 →2016年:新幹線車内で2人掛シートと3人掛シートが反対
 →2022年:千駄ヶ谷駅から信濃町跨線橋にかけての逆走

・ポスターの須賀神社の階段で、三葉の裏に本来なら階段と逆方向にあるはずの六本木ヒルズが見えているのは、第一義には見栄えの問題だろうが、時空移動が起きていることを伝える隠された意図もあるだろう。なおラストシーンでは六本木ヒルズは見えていなかった。

・時空移動時には身に着けたものはそのまま持っていける。移動先の自分と入れ替わるわけではない。2013年のβ三葉は組紐を持って行けたし、2016年のα瀧は糸守のスケッチを持っていけた。

・スマホのメモが消えるシーンのトリックはこれ。日記アプリはクラウドベースで、α瀧が持ち込んだα時空のスマホのメモリには日記が残っていたが、β時空のクラウドサーバには日記データが無いので、同期が起きると日記が消えてしまう!
 ※このトリックに気づいた時は鳥肌が立った。

・組紐が手を離れると自分自身の時空に戻る。ご神体の山では三葉の身体が消えマーキーが落下するという形で表現された。
 ※そうすると、ラストシーンの後の世界で、β三葉が髪を解いて組紐を外すとα三葉になってα瀧に対し「あんた誰?」になるのだろうか。

・α、β両時空とも、瀧の共通設定は「ティアマト彗星の美しさに魅せられて落下した糸守に興味を持ち一時熱心に調べた。それをきっかけに3年後に糸守に奥寺先輩、司と一緒に出掛けるが、別行動でご神体の山に一人で登る」のはず。

・その意味では彗星による破滅を回避する入れ替わり先としてβ三葉の相手に選ばれるのは実に適切。

・だが、2016年のα瀧は糸守やティアマト彗星に対する知識や関心を失っていた。何故か?

・それは、ティアマト彗星(を操る知性存在)が自分自身が引き起こす破壊に対する恐怖や関心を逸らすため、関連知識に意識を向けにくくなる認識操作を行っていたから。2016年のα瀧は2013年のβ三葉と入れ替わることで、この認識操作の影響を受けてしまった。

・認識操作は瀧だけではなく2013年のβ時空の住民全体に行われており、かつ近づくにつれて力が強くなっていく。この世界ではティアマト彗星が強力な物理介入(隕石のルートを曲げるとか)を行える記述は出てきていないので(作中でも彗星の軌道は正常だったと回想)、隕石の分離後は物理法則に従い十分な時間をかけて糸守に落下したはず。その余裕時間内に落下位置・時間の予測や避難勧告が出なかったことが傍証。

・認識操作の存在を作中で示す手がかりが、TVニュースでのティアマト彗星の軌道。最初の登場で正しく表示されていたものが2回目、3回目で間違えらえていたのは、(作品中のテレビ局で)作画のミスが発生しそれがチェックを通ってしまうようになった(それも2回続けて!)ことを示している。また、三葉の教室の後ろの黒板のカレンダーが9月なのに31日が存在するのもたぶんこれが理由。

・認識操作はティアマト彗星が去ってからも(隕石が落ちてからも)続く。2016年のα時空に戻った瀧も数週間影響を受けていたほどなので、2013年のβ世界ではより長く続いただろう。人的被害が小さく、物理的な被害も街全体が消滅するほどでは無かった糸守町で、町民の根こそぎの東京移住(土建屋の跡取りたるテッシーまで東京に出てきている)が行われたのは、認識操作による不可解な現象や事故が多発したからではないか。

・ティアマト彗星による認識操作は「彗星」「日付」「糸守」などに直接関わる部分に限定される。なので、α瀧は入れ替わり中の糸守の風景や糸守の人々の名前は憶えているが、糸守という地名そのものや施設の名前は思い出せない(憶えていれば入れ替わりから戻った時にググるだろう)。

・2回目の入れ替わり時の三葉(瀧)が、変電所の爆破と防災無線の乗っ取りによる強制避難の計画をすらすら立てられたのは、(上記設定の通り)本来は調べて知っていた(犠牲者が出なかったα世界での)糸守町の緊急避難訓練の知識を、ティアマト彗星の認識操作を受けながらも無意識に思い出すことができたため。そうすると、「発生した災害について学び、学んだ知識を伝えることで次の災害を防ぐ」という役割は、実は宮水の一族だけではなく瀧も担っていたことになる。

・瀧と三葉が口噛み酒の奉納の翌日、10月3日の朝に涙を流しているのは。口噛み酒の奉納後ご神体から出てくる時に「半分」を置いてくることになったから。ご神体に入ったのは三葉(瀧)で、口噛み酒を作ったβ三葉ではないので、口噛み酒が代わりにはならなかった。このタイミングでコミカルだった雰囲気が急にメランコリックなものに変わり、また互いに相手を異性、というより「欠けた半身」として意識するようになったように見える。

・口噛み酒の効力は記憶の注入に加え入れ替わりを強制的に発動させること。α瀧が口噛み酒を飲んだ時にはβ三葉は死亡しているが、ご神体の中は「あの世」であるため、あの世にたゆたっていたβ三葉の魂がα瀧の肉体に入れ替わった。一方、β三葉の肉体は既に存在しないため、α瀧の精神は直近の入れ替わりポイント、つまりβ三葉の物理肉体が最後に目覚めた10月4日の朝の時点に入れ替わった

・東京での2回のβ三葉の時空移動(2013年、2022年)は須賀神社のお導き。2回目はもちろんだが、1回目にも須賀神社にお参りしたシーンの後に電車に乗っている。須賀神社は瀧の住む新宿区若葉の氏神。神社の娘である三葉が瀧に会えるように願をかけるのは何の不思議もない。

・まず、瀧の住所は新宿区若葉で(作中も)確定。小説版では千代田区六番町という記載があるようだけど、パンフレットにもある「四谷と新宿の間の高台」から外した設定にしたのは、「新宿区若葉」でググると四谷鮫河橋貧民窟がヒットするのでそれを避けたいと思ったんだろう。新宿区若葉の氏神は須賀神社。

・次に2022年の三葉の住所。まず電車での出会いのシーンについて、代々木駅や地下鉄北参道駅のシーンが引っかけで入るが、すれ違いのシーンそのものには場所や路線の手がかりはない。そして、並行して走る路線で、すれ違い後に最初に止まる駅が新宿と千駄ヶ谷ということは、中央線快速と普通が千駄ヶ谷~信濃町間ですれ違ったということになる。なお、すれ違いの瞬間には三葉は瀧のところに向かおうとしていないので、左右の反転は発生していない。

・三葉は千駄ヶ谷で降りた後神宮外苑を信濃町駅に向かって走る(この時点では左右反転が発生している)。つまり、向かっている場所は電車で戻るより千駄ヶ谷駅から走ってしまった方が早い場所ということになる。そういうエリア、つまり信濃町駅の外苑東通り西側に三葉のマンションがあるのだろう(ちなみにSUUMOで見てみると家賃が6万円台のマンションが結構ある)。このエリアの住所は新宿区信濃町。ここの氏神も須賀神社だ!

・映像としては省略されたが、瀧は三葉が信濃町駅で電車に乗ったのに気づいたのだろう。四谷に住む瀧は信濃町が乗換駅でないため朝に乗ってくるのは地元民でしかありえないことを知っているし、若い女性が一人暮らしするエリアの見当も付くはず。ちなみに駅の南側にはマンションが無く。駅の北東側はとある新興宗教教団の聖地なので一般人が住む建物は少ない。そして外苑東通りをある程度北に進むと四谷三丁目が最寄り駅になる。

・三葉は自分が信濃町に住んでいることを瀧が気づき、瀧が必ず探しに来ると確信した。駅で待ってるのも普通だけど、家で待とうと思ったのではないか。その後は追いかけっこが始まり、導かれるように互いの氏神である須賀神社へ、と。SparkleのMVには須賀神社の階段で高校生の瀧が三葉の存在を感じて振り向く、というシーンが入っている。瀧も三葉も何度かこのような体験をしたのだろう。

・そして須賀神社はヤマタノオロチを退治した素戔嗚が祭神。言うまでも無くヤマタノオロチもティアマトも龍神。

・須賀神社は出雲が発祥だが福岡にも存在し、1200年前に隕石が落下している。そして隕石がご神体になっているのではなく、神社ができた後に隕石が境内に落下している。日本を舞台にした龍神とスサノオの戦いは何千年も続いている!

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2016年11月 7日 (月)

蠢くものたち@hpgrp GALLERY TOKYO(2016/11/07)

今日の夕方は散歩のついでに表参道のhpgrp GALLERY TOKYOに寄り道。植葉香澄、宮田彩加、吉田潤という3人の作家のグループ展が開催されていた。「蠢くものたち」というおどろおどろしいタイトルだが特にグロかったりはしないのでご安心。

展示の中で一番気になったのは宮田彩加の作品。織物から出た糸がそのまま刺繍に続いていたり、電動ミシンを使って編まれた編み物の一部の形が大きく崩れていたり(電動ミシンに与えるプログラムにあえてバグを含ませた結果らしい)と、意図を使った作品として様々な可能性に挑戦しているのが興味深かった。

他の二人の作品も結構面白く、見ごたえのある内容。またどこかで見てみたいな。

Web31

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2006年6月11日 (日)

自宅の音楽環境

ここまでは別の場所に書いた記事をコピーしてエントリを作っていたけが、前の記事で一応コピーは終わり。ここからの記事は基本的にリアルタイムになる。ただ、昔行ったライブの感想を時系列に関係なくエントリに起こすこともあると思う。

区切りということで僕の自宅での音楽とのかかわりをちょっとまとめておきたい。別に人様に威張れるようなものじゃないけれど、自分なりのニーズを満たすには試行錯誤があったんで、ひょっとしたらアメリカに住んでる人の音楽ライフに参考になる部分があるかもしれない。

ハードウェア

アメリカのオーディオ機器は(他の電気製品もそうだけど)ハイエンドとローエンドの分化が激しく、手ごろな性能の製品というのがなかなか見つからない。具体的には、$200以下で売ってる20年前のラジカセのようなゴテゴテした製品(今時カセットデッキがついていたりする)しか量販店には置いてなく、その上になるといきなり$1,000を超えるようなピュアオーディオ製品、あるいはホームシアターしか見つからなくなる、という印象があった。日本で3~5万円くらいのちょっといいミニコンポが欲しいなぁと思っていたのだがとんと見つからなかったのだ。

最近ようやく見つけたのがONKYOのCS-V720という製品。DVDデッキ内蔵で、SACDやDVD-Audioにも対応している。音質についての評判も同じ価格帯の製品に比べて頭一つ出ているというものが多い。僕はJ&Rで$350で購入。それほど音にこだわりの無い人でも、DVDとミニコンポを別々に買ってケーブルを揃えたりする手間と値段を考えれば出せない額ではないのではなかろうか。僕は音質には充分満足している。

CS-V720のもう一つの大きな特徴は光デジタル端子を備えていること。日本のミニコンポには結構付いていたと思うのだが、アメリカでは僕の知る限りの他のミニコンポには付いていない。僕は7年前の古いノートブックにUSB Audioアダプタを取り付け、光デジタルケーブルでCS-V720に繋いでジュークボックスにしている。贅沢な使い方かもしれないがびっくりするような高音質を楽しめるので環境を作れる人にはぜひ勧めたい。USB Audioアダプタは$20~$30程度で入手が可能だ。僕はTurtle Beach社のAudio Advantage Microという製品を使っている。USBメモリー程度のサイズでヘッドフォンにも接続が可能だ。

ソフトウェア

実は自宅ではほとんどCDを聴かない。代わりにインターネットラジオを流しっぱなしにしている。基本的にジャズ、疲れたときにはアンビエント・チルアウト。選曲が一番肌に合うのはradioioJazzで、気分にあわせてSKY.fmのSmooth Jazzを。SKY.fmにはModern Jazzチャンネルもあるが、ちょっとハードすぎるのでBGMに流すには辛い。アンビエント・チルアウトにはradioioAmbientのほかSKY.fmのChillout・Ambientを。Monkey Radioも好きなのだが、ちょっと曲の数が少ないか。なお、SKY.fmには月額$7の有料サービスとして192kbpsの高音質配信がある。ロックやポップスではあまり気にならないけど、ジャズやテクノでは128kbpsと比べると全然音の質感が違う。興味のある人は試してみて欲しい。

日本のポップスが聴きたいときにはSickOnionを。一時はJ-Pop専門チャンネルが結構あったのだが最近はずいぶん減ってしまった。96kbpsと音質はちょっと寂しいが選曲のセンスはいい(他のJ-Pop曲はアニソンが多かったりする)。

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