2009年11月22日 (日)

Drawn Together - GEGO/SHIOTA@GOFF+ROSENTHAL(2009/11/20)

この週末に有給を足し、ニューヨークに3泊で遊びに来ている。プライベートかつ一人でニューヨークに来るのは2年ぶりで、やっぱり開放感が違う。

朝に到着しホテルに荷物を預けて最初に出かけてきたのはチェルシーのギャラリー街。今回はそこそこ収穫があったのだが、その中でも紹介しておきたいのがGOFF+ROSENTHALで開催中だった塩田千春とGertrude Goldschmidt(GEGO)の二人展。僕は塩田千春の作品はバスタブの中で泥をかぶったりとか黒糸で絡め取ったピアノを燃やしたりといった大技系のものの印象が強かったのだが、今回の作品はギャラリーというサイズの制限もあってかおとなしめで、小さな仏像をケースの中で絡め取ったり、部屋の隅に黒糸でくもの巣のようなインスタレーションを行ったりというもの。その作品のアプローチがGEGOという亡命ドイツ人女性作家に似ているということで今回の展示になったそうだ。

塩田が使うのが黒糸であるのに対し、GEGOが使うのはワイヤ。だが並べて展示してみると(というか塩田がGEGOの作品を踏まえて新規に作成したそうだが)、似たような素材・アプローチでもこれほど印象が違うのかと思う対照的なものになっていた。まるで神経組織がむき出しになったようなヒリヒリする印象を与えるGEGOの作品に対し、一つ一つの黒糸の存在感というよりはそれが重なる空間で何かを訴えてくる塩田の作品。二人展という様式を生かした、良い展示だったと思う。

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2009年8月30日 (日)

Ghost Ranch and the Faraway Nearby@The Albuquerque Museum(2009/08/26)

出張でニューメキシコ州にあるアルバカーキに来ている。アトラクションの少ないビジネス都市で、夜に会食が入っていることもあって自由行動もできないのだが、昼休みに少しThe Albuquerque Museumに立ち寄った。

The Albuquerque Museumは博物館的な展示とギャラリースペースとを両方持つ、アメリカの地方都市によくあるタイプの美術館。正直言って博物館部分にも常設ギャラリーにもこれといった展示は無かったのだが、ゴーストランチの写真展を企画展で開催していてこれがちょっと面白かった。

ゴーストランチはアルバカーキから北に1時間ほどのサンタフェの近郊にある牧場。砂漠や岩山に彩られた奇観と、アメリカの国民的画家ジョージア・オキーフが住んでいたことで知られる。僕もニューヨークに住んでいた時に旅行で出かけたことがある。今回の企画展はCraig Varjabedianという写真家が出したゴーストランチの写真集のオリジナルプリントを展示したもの。訪れたときの記憶が鮮明に思い出されて懐かしかったのだが、惜しむらくはこの写真集はモノクロ。アンセル・アダムス風の味があると言えばそうなのだけれど、やはりゴーストランチの景色は赤・黄・白といったビビッドな原色が命。あえてモノクロにした狙いは空振りだったように思える。

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2009年5月31日 (日)

睡蓮の間@Musee de l'Orangerie(2009/05/29)

今週はパリに出張に来ている。3泊のうち2晩は仕事飯。昼間の打ち合わせ場所もホテルから離れているという悪条件で、その上仕事で来ている訳なので「そんな愚痴っぽいシャンソンを聞かせにパリまで来たんですかいジャポネの旦那」みたいなネゴをしてへとへとではある。だが、そこらの田舎街ならともかくパリに来て美術館にもジャズクラブ(シャンソニエでもいいけど)にも行かずに帰るというのは男が廃るというものだ。

そんなわけで最終日のフライト待ちの時間を使ってオランジュリー美術館に。この美術館の目玉はモネの「睡蓮」が8枚展示された「睡蓮の間」。モネの作品のために作られた2つの楕円形の大広間で、天井から自然光が降り注ぐ作りになっている。作品といい自然光といい地中美術館を思い出してしまうのだが、オランジュリーの方が広くて明るく、展示の性格はかなり違う。こちらは明るい分、ちょっと離れて見たほうが印象が強いかな。

もう一つ驚いたのは写真撮影がOKだったことで、実際多くの人がバシバシ写真を撮っていた。作品が撮影に耐えるのであれば作品に触れ合ってもらうために非常に良いことだと思う。

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2009年5月 5日 (火)

Krazy! The Delirious World of Anime + Manga + Video Games@Japan Society(2009/05/03)

現在Japan Societyでは日本の漫画・アニメ・TVゲームの3つのジャンルで"J-Pop Culture"を概観しようという展覧会Krazy!が開催されている。これは日本では見られない、とういかニューヨークで見てこそ価値のある展覧会なので、雨をついて出かけてきた。

残念ながら、1時間ほどかけて展示を見た範囲では正直あまりピンと来なかった。特に漫画では出展されている作品は面白く、アフロサムライから鉄コン筋クリート、さくらんといったいかにもというあたりから横山裕一のニュー土木のようなマージナルな作品、またJ-POPの源流としてきちんと江口寿志を取り上げているあたりもちゃんとしている。でも「日本のマンガカルチャーにはこんな作品がある!」という驚きに頼っちゃってるように見えるんだよなぁ。アメリカ人向けの展覧会としては正しいのだけれど、日本人が見るものとしては、サブカルチャーとして消費している作品をアートの文脈に置いたときに見え方が変わる、というケミストリーを出すためのキュレーションが欲しいと思ってしまうのだ。

また、ビデオゲームやアニメの展示内容が漫画とリンクしていないように見えるのも気になった。特にビデオゲームはパックマン、マリオとゼルダだけで全般的に物足りなかったな。ビデオゲームとしての完成度・市場への影響ではなく、他の文化エリアへの影響ということであれば別の作品を取り上げることもできたと思うのだが。

この展示会では関連イベントも多数開催しており、またカタログも分厚くてテキストも多い。本来そういった関連の活動も含めて意義を評価すべきなのだろう。そのあたりまでじっくり取り組むつもりの人はぜひどうぞ。

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2009年5月 2日 (土)

Yahoi Kusama - A Retrospective@Gagosian Gallery(2009/04/30)

先週の土曜日からアメリカに出張に来ている。前半のオーランドはライブハウスやギャラリーに出かける時間も方法も無かったのだが、本日移動してきたニューヨークはそのへん若干の自由が利く。今日もホテルへの移動の合間に少し時間があったのでチェルシーのギャラリー街を覗くことができた。

ちょっと面白いかな、という展示もいくつかあり、全体的にハズレではなかったんだけれど、紹介エントリを一本書くほどのものは少なく、Gagosianでやっていた草間彌生の回顧展がやはり一番書きやすそうだ。この回顧展はそこそこのボリュームのもので、屋内には平面作品と「鏡の部屋」、そして駐車場をシャッターを上げたままオープンスペースにしている場所で直島にもある水玉のカボチャという構成になっていた。面白いな、と思ったのは平面作品で、彼女の作品を論ずる際にはやはり立体作品の強烈な世界観が最初に来てしまうと思うのだが、平面作品だけをまとめて見ると非常にオーソドックスな抽象絵画で、とりわけ端正な構成の裏側にある強靭な知性が伝わってくる。展示のキュレーションも最初は平面作品だけを見られるようにしたもので(水玉カボチャは先に書いたようにドアが別になったスペース、鏡の部屋は部屋の中に小部屋を作り入り口を暗幕にしてある)、平面作品もじっくり見て欲しい、という意図があったのではないだろうか。

ギャラリーとは思えない良い企画。日本にも巡回しないだろうか。

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2008年12月 4日 (木)

鏡園-馬良撮影作品展@上海美術館(2008/12/02)

今週は上海に来ている。まぁお仕事というか国際会議でギリギリやるのが任務なのだが、オフタイムぐらいはドンパチやるよりブンチャカやろうよォと思ってTimeOut上海(あるのだ)を見てみたが普通のライブが全然無い。ひょっとしたらホテルやレストランで定期的に出演しているバンドの実力は侮れないのかもしれないけれど、これほどの大都市でこれはないんじゃないかなー。

そんなわけでせめてギャラリーぐらいは見ておこうと上海美術館に。常設展はやっておらず、現代作家の企画展が同時に3つ開催されていたのだが、圧倒的に目を引いたのが馬良の展示。上海の若手の写真家で、シュルレアリスティックな作品なのだが視点の面白さや写真としての質感、そして中国作家としてのアイデンティティを感じさせるリリカルな雰囲気がすばらしい。風景の中にシュールな扮装・ポーズをした人物を配した《小旗手》《郵差(郵便配達夫)》、セピアの墨絵風の写真、でも良く見たら題材はガラクタの上に漢文を置いた《二手唐詩》のそれぞれのシリーズが特に印象的だった。中国の現代写真家の作品はいくつか見た記憶があるが、彼の作品はその中でも白眉ではないだろうか。馬良だけに。誰が上手いこと言えと(ry。いやほんと、良かったです。名前を覚えておいて損は無しと思いました。

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2008年10月13日 (月)

Lee Ufan展@PaceWildenstein Gallery(2008/10/11)

まだまだ出張は続く。この週末はニューヨークにやってきた。月曜日にニューヨーク支社に顔を出すまでは自由時間なので少し息をつける。買い物だとか友達に会うとかやることはあるのだが、その合間にやはりギャラリーめぐりを。

今この日記でニューヨークのギャラリーを取り上げるとなると「横尾忠則展はどうなっていますか」と聞かれそうな気がする。そう、現在Friedman Bendaギャラリーで横尾忠則展は確かに開催中で、一応見ては来たのだが、結論としては今ひとつ。出展されていた作品の多くは先日世田谷美術館を巡回していたもので、最近のY字路シリーズなどが中心。展示スペースも広めに取ってあったのだが、今これをニューヨークで展示する意義が伝わってこない。ギャラリーのキュレーターも困ったのではないか。

で、コメントは別の展示を。今回はPaceWildenstein Galleryで李禹煥展を開催していたが、これが素晴らしかった。「もの派」の中心人物であり、ちょっと前の世代の作家さんかなという印象を持っていたのだが、今回の展示はそういう歴史性の黴臭さを感じさせない現役感バリバリのもの。ほとんど造形の手を加えていない石と鉄板によるインスタレーション、真っ白いキャンバスに、あるいは壁そのものに一つのストロークだけを置いた絵画など、静謐さと緊張感の両方を感じさせるものだった。

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2008年10月12日 (日)

Nedko Solakov展@Kunstmuseum Bonn(2008/10/10)

出張はまだ続いていて、今週はドイツのボンに来ていた。滞在中に音楽を聴きに行きたいと思っていたのだが、小さな街だけに面白そうなイベントが少なく、結局スケジュールが合わなかった。せめてギャラリーぐらいはと思い、最終日の会議の終了後、空港に向かう前の待ち時間にホテルの近くの美術館に。

Kunstmuseum Bonnは公立の近現代美術館。コレクションの軸は「アウグスト・マッケとライン印象派」および「ドイツの戦後美術」。前者は有名作家の作品もほとんど無く個人的にはあまり面白くはなかったが、ドイツ戦後美術のほうはキーファー、リヒター、ペンクなどのビッグネームの作品が並んでいて見ごたえがある。しかも知名度の低いドイツの作家と並べて展示されているのでドイツ美術という枠組みの中での位置付けも何となく分かるというオマケ付き。この美術館のためにわざわざボンに行くほどではないが、ボンに用事があるのなら立ち寄ってみて損は無いと思う。

ちなみにこの美術館は企画展もやっていて、現在開催中だったのはNedko Solakovという現代美術作家の個展。ビデオ作品とインスタレーションが中心で、正直あまりピンと来なかった…。

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2008年10月 6日 (月)

Nobuyoshi Araki: Bokuju Kitan@Hamiltons(2008/10/04)

今日も午後から時間が空いたのでギャラリーめぐり。有名どころの気になる展示は昨日廻ってしまったので、今日は小さめのところで気になる展示を廻ることに。ぱらぱらとTimeOutを眺めていると日本人らしい名前がいくつか目に付いたのでそれらを中心に足を運んだ。ギャラリーの雰囲気まで含めてどれも結構楽しめたのだが、一番インパクトがあったのはHamiltonsで開催中のアラーキーこと荒木経惟の「墨汁綺譚」展。

彼の個展を見るのは3年ほど前のニューヨークAnton Kern Gallery以来になる。その時は女性の緊縛写真を花の写真とコラボレートしての展示だったのだが、今回は直球の緊縛写真、しかも白黒で彼のパブリックイメージそのままのもの。実際新作ではなく過去30年の間に発表された作品から選ばれた展示らしいのだが、オリジナルプリントに墨で賛を書き込んだものが展示されるのは今回が最初だとか。実際、きめ細かな写真のテクスチャと墨のなまめかしさに圧倒される思いがした。

しかし、彼の作品を見るのは海外ばかりだな。日本で個展をやっていないはずも無いと思うのだけど、不思議と見つけられない。

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2008年10月 5日 (日)

Cold War Modern展@Victoria and Albert Museum(2008/10/03)

Serpentine Galleryからぶらぶら歩き、次に入ったのがV&A。今日の美術館めぐりの一番の目当てはここで開催されている企画展Cold War Modern。タイトルから想像が付くとおり、1945年~1970年の冷戦期のデザインに関する展示。欧米だけではなく東側ブロック、さらには中南米の作品なども展示されているのだが、日本や中国などのアジア圏はほとんど含まれていない。

V&Aというと工芸品というイメージがあるが、展示自体は芸術作品から報道展示までバラエティーに富む内容だった。この時代とテーマ、ぱっと見て面白い事を狙うのであれば大阪万博的なミッドセンチュリーデザインなり東側ブロックの濃い目のプロパガンダアートなりを中心に据えれば良いのだが、そこはあえてはずして渋めの展示になっている。冷戦期のデザインの流れを概観できる良質の展示になっていたのではなかろうか。こういう骨太の展示を見ると、日本の同時代を扱ったデザイン・工芸品展がビバ三丁目の夕日のレベルに留まっているのがちょっと悲しくなる。

日本人の視点から見て残念なのが、アジアの冷戦が全くスコープに入っていないこと。アジアは今でも冷戦真っ盛りなわけであり、先の北京オリンピックを見ても国威発揚のためのプロパガンダは現役だ。日本もその構造の一方の当事者であるし、朝鮮半島の状況はまたいろいろある。この種の冷戦構造と現在のデザインの組み合わせとを、欧米・ソビエト圏の冷戦時のデザインと比較できたらさぞ面白かったのにと思う。とはいえ、それはイギリスの美術館ではなく、日本人自らが取り組むべきテーマなんだろうが。

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