現在森美術館で開催中なのはインド現代美術展。インドはイギリスの影響を受けてちゃんとした画壇というか美術界があり、いかにもというクラシックな現代美術をやっている作家もいるそうなのだが、この展覧会に出展した作家は1960年代以降生まれの新世代の人々だそうだ。インド現代美術展としては過去最大級のもので、森美術館のあとは韓国・オーストリアに巡回するのだとか。
森美術館の展覧会は毎回友の会メンバー向けの展示日MAMCナイトを設けており、僕もそれに合わせて訪問した。前半は館長の南條史生氏による充実したギャラリーツアー。インドの現代美術というと、欧米や中国のものと比べ、どうしてもエキゾチック・エスニックなものを想像してしまうが、展示されている作品はバラエティーに富んでいる。路上の貧困などある意味イメージどおりの手間を取り上げたもの、逆に国籍不明でどこの国の作者だと言われても納得してしまいそうなもの、金箔細工などの伝統的な工芸技術を利用したもの、そして僕がITエンジニアとして知る同世代の若いインド人の生活感覚を感じさせるもの。中でもインド作家ならではという印象を受けたのはプシュマパラという女性写真家の作品。彼女の作品は新聞や書籍などに登場するありふれたイメージに自分が登場して写真を撮るというもので、方法論的にはシンディ・シャーマンとかが採用していたものだ。が、シャーマンの作品がアメリカのパブリックイメージの匿名性を際立たせるものになっていたのに対し、プシュマパラの作品はインドの多様性を強く感じさせるものになっている。同じ手法を用いてもバックグラウンドが違うとこれだけ違うテーマになるものかと感心した。
南條館長のトークもなかなか面白いもので、普段のギャラリートークではここまでの話は出ないんじゃないかなというネタがいろいろ出てきた。例えば展覧会タイトルの「チャロー!インディア」。「チャロー」ってヒンディー語の中でも語呂が良いしタイトルにいいかな、という軽いノリで最初は発案されたらしいのだけれど、インド人に聞くと歴史に詳しい人の中に「日本での展覧会のタイトルにはちょっとどうかな…」という人がいたらしい。実は、太平洋戦争中に日本に協力してインド独立を目指したインド国民軍のスローガンが「チャロー!デリー」だったそうなのだ。企業だとそういう話が出た時点でこのタイトルはボツだろうと思うのだが、館長はこの話を聞いてそれはインドと日本の関係を含む意義深いタイトルだということで押し切ったらしい。
MAMCナイトの後半はシタール奏者ヨシダダイキチ氏のライブ。シタールのライブというと古典音楽かはたまたボリウッドかと思っていたのだが、今日の編成はシタール、ラップトップ、手拍子&合の手×2というかなりコアなもの。編成のイメージどおりまるでStoneかRouletteかというようなエクスペリメンタルなライブだった。ミュージアムライブで音響はかなり悪かったが、低音が本格的に出せる場所で演奏したらこれは結構トベると思う。後で調べてみると、このヨシダダイキチ氏はボアダムスのヨシミと「サイコババ」というユニットを組んで何枚もアルバムを出していたとか。さもありなん。30分ほどのライブだったが無料とは思えないいいものを聴けた。
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