2009/09/18

RFID Update誌廃刊

長年愛読してきたRFIDのニュースメルマガRFID Update誌から、同誌がRFID Journalに買収され、メルマガの発行も終了するという案内が送られてきた。編集者はRFID Journalに移籍するとの事。執筆時にはRFID Update誌のサイトには案内が出ていないが、RFID Journalのほうには記事が掲載されていた(RFID Journal: RFID Journal Acquires RFID Update)。

RFID Updateは今年の夏ぐらいから配信を休みがちになっていたのである程度はこういう事態は覚悟していた。だが、他にもRFIDのメルマガはいくつかあるがカバー範囲が狭かったりプレスリリースを引き写すだけだったりの低レベルのものが多く、RFID UpdateはRFID Journalと比較できる記事の質とカバー範囲を持つ唯一の存在だっただけに、現実に起こってしまうとやはりとても惜しい。

以前に無線デバイス一般系のニュースサイトを見ていて「RFID業界は本来そう呼ばれるべき技術だけではなくNFCやRTLSやセンサーネットワークなども含んでいるように見せるメディアがいることで実態以上に大きく取り上げられている」という論評を見かけた。いささか悪意を感じる内容だったが一面の真理を含んでいないわけではない。Gen2製品とRTLS製品の類似点よりWiFi製品とRTLS製品の類似点のほうが技術的にもビジネス的にもずっと多いだろう。Wal-Martブームのころは寄らば大樹の陰で何でもRFIDと付けることにメリットがあったのだろうし、その後も大きな業界の一部であることのメリットはあったのだろうが、技術の成熟・普及によってRFIDという旗の下に寄り添う必然性は小さくなっているようにも思える。RFID Update誌の廃刊は「RFID業界というコンセプト」の解体過程の一環なのだろうか。

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2009/06/04

Gen2タグの生産調整

先日ODIN Technologies社がRFIDタグの価格ガイドを公表した(RFID Tag Pricing Guide)。これは個別の製品やリセーラーの価格を提示するものではなく、以下の3つのジャンルの製品について購入数ごとに高値・安値・平均を記述したもの。例えばUHFのスマートラベルを1万枚発注する場合の平均単価は15セントになる。

  • HF 4" x 6" Smart Labels
  • UHF 4" x 6" Smart Labels
  • Metal Mount Tag

従来はこのようにはっきりと相場観を提示する資料はなく、その意味で非常に価値のある資料である。但し、この値段はアメリカでのもので、日本の価格はざっとこの2倍ぐらいになるのではないかという印象を持っている。

なお、この資料は上記のリンクから無料で入手できる(同社のオンラインショップに誘導されるがカード番号などの入力は不要)。

この資料ではUHFスマートラベルの最安値レンジが9セント(100万枚発注の場合)になるなど、アメリカでは着実にGen2タグ・ラベルの製品の価格低下が進んでいるように見えるが、ベンダーの側は楽ではないようだ。RFID Update誌に、サプライチェーンタグの爆発的な普及を見込んで生産設備に投資したベンダーがそれらの設備を休止させているという記事が掲載された(Slowing Sales Bring Change to RFID Smart Label Suppliers)。

この記事によると2009年のケース・パレット用途でのGen2タグの利用数は2億枚強。2003年時点ではWal-Martだけで2009年に350億枚利用するようになるだろうとの見込みが語られていたとのことなので、この規模に合わせて設備投資を行っていたらそれは辛いだろう。さらにこれらの設備はケース・パレット用のタグ・ラベルを前提としているため、利用が伸びている航空手荷物やアパレル単品にはうまく適応できないらしい。

生産調整の例として最初に取り上げられていたのはAlien Technology。同社は最新鋭のインレー製造プロセスFSAを採用したFargo工場を閉鎖し、通常型製造プロセスの工場に生産を集約させることとした。FSAとはFluidic Self -Assemblyの略語で、RFIDチップを液体と混ぜてフィルムの上に流すとフィルムの窪みにチップがはまっていくという製法。Alienではフィルムの上に直接アンテナを貼り付けているわけではなく、「ストラップ」と呼ぶずっと小型の部品に取り付ける。このストラップとアンテナを組み合わせてインレーに加工するのだが、この加工は通常の工作精度で行えるため、中間ステップを加えても最終的な製造コストは安くなるというのが当時の理屈だった。ただ、素人目にもこの製造方法は設備が複雑になるし、多数の種類のタグを少量ずつ切り替えて生産することには向きそうにない。このFSAプロセスは導入当時には「5セントタグを実現する切り札」として日本でも大きなニュースになった記憶があり、今回の報道を目にしていささか複雑な思いがあった。

他の企業の動向としては、Zebra Technologiesがスマートラベルの製造を4月末で打ち切った、大手スマートラベルベンダーのNashua社がCenveo社に買収されたなどのニュースが取り上げられていた。

これらのニュースはRFID業界全体の不振を示すものではない。Gen2チップのレベルではAlien Higgs 3、Impinj Monza 3、NXP G2XLなど新世代の製品が着実に投入されているし、タグの分野でもInvengo社が5.8セントのインレーを投入するなど新しいプレイヤーの参加も活発だ。このニュースの意味はWal-Martモデルが最終清算段階に入ったということだろう。

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2009/04/23

統合サプライチェーンRFIDシステムMerchandise Visibility Solution

小売業向けセキュリティベンダCheckpoint Systems社がサプライチェーン向けのRFIDビジビリティシステムMerchandise Visibility Solutionをリリースしたというニュースが流れた(RFID Update: RFID Baby Born from Checkpoint-OATSystems Marriage)、RFID Journal誌では現時点ではベタ記事扱いだが、これは来週開催されるRFID Journal LIVE!に合わせて大きく取り上げるということだろう。

このシステムは主にアパレル分野を対象とし、RFID技術を用いて統合的なビジビリティを提供するというものであり、同社のCheckNetインフラと連動して動作する。Baird社のRFID Monthlyの2009年4月号によると、その機能は以下のようになる。

  • 小売業者がCheckNet経由で発注を行うとRFID値札が自動的に作成されメーカーに送付される
  • メーカーはRFID値札を納品する商品に取り付ける
  • メーカーの梱包台にはRFIDリーダーが取り付けられ、商品と箱のタグを読み取って正しく梱包がなされたことを確認する
  • 出荷時にタグが再度読み取られ、ASN(事前出荷情報)としてCheckNet経由で納品先の小売業者に送られる
  • 小売業者の物流センターではASNとタグ情報を元に検品が自動的に行われる
  • 物流センターから小売店舗への出庫時も同様にRFIDリーダー付きの梱包台が利用され、梱包確認と検品が自動で行われる
  • 店舗のバックヤードから店頭への移動時にもゲートのRFIDリーダーが移動を読み取る
  • 販売された商品のタグはレジで取り外され、その時点で店頭在庫から取り除かれる
  • タグを付けたままの商品が店舗から持ち出されようとした場合はRFID-EAS(電子商品監視)ゲートで検出される

なお、Merchandise Visibility Solutionはモジュール構造になっており、必要な機能のみを選んで導入することができる。既にヨーロッパの小売業者のいくつかが製品の評価を開始しているとのこと。

コンセプトとしては決して目新しくない。また、一つ一つの機能は過去に発表され実用化が始まっているものでもある。だが、これが統合パッケージソリューションとして実際に販売を開始し、それを評価している顧客がいるというのは感慨深いものがある。RFID技術の導入リーダーは完全にアパレルになってしまったんだなー。

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2009/02/20

プロモーションパレットビジビリティの挫折

従来から「サプライチェーン・ビジビリティの代表的な成功事例」として喧伝されていたProcter & Gamble(P&G)とWal-Martによるプロモーションパレットのプロジェクトが中止されたことが報道された(RFID Update: RFID Leader P&G Steps Back from Promotions Tracking)(RFID Journal: Procter & Gamble Halts Tagging of Promotional Displays)。

このプロジェクトについては日経ITPro Webで書いたことがあるので詳細はそちらを参照してほしい(RFID World Watch: 改めて考えてみたサプライチェーンのビジビリティ)。記事を読むとずいぶん囃しているが半年も経たずに中止になったのかよと言われれば不明を恥じるほかはない。ただ、この記事が出た時点ではWal-MartもP&Gも、そして両者が所属するEPCglobalもこのプロジェクトが大成功であると積極的に広報していたし、サプライチェーン・ビジビリティに懐疑的な論者すらこの事例が成功していることはほぼ認めていたのだ(「インフラ投資に見合ったメリットが出ているわけではない」「実際の商品に適用できるのか」という批判は当然あった)。

P&Gはこの終了について「Wal-Martとの間での評価作業を終了したから」としか述べていないが、RFID JournalとRFID Updateの記事をつなぎ合わせてみると背景が見えてくる。システムの機能としては問題は無く、プロモーションパレットが正しく扱われていない状況はP&Gから見えているのだが、それをWal-Martに伝えても満足な対応が取られなかったようなのだ。

一般メディアにはこのプロジェクトの失敗をRFIDの失敗と捉えるものもあるかもしれないがその誤解は大きな問題ではないと思う。RFID業界に突きつけられた課題は、企業間連携の難しさという昔ながらのテーマだ。技術的な問題は無い、データには厳密性は影響されない、得られる利益はゼロサムではなくWin-Win、これほどユルい条件でなおコラボレーションが成立しないのか。いやそれはWal-Martが駄目すぎるんだよ、という考え方もあるだろう。確かに駄目すぎる。だが、駄目なことを前提としてどういう協業モデルを組むのか。正しくアクションを取らなければ罰金を払うことにする?だが、それはWin-Winモデルを崩すことになるし、Wal-Martにはデータを隠すインセンティブが生じる。その下で協業が成立するのか?僕には分からない。

なお、これはプロモーション管理がRFIDのマーケットとして不適ということを意味しているわけでもない。店舗とプロモーション管理者が同じ組織であれば上記の協業の問題は発生しないのだ。例えばドラッグストア大手のWalgreenは社内でRFIDを用いたプロモーション管理を2005年から行っている。

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2009/02/10

ユニークIDトラッキング問題をYouTubeを見ながらもう一度考えてみる

CASPIANの創設者Katherine Albrecht女史がオランダの検索エンジン企業Ixquickのアメリカ広報部門の責任者になったそうで、RFID UpdateやRFID Journalがベタ記事で取り上げていたのに笑った。なんだよー、なんだかんだ言ってみんなキャシーのことが大好きなんじゃないか(笑)。僕も彼女のことはいろいろなエントリで批判的に取り上げてきた。RFID反対活動のためなら嘘をついてもいい、という態度は不快だし長期的に活動の信頼性を下げることになると考えている。ただ、RFID業界の「向こう側」の人として馴れ合いを排して反対すべき点には反対する、というのはあるべき態度の一つとして認める。

で、このエントリの本題は「こちら側」の人の話。セキュリティ専門家のChris Paget氏が西半球旅行イニシアチブ(WHTI)カードの危険性を証明するため、サンフランシスコの街中でWHTIカードを車から読み取る実証実験を行い、そのビデオをYouTubeで公開している(Cloning passport card RFIDs in bulk for under $250, 5分31秒)というニュースがRFID Updateに紹介されていた(Latest Anti-RFID Video is Actually Worth Watching)。WHTIカードはアメリカの近隣国との旅行の際に利用する簡易パスポートで、多数の入国者を迅速に処理したいということで通常のe-パスポートで利用されるICカード規格であるISO 14443ではなくGen2を採用している(日経ITPro: 米国国土安全保障省(DHS)、パスポートカードに無線ICタグの導入を提案)。Paget氏はWHTIにGen2のような長読取距離・非保護の技術を使うのは間違っていると考えており(僕も全く同感)、その危険性を広く理解してもらうためにこの実証実験を企画したとのこと。

使用している器材は特殊なものではなく、eBayで250ドルで買ったというMotorola XL-400。これをラップトップPCに接続して車に搭載し、WHTIカードのヘッダに該当するタグを読み取っていくというのが実験の内容。このビデオでは20分ほどのドライブ後に2件の読み取りしかなかったが、彼がビデオの中で述べている通り今後WHTIカードの利用者が増えてくれば取得できる件数も増えてくるはずだ。

実証実験の内容自体は未知のセキュリティを警告するというものではなく、ある意味仕様通りの動作に過ぎない。移動中の車からUHFパッシブタグを読み取るのであれば、例えばデジタルカメラやGPS、加速度センサと組み合わせ、読み取ったタグIDを周囲を移したデジタルカメラの画像情報とリンクさせ、位置情報・タイムスタンプと共に保存するぐらいのことはやって欲しかったという気もする(エントリ「Yet Another Gen2-based RTLS (PINC Solutions Yard Hound」も参照)。

だが、UHFパッシブタグのユニークIDによって個人のトラッキングが行えてしまうことを実環境で証明し、それを動画で記録したというのは僕が知る限り今回が初めてだ。ユニークIDトラッキング問題はコンセプトについては日本でも5年以上も前に散々議論された(例えば結城浩氏の「固有IDのシンプル・シナリオ」という記事がユニークIDの問題を網羅的かつ分かりやすくまとめており理論の整理としては現在でも手を入れる点はない)が、この問題への具体的な対応は利用者の納得というかリスク感に依存する部分も大きい。実際に起きうる状態を目で見るとまた考え方も変わってくるかもしれない。

未だにWHTIカードとかEDL(Enhanced Driver's License、陸上国境を持つアメリカの州が発行するRFID免許証)にGen2タグを使うというクレイジーな話が現実になるこの世の中、このビデオはぜひ多くの人に見てもらってユニークIDトラッキング問題について考えてもらいたいと思う。

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2009/02/03

パッシブUWB RTLS(Tagent Talon)

パッシブのUWB RTLSタグの試作品が完成し2009年夏に量産開始という記事がRFID Update誌に掲載された(Passive UWB RTLS System Passes Key Test)。この製品は1年ほど前に「開発中」というニュースが同じくRFID Updateで流れ、当時はフカシじゃないのかと思って放っておいた。ちなみに今検索してみたがなぜか記事が削除されている。今回の発表についてはRFID Wizard誌の記事のほうがやや詳しい(Tagent produces the first passive UWB RTLS and antenna on chip)。なおUWB RTLS一般については以前にエントリを書いたのでそちらも参照して欲しい(UWB RTLS)。

このTalonという製品を開発したのはTagentというベンチャー企業(製品データシート pdf形式)。記事を読んでみると正確な意味でのパッシブ、つまり受け取ったキャリア信号にデータを乗せて返信するという製品ではない。通常のリーダーの他にマイクロ波の給電装置を用意し、タグはそこから電力を受け取って別の周波数帯の信号を送信する方式となっている。同社はこの方式を"No-Battery Active Tag"という名前で呼んでいる。

この製品の具体的なスペックは以下の通り:

  • アンテナの読み取り範囲は10m
  • 給電装置のカバー範囲は1m
  • 測位制度は25cm
  • 読み取り速度は毎秒5,000枚
  • タグのサイズは2mm×2mm×0.1mm
  • 格納できるデータは128bitのリードオンリー
  • 予定価格は、タグが30セント、給電装置50ドル、リーダー2,000ドル

僕はこのスペックをざっと読んで「RTLSとしてはどうもちぐはぐだなぁ。値段が安いのはいいけど読み取り距離や給電距離が短すぎる」と思ったのだがRFID Wizard誌の記事の写真を見て誤解に気付いた。タグがパッシブ製品よりもずっと小さいのだ(数字をしげしげ見ると分かる話だが…)。この製品の最初のターゲットは病院内での血液サンプルの試験管だという。このサイズであればラベルに余裕を持って埋め込むことができる。実質的にはパッシブタグと競合するユースケースで、位置情報もオマケで取れるという使い方をするのだろう。

将来このタグをアクティブUWB製品のリーダーでも読めるように拡張するというビジョンがあるという。現時点ではUWB RTLSの標準は無いので、標準化プロセスに合わせて製品を改良していくなら可能性はあるだろう。UWB RTLS製品は成長率の高い分野で、その中でも病院向けシステムはニーズが高いということは何度か触れてきた。ちょっと面白い製品に育つかもしれない。

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2009/01/22

2008年中国RFID十大ニュース(RFID World China)

RFID Update誌に中国のRFID業界紙RFID World Chinaの分野別2008年十大ニュースが出ていた(2008 China RFID Industry Annual Awards Announced) 。このテーマは昨年もエントリで取り上げたので(中国のRFIDの現状(RFID World Chinaによる各分野十大ニュース))、それと比較しつつ内容を取り上げてみたい。

2008年ベスト中国タグベンダー

  1. Invengo
  2. Aisino
  3. Fudan Microelectronics
  4. ASK-TongFang
  5. Mango

2008年ベスト中国リーダーベンダー

  1. Invengo
  2. Sense Technology
  3. Raifu Intelligent
  4. Academy of Aerospace Technology
  5. JiuZhou

2008年ベスト中国アクティブ製品ベンダー

  1. Super RFID
  2. Bisa Technologies
  3. FHteck

2008年ベスト中国急成長RFIDベンダー

  1. ZTE Corporation
  2. JiuZhou
  3. Academy of Aerospace Technology
  4. Avanti ID idea
  5. C&C RFID Shanghai Co.

2008年ベスト中国RFID SIベンダー

  1. ZTE
  2. Aisino
  3. TsingHua TongFang Smartcard

去年のベスト10ベンダの中で上のリストに名前が出ているのは半分(Invengo、Fudan Microelectronics、Sense Technology、ASK-TongFang、Raifu Intelligent)。去年のリストは国民IDカードプロジェクトを反映してそれに関係あるベンダが入っていた、というのもあるのだろうが、それでもこの入れ替わりの速さは中国ならではだと思う。アメリカや日本で同じ調査を行うと新しく入ってくるのは1社か2社ぐらいではないか。

2008年ベスト国際RFIDベンダー

  1. TI
  2. Alien
  3. NXP
  4. Intermec
  5. OMRON
  6. ST
  7. Impinj
  8. Zebra
  9. Reva Systems
  10. Psion Teklogix

OMRONが5位に入っているのが同慶の限り。RFID Update誌が最近出版したレポートによると全世界ではAlien・Impinj・Motorolaがトップベンダーとして認知されているということなので(RFID Update: Alien, Impinj, and Motorola Top RFID Update Rankings)、そのうち2つより上位に来たというのは素晴らしいことだ。OMRONは中国でも現地化を進めていてSCAN & RFID Chinaでも中国人エンジニアがプレゼンをし、OMRON全体での取り組みと中国の取り組みを説明していたことを思い出す。

2008年中国のRFID事例トップ10

  1. Aisino RFID technologies were successfully used in Beijing Olympic Game for Food Security
  2. China introduced the first 24 hour self-service library
  3. ESeal/eLock applications in container transportation from Shanghai to American ports
  4. RFID application in monitoring RFID medical wastes
  5. Avanti implemented the largest RFID manufacturing application in southeast China
  6. Sichuan Province widely promoted RFID system in CNG cylinders dynamic monitoring
  7. Basch Group provides converting machine for RFID tickets of Beijing Olympic Games
  8. RFID application to track pig from "farm-to-fork" & RFID food security tracing information platform
  9. Hangzhou Library adopted RFID technologies in full scale
  10. Shanghai 2008 Tennis Masters Cup used RFID ticket complied national Encrypt algorithm

主要な応用分野はチケット・図書館・セキュリティというクローズドな定番用途という印象は去年と同じ。その中では5番の"largest RFID manufacturing application"という事例が気になる。また、2番の図書館事例"first 24 hour self-service library"というのも画期的だと思うのだが。これらの事例は欧米のメディアで取り上げられたのを見たことがない。
キナ臭い印象のあるのが10番の"national Encrypt algorithm"。ICチケットで独自規格への対応が求められるようになるのか、注意してニュースを追っていきたい。

2008年中国のRFID重大事件トップ10

  1. The Ministry of Science and Technology issued the guideline for applying 863 RFID project in manufacturing
  2. The National Library (the national digital library) fully implemented RFID system
  3. World Expo Shanghai 2010 will use "Huahong Chip" in 80 million RFID tickets
  4. RFID World China published the fist ever RFID Buyers' Guide in China
  5. The first UHF RFID chip in Asia was certified by EPCglobal
  6. Shanghai established the first international ocean route for RFID-enable containers
  7. National Gold Card project issued "the Blueprint of National IC Card application 2008-2013"
  8. RFID technologies were widely adopted in Beijing Olympic Game
  9. Ministry of Transport promoted Electronic Toll Collection nation widely
  10. Avanti implemented the largest RFID manufacturing application in southeast China

5番の"The first UHF RFID chip in Asia was certified by EPCglobal"は上海坤鋭電子(Shanghai Quanray Electronics)の製品。タグだけではなくチップも自社開発のQR2233(これは昨年の製品トップ10に入っていた)。独自チップによるEPCglobal認証はルネサステクノロジ(RKT132)に先立つ快挙で、もっと上位に来てもいいニュースだと思う。
他のニュースは比較的地味。本が出たみたいなニュースが2つ入っているし。

2008年中国のRFID製品トップ10

  1. Highway Electronic Toll Collection System
  2. S1871 UHF RFID Mini-Reader Module
  3. Advanced Smart Contactless CPU Card FM1208
  4. RFID 24 Hours Self-service Library
  5. 2.4GHz/13.56MHz Dual-frequency RFID Tag
  6. Invengo 502E Fixed Reader
  7. KX1001 KX1201 RFID Chip
  8. SuperRFID Wireless Vehicle Detector
  9. PiP tag Inlay
  10. Wi-Fi Real-Time Locating Tag

昨年に引き続きソリューション・技術分野・個別製品がごっちゃになったリストでちょっと感触が分からない。上のリストにある上海坤鋭電子の認証Gen2タグが入っていないあたり、中国マーケットでのGen2技術の位置付けが分かる気がする。

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2009/01/14

VDC Research社によるRFID市場予測見直し

老舗の電子系市場調査会社VDC Research社がRFIDの市場規模予測を引き下げた、という記事がRFID Update誌に掲載された(VDC: RFID Growth to Slow Sharply, But No Contraction)。

同社によると、2009年の年間成長率は事前の予想である30.5パーセントから9.2パーセントに引き下げられた。2010年にもマーケットは充分に回復せず、年率20パーセント以上の安定した成長に復帰するのは2011年以降になる。これにより、2007年から2012年までの年平均成長率(CAGR)は32.7パーセントから23.2パーセントに低下することになる。

分野別に見た場合、アクセス管理やIT資産管理は比較的堅調であると予想される。一方で、自動車業界では大きく需要が落ち込み、医薬品分野でも2次元バーコードとの競合が激しくなり普及が遅れると考えられる。医薬品や製造業は多くのRFIDベンダが主要ドメインとして注力している分野であるため、成長率の低下は合併・買収などによる業界再編を加速するだろうとしている。

また、RFIDベンダがこの環境を生き抜く方法として、見込み客に具体的に役に立つ情報を提供して関係を強化する、RFIDの機能や効果を誇張することを避ける、コアとなる技術への投資を続ける、顧客の既存の環境との接続性の高い製品を提供する、などの点を挙げた。

以前にRFID市場予測を紹介した時点からも経済環境の悪化が止まらない。現在のように不況の底が見えない状況では、RFIDがどうこうというより新規投資全体が冷え込んでしまうのは避けられないのだろう。

なお、VDC Research社による本件の情報は文書ではなくWebセミナーとして提供されている。43分とちょっと長いが録音したものを無料で視聴できるので興味のある方はどうぞ(What's Next: RFID Market Update, Trends and 2009 Outlook)。

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2008/12/19

2008年RFID業界の主な出来事

例年RFID業界10大トレンドを発表していたRFID Update誌が2008年分の発表を見送った。今年は今後のトレンドを決めるような大きなニュースが無かったというのがその理由。個人的にも同じ印象を持っていたのでこの判断には納得できる。ただ、年末の締めくくりの記事を何も書かないというのも寂しいと思ったらしく、"9 Things RFID Will Be Remembered for in '08"として9つのトピックスを取り上げている(Part 1: #9-#7)(Part 2: #6-#4)(Part 3: #3-#1)。確かに十大ニュースにしなかっただけあり、地味な項目が並ぶ。個人的には発表時に目をつけてこのBlogで取り上げたテーマとほとんど重なっているのがちょっと嬉しい。

#9 - UWB Grows Up Fast
 2008年初めの時点ではUWB技術を使ったRTLS(エントリ「UWB RTLS」を参照)はニッチ技術だと考えられてきたが、この一年で大きく成長した。特に、Cisco SystemsやMotorola、AeroScoutといった既存のベンダーがUWB RTLS製品への対応を行ったことが大きい。現時点ではUWB RTLS製品を提供するベンダーはほんの数社であり、製品に互換性が無いことを考えると、これは驚くべき結果である。

#8 - Not Even Metal Blocks UHF Progress
 Gen2製品のパフォーマンスは2008年を通じて向上し続けた。特に注目すべき点は、金属環境で利用しても充分な性能を発揮するタグが登場した点である。その代表はOmni-ID社の製品であるが、他のベンダーの製品も独立したテストにより金属環境でのパフォーマンスの向上が確認されている(エントリ「メタルはイケてるぜ!!(even if you employ Gen2 technology)」を参照)。

#7 - Near Field Communication Get Nearer
 近距離無線通信規格(NFC)の大規模な普及はまだ実現していないが、普及に向けての障害は着実に取り除かれつつある。業界団体であるSmart Card AllianceとNFC Forumは活動を進めているし、AIRTAG社はアプリケーション開発キットをリリースした。また、RFIDタグ大手ベンダUPM Raflatac社はNFC製品のサポート拡大を公表した。

#6 - Startups Broaden RFID Spectrum
 今年は多くのベンチャー企業が興味深い製品を開発した。もっとも注目を集めたのはGen2タグを長遠距離から読み取るシステムを市場に投入したMojixだろう(エントリ「Mojix STAR System (超遠距離Gen2タグ読み取り+高精度位置情報)」を参照)。その他にも、Omni-ID社はスペーサーに頼らず金属・水分に強いタグを投入、セキュリティ強化タグや印刷タグの分野でもベンチャー企業の新製品が目立った。

#5 - Funding Flow Slows
 RFID業界のベンチャー企業への資金の流入が細っている。2008年のベンチャーキャピタルのRFID企業への投資は平均毎月970万ドルで、それに先立つ18ヶ月の平均毎月2410万ドルから大幅に低下した。この低下は9月の金融危機の前から観測されていたもので、目下の経済状況が2009年に改善される見込みがないこととあわせ、2009年はRFID企業の資金調達はこの10年間で最低レベルにまで落ち込むだろう。

#4 - Vendors Position Through Acquisition
 2008年には多くの買収が発生した。ImpinjによるIntelのGen2リーダーチップ事業の買収など、水平的な事業の統合案件もあるが、特に目立ったのは特定業界向け総合ソフトのベンダーが提供サービスを拡大するためにRFIDベンダーを買収するもの。小売向けシステムの分野において、Checkpoint Systems社がOATSystems社を、Sensormatic Electronics社がVue Technologyを、それぞれ買収したのがその代表例である。

#3 - Providers Proactive About Security
 RFIDのセキュリティーに関し、問題の先手を打って行動するベンダーが増えてきた。セキュリティーについての協業を目的とした業界団体RFID Security Allianceの立ち上げはその代表である。反面、海外の多くの公共交通機関で利用されているMIFARE Classicのセキュリティーが破られてクローンが作成されたり(エントリ「スマートカードMIFARE Classicのクラック」を参照)、RFID機器の医療機器への干渉が報告されたりという問題も発生した。

#2 - Trends on a Treadmill
 Mandate案件として業界の注目を集めてきた案件では、トピック的なニュースは報道されるものの実際の導入開始にはつながらないという繰り返しを今年も続けている。e-ペディグリーについては連邦議会決議やFDAの決定があったが、それは導入に影響を与えていない。Sam's Clubの案件(エントリ「Wal-Mart Mandateの新たな動き(Sam's Clubでの未着用パレットへの罰金化)」を参照)は業界で大きな注目を集めたが、多くのサプライヤーは罰金を払ってさえ様子見を続けている。国防総省の大規模な調達計画もマーケットには影響を与えなかった。

#1 - It's the economy...
 今年の秋からの景気悪化にも関わらず、経営破綻したRFIDベンダーは無いし、ほとんど全ての市場予測はRFID業界の2009年の成長を予測している。現在RFIDの主なソリューションは短期間で確実な投資回収が見込めるものであり、現在不況の真っ只中にある金融や小売セクターですら導入が増加する可能性があるというのがその理由(エントリ「金融危機のRFID業界への影響」を参照)。
 一方、足元の景気は市場予測が作成された時期よりさらに悪化しており、個人的な会話では来年のRFIDマーケットについて不安をもらす市場関係者も多い。来月末に10-12月四半期のレポートが出れば現状がいくらかクリアになるだろう。

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2008/11/12

金融危機のRFID業界への影響

サブプライム問題の顕在化に端を発しこの10月にピークを迎えた金融危機がRFID業界にどのような影響を与えるかについては、コラムなどの形では既に業界紙で触れられていたが、今月に入ってある程度まとまった記事が出てきた。ここではRFID Update誌の記事(Part 1: Economic Meltdown Effect on RFID: Not Now, Not Ever?, Part 2: Tight Capital Could Squeeze Firms Out of RFID Industry)を元に簡単にまとめてみたい。この記事自体はおおむね業界関係者の理解の最大公約数になっていると思う。

まず、ユーザ側のRFID投資については大幅に縮小することは無いだろう。楽観的に聞こえるかもしれないがこれには以下のような理由がある。

  • 現時点でのRFID導入事例の中心は、導入に手間がかからず確実にコスト削減効果を見込める"Low-Hanging Fruit"である。投資回収期間が長く業務改革などのリスクも大きい戦略投資と比較して、このような案件は不況下で削減される必然性が低く、むしろ導入が加速する可能性がある。
  • 上記のような事例は投資の絶対額が低く財務上のインパクトも小さいため、信用収縮の影響も軽微である。
  • 現時点でのRFIDの主要ユーザーはヘルスケア業界などの不況に比較的強いとされている業界である。

実際、IntermecやZebra、MotorolaのEnterprise Mobility Solutions部門の足元の業績は堅調である。

一方、ベンダー側に与える影響は甚大である。RFIDベンダーの多くは現時点でベンチャーキャピタルから資本金の供給を受けながら上場や他企業からの買収(これらをエグジットという)を目指している。これら企業は事業からのキャッシュフローでは投資を賄うことができない(下手すると営業キャッシュフローがマイナス)ので、エグジットまでは資本金を食いつぶしていくことになる。

つまり、現在の不況および信用収縮の元では、RFIDベンダーはベンチャーキャピタルから資本の供給を受けることが非常に困難になる。上場の準備が整う前にベンチャーキャピタルからの資金供給が行えなくなるなら、その企業が生き延びるためには(おそらくバーゲン価格で)他の企業に買収されるしかない。

買収による企業の集約は、不況が深刻化する前から既に予想されていた。RFIDマーケットが成熟するにつれ、面白い技術やアイデアを持っている会社でも実際のキャッシュフローを生み出せないままでは存続が難しくなる、と考えられていたのである。が、この不況・信用収縮によりハードランディングの可能性が出てきている。被買収企業はゆっくりと交渉を行う時間が無く、買収企業はリスクに敏感になっている上に株式交換という手法を使いにくくなってきている。

Baird RFID MonthlyのReik Read氏は、信用収縮の状況がこの12月~1月までにどれだけ改善しているかが、ハードランディングが現実になるかの重要な目安となると語っている。しばらくはベンダーの動向に注目が必要のようだ。

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