2011/04/30

RFID Journal LIVE! 2011雑感(Gen2チップとトルネード)

RFID Journal LIVE! 2011が閉会して2週間。編集部の後片付けも収まりぼちぼちと新製品やセミナーの記事が出始めている。野次馬的に見ていてちょっとつまらないのは、RFID単体製品として技術的に派手なものが出てきている様子が無いこと。もっとも、この点についてはここ数年の傾向であり、今年に限った事ではない。文句なしに技術的に凄げぇという製品が発表されたのはMojix StarsystemとOmni-IDが出た2008年が最後かなー。

もちろん派手な技術が出てきていないことが業界の停滞を示すわけではない。編集長のMark Roberti氏もコラムでその点に触れていて、タグやリーダーなどのハードウェア単体ではなく、業界個別のニーズに合わせて開発された統合ソリューションが多数出てきていると述べている(New Solutions on Display at RFID Journal LIVE! 2011)。記事の中の例を挙げると、ODIN TEchnologiesが販売する検査用組織片トラッキングソリューションEasySpecimen、Rush Tracking Systemsが開発したフォークリフトRFIDオペレーション管理ソリューションVisiblEdge、Identec SolutionsとInSync Softwareが共同開発した酒類バーカウンター販売管理システムなどなど。もっとも、こういった統合ソリューションへの動きも2009年あたりから出始めていたものであり、現在の主戦場であるアパレルとヘルスケア用器材管理ではない分野に統合ソリューションが広がってきている点に注目すべきだろう。

それではその主戦場たるアパレル分野に関係する製品展開はどうなっているだろうか。直接のアパレル関連製品ではなく、現在出荷数の大多数がアパレル分野で利用されているGen2チップについて見てみたい。Impinj、NXP、Alienの主要Gen2チップベンダーは例年と同じく新しいGen2チップをRFID Journal LIVE!に合わせて発表してきた。Impinjが発表したのはMonzaファミリーの最新版Monza 5(RFID Journal: Impinj Launches Products to Speed Item-Level Encoding)。前バージョンからの特徴は、読み取りではなく書き込みのスペックを向上させたこと、そしてMonza 4が持っていた複数アンテナ対応を削除したこと。Monza 4は継続して出荷するので複数アンテナ対応が必要なチップはそちらを使って欲しいというスタンス。AlienはHiggsのバージョンを4に引き上げた(RFID Journal: Alien Technology Announces New IC, Handheld Readers and Inlays)。こちらの特徴は前バージョンのHiggs3からメモリーを削ったこと。Higgs3では800ビットあったメモリがHiggs4では512ビットになった。Higgs4でのメモリ割り当ては、EPCフィールドが128ビット、TIDが64ビット、ユーザメモリが128ビット、読み取りと消去のパスワードがそれぞれ32ビットになっている。こちらもHiggs3は継続して提供し、Higgs4のメモリ割り当てで困るユーザーはHiggs3を使って欲しいとしている。NXPが新たに投入したGen2チップはG2iM/G2iM+(RFID Journal: NXP to Unveil New UHF, HF Chips)。こちらは従来モデルのG2iL/G2iL+の上位モデルという位置づけで、プレスリリースでは下記のようにG2iL/G2iL+をアパレルを代表とする低価格大ボリューム案件として位置付け、G2iM/G2iM+は大容量を生かして新たなマーケットを切り開くのに用いるとしている。ImpinjやAlienと同じく2本立てのラインナップになったということだ。

We now deliver a comprehensive high- performance portfolio ranging from the UCODE G2iL and G2iL+ for cost-sensitive, low memory, ultra-high-volume RFID applications – most notably in fashion and apparel – to the new UCODE G2iM and G2iM+, which offer enhanced memory and features for more sophisticated applications such as FMCG and electronic vehicle tagging

僕が面白く感じたのは、現在の最大の主戦場であるアパレル分野に対し、ImpinjとAlienは従来製品から機能を削った新製品を投入し、NXPは高機能な製品を投入して既存製品を低価格ラインに据え置いたこと。どちらも高機能を付加価値にアパレル分野でシェアを取ろうとはしていない。これは安くて作りやすい(現時点でもGen2チップは慢性的な供給不足が続いている)製品を投入し、とにかくシェアを抑えてしまうという企業戦略に基づくものだ。そう、これはジェフリー・ムーアのキャズム理論で言う「トルネード」が今年発生する(あるいはもう発生している!)と各チップベンダーが判断したことを意味する。いよいよここまで来たんだなぁ。長かった…。

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2009/05/02

RFID Journal LIVE! 2009 (Day 3)

遅くなってしまったがRFID Journal LIVE!の参加3日目(1日目の様子)(2日目の様子)。この日は会場でデジカメの電池が切れたのが判明。写真を撮ることができなかった…。

【セッション参加】

3rd Annual RFID Journal Award Winners

当展示会で2年前から行われるようになったRFID導入事例および展示会で発表された商品の中から優秀なものを表彰するイベント。ジャンルは"Best Use of RFID in a Product or Service"、"Best RFID Implementation"、"Most Innovative Use of RFID"、"Best in Show"の4部門が表彰された。

Best Use of RFID in a Product or Service: Vail Resorts

アメリカの大手スキーリゾート。アメリカのトップ10スキーリゾートのうち5つをを運営し、年間訪問者が120万人、年間売上高が12億ドルである。

同社では顧客利便性の向上のため、入場パスをハンズフリーで読めるようにするためのプロジェクトEasy Scanを2006年に立ち上げた。使用するの候補としてはバイオメトリック・バーコード・RFIDの3つを検討したが、スキーウェアの上から読める必要があるとのことでまずRFIDを選択、さらにRFIDの中でICカード製品やHFタグなども含めて評価を行い、コスト・柔軟性・利便性の点からUHF製品の採用を決定した。

同社のシステムでは、入場ゲートではハンドヘルドリーダーで、スキーリフトでは固定リーダーで入場パスを読み取る。特に入場ゲートでは、例えば子供連れで入場するときに子供のパスを出させてという面倒な作業がなくなったので非常に効果があった。

UHF技術を使うということもあり、顧客への告知には非常に気を使った。同社のRFIDポリシーやRFIDを基礎から説明する文書を作成して施設内各所やWebサイトに掲示し、またリーダーが存在する場所には大きな看板を設置した。

システムの効果としては、顧客の満足度や不正パスの発見率が向上し、また顧客の行動分析も効率よく行えるようになった。今後はリーダーのチューニングやデータの活動向上を進めていきたいと。

Best RFID Implementation: Charles Vogele Group

ヨーロッパのアパレル製造小売業者で、工場からレジまでRFIDで個品の統合管理を行うシステムをCheckpoint社の製品を使って導入した。非常に興味があったのだが、この事例は他のセッションで何度も発表しているということで事例説明は無く、記念品の受け取りと参加者の説明のみ。

Most Innovative Use of RFID: FOCUS Magazine

ドイツの総合情報誌による読者の反応分析システム。従来は雑誌の読者の反応を知る方法はアンケートはがきしかなく、テレビの視聴率調査のように実際に読者が取った行動は何かということは分からなかった。このシステムでは、雑誌の各ページにタグを取り付け、専用のリーダーと共に評価者の家庭に送ることで、いつ誰がどのページをどれだけの時間読んだかということを記録できるというもの。これにより雑誌やネットに遜色ない行動分析を取得できるようになった。現在は30人の評価者を対象としているが、これを100人に拡大する予定。

Best in Show: ODIN Technologies Blackbird

展示会出展製品からの受賞は初日に紹介したODIN Technologies社のスマートコンテナGen2リーダーBlackbirdだった。確かに技術的には凄く興味深い製品だけれど、平均的な展示会の参加者から見れば他にも面白い商品があったような気もしたのでちょっと意外だった。

Boeing Leverages RFID to Improve Supply Chains

ボーイング社の取締役によるプレゼンテーション。タイトルからは同社の有名な取り組みである航空機部品のGen2タグによる管理がテーマかと想像していたのだが、実際には講演者の国防総省勤務時代の経験が7割、ボーイングのRFID全体の取り組みが3割程度の、予想と全く違う内容だった。内容的にも踏み込みが足らず不満足な内容だった。

しかし、国防総省からボーイングにというのは日本的に言えばどう見ても天下りなのだが、そういう立場の人が公開の場にボーイングの人間として招かれて堂々と国防総省時代のことを話すのだなぁ。日本とはずいぶん感覚が違う。

【Best in Show Award候補製品プレゼン】

Tego

32Kbyteの大容量ユーザメモリを搭載したGen2パッシブタグ。この容量のメモリは富士通が先に発表したのだが製品の供給はTego社が先になった(富士通が出荷を開始したというニュースはまだ目にしていない)。メモリは大容量であるほか高温で保存しても20年間リフレッシュ無しで内容を保存でき、また電池を取り付けるとファイルシステムの動作やセンサーの接続が可能になるという。将来的には現在のUSBメモリのようなデータ交換メディアとしての用途に利用できるようにしていきたいとのこと。

Agile Tag

簡単に設置できる小型Gen2リーダー製品。電池およびWiFi通信機能を内蔵しており、配線の必要が無く棚に置くだけでスマートシェルフ的な機能が実現できる。このほかPOSレジ用のリーダーやアセット・店員管理用のアクティブタグも提供しており、店舗管理の総合ソリューションとなっている。プレゼンテーションだけでは技術の裏付けが充分把握できなかったのが残念。

【その他ベンダー情報】

SandLinks

UWB技術を用いたRTLSシステム。カタログ上は下記のような驚異的な性能を持つ。

  • 読み取り距離 屋内40m / 屋外200m
  • 読み取り速度 500タグ/秒
  • 双方向通信可能
  • 測位精度 1m
  • タグ価格 5ドル
  • 電池寿命 3~5年
  • メッシュ構成可能

特にメッシュ構成とこの電池寿命は本来であれば両立しないはずなのであるが、ブースで質問をすると「タグはビーコンではなくリーダーから呼び出されて動作し、また現時点ではメッシュではなく1段のスター(タグが1回だけ別のタグへの通信をする)構成になっているのでこの寿命が実現できている」そう。ただ、現在この製品は欧州と日本の電波規制には適合しない。

この技術の特徴は高密度環境に耐えられること。数万個のタグとある程度の速度で双方向通信ができる技術はちょっと他には思いあたらない。なお、タグのチップには外部回路を接続できるとのこと。

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2009/04/30

RFID Journal LIVE! 2009 (Day 2)

RFID Journal LIVE!の参加2日目(1日目の様子はこちら)。昨日書いたブースアテンドに加え、他ベンダーからの情報収集も勤務先の商売に直接絡むもので(値段とか日本対応とか)、昨日からさらにボリュームが減っているのはご容赦いただきたい。

【セッション参加】

The Department of Defense Benefits from RFID in the War Zone

米軍の配備流通コマンド(Surface Deployment and Distribution Command, SDDC)の少将によるプレゼンテーション。米軍のRFID利用プログラムのうち、433MHzアクティブタグを用いたRFID IIIを中心とした内容となっていた。

非常に興味深かったのが現在のアメリカの主要戦域であるイラク・アフガンへの補給線の説明で、パキスタンは非常に長い補給線を持つにもかかわらず補給線周辺の住民が米軍に敵対的であり、なおかつパキスタン国内への米軍の展開が政治的な理由から制限されているもの。リスクベースドアプローチからはいささか過剰にも見える米軍のコンテナの直接物理セキュリティへのこだわりの理由はここにあるのかということが実感できる内容だった。

Positioning Your Company for Success in Tough Economic Times

Motorolaによるプレゼンテーション。タイトルの通りこの不況下でどのようにRFID投資を進めていくのかというものだったが、短期的な効果と長期的な意義を兼ね備えた案件を選別して進めていくというもので、ある意味当然過ぎてあまりインパクトの無いプレゼンテーションだった。

Building a Smarter Planet

タイトルから想像がつくようにIBMのプレゼンテーションで、同社の新ビジョン"Smarter Planet"をRFIDの視点から見るとどうなるかを説明したもの。道路・水・ビルといった社会インフラに重点を置いたものだということが分かりそれは収穫だったが、それ以外の部分は踏み込みが足らず少し不満な内容だった。

How BP and National Oilwell Varco Are Using RFID Technology

石油・ガス業界でのRFID利用の事例に関する発表。この業界がユーザとベンダーが共同で参加するOil & Gas RFID Solution Groupを立ち上げたという話題と、BPおよびNational Oilwell Varco(NOV)がGen2技術を採用した経緯・内容についてのプレゼントを半々に混ぜたもの。

NOVは掘削器材の世界トップベンダーで、同社の器材をGen2タグで管理することを決めた理由の中に「バーコードは磨耗で読めなくなる」「視認が必要では作業が制限される」「器材のサイズが大きくLFやHFでは読み取り距離が足りない」というすぐに思いつく理由だけではなく「レンタル時にはレンタル先の会社の仕様に合わせて塗装するのでバーコードが塗りつぶされてしまう」というものが入っていたのが面白かった。こういう話はきちんとヒアリングを進めていくまではなかなか出てこない。

【Best in Show Award候補製品プレゼン】

Blue Spark / UPM Gen2セミパッシブタグ

両企業が共同で発表したGen2セミパッシブタグに関するソリューション。セミパッシブタグとしての機能については現在市場にある製品とさほど変わらず、読み取り距離が30m~60mとやや長いぐらいでサイズや価格はGen2セミパッシブタグの先行品であるPowerID社のタグに比べてむしろ劣っているという印象を持った。薄さ・折り曲げ易さや環境への優しさ(重金属を含まず一般ゴミとして捨てられる)あたりが優れているのだろうか。

IDS Microchip AG

センサー機能を統合したスマートラベル向けチップ。ISO 15693エアインタフェースおよびCool-Logログ取得機能に準拠し、温度センサーを内蔵している。パッシブ・セミパッシブに両対応しており、セミパッシブ構成にした場合はログを取得・保存しておくことができる。ユーザメモリのサイズは8kビット。外部センサーはスイッチ・電圧どちらのタイプも接続できる。

聞いたところはなかなか面白そうだったが、この製品が登場する前のマーケットの状況に詳しくないのでどの程度画期的な製品なのかが分からないのが残念。

【その他ベンダー情報】

VRF Holdings

アパレルの値札を想定した電子ペーパータグを作成している会社。現在手がけているのはGen2互換のセミパッシブタグで、数字の5桁×3行のディスプレイを持っている。表示データの送信はGen2標準のユーザメモリを用いており、データを書き込むとそれが表示される仕組みになっていると。

販売開始は6ヶ月後を予定しており、その時点での単価は2ドル。将来的にはパッシブ動作にして電池を不要にし、単価も30セントまで下げたいとのこと。

Dscn0453

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2009/04/28

RFID Journal LIVE! 2009 (Day 1)

Dscn0423 フロリダ州オーランドで開催中のRFID Journal LIVE! 2009に参加している。これまでの展示会と違い、今回は勤務先がブースに出展している。人数的には僕はセミナーに専念できるかと思っていたのだが、今日はトラブルが多発してそれどころではなかった。ブースで聞いたことはどうしても商売上外に出しにくかったりするので、去年までの参加報告より地味になるのはご容赦のほどを。

【セッション参加】

RFID Basics

展示会の本番は本日夕方からで、昼間に行われるセッションはプレコンファレンスという扱いになる。RFID Journal系のプレコンファレンスで最初のセッションとなるのが編集長Mark Roberti氏によるRFID Basics。RFIDの概念定義、基本的な用語の説明から周波数別の特徴、ISO・EPCglobalといった標準化機関の活動が45分という短時間にコンパクトにまとめられている。

プレゼンの内容は昨年8月に行われたRFID in FASHIONの時のものとほぼ同じ。タグの価格(アクティブタグで20ドル、パッシブタグで20セント)や読み取り距離(Gen2で6メートル)など、そろそろ数字を変えても良いものもいくつか含まれていると思うのだが、そこは保守的にということだろうか。

Creating and Deploying RFID Solutions Through Network Management and the Use of Middleware

プレコンファレンスRFID for IT Professionalの中のセッション。発表者はUCLAの教授で、同校がホストする無線技術研究所WINMECの成果物、特にヘルスケア業界向けのミドルウェアを中心とした内容になっていた。ただ、インド系の教授でプレゼンテーションが非常に早口で聞き取りづらかったほか、プレゼンテーションも内容を詰め込みすぎたものを早送りしていったので主張したい内容が何なのかをほとんど把握することができなかった。

Omni-ID On Demand: A Breakthrough Deployment Solution for Asset Tracking

データセンター向けIT器材アセットトラッキングソリューションについてのプレゼン。このソリューションはIBMとOmni-IDが完全に共同で行っており、この用途での主力製品であるOmni-ID Proxは両者が共同でデータセンター内での金属/非金属器材の利用のバランスを考慮しながら設計したとのこと。
同社のOmni-ID On Demandとは、厚みのためにプリンタでのラベル印刷が困難なOmni-ID Proxについて、本体とラベル部分を別途で提供、パートナーのZebra・SATOのプリンターでラベルを作成できるようにしたというもの。ユーザがラベル管理を外注したり、逆に汎用ラベルを貼り付けたりするのに比べてトータルのタグコストが低下するとのこと。
なお、このソリューションに関連し、IBMが「アセット1台につき年間10ドル節約」という主張をしているが、その根拠はアセット1台あたりの年間作業時間が10分から4分に短縮され、システム管理エンジニアの時給が100ドルというもの。

上にちょっと書いたが、ブース設営のトラブル対応のためこれ以降のセッションの参加はキャンセル。面白そうなものも多かったのだが…。

【Best in Show Award候補製品プレゼン】

Best in Show Awardの候補商品のプレゼンが展示ルームで行われた。

Intelligent Insites

Dscn0427 Enterprise Visibility Solutions for Healthcareというヘルスケア向けの統合ビジビリティーアプリケーション。患者、アセット、消耗品在庫を一つのアプリケーションで統合管理するというもので、技術的な凄さよりもコンセプトの説明に重点が置かれた内容だった。

最近は医療やアパレルといったRFIDの先進利用分野で統合ソリューションの話題が目立つようになってきた(エントリ「統合サプライチェーンRFIDシステムMerchandise Visibility Solution」も参照)。これらの分野ではここ最近は投資を短期間で回収できる単機能のアプリケーションを利用することが賢いといわれていたのだが、これは「個別には投資対効果が実証されていない用途を集めることで高い効果が出ると宣伝する」というその前のハイプにたいするアンチテーゼもあったのだろう。個別の用途ごとに投資対効果が見えるようになって来たならインフラを共用したほうが良いに決まっている。その意味で、技術的な面白みに欠けるとしてもBest in Show Award候補に値する商品なのだろう。

Franwell

Dscn0436 RFID Sleeveというリストバンド式のGen2リーダー。リストバンドにすることにより手を自由に使えることになり、ハンドヘルドリーダーと比べて25パーセント作業効率が向上するというもの。同じくリストバンドにセットしたハンドヘルド端末と組み合わせての倉庫作業のデモ動画を見たが、普通の作業で手を動かす中でタグが読めていくのが非常に印象深かった。

リーダーの重量は350グラム以下、電池の稼働時間は3~5時間。Bluetoothによって完全にワイヤレスで駆動する。腕が電波を浴びすぎないよう、リストバンドに電波シールドが組み込まれているとのこと。

ODIN technologies

Blackbirdというスマートコンテナ製品。スマートコンテナと言ってもセキュリティーセンサー系の製品ではなく、コンテナにGen2リーダーを取り付けてコンテナ内部の品物の在庫確認をリアルタイムで行うことを可能にしたもの。

Dscn0432 コンセプトとしてはSecure Carton Initiativeとして従来から提唱されていたものだが、この製品はコンテナの内壁にアンテナを磁石で取り付けるだけで動作する(アンテナの調整を自動で行う)設定自動化機能、そして1日1回の読み取りで電池寿命1年という省電力機能によりこのコンセプトを実用レベルに引き上げた。この2点はGen2技術を知っているものにとってはかなり驚くべきブレイクスルーだと思う。

本プロジェクトのスポンサーは想像の通り米軍。海軍が100億円のプロジェクト予算を付けて評価し、そのビジビリティ用途での威力を"UAV for logistics"と表現したとのこと(UAVとはイラクやアフガンで活躍する無人偵察機)。率直な感想として、物流関連拠点にRFIDポータルを設置できる民間企業でのニーズはどの程度のものかと思うが、ODIN社では「民需輸送の1%でもニーズがあれば市場は広大だ」としてアプローチを考えていること。

この製品は結構興味深いので、専用のエントリを一本立てるかもしれない。

【おまけ】

オープニングレセプションの会場に飾られていたマスコットキャラクターの氷。

Dscn0426

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2006/05/07

Wal-Martキーノートスピーチ (RFID Journal LIVE! Day 3)

英語のカンファレンスに朝から夕方まで通しで出ると3日目には正直キャパを超えてしまう。2日目までと比べるとかなり荒いレポートになってしまうがご容赦されたい。

- Leveraging RFID Data to Create Business Value
 Wal-Martの情報システム担当副社長によるキーノートスピーチ。業界雀に「導入計画を持て余しているんじゃないの」などと言われながらも「店頭在庫切れの防止」という目標に向かい愚直に進んできた馬力に改めて感服した。現時点での対応サプライヤは300社であり、6月末にはGen1のサポートを打ち切って完全にGen2に移行する。
 店頭在庫切れの減少や補充作業の効率化については大学などの検証結果を参照しており、別セッションでの発表もあったようだ。大学の検証についてはいささか疑義がある。RFIDシステム導入の単純な費用対効果ではなく、他の方法で店頭在庫切れに対処した場合の機会利益と比較しないと本当にRFIDを利用すべきだったかどうかは分からないだろう。大学が検証作業に参加する意味はそういう第三者的な視点を提供するためのはずだ。
 個人的な興味としてはセンサータグによる生鮮品の品質管理に触れていたのに気になった。この分野でもWal-Mart主導で導入が進むのだろうか。

- Oracleのテレメトリックユニット
 展示ブースでのセッションでの発表。OracleのRFIDへの取り組みだが、同社のOracle Fusion MiddlewareがRFID単独ではなくセンサー機能を包括して取り扱うというコンセプトがなかなか面白いと感じた。また、Windows CEベースのテレメトリックユニットMicroedge Serverを発表していて、各種のセンサー・GPSを内蔵、衛星電話とGSMで世界中どこでも通信可能という仕様になっている。IBMとMearskがパイロット中のTrekに似ているが、Oracleがどこかのキャリアと組んでいるという話は耳にしない。海運会社と協力しないと現実的なテストはできないと思うのだが。

- Case Study: Securing Cargo with E-Seals
 三井物産によるSaviのE-Sealを中国~北米西岸トレードに適用した事例の発表。三井物産のRFID全般への取り組みにも触れられていた。今年のRFID Journal LIVE!でアジア企業のセッションというのはこれだけではなかったか。日本の事例を英語で発信していくことには大きな意味があると僕は思うので、この取り組みは素晴らしいと思うし、来年はより多くの日本企業がセッションでの発表を行うことを望む。

- RFID Standards for Freight Transportation in North America
 大学・海運会社・RFIDベンダからの3人のパネリストによるパネルディスカッション。一番期待していたテーマだったのだが内容はかなり薄く期待外れ。先日訳したRFID Journalの記事に付け加えるべき知見はほとんど出てこなかった。この分野は参加者が少ないため外からは本当に中身が見えにくい。

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2006/05/04

RFID@Work Gen 2 Demonstration Center (RFID Journal LIVE! Day 2)

RFID Journal LIVE!二日目。今日から本格的にいろいろな企業のセッションが始まる。朝から夜まで空き時間を作らずにセッションを受講したのだが、あまりピンと来なかったものもあり、面白かったものをピックアップしてレポートしたい。

- Securing RFID Systems

 大手ベンダThingMagis社の設立者が主にGen2タグのセキュリティについて語ったもの。最近RFIDのセキュリティ関連でセンセーショナルな報道が続いていたが、それらの報道の対象になった内容も押さえた上でセキュリティ全般にきちんと目配りをした内容で好感が持てた。RFIDの文脈でMan-in-the-Middle攻撃について語った資料を見るのは初めてのような気がする。 Gen2の評価は「現在のようなバックエンドでの利用であれば我慢できるが、ユビキタスやアイテムレベルタギングを睨むと不十分」というもの。妥当なところではないだろうか。そして、次世代のセキュリティとして必要な項目に、暗号の強化と認証の導入を挙げている。これも同意するほかない。

 個人的には電力解析攻撃についてのコメントを期待していた。上記のような文脈の中できちんと触れはしたものの、認証や暗号化に比べ優先度が低いということで僕が期待したほどには細かくは説明してくれなかった。きちんと聞き取れなかったのだが、電力解析攻撃の影響を受ける応答時間の遅延に付いてはプロトコルで定義がなされてないことが原因だが、ここをきちんと定義しようとすると通信速度が可変という柔軟性が失われる、と言っていた気がする。頭のどこかに入れておこう。

- RFID@Work Gen 2 Demonstration Center

 展示ブースで開催している20分程度の短いセッション。2箇所でやっていて、一つはベンダの共催、もう一つはRFID Alliance Labの主催。ベンダ共催の方は名刺を入れるとiPodが当たるようになっていて盛況だったのだが、内容はRFID Alliance Lab主催の方が面白かった気がする。僕が出た4つのセッションの内容は次のようなもの:

  • Gen1とGen2の比較。カタログスペック上は通信速度や通信距離の大きな改善があったGen2だが、実製品で比べてみるとタグやリーダーの製品の差が大きく、プロトコルによる差は観測できない。Gen1レベルの仕様でも実装技術が追いついていない感あり。
  • マルチプロトコルリーダーの動作。基本的にはGen1とGen2は全く別のプロトコルなので、タイムスライスなどで順番に読んでいくに過ぎない。Gen2タグのみが存在する場合はGen2専用モードにしないとパフォーマンスが下がり周波数帯域を無駄に使うことになる。また、マルチプロトコルモードではGen2のDenseモードが使えない。
  • 転送速度の最適化。Gen2ではFM0とMiller(M=2/4/8)の読み取り方式をサポートしており、読み取り速度は40-640kbpsと可変である。但し、現在入手可能なリーダーはこれらの読み取り方法を選択することができず、実質的にはユーザーによるチューニングは不可能である。
  • Gen2のQ値の動作原理や使い方。読み取り範囲内のタグの個数により理論的な最適値は異なるが、実際にはリーダーの修正アルゴリズムが上手く働くため、ユーザが明示的にいじる必要はほとんど無い。

- Tracking High Value Assets in Challenging Environments

 PowerIDというイスラエルの企業のセミパッシブタグ製品の説明。一般的なUHFパッシブタグ互換(Gen2には来年対応)なのだが、印刷技術で薄く折り曲げ可能な電池を取り付けており、読み取り距離や反応速度が劇的に向上するというもの。通常の環境ではアメリカの出力規制の下で純粋パッシブの読み取り距離が4mに対しPowerIDの製品は18mと。また金属や液体との共用にも強い。クレジットカードサイズで普通のタグよりちょっと厚め(だけど柔軟性あり)、電池寿命が1年程度で価格が1個150円というのは、潜在的には非常に大きなマーケットがある分野ではないだろうか。例えばオリコンなどの物流器材だ。印刷で電池を作成するといった特殊な印刷は日本メーカーも強そうな気がするのだが、日本でも開発の動きはあるのだろうか。

- Procter & Gamble's EPC Advantaged Strategy

 P&G GilletteによるRFID導入効果の評価。今後は製品をRFID適用によるROIのレベルに合わせて3グループに分け、それぞれに応じた導入戦略を取っていくと。

 今までのパイロットで特に効果的だったのはプロモーションや新製品の立ち上げであると。たしかにそれらでは店頭の動向がリアルタイムでつかめた場合に大きな効果があるのは分かる。しかし、例えば小売店に送ったPOPや陳列台が正しく展示されているかどうかとか、どうしてRFIDタグを付けるだけで分かるのだろうか?その当たりはもちろん独自ノウハウなのだから公開する必要はないのだが、何かごまかされている気がする。

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2006/05/02

RFID Acedemic Convocation (RFID Journal LIVE! Day 1)

5月1日から3日まで、RFID Journal主催の業界カンファレンスRFID Journal LIVE!がLas Vegasで開催されている。日経RFIDテクノロジ誌を含むいくつかの日本語メディアでも報道されるだろうけれど、個人的な参加の感想を書いてみたい。

初日に僕が参加したのはRFID Acedemic Convocation。これはRFID JournalとMITのオートIDラボが共催するイベントで、大学や企業の研究施設とユーザ企業とを集め、RFIDを取り巻く研究課題を確認しようという趣旨のもの。個人的にはこういう学際的な分野に強くなりたいと思っている。社会人で業務外の時間を割いてRFIDを眺めている以上、研究施設に勤めている人や実際の商談をまわしている人と同じことをしていても追いつける訳は無いので、自分がやることに意味がある分野を上手く見つけてすそれに注力しなければ。また、それにも関係するが、僕は今社会人大学院に通っていて、その卒論の題材をRFIDにしたいと考えている。そういう分野に役立ついろいろを~ホットなテーマとか人脈とか引用元にできる学会誌とか~入手できないかというのもあった。

結論からいうとやや期待はずれ。開催目的が「RFIDを取り巻く研究課題の確認」だったからか、普通の業界カンファレンスのセッションと変わらず、学術発表っぽい内容・作法があったわけではなかった(僕は学部卒で文系就職してしまったので「学会」の雰囲気というのはほとんど知らないのだが…)。また、メインの目的だったアクティブタグの分科会(3時間半)が中止され、30分ほどの全体発表に入れ替えられていたのは大誤算だった。

以下各発表の内容を簡単に。個人的な備忘になってしまうがご容赦されたい。

以下は全体発表。各セッションの所要時間は15~20分。

- Networked RFID and Sensors
 NISTの研究者による発表。IEEE 1451 (Smart Transducer Interface)を例にとり、標準化団体での標準策定のプロセスを説明。

- EPCGlobal Standards Update
 EPCGlobalとは何ぞや、とかオートIDラボとの関係とかを説明。

- EPCglobal Industry Development
 EPCglobalの中でのBAG(Business Action Group)の意義、具体的な作業内容、どのような業界団体がどうBAGを立ち上げているか、など。

- Multi-Hub Supply Chain
 IBMの研究者による発表。EPC-ISの役割と、信頼性の欠けた環境でのEPC-ISを利用する場合の限界。

- Business Application Perspective on Auto-ID Technology
 SAPの研究者による発表。Device-Oriented MiddlewareとData-Oriented MIddlewareを分離したSAP Auto-ID Infrastructureの解説など。

- HF/UHF Research Roadmap
 アイテムレベルタギングでマーケットリーダーを目指すTagsys社の立場から、HF・UHFのタグをどのような業界のどのような用途に使おうとしているかを説明。

- Introduction to AIM Global and ISO/IEC SC31
 遅れてきたそうでAIM Globalのミッションを簡単に説明して終わり。

- R&D Opportunities in the Aerospace Industory
 航空業界でのRFID利用を目的とするプログラムAero-ID(イギリスに本拠を置いているようだ)のさまざまな活動。航空機そのものの部品の管理、航空貨物コンテナの積み下ろし、旅客便の空港オペレーションなどさまざまな分野での適用可能性。

- Univ. Research in the Technology of RFID Tags, Readers and Applications
  Pittsburgh大学の研究者。RFID技術のうちどのようなものを研究対象にしているかの報告。

- Privacy and Opportunity in Passive RFID: Authentication Using CDMA
  Kansas大学の研究者。面白そうなテーマだったのだが時差ボケに耐えられず居眠りしてしまった…。

ここから分科会に分かれる。上に書いたように目当てのアクティブタグの分科会が中止になったため、EPCネットワークの分科会に参加。スケジュールにはパネルディスカッションとなっているも実際には通常のプレゼンテーション形式だった。

- Emerging Technologies for Business Value:
  インテルによる発表。物流器材中の階層構造に着目し(例:海上コンテナ→パレット→ケース→個品)、上位の器材が下位の器材の情報を包括する形で情報を提供し、かつそのタイミングは定期的なものと例外起動によるものの両方をサポートする必要がある。

- RFID Network (正式タイトル取れなかった)
 午前の全体発表にも参加したIBMの研究者による発表。RFIDに関するネットワークのさまざまな実例を述べる。ePedigreeには電子署名や認証が必須であるとか、EPCネットワーク中ではEPC-DSと呼ばれるEPC-ISのフロントエンドになるサーバが必要になるとか、面白いコンセプトもいくつか出てきた。

- Raining Date - Rationable information and intelligence
 SUNの技術者による発表。軍の指揮命令システムを例に取り、ヘテロなシステムが構成する分散環境で意思決定システムを構築する場合どのようなアーキテクチャを使うべきか、というもの。SOAとXMLとフレキシブルなインフラで…という至極普通のものに落ち着いてしまったが。

- Business Application Perspective on Auto-ID Technology(再)
 こちらも午前の全体発表に参加したSAPの研究者による再発表。新たな内容は、タグの読み取りによって自動的に発生するイベントを各種の業務アプリケーションに適用しようとする場合、莫大なセマンティック情報が必要になるというもの。なるほどその通りだと思うと同時に、SAPのようなERPベンダがRFIDに熱心な理由がようやく飲み込めた。こういったセマンティック情報を全社システムに対し矛盾無く定義するのはERPでないとほぼ不可能だろう。

- Building a Global RFID Network Simulator
 オートIDラボの助教授による発表。EPCネットワークの概念の説明。

 出る予定の無かったEPCネットワークの分科会だが中々面白かった。正直ほとんどのユーザ企業はEPCネットワークなんてまだ夢の世界だと見切っているだろうし、今回参加したのもどうやら普段から顔をつき合わせているインサイダーばかりだったようだ。そんな状態のレベルの議論を外部の人間が批評するのはフェアじゃないかもしれないが、正直言うとまだまだコンセプチュアルだなと。僕は運輸関係のシステムを少し知っているが、例えば輸送器材の階層関係とセキュリティとかも特殊な例外状況はおろか一般的なビジネスケースすら全部拾えてないのではないか。しばらくは様子見で不必要に振り回される必要はなさそうだ。

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