iPhone7のFelicaサポートについて気になっていること
Appleが9月7日にiPhone7とApple Watch Series 2を発表し、ApplePayでのFelicaのサポートが報告された。今回サポートされるのはJCBの「QUICPay」と三井住友カードの「iD」、ドコモdカード、au WALLETクレジットカード、そしてSUICAになる。
これは日本のFelica事業者、特にJR東日本が積み重ねてきた努力の結果であることは間違いない。今年の5月にFelica対応をNFCスマホの必須対応項目として認めさせた(RFID A GoGo!:NFC ForumでFelicaが必須仕様に)ことを踏まえた、満を持しての本丸Appleによるサポートということになる。だが、Appleの従来の方針とは整合しない、気になる部分が残る。
一つはSuicaへの対応の内容だ。上記の通りSuicaはApplePayに追加して利用されるが、独自の「Suicaアプリ」も提供される。また、Suicaについては、指紋認証を飛ばして決済できる「エクスプレスカード」も提供される(NIKKEI STYLE:iPhoneにSuica JR東のキーパーソンを直撃)。これはAppleが他国のNFC事業者に取ってきた態度とは明らかに異なる。例えばオーストラリアの銀行協会はApplePayを介さない独自のNFCアクセスをAppleに要求しているが、Appleはこれを拒否している(The Register:Apple says banks can't touch iPhone NFC without harming security)。Appleの言い分は、同社のセキュリティ基準はハードウェア、ソフトウェア、サービスのすべてを深く統合することで満たされるもので、銀行アプリケーションがNFCにアンテナにアクセスするだけで求めるセキュリティが失われてしまう、とまで言っている。これを前述のSuicaへの待遇と比べるとその差は明らかだろう。また、NFCスマホのFelica対応が必須化されるのは2017年4月になる。それを待たず前のめりのスケジュールでFelica対応を行ったことも気になる。
もう一つはiPhone7とApple Watch Series 2のFelica対応が日本モデルだけという点だ。一方で日本モデルはNFC-A/Bの利用は行えない。この点については日本と外国でハードウェアが異なるのではないか、という憶測もあったが、分解調査の結果すべてのモデルでNXP製のNFCチップ「67V04」が採用されていることが分かっている(iPhone Mania:iPhone7のNFCチップは海外版も日本版と同じFeliCa対応と判明!)。モデルごとにNFCの一部の機能を殺すことにメリットがあるとは思えないし、利用者に不便だけをかけることになる。これはAppleが外国の事業者に対し、日本は事情が違う特殊な国なんですよだからハードも分けてるんです、と言い訳するためのものではないか、ということも考えてしまう。
上記2点はただ単にスタート時の混乱に過ぎないのかもしれないし、あるいはAppleのNFCに対する方針が変わったことを示唆するのかもしれない。今後気を付けてウォッチしていこうと思う。
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