2009/04/12

DASH7アライアンス(ISO 18000-7の普及団体)

2009年3月にISO 18000-7の普及団体であるDASH7アライアンスが立ち上がったというニュースが業界紙に流れた(RFID Journal: Dash7 Alliance Seeks to Promote RFID Hardware Based on ISO 18000-7 Standard)、(RFID Update: DASH7 Alliance Forms to Advance Active RFID Standard)。ISO 18000-7は433MHzアクティブタグのプロトコルで、アメリカ国防総省のコンテナトラッキングで大量に利用されているほか、民間でのコンテナトラッキングやアクセス管理にも一部利用されている。

DASH7アライアンスには、ISO 18000-7のIPを保有するSaviやアメリカ国防総省の調達でSaviからIP供与を受けているベンダーといったわかりやすい参加者に加え、半導体メーカーであるSTMicroelectronicsやTI、更にはダウ・ケミカルやミシュランといったユーザー企業も参加している。DASH7のサイトからホワイトペーパーをダウンロードして読んでみたのだが今一つ全体像がつかめなかった。プレスリリースのページで4月9日に日本でプレゼンテーションを行うことを知り、詳細を知るために参加してきた。

プレゼンテーションの内容はなかなか興味深いものだった。既存のコンテナトラッキング分野での標準化や市場開拓を行う、というのではなく、センサーネットワーク全体にうって出て勝負したいということを考えているらしい。現在この分野で主に利用されているプロトコルはZigBee(もしくはMAC層以下のIEEE 802.15.4)であり、プロトコルとしては中途半端と多くの人が考えながらも現状の用途でのノード密度やデータ量ではそれなりに使え、またチップ価格も1~2ドルと安いためにライバルになるプロトコルがなかなか出てこない。そうこうしているうちに2.4GHz ISMが無線LANの利用のためにどんどん使いづらくなってきており、433MHzで標準化されたプロトコルとしてそこを狙える可能性がある、と考えたようだ。

軍用製品のIPということでライセンス料を高くするつもりかと思い込んでいたのだが、DASH7でIPプールを作り、大量生産の目処がついたらチップの単価がZigBee以下になることを狙いたいとのこと。また、プロトコルとしての古臭さ(例えばキャリアセンスに対応していない)などについては、今後DASH7メンバーの間で議論を行い、有用なものは規格に取り込んで行きたいと話していた。面白かったのはNFCとの複合デバイスの話で、ISO 18000-7が使う433MHzはNFCが使う13.56MHzのちょうど32倍なのでクロックも含めて部品の共用を図る事が出来る、というちょっと気が付かなかった指摘がでてきた。

現時点ではまだ雲を掴むような話で、とりあえずはタイヤの空気圧監視システムの標準としての採用を狙っている(ミシュランはこの用途に興味を持って参加している)とのこと。ただ、センサーネットワーク系の技術にはZigBeeも含め決定的なものが存在していないことも事実。433MHzは日本での利用が制約されていることもあり、世界での標準化動向を気をつけて追っていきたい。

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2008/05/07

Yet Another Gen2-based RTLS (PINC Solutions Yard Hound)

先日紹介したMojix Star Systemに続き、Gen2パッシブタグを使ったRTLS製品をもう一つ紹介。PINC Solutionsが提供するYard Houndシリーズだ。名前の通り倉庫ではなくトレーラーヤードを対象とした製品になる。Yard Houndは最近RFID Journal誌で異なる企業への導入事例が続けて取り上げられた(Cost Plus World Market Finds RFID Sweet Spot in Yard Management, Kimberly-Clark Sees Positive Results With PINC Trailer Tracker System)。

通常のアクティブタグを用いたRTLSでは対象となるトレーラーにアクティブタグを取り付け、ヤード内に立てた複数のアンテナがタグの信号を受信して三辺測量を行う。タグとアンテナの間の距離の測定方法は、信号の到着時間を調べるTDOA(Time Difference of Arrival)と信号の減衰を調べるRSSI(Received Signal Strength Indicator)の2つがあり、それぞれの方法に一長一短があるため併用する製品も多い。使用する周波数帯やプロトコルにより測位精度は異なるが、共通することは多数のアンテナを立てなければならないこと。しかもそれぞれのアンテナについて位置や高さ、向きを精密に測定しておく必要がある。言うまでもなく金と手間と時間のかかる作業だ。

Yard Houndシリーズはこの問題を解決したというのをセールスポイントにしている。ヤード内に測位用のアンテナは不要、トレーラーに取り付けるのはGen2パッシブタグで良いという。これだけではあまりに嘘くさいが、手品の種は構内作業用のトラック。このトラックに無線LAN対応のリーダーを取り付けて作業のついでに近くを通ったトレーラーのGen2タグを読み取るのだ。構内作業用トラックのリーダーにはGPSや二次元加速度センサーが取り付けられており、読み取ったタグの信号強度をトラックの移動情報で補正した上で(おそらく)RSSIで測位を行い、高い精度を得ることができるという。取得した情報は一旦ローカルに保存し、無線LANのエリアに入ったところでまとめてアップロードするので、ヤード全体を無線LANでカバーする必要は無い。

実際にどれだけの精度が出るのかとか、構内作業用トレーラーが通らない場所にあるトレーラーの位置をリアルタイムで把握できないのではないかとか、いくつか疑問はあるのだが業務上許容できるのであれば上手い手だと思う。アクティブタグで必要となる高価で手間のかかるインフラ整備を省くことができるし、その一方で作業フローを変えずに現在位置を自動的に取得できるというRTLSのメリットも享受できる。Mojix Star Systemが高度技術を使ったブレイクスルーだとすれば、このYard Houndはシステム設計の妙を見せてくれるもの、と言えるだろうか。

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2008/04/18

Mojix STAR System続報(RFID Journal LIVE! 2008製品発表)

前回の記事で紹介したmojix社のMojix STAR Systemだが、RFID Journal LIVE! 2008での製品発表を受けてプレスリリースが出た(Mojix STAR System Proven in Year-Long Customer Field Trial Program)。このプレスリリースにはProcter & GambleとKraft Foodsのトライアルの内容が触れられている。Procter & GambleとのトライアルではSTARアンテナを物流センター内に一つ設置し、センター内に設置された40台の搬入口がすべて読み取り距離内にあること、そして4つの搬入口での積み降ろし作業を同時に読み取ることができたことが報告された。Kraft Foodsでは、ドイツにある物流センターへの実導入に取り掛かっており、実環境でも200,000平方フィート(18,000平方メートル)のセンター内を1台のリーダーでカバーし、毎秒700枚という読み取り速度を実現できているという。

前回のプレスリリースでも自信ありげな書き方をしていたので実用化に近づいていると想像はしていたが、いきなり商品スペックどおりの環境で、しかもKraft Foodsのような大手企業で実導入が始まっていたとまでは思わなかった。ちょっと呆然としてしまう。

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2008/04/16

Mojix STAR System (超遠距離Gen2タグ読み取り+高精度位置情報)

世の中にブレイクスルーというのはあるものだ、と思う。アメリカのベンチャー企業mojix社が、Gen2タグを従来の20倍以上の超遠距離から読み取る能力を持ち、なおかつRTLSとしても利用できる高い測位精度を持つシステムを開発したというニュースがRFID Update誌とRFID Journal誌で取り上げられた(RFID Update: Startup Touts 600-foot Read Range for Passive RFID, RFID Journal: Mojix Takes Passive UHF RFID to a New Level)。Mojix社からのプレスリリースにもリンクを張っておく(Mojix Inc. Launches Company and Unveils Revolutionary New Class of RFID System)。

Mojix社はNASAの深宇宙探査プログラムで働いていたエンジニアがスピンアウトして設立した企業だそうだ。このシステム、Mojix STAR 1000で利用されている技術は、アンテナとしてフェーズドアレイアンテナを採用し、受信信号の増幅とノイズの除去を高いレベルで行えるようにする。さらに、信号受信用のアンテナであるSTARと電力供給用のアンテナであるeNodesを分離し、電力供給によるノイズが信号受信に干渉しないようにする。この2つの技術の組み合わせにより、一つの受信用アンテナSTARにより、600フィート(180メートル)先から一般的なGen2タグを読み取ることができ、250,000平方フィート(23,000平方メートル)のエリアをカバーできるとしている。同社によるとテストでは1,000フィート(300メートル)を超える距離でも読み取りはできたとのこと。これほどの広域を1台のリーダーで読み取るとなると読み取り速度も気になるが、同社のサイトでは1秒に700枚のタグを読み取ることができる、となっている。

このシステムの凄みは、RTLSシステムとしても動作する点にある。もともとフェーズドアレイアンテナはイージス艦のレーダーに使われている技術であり高い測位能力を持つのだが、Mojix STAR Systemではタグの3次元位置情報を半径30センチという精度で取得できる。前回のUWB RTLSの記事で触れたが、通常のアクティブタグの測位誤差はその10倍である。

さらに、Gen2タグを使うという特性を使い非常に面白い用途を提案している。例えば、Gen2タグ付きのパレットの上にこれまたGen2タグ付きのケースを載せてラップしたものに対し、各タグの3次元の位置関係を取得してデータにできるのだ。この機能をeGroupsという。eGroupsを使うと、例えばパレット上のタグのすべてを読み取ることができなくても読み取れたタグの位置情報を元に正しくパレットを受け取ったと推定できる、逆に位置情報がおかしくなっていることでラップが途中でバラされて再梱包された、という状況を推定してアラートを出すこともできる。

これほどの技術なのにすでにモノはできているようで、現在開催中のRFID Journal LIVE! 2008(2008/04/16~18)にデモが出展される。RFID分野のSI大手Xterprise社の施設でテストを行い、すでにFortune 50に属する大企業でのトライアルも行われているという。

正直なところ、セキュリティ・プライバシーに関する議論など導入の周辺も含めてのインパクトがまったく読めない。RFID Journal LIVE!での発表後の動向をウオッチしていきたい。

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2008/04/03

UWB RTLS

最近UWBを用いたRTLSの事例が海外メディアに登場することが増えてきた(RFID Update: UWB Finding a Place in the RTLS Marketなど)。内容を見てみると非常に面白い技術であり、現状を簡単にまとめておきたい。

UWB RTLSで利用されるのはUWB IR(UWB Impulse Radio)と呼ばれる通信方式である。UWBは3GHz~10GHzのマイクロ波帯を使用し、500MHz以上の帯域幅に低出力で信号電力を拡散する無線通信方式である。最近話題のワイヤレスUSBは近距離高速通信を目的としたものでOFDM変調方式を用いているが、UWB IRでは変調を行わずに2ナノ秒での超短インパルスを直接伝送する。この方式が可能にする技術的な特徴は2つある。1つは高い測位精度であり、三辺測量を用いて実環境で30センチという測位精度を実現できる。Wi-Fiや433MHzアクティブタグを用いた技術では3m程度が実用精度であることを考えると、この精度は驚異的と言ってよい。もう一つの特徴は消費電力の少なさで、連続波でなくインパルスを利用するために原理的に消費電力を大きく抑えることができる(ただし、現在のUWB RTLSの主要アプリケーションはタグにシビアな省電力を求めるものではないため、十分なチューニングはまだ行われていない模様)。

UWB RTLSは既に商用化がなされている技術であり、英Ubisense社米TimeDomain社の2社がマーケットリーダーになっている。両社ともこの技術に特化したベンチャー企業であり、VCからの出資を受けながら規模を拡大させている。現在は標準仕様は存在せず、異なるベンダの製品の間での互換性は無い。報道から伺われる範囲においてはベンダー間での話し合いや標準化機関への仕様の依託も行われていないようだ。各国電波法状況については、アメリカでは3.1GHz~10.6GHzの利用が既に認可されており、ヨーロッパでは欧州委員会により3.4GHz~4.8GHz・6GHz~8.5GHzの6ヶ月以内の認可が3月1日に議決された(これ以前に各国ごとに認可が行われている)。日本においてはUWB IRの利用はまだ作業中となっている模様。

現時点でUWB RTLSが注力しているアプリケーションは病院での人員・アセットのロケーション管理だ。新興技術のためベンダーが多くの分野に努力を分散できない、現時点ではタグの単価が高いため高価なアセットにしか取り付けられないという理由があるのだろう。もっとも、それ以外にも面白いアプリケーションがちらほら記事になっている。僕が驚いたのはアメリカのロデオ練習場での事例で、UWB RTLSと記録用カメラを連動させ、常に馬の首にカメラの焦点を合わせるというものだ(RFID Journal: RFID-Guided Video System Gives Equestrians Their Best Shot)。

消費電力が少ない以上、将来的にはタグ価格も下がっていくと考えられる。むしろ問われるのは「目視確認無しで30センチの測位精度を得られるRTLSシステムをどう使うか」という利用者側での想像力ではないか。これから普及が進み、メインストリームになる直前の時点において、先行ユーザがどのように使っていくか、興味深い。

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