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2017/07/19

スウェーデンでのインプラントNFCタグをチケットに使うトライアルについて

少しタイミングを逃してしまったが気になっているニュースがある。スウェーデンの鉄道会社SJ Railway社で手にインプラントしNFCタグをチケットとして利用するトライアルが始まったと言う話だ(Independent:The future is here - a Swedish rail company is trialling letting passengers use biometric chips as tickets)。人権に対する意識が高いヨーロッパでこのような動きが起きたことは、人体に対するタグのインプラントについての認識に何か変化があった事を意味するのだろうか。関係しそうな内容をメモしておきたい。

実はこの話には2年ほど前に前触れがあった。スウェーデンのイノベーション施設「エピセンター」では入退室管理にNFCが利用されており、施設の勤務者の何人かがタグを自分の手にインプラントして利用している、という話がニュースとして取り上げられた(クーリエ・ジャポンマイクロチップを身体に埋め込んで自分を“アップグレード”する若者たち)。もっとも、この時点では話はそれ以上広がることはなく、テクノロジーマニアたちの奇行として一旦忘れられたように見えた。

今回出てきた話はその続編になる。SJ Railway社はエピセンターの入居企業と提携しており、NFCタグをインプラントしている勤務者との接触があった。同社はNFC関連のトライアルをいくつか実施しており、その一環としてインプラント者との間で何かできないか、と始まったのがこのプロジェクトらしい。

SJ Railway社のプロジェクトに関する具体的な情報は乏しく、しかもスウェーデン語だったりする(例えばSJ forst i varlden med chippbiljett)。翻訳ソフトなどを使って読み取れた情報は以下のようなものだ(誤解の可能性も大きくお気づきの点あればご指摘願いたい)。参加者については鉄道会社は直接関与せず自分でNFCタグをインプラントした人に限る。利用者はあらかじめSJ Railway社のWebサイトでアカウントを作り、NFCタグの情報を自分のアカウントとリンクさせる。利用者がWebでチケットを購入しておけば、車掌がNFC対応のスマートフォンでNFCタグにタッチするとその利用者のWebページが開き、チケットを確認できるというもの。現時点ではコンセプト検証を目的としたごく限定的な規模のプロジェクトのように思われる。

それでも、今回のプロジェクトは公共性の高い企業が人体へのタグのインプラントを前提として行っているものだ。2年前の、個人が自分の意志で行っていた入退室ゲートでの利用とはステージが違う。日本やアメリカでは社会的な反発のためとても実施できなかっただろう。

政府に対する信頼感や宗教的・倫理的な忌避感の文化的な強さの違いについては僕はコメントする能力を持たない。一つ気づいた点は北欧がキャッシュレス社会の先端であることが影響しているかもしれないということ。スウェーデンでは現金決済の比率が全決済の2%に過ぎず、日本の50%やアメリカの33%と比べて非常に低い。このような社会では決済をする際に所持品ではないものを使いたいというニーズがあり(生体認証やインプラントタグを含め)、その得失について感情を離れた判断をする人も多いのかもしれない。

世の中にやっていいことと悪いことがあるなら、人体へのタグのインプラントはやって悪いほうに入ると個人的には思う。だがスマートフォンの普及はプライバシーやセキュリティについての感覚を非常に速いスピードで変えてきたことも事実。こういった動きが今後どの様に広がっていくかについて余談に囚われずに見ていく必要があること、改めて考えさせられた。

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