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2015/12/06

IoTの個人向けユースケースとアイデンティティ管理

この一年はバタバタしていて特集記事を書く余裕が無く、Internet of Things(以下IoT)のブームに乗り損ねてしまった。日本のメディアではまだまだ旬のテーマだが、RFID Journal誌では今年の夏の時点で一般層の関心が失われつつある(ハイプの山を越えてしまった)という指摘がなされている(The Internet of Hacked Things)。

個人的には産業向け、特に製造業向けのIoTの利用はハイプが剥落するのも早いだろうと予測している。日本ではインダストリー4.0との絡みで大きな注目を集めているが、この分野で取りざたされているユースケースは以前からアクティブ/パッシブのRFIDで実現されていたものばかりで、IoTが新たにもたらした技術要素もほとんど存在しない。「インダストリー4.0ではIoT技術によりサプライチェーン中の複数の企業が生産情報を共有し生産性が劇的に改善する」と言った記事を読むと初期のWal-Martブームとのあまりの類似に苦笑していまう。インダストリー4.0はドイツ政府としての取り組みだから大丈夫?若い人は知らない(そして年寄りは忘れてしまった)だろうけど、Wal-Martブームの頃には国防総省マンデートとかe-ペディグリーとかの公的な取り組みもあってだな…。FP7などの政府主導のRFID技術開発・普及支援プログラムの実績を見るとヨーロッパの支援プログラムがアメリカ以上に信用できるとは思えない。

その一方で個人向けのIoTについては全く状況が違うと考えている。画面とUI、インターネット接続とBluetooth PANのハブとしての機能を兼ね備えた携帯デバイスであるスマートフォンで何ができるかについてはコンセプトの開発もまだ途上にあるのではないだろうか。個人向け用途では尖ったユースケースが積極的に公開されていくことも大きい(この点は製造分野でのユースケースが秘密にされがちなことの対極にある)。

個人向けのIoTユースケースを拡張していくなかで重要になってくるのがセキュリティとプライバシーの確保をいかに利用者に負担をかけずに行うかという点だ。ウェアラブルデバイスに代表される個人向けのIoT機器はプライバシー性の高い情報を扱う一方で「モノ」として自然に扱えなければならないという制約を持っている。スマートウオッチや、ましてBluetoothヘッドセットで、十分な強度を持つパスワードを入力するというのは、多くのユーザーにとって耐えきれない作業だろう。また、個人が何種類ものIoT機器を持つ場合に、それぞれのセキュリティ管理をどのように行うのかという問題もある。同一の認証を用いた場合には一つの機器のセキュリティが破られると全体のセキュリティの危機になるし、かといって個別にセキュリティ管理を行うのは複雑すぎる。更に、個別のIoTデバイスがスマホとだけ通信するのではなく、IoTデバイス同士が通信する場合にそのセキュリティをどうするのか、となると、管理の手間はデバイスが増えるにすれ爆発的に増加する。

個人向けIoT機器のセキュリティ・プライバシー管理についてはアメリカでも議論が始まったばかりのようだが、一部の議論は一般向けに発信され、場合によっては実用化されてきている。これらはアイデンティティ管理(Identity Management, ID)もしくはアイデンティティ・アクセス管理(Identity and Access <anagement, IAM)と呼ばれている。

その一つとしてForgeRock社という企業の取り組みがある。同社のコンセプトについてはRFID Journal誌で記事になっているが(When Identity Management and the Internet of Things Collide, New Opportunities Emerge)、初期のソリューションとしてスマホをドアキーとし、かつカーナビやオーディオとも連携して情報を収集するソリューションをトヨタと提携して提案している(ホワイトペーパー)。また、Gartner社もこのテーマにつき議論を始めているようだ(Gartner: Internet of Things will redefine identity management)。

この分野は個人向けIoTの普及にとってボトルネックになりうる部分だが、同時に企業にとっては巨大なビジネスチャンスになりうる分野でもあるだろう。今後も動向に注視していきたい。

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