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2014/11/23

Bluetoothタグの用途の拡大(測位・環境電池)

最近になりBluetoothアクティブタグを巡る動きが活発になってきたという印象がある。以前の記事(「新世代Bluetoothタグの登場」)で書いた通り、BluetoothはアクティブRFIDタグのプロトコルとしてはマイナーなものだったが、低消費電力の新プロトコルBLE(Bluetooth Low Energy / Bluetooth 4.0BLE)の登場とスマホのBLE対応によりスマホと組み合わせて使うタグとしての用途がじわりと広がり始め、AppleによるiBeaconの採用で一気にブレイクした(「iBeacon(Appleが選んだBluetooth LEタグ)」)。現状では小売店やエンターテイメント施設を中心に案内やプロモーション用途を中心に本格導入が進みつつある。

本稿で触れるのは本格導入の進展そのものではない。普及が進んだことにより、今まで技術的に困難と思われていた分野への適用が始まりつつある点についてだ。電子技術、特に通信関係の技術では、ある技術が急速な普及期に入ると、従来はその技術が不得意で他の技術と棲み分けると考えられていた用途でも応用が始まり、相対的に有利だと考えていた他の技術を置き換えてしまうことがある。「スマホがタグ/リーダーになる」という強力な特徴を持つBLEタグはこのような可能性を持っている、それは具体的にはどのようなものだろうか。

その一つは測位への応用だ。以前の記事では、Bluetoothそれ自体は測位用プロトコルとして特に優れたものでは無いこと、スマホが持つセンサーや高い演算能力を使って測位精度を向上させる余地はあるが、金属ケースなど利用環境をコントロールできないというコンシューマー器材ゆえのデメリットがありうると書いた。だが現時点での報道を見る限りは金属ケースなどによる読み取り距離の変化はあまり大きな問題にはなっていないようだ。僕が想像していた以上にきちんとしたコントロールができていたのだろう。このため、Bluetoothを利用した測位システムの開発が進みつつある。例えば、Indoo.rs社はビーコンと各種センサー(加速度計、角速度計、気圧計、方位磁石)を組み合わせ、サンフランシスコ国際空港で視覚障碍者のガイドを行うためのナビゲーションシステムのトライアルを実施している(RFID Journal:San Francisco Airport Tests Beacons for Blind Travelers)。店舗や搭乗ゲート単位でのナビゲーションが可能であり、記事には明確な記載はないが相応の精度を持つと考えられる。

もう一つの展開は電源を利用できない環境での利用になる。言うまでもなくBluetoothはアクティブタグのプロトコルであり、動作のためには電池か外部電源が必要になる。もちろん電源無しで動作させたいというニーズは強いが、従来は安定して動作するものは製品化されていなかった。例えば今年の7月には、バッテリー不要の忘れ物防止タグとしてKickstarterで募金を集めていたiFindというプロジェクトがプロトタイプを提示できずプロジェクト取り消しになっている(充電不要のICタグ「iFind」、Kickstarterで取り消し処分に)。だが、9月になり、ポーランドのIfinity社が建物の案内に利用するタイプの環境電池BLEタグAirBeaconのトライアルをワルシャワで行っているという報道がなされた(RFID Journal:Ifinity to Test Energy-Harvesting Bluetooth Beacons in Malls)。なるほど、建物に埋め込むタイプであればサイズの制約は小さいし、電波の発信頻度も低くて良いだろうから、環境電池で動作する可能性は十分にある。

測位への応用、環境電池での動作、現時点ではいずれもトライアルの段階ながら、技術の道筋が付いているという点は大きい。今後もBLEタグでは無理だと思われている用途への応用は広がっていくだろう。注意してウオッチしていきたい。

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2014/11/20

RFID World Watcher Monthly October 2014

今月も特集記事はお休みです。12月は年末特集の他に一つは記事を入れたいところですが…。ニュースは以前よりじわりと増えている印象。Internet of Things Journalの記事が入るようになったのか、パイロット記事の比率が減ったのか(パイロット記事はPDF版には入れないようにしています)。

RFID World Watcher Monthly October 2014 (PDF形式、248KB)

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2014/11/19

RFID Journal 抄訳 2014/11/15号

今週一番興味深かったのは3DTAC社の3D測位機能付きUHFパッシブリーダーです。記事からはスマートシェルフ向けで速く動くもののトラッキングができるかどうかは分かりませんが、汎用のThingMagic社のM5Eリーダーモジュールを搭載し価格もこなれたものになりそうで期待しています。

自動車バッテリーの自律式スマートシェルフ、Seeonic社は2007年に妊婦用衣料品Tomorrow's Motherで同様のソリューションを提供しています。その後あまり導入の話を聞かなかったのは使いどころが難しい(技術的に未熟という意味では無く)製品なのでしょうね。

Cuff社のスマートジュエリー、記事で言う「ジェームズ・ボンドみたいなクオリティの」ギークなグッズ好き男子としては今一つピンと来ないのですが、普及の為には重要なんでしょうね。

RFID Brings Greater Efficiency, Product Visibility to Interstate Batteries

自動車用バッテリーのメーカーInterstate Batteries社は小売店に自社のスマートシェルフを置き、バッテリーの在庫と販売状況を自動的に確認するソリューションのパイロットを実施しています。このソリューションはSeeonic社が開発したもので、スマートシェルフはUHFパッシブリーダーと携帯電話モデムを搭載しバッテリーで動作します。

Sixt Finds RFID Is Key to Improving Customer Service

ドイツの大手レンタカー会社Sixt社はレンタカーの鍵の管理をRFIDで行っています。同社は8年前にHFパッシブタグを利用したソリューションのパイロットを行いましたが、読み取り精度が低く本格導入に至りませんでした。その後、昨年になりUHFパッシブタグを使ったソリューションを再度評価、十分な精度が得られたため導入に至ったものです。

3DTAC Seeks RTLS Partners for Its Antenna Arrays

カナダのベンチャー企業3DTAC社はUHFパッシブタグの3次元測位するためのソリューションを開発しました。このアンテナは一つが15cm角の正方形のサイズで、4~10個並べて利用されます。読み取り距離は10メートル。リーダーモジュールにはThingMagic社のM5Eを利用します。主に店舗のスマートシェルフでの利用を想定して開発されたもので、通常の店舗で80個のアンテナが必要なところ8~10個のアンテナで対応できます。

Smart Jewelry Maker Cuff Takes a New Route to Wearables

ベンチャー企業のCuff社はBluetooth Low Energy(BLE)機能を組み込んだジュエリー、Smart Jewelryを手掛けています。Smart Jewelryは特定の内容のメールが着信した時に振動で知らせる機能と、組み込みボタンを押したときに異常を友人に知らせる機能を持っています。Smart Jewelryは女性が実際に身に着けられるスマートデバイスを目標に開発されたもので、初年度に140万ドルの売上げがあり、Kate SpadeやL'Oreal、Montblancといった企業からも商品の共同開発の提案が寄せられています。

RFID Journal Introduces Internet of Things Conference

RFID Journal社はInternet of Things Conferenceを開催します。これはRFID Journal LIVE! 2015との共催となり、2015年4月16-17日にサンディエゴでの開催になります。

RFID News Roundup

  • Ecom instruments社が防爆対応の対応のUHFハンディリーダーiroc-Ci70を発表
  • FineLine社のSolidTagサービスがファッション向けに少ロットでRFIDタグ・ラベルを供給
  • 研究者がProventix社のRFID手洗い監視システムの効果を検証
  • Protavic社が電導インクと溶剤・非電導インクのマッチングシステムを開発
  • TI社のRFIDリーダーがリモコン機材によるペンギンの監視に採用
  • LogiTag社が病院の在庫管理向けにモバイルアプリをリリース

How RFID Could Save Retailers $42 Billion Annually

Checkpoint社の講演で毎年発行されている"The Global Retail Theft Barometer"によると、2013年の世界の小売業における盗難(内部犯行含む)による損失は1,280億ドルで、前年比1.29%減少しましたがそれでも巨額です。RFIDの導入によりこの金額を最大40%引き下げることができます。

Second to None

店頭在庫切れ防止を目的として既に導入済みのRFIDインフラを活用した2つ目以降のアプリケーションとしては、顧客体験の改善、循環棚卸しの活用、盗難の防止、試着のモニタリングなどがあります。

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2014/11/13

RFID Journal 抄訳 2014/11/08号

今週の記事ではNXP社の自動車向けNFCコントローラーの記事が気になりました。基本的な用途としてはドアキーの代替や運転者ごとのカスタマイズなのでしょうが、自動車とスマホの接続のうち、タッチが必要な部分とその応用にはもっと面白い可能性があるように感じます。

今週の編集後記は導入事例を隠したがるユーザー企業に対する苦言。「RFIDそれ自体が競争優位を生むのではなく、それによって可能になる業務プロセスが競争優位を生むのだ」というのは全く同意なのですが、RFID Journal編集長の立場でそれを言うのは結構腹が据わっているなと思います(笑)。このあたりは永遠の課題なのかもしれませんね。

RFID Sets Sail With Quantum of the Seas

Royal Caribbean社の最新鋭大型クルーズ客船Quantum of the Seasでは乗客サービスにRFIDリストバンドを利用しています。乗客はWOWbandと呼ばれるHFパッシブのRFIDリストバンドを2ドルで購入することができ、それを用いて部屋の開錠やショップ・レストランでの支払いを行います。また、預けられたスーツケースにもRFIDタグが貼付されており、リストバンドを情報キヨスクにかざすことで荷物の所在を確認することができます。

Iron Mountain to Introduce RFID-Ready Boxes for Records Storage

書類・データ保存代行会社のIron Mountain社は2015年から顧客が利用する全ての書類箱にUHFパッシブRFIDタグを貼付します。これにより、顧客に対して書類箱の所在を証明するなどの作業の自動化を行います。

Danze Taps RFID to Make Buying a Faucet More Exciting

家具メーカーのDanze社はショウルームでの顧客体験工場のためにRFIDを利用します。展示商品の台座にHFパッシブタグを貼付し、その商品をスマートシェルフに置くことにより、その商品の利用シーンや詳細情報を表示したりFacebookに投稿したりということが可能になります。システムはInReality社が開発しました。

NXP Seeks to Drive NFC Phone App Use in Cars

NXP社は自動車搭載向けのNFCコントローラーNCF3340のサンプル出荷を開始しました。このコントローラーを用いると、ドアの鍵をスマホでロックしたり、運転手ごとの設定を車両が読み込んだり、逆に車両の状態をスマホに取り込んだりすることが可能になります。

Cardinal Health to Be Cornerstone Sponsor at RFID in Health Care 2014

2014年11月20日にシカゴで開催されるRFID in Health Care 2014のコーナーストーンスポンサーになりました。他にもOATSystemsやMotorola Solutions、HID Globalなどがスポンサーに名を連ねています。

RFID News Roundup

  • Fletcher Allen Health Care病院がKit Check社のRFID薬剤トラッキングシステムを導入
  • Infratab社がスマホ対応の生鮮品モニタリング用センサータグを発表
  • Smartrac社が薄型金属タグとランドリータグの新製品を発表
  • HID Global社がNFCタグを用いた在宅患者の見守りシステムのデモを実施
  • Stryker Europe社がサトーのPJM HFパッシブタグの利用を拡大
  • Maxim Integrated社がI2Cインタフェース搭載のNFCチップを発表
  • Everykey社がBluetoothリストバンド開発費用のKickstarterによる募集を開始

How to Benefit From the Internet of Things(有償記事)

Internet of Thingsはプロセスの自動化、顧客ロイヤリティ、モニタリングなど様々な分野でビジネスに活用することができます。

Why End Users Should Discuss Their RFID Deployments

多くのユーザー企業は自社のRFID導入事例を競争力の源泉として秘匿する傾向にあります。ですがRFIDシステムそれ自体は競争力を生むものでは無く、それを活用した上位の業務プロセスこそが競争力の源泉です。業務プロセスの主要部分を秘匿して競争力を保持したまま、RFIDをどこでどう利用しているかを公表することは、RFIDの普及という形でユーザーへの利益になります。

The Language of Business

各種のEPCコードは複数の企業の間でモノの存在の識別のために利用される共通言語です。

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2014/11/09

RFID Journal 抄訳 2014/11/01号

今週はリゾートでのRFID利用の記事が2件掲載されました。用途としては既に知られているものですが、スポーツの秋、ということでしょうか。

編集後記はRFIDがマジョリティによって導入されはじめる条件について。ジェフリー・ムーアのキャズム理論に従い、ホールプロダクトが必要、という記述は従来と変わらないのですが、デファクトスタンダードと見做される「ゴリラ」の登場が必要、と書くのはこれが初めてではと思います。アパレル向けにTycoなどが出しているソリューションを意識してのことかもしれません。

North Carolina Transportation Dept. Tracks Precast Concrete and Samples

ノースカロライナ州交通局は工事現場から研究所に持ち帰るコンクリートのサンプルの管理にRFIDを利用します。サンプルにUHFパッシブタグとバーコードを搭載したラベルを貼付し、ハンディリーダーで読み取りを行います。

At Winter Resort, RFID Goes Downhill

カナダのスキーリゾートGlissades des Pays d'en Hautではアトラクションの大型ソリの管理をRFIDを用いて行っています。ソリは最大時速80kmで走るため、コースには常にソリが一台しか出ていないように厳密にコントロールする必要があります。同社はソリにOmni-ID社のMax UHFパッシブタグを取り付け、コースの入り口と出口にImpinj Speedway Revolution R420 readerを設置することで、この監視を自動化しました。

Volkswagen Group's Uruguayan Importer Improves Efficiency Through RFID

ウルグアイの自動車ディーラーJulio Cesar Lestido S.A.社は車両整備に用いる工具の管理にRFIDを利用しています。同社は工具にUHFパッシブタグを貼付し、作業場のゲートにリーダーを配置することで工具の持ち出しを管理します。同社は今後車両のフロントガラスにタグを貼付しハンドヘルドリーダーで読み取ることで作業管理を行う予定です。

Intel's Shahram Mehraban Explains IoT's Value to Manufacturing

IntelはマレーシアのCPU工場で行っていた製造設備でのセンサータグ利用のパイロットを本番移行させ、外販も開始しました。これはCPUの取り付け機械を対象としたもので、故障前に取り換える必要があるが高価なため無駄な取替を行うこともできないというもので、センサータグを使ってモニタリングを行って正確な交換タイミングを判定していたものです。外販は三菱電機と共同で行います。

RFID News Roundup

  • Zebra Technologies社がMotorola Solutions社の企業向けビジネスの買収を完了
  • PDC Healthcare社がMEPS Real-Timeとパートナー契約を締結
  • EPC Solutions Taiwan社がデータセンター向けソリューションでFarsens社のRFIDセンサーに対応
  • Tageos社がRound Rock Research社とRFID利用ライセンス計画を締結
  • M2M Spectrum Networks社とGlobeRanger社がテキサス州の保安官事務所でパイロットを実施
  • ノースカロライナ州立大学がUHFパッシブチップの製造コストを引き下げる研究を開始

RFID Captures the Action on Hawaiian Zip Line

Snapsportz Media社は屋外のアクティビティで最も劇的な写真をRFIDを用いて自動で撮影するソリューションを販売しています。同社はハワイのジップライン(ケーブルに吊り下げられての滑り台)向けにソリューションを導入しました。ヘルメットにUHFパッシブタグを貼付し、撮影ポイントに設置したリーダーで読み取って撮影を行います。

How to Grow the RFID Market, Part 2

RFIDの本格導入が起きるためには、ユーザーによるインテグレーション作業を必要とさせないホールプロダクトが提供され、そのうちの一つがデファクトスタンダードだと見做される必要があります。リテール分野ではこの条件が満たされる兆しが見えます。

NFC Hype, the Future of Bluetooth Beacons and Ultracode 2-D Color Bar Codes

先日ドイツの自動認識団体AIM-Dの会合が行われました。iPhoneへのNFC搭載などのニュースがありながらもドイツではB2Bアプリケーションが主流の状況が続く、Bluetoothタグの動向を注目すべき、Ultracodeという2次元カラーバーコードなどが議題になりました。

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