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2014/03/30

E-Thread:糸がそのままUHFパッシブRFIDタグになる

RFID Journal LIVE!の開催を控えた毎年3月から4月はRFID業界の新製品発表が重なる時期。ここ数年は直感的に「あ、面白い!」と感じるような製品があまり出ないなと感じていたのだが(ボトルネックを潰していく着実な進歩が重要ではないという意味ではないですよ)、今年は久しぶりにワクワクする製品がリストアップされていた。

その製品の名前はE-Thread(RFID Journal:E-Thread Provides Discrete Anti-Counterfeiting or Tracking Solutions)。どんな製品かは写真を見てもらうのが手っ取り早い。女性の左目の目頭の下で糸が黒くなっている。それがUHFパッシブのRFIDチップだ。

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この製品を提供しているのはPrimo1Dというフランスのスタートアップ企業。Platform for Advanced Smart Textile Applications (PASTA)というEUの研究プロジェクト(日本語の解説記事)の中でフランスの研究機関CEA-LetiがE-Threadを開発し、商用化のために立ち上げたスピンオフ企業がPrimo1Dということになる。商業生産開始は2015年第4四半期、現在パイロットを実施しているとのこと。

E-Threadの中核となるのはチップを糸の中に縒り込む技術。従来はチップと接続端子をハウジング上に配置し、それをボンディングワイヤで結んだものに外部導線を接続する構造になっていたが、E-Threadでは外部導線が直接チップに固定される。これによりハウジングが不要になり、チップ部の大きさが10分の1になったという。糸の種類はポリエステル、綿、羊毛と何でも対応できるらしい。また、RFIDに特化した技術という訳ではなく、LEDを同様に糸の中に縒り込んだものも紹介されている。

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それでは具体的な用途は、ということになるが、既存の製品を一気に置き換えるようなことにはならないだろう。商業生産開始後も通常のUHFパッシブタグよりも価格は高くなるとされているし、販売時の取り外しという、おそらく消費者向けの用途では当面必要とされる処理にも対応できない。

一方で、ホテル用のリネンなどでは上記の2点は問題にならないため、E-Threadの持つ優位性が強く発揮できるだろう。リネンを利用期間全般にわたってRFIDで管理するための競合技術はラベルになるが、E-Threadを使うことで以下のような優位性が得られる。

  • デザイン上本来はラベルが不要なケースでは、管理のためにRFIDラベルを縫い付けるより、E-Threadを縫い込むほうがコストが安くなる。
  • ラベルは利用の過程で引っかかって千切れてしまう可能性があるが、E-Threadはその可能性は低い。
  • 偽造・すり替えの可能性がある場合には、ラベルにRFIDタグが入っていることが分かっているより、リネン全体のどこにタグが入っているか分からないほうが有利である。

ただ、個人的には、この技術には現時点ですぐに思いつかないような使い方が多く隠れているように思うのだ。そして、アパレル用途でのRFID利用のマーケットはすでに成熟している。案外、あっと驚くようなE-Threadの用途が近いうちに多数出てくるかもしれない。楽しみだな。

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2014/03/26

RFID Journal 抄訳 2014/03/21号

以前よりRFID Journalが発行する週刊のメルマガに記事の内容の日本語サマリを付けて配信するMLを運営していたのですが(Mike Roberti氏から許可は頂いています)、そのMLが来月から廃止になるため配信をWebに移行することにしました。Twitterでのつぶやきと重なる内容もあるなど、しばらく運営は手探りですが、コメントなど頂けましたらありがたいです。

今週の記事で一番感動したのはPrimo1Dが開発した糸状のUHFパッシブタグE-Threadです。これは是非元記事の写真を見て頂きたいのですが、本当に糸。記事にある通りラベル以外の箇所に存在を明示せずに縫い込むことができるので、盗難防止などの用途にも有効でしょう。課題は消費者に販売した時点で無効にする方法でしょうか。

技術的な派手さはE-Threadほどではありませんが、華陽微電子有限公司のボタン型タグ+差し込みラベル式のブースターアンテナという組み合わせもアパレル業務を良く知っているなーという印象です。

E-Thread Provides Discrete Anti-Counterfeiting or Tracking Solutions

フランスのベンチャー企業Primo1D社は糸に埋め込んだUHFパッシブタグE-Threadを開発しました。これは標準的なRFIDチップから10cmのアンテナを2本反対の方向に伸ばしたものを糸に埋め込んだものです。糸に埋め込んだタグはラベルタグよりも丈夫なだけでは無く、どこに埋め込まれているかが分かりにくいため盗難防止にも有効です。このタグの読み取り距離は7mです。

Shenzhen Hyan Microelectronics Creates Privacy-Protecting Garment Label

中国の深セン華陽微電子有限公司はプライバシー問題に対応した衣料品向けUHFパッシブタグを開発しました。このタグは、ボタンに内蔵された近接タグと、飾り/商品説明向けの紙ラベルに内蔵された外部アンテナからなります。販売前は外部アンテナ内蔵の紙ラベルはボタンで衣服に固定されており、その時点では長距離読み取りが可能ですが、販売時に紙ラベルを外すと近接読み取りしかできなくなりプライバシーが確保されます。

Red Ledge Brings RFID to Food, Textile, Automotive Industries

イギリスのソリューションベンダーRed Ledge社は様々な業種の物流ソリューションにRFIDを利用しています。物流ソリューションに導入する機材に最初からRFID機器を統合していることが同社の特徴です。同社は現在レストランチェーンでのRFIDを利用したパイロットに取り組んでいます。

Borda Technology Markets Active and Passive RFID Health-care Solution in the U.S.

トルコのベンチャー企業Borda Technology社は病院向けの資材管理RTLSシステムをアメリカで販売します。同社は既にトルコで同種のシステムを販売しており、それはUHFパッシブタグと433MHzアクティブタグを組み合わせた構成のソリューションです。

Record Number of New Products to Be Showcased in RFID Journal LIVE! Exhibit Hall

4月8日から10日まで開催されるRFID Journal LIVE! 2014では、各社がブースに展示する新製品の数が過去最高になりました。今回は200社以上の企業が出展します。

RFID News Roundup

  • Technology Solutions UK社がBluetooth対応のグローブ型RFIDリーダーを発表
  • Metalcraft社が資産管理向けの小型UHFパッシブタグUniversal Miniを発表
  • Data Foundry社がRF Code社の製品を利用してデータセンターの空調の改善
  • 台湾のSecuritag Assembly Group社が死産管理向けのUHFパッシブタグをを発表
  • 中国のiCOMP社がISO 18000-64互換のUHFパッシブチップを発表
  • Qualcomm社がMLBの"At The Ballpark"アプリ向けにBluetoohビーコンを提供

NFC Tags for New Business and Consumer Applications (有償記事)

NFCはいまやほとんどのスマートフォンに搭載されるようになりました。多くのタグベンダーが様々な用途に利用できるNFCタグを提供しています。用途に応じた形状、金属対応、センサーとのI/Fなどがその一例です。

A New RFID Certification

NPOのRFID技術者認定機関International RFID InstituteはRFID Journal LIVE! 2014で認定資格RFID Institute Certified Associateを開始します。この資格によりRFIDエンジニアの能力評価がクリアな形で行われるようになることは、技術者と雇用者の両方の訳に立つでしょう。

Will RFID Kill EAS?

EAS(盗難防止システム)はタグが付いた商品がゲートを通過したことを判定しますが、RFIDを用いればどの商品が通過したかを判定することができますし、棚卸しなど他の業務にも利用できます。

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2014/03/18

講演のご案内:ビッグデータ時代のビジネスアナリシス~RFIDを題材に(4月24日19時@新橋ばるーん)

IIBA日本支部というビジネスアナリシスの推進団体で4月24日の夜に講演をさせていただくことになりました。「ビッグデータ時代のビジネスアナリシス~RFIDを題材に」というテーマで、RFID(特にUHFパッシブ)のウォルマート時代からの成功と失敗を見てくると、結局は技術の問題ではなくビジネス上の問題だったよね、なら今後はどうしていこうか、といういことを、このブログに書いてきたような事例を使って説明していきます。説明文はこのような感じ↓です。

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10年ほど前に起きたRFIDブームは現在のビッグデータブームの先駆けでした。これは、商品にRFIDタグ(電子タグ)を取り付けてサプライチェーン全体での動静データを自動的に取得し、そのデータを解析して在庫の削減や品切れ防止などの効率化を行おうというもので、世界最大の小売業・ウォルマートが2003年に導入を発表して急速にブームが拡大、日本でも大きな話題となりました。

このウォルマートの取り組みは紆余曲折を経た末に挫折、その後は様々な業界・企業での試行錯誤が行われ、現在はアパレル業界を中心に大規模な導入が進みつつあります。

RFIDの挫折と復活の主な原因は、RFID機材の価格や性能などの技術的な問題ではなく、大量に収集した非定型データを使った意思決定をどのように導入していくかというビジネスアナリシスの問題でした。この問題にどのように対処するかは今後ビッグデータの活用に取り組む際に共通する課題となります。

今回は、過去10年間のRFID業界でのソリューション導入事例の成功と失敗について、ビジネスアナリシスに関する問題が何であったか、その解決策はどのようなものかをBABOK®のフレームワークを使ってご紹介します。RFID、BABOK®のどちらの事前知識も不要ですので、ビッグデータとビジネスアナリシスにご興味のある方に広くご参加いただければと思います。

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開催場所は新橋駅徒歩3分。どなたでも参加いただける無料の講演会ですので、興味のある方はぜひ足をお運び下さい。終了後には懇親会も予定しています。

お申し込みはこくちーずからお願いいたします(申し込みページ)。

それでは、会場でお会いできること楽しみにいたしております。

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2014/03/15

RFID World Watcher Monthly February 2014

今月はプリンテッドRFIDとリテールテックJAPAN / NFC & Smart WORLD 2014のダブル特集。特にプリンテッドRFIDの全体像は最近日本語での資料が無かったと思うのでお役に立つ人には立つかもしれない。特集が2本だからという訳ではないがRFID Journalメルマガが1回お休みだったため事例紹介は今月も少な目。 

RFID World Watcher Monthly February 2014 (PDF形式、431KB)

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2014/03/08

リテールテックJAPAN / NFC & Smart WORLD 2014感想

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3月6日にリテールテックNFC WORLDを見に出かけてきた。個人的には、RFID関係の展示がもう少し盛り上がっていても良かったのになー、というのが正直な感想。UHFパッシブの導入は昨年と比べても着実に増加しているのに対し、会場の展示はそれなりの出展者・出展スペースがあったものの積極的に来訪者に働きかけていこうという感じは去年より後退した感じがする。NFCもハードウェアやコンセプト寄りの展示が多かった気がするな。特に意外だったのがBluetoothビーコンで、ずいぶん動きがあるし店頭プロモーションという訴求しやすいテーマなので展示が多いだろうと予想していたが、実際には会場で展示を見つけられたのは1ブースのみ。小売り関係は他にも重要テーマが多く、相対的な重要性はこんなもの、という感じなのだろうか。

【セミナー「流通システム標準化の最新動向」】

今回の参加の主な目的はセミナーセッション。流開とGS1が中心のセッションで彼らの発表が3コマ・3時間あったので期待していたのだが、うち2コマは流開が扱うIDとデータキャリア全体の説明(RFIDについてはごく簡単に触れたのみ)、そして最近話題の電子レシート。昨年発表になったEPC Gen2v2の話とか聞けるかと思って楽しみにしていたのでちょっと残念だった。

もっとも、残りの一コマ「フランスにおけるEPCglobal標準を活用したRFID導入について」は面白かった。RFID Journalなどをきちんと読んでいても、国単位でのRFID導入の状況というのはなかなか見えてこないんだよね。

特に興味深かったのはMetro Cash & Carryの事例で、DHLが一括物流を請け負ってのRFID導入は現在でも続いているとのこと。3年ほど前に取り組みが放棄されたという記事を見かけていたので(参考:消費財RFIDビジビリティプロジェクトの総括)、ちゃんと動いているんだということを知り嬉しかった。現在は物流センター6ヶ所に店舗91ヶ所、検品ゲートの配置を変えるなどの運用修正も行っているそうだ。

他には、店舗内利用の事例としてOxylane(ヨーロッパ最大のスポーツ用品チェーン)、Beumanoir(衣料品チェーン)、Cleor(フランス第2位の宝飾店チェーン)。サプライチェーン利用としてはKayPal(パレット梱包で用いる緩衝剤のレンタル事業者。緩衝剤の管理に利用)、Aution(フランス第2位のスーパーマーケット。野菜・果物輸送用のプラケースで利用)。Leclair(小売店。オンラインで入れた注文を倉庫でピックアップできるという業態で成長しており、ピックアップ前の商品の管理に利用)。トラックの荷台にUHFリーダーを取り付け、運転台のGPSの情報を組み合わせて読み取り結果を送信することで、各店舗にリーダーを設置せずに自動検品を行っているというLeclair社の運用が興味深かった。

【出展ブース】

〔極薄フィルム型Bluetooth(アプリックス)〕

上で書いたようにBluetoothビーコンの展示は会場でほとんど見かけなかったのだが、唯一Beacon関連の製品を見つけたのがアプリックス社のブース。日本でBluetoothビーコンの本格対応を始めた最初の会社の一つで、薄さ0.8mmという極薄のBluetoothモジュールを出展していた。フレキシブルプリント基板で電池もシート型のものを用い、電車の中吊り広告での利用を考えているとのこと。今までにない面白い使い道がありそうだ(日経産業新聞での紹介記事)。

〔PJM RFIDトンネルリーダー(サトー)〕

今回訪問したベンダーのブースの中で一番へぇーと思ったのがサトーのブース。リテールテックなのでラベルや印刷の関連ソリューションも出したいだろうと思うのだが、ブースはRFID一色の展示となっていた。ビデオもユナイテッドアローズ グリーンレーベル リラクシングの事例紹介で、渋谷マークシティ店ではレジでの生産時間が60%減、棚卸し時間が開店前の1時間で済むようになったなど、具体的な数字が出ていて非常に参考になった。

また、今回は昨年11月に買収を発表したオーストラリアのMAGELLAN社の独自技術HFパッシブタグ製品デモが展示されていた。オリコンに入った品物をトンネルリーダーに通して読み取りを行うというもの。オリコンはかなり大きく内部には水の入った瓶や金属ケースなども一緒に詰められていて、それを一瞬で読み込む様子は迫力があった。日本での導入ターゲットは、システムがUHFと比較してどうしても高価になってしまうので、海外で導入実績があり価格負担力もある医療分野をまずは狙っていくとのこと。

〔輸きち(紀文産業)〕

紀文グループがカゴ車の紛失に苦しんだ末に生み出したRFIDによる管理ソリューションを他社にも広げていきたいと外販している「輸きち」。日本ではユーザ企業が前に出てソリューションを広めることは少ないのでいろいろなメディアで注目を集めている。以前にデモを見せて頂いた時からハード・ソフト共にいろいろ進歩しており、今回は初音ミクの声を利用したゲート通過結果読み上げシステムのデモを見せて頂いた。カゴ車管理システムはRFIDによる導入効果が非常に高いアプリケーションの一つで、導入によって効果が出ていることがこういう活動によって世の中にもっと広まると良いと思うなぁ。

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