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2014/01/26

医薬品e-ペディグリーでのRFID失敗の総括

一昔前、RFIDシーンが導入義務付けを中心に語られていたころ、Wal=Mart、アメリカ国防総省と並び、医薬品トレーサビリティー(e-ペディグリー)が導入の牽引役として語られていた。最近あまりニュースを見かけず、現状はどうなっているのかと気になっていたが、先日RFID Journal誌に特集記事が掲載された(RFID Takes a Back Seat When It Comes to Electronic Pedigrees、購読登録か購入が必要)。結論から言うと、e-ペディグリーはほぼ2次元バーコードの利用で決着がつき、近い将来RFIDがこの用途で広く利用されることはないだろう、という内容だ。RFID Journal誌は失敗事例を積極的に取り上げる雑誌ではなく、このような特集を組んだのはもう迷惑のかかる関係者がいなくなった、つまり関係者・関係企業の撤退が済んだということだろう。記事は失敗の理由についてかなり踏み込んで記述されており、e-ペディグリーに留まらない教訓を含むものになっていた。記事の内容につき簡単に紹介したい。

【e-ペディグリーの経緯】

最初にe-ペディグリーが業界で大きな話題になったのは、2004年にカリフォルニア州が2007年1月までの導入義務付け案を公開した時である。上に述べたようにこの時期は導入義務付けによるRFIDの一括導入が複数の分野で語られていた時期であり、医薬品サプライチェーンでも本件が大きな話題になり、様々な取り組みが行われた。その事例としては以下のようなものがある。

  • 2005年にはファイザーがアメリカで流通するバイアグラの各瓶にRFIDタグを貼付した。
  • 2006年にはCardian Health社がパレット、ケース、小品のすべてをカバーしたRFIDサプライチェーン管理システムのトライアルを行い、本番環境への導入を検討していると述べた。
  • 2007年には、Purdue Pharma社がOxyContinのすべての瓶とケースにRFIDを貼付する導入を開始した。

カリフォルニア州に続き、フロリダ州やネバダ州など他の州も仕様が異なるe-ペディグリーの導入を相次いで表明した。この状況を受け、2008年には連邦食品医薬品局が取り組みを表明、e-ペディグリーは国レベルの取り組みになった。

2013年の11月に、国の法律として「医薬品品質・安全法(H.R.3204)」が成立した。この法律は、医薬品を容器が密閉される最小単位でシリアル番号を付与、トレーサビリティーを偽造品判定を行う方法を定めたものである。だが、この法案にはRFIDの利用は含まれず、識別はすべてバーコードを用いて行われることになっている。

これを受け、RFIDの導入を行った企業も、それらシステムを破棄、2次元バーコードを用いたシステムに移行している。

【RFIDが利用されなかった理由】

RFIDを導入しようとする勢いは、カリフォルニア州がe-ペディグリーの導入義務付けを当初の2007年から2009年、2011年、そして2010年代半ばへと順に繰り下げる中で失われた。

その当時、2次元バーコードとの比較が行われるなかで、RFIDは未成熟でコストが高い、というイメージを持たれていた。未成熟というのは、医薬品の取り扱いに必然的に付随する液体やアルミ箔がある環境で正しく動作するかということである。これらの能力はここ数年で急激に改善されたが、法案の審議に携わる人たちは、当初の過剰評価と実際のパフォーマンスの落差、そしてその後のパフォーマンスの向上という急激な変化についていけなかった。

また、コストは現在の時点でも問題である。小規模なメーカーで年間出荷数は数千万から数億個、大規模メーカーでは数十億個になる。このボリュームに対応できるRFIDインフラは非常に高額なものになる。RFID業界の人間は、コストをかけてもそれ以上の利益を出せればよいと考えるが、ユーザーである製薬業界の人間は現状のコストと比較した値頃感を考える。そして、RFIDが2次元バーコードに対し最大の運用メリットを出せるのは、サプライチェーンの途中でケースを開封せずに個品の全数検査を行うようなオペレーションだが、従来のバーコードに馴染んだ流通現場にはそもそもそのようなニーズは意識されていなかった。

コストについてはRFID利用のコスト負担者とメリット享受者が別れていたことも大きな問題だった。コストを負担するのは製薬会社であるが、RFIDによるメリットを最大限受けるのは下流の店舗である。コストとメリットの分配をサプライチェーン中で合理的におこなうモデルを作る取り組みもなされていなかった。

e-ペディグリーにRFIDを利用しようという取り組みが国際的に広がらなかったことも影響を与えた。多くの会社は世界で共通のトレーサビリティーのインフラを利用することを望む。EUとインドは医薬品の個品管理を導入し、アルゼンチン、トルコ、中国は完全なe-ペディグリーを導入しようとしているが、いずれも2次元バーコードを利用している。例外は韓国で、RFIDとバーコードのいずれを使っても良いとしている。これは、2006年から2009年までの間に政府が大規模なRFID導入支援策を取ったため。

【EPCISの成功】

一方で、e-ペディグリーのデータの共有手法としてEPCISは定着している。過去5年間大手企業はイベントの保管・交換にEPCISを使うベースで開発を行ってきており、政府はEPCISの利用を直接義務づけている訳ではないが、EPCISベースのシステムは今後も利用され続けるだろう。

GS1ではロット中の複数のシリアル番号がサプライチェーン中で適正な状態にあることを検査するChecking Serviceという機能を開発中であり、2014年から標準化が行われる。これもe-ペディグリーで利用される非常に重要な機能の一つである。

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