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2013/12/31

2013年RFID十大ニュース

今年もRFID十大ニュースのエントリを書く時期になった。振り返ってみると業務利用の分野では去年に続いて派手なニュースが少なかったが、スマホがらみのニュースで好奇心を刺激するものが多かった気がする。今年も国内・海外含め自分の興味を引いたという観点から選んでみた。

☆Bluetoothビーコンタグの登場


従来アクティブタグ用途ではあまり利用されてこなかったBluetoothだが、Bluetooth4.0(BLE)で大幅な省電力性能が達成されたこと、またスマホがBluetooth4.0への対応を開始したことから、今年に入り取り組むベンダーやその製品がメディアに出始めていた(新世代Bluetoothタグの登場)。この状況が更に大きく動いたのがiOS7がiBeaconとしてBluetoothタグをサポートしたこと(iBeacon(Appleが選んだBluetooth LEタグ))。NFCとBLEは特性が全く違い、過去のパッシブ・アクティブタグの利用法の変遷を見ても将来的には棲み分けていく(または両方の特性を生かし組み合わせて使われる)ことになるだろうが、現時点で「何かスマホの面白い使い方を考えてみよう」という案件では競合するという面もあるだろう。iPhoneとAndroidの両方で対応が可能という特徴を生かし、メジャーな施設や店舗で対応アプリケーションが出てくることを期待したい。

☆iOS7がNFC対応せず


iOSの新バージョンが発表されるたびに「今度こそNFCに対応する!ほらリークされた基盤写真のここにNFCチップが載っている!」という騒ぎになるのはこの業界の風物詩になってしまっているが、今年搭載されなかったということはしばらく対応は無いのではないか、という気がする。


☆NFC非決済分野での普及


一方でAndroidの世界ではNFCの認知度が急速に高まった。決済分野での普及ではなく、Bluetoothペアリングの補助に使われる、というのが一般ユーザーへの認知の中心だったというのは正直予想外で、コンシューマー向けの分野では何が起こるか分からないということを痛感した。また、Intelが第4世代CoreプロセッサにNFCリーダーコントローラー機能を組み込んだというニュースもあり(こちらは決済用途を視野に入れているようだが)、Apple以外のプラットフォームがNFCをうまく使ってAppleの土俵から離れようとする動きは2014年にも続いていくのだろう。


☆ディズニーのMyMagic+導入とその後の報道


今年の1月にディズニーが来園者統合管理システムMyMagic+を導入するという報道がなされた(ディズニーの来園者統合RFID認証システムMyMagic+雑感)。報道当初はプライバシー問題も含め今後大きな議論になると思っていたのだが、その後は不思議と議論が表舞台から消えていった。RFID業界人にとってはともかく、ディズニーにとってはRFIDという個別のテクノロジーが注目されることは本意ではないことは明らかで、上手いマネジメントをしたのだなと思う。これをきっかけにプライバシーに関する議論が深まったり、ノウハウが公開されたりすることを個人的には望んでいたのだが。


☆J.C.Pennyの挫折


J.C.Pennyが昨年公開したRFID導入プランは、店頭在庫切れの次のRFIDビジョンを提示するものとして業界にかなりの衝撃を与え、また大きな注目を集めた(J.C.Pennyの全店舗・全商品RFIDタグ付け)。残念ながら、同社の(というかCEOとして招聘されたRon Johnson氏の)取り組みは冒険的に過ぎ、Ron Johnson氏の解任に伴い水泡に帰してしまった。気になるのはこのコンセプトを継いだ他社の案件がメディアなどに出てきていないこと。そういう案件がそもそも低調になっているのか、あるいは裏では動いているが表に出なくなったのか。この手の花火は、表に出てぶち上げるビジョナリーがいてこそ世の中を動かす力になるのだけどな。


☆Marks & SpensorのRFID導入拡張


RFID導入案件でポジティブな意味で驚かされたのはこちら。10年前、RFIDという言葉がブームになった時点で同社の事例は先進事例として語られていたが、その後も着実に利用範囲を広げ、全店舗を対象としてシステムを拡大するというニュースが報道された(Marks & SpensorのRFID利用、その後)。こういう事例を見ると、RFID Journal誌はビジョナリーに偏ったメディアだということを改めて痛感する。マジョリティーの企業がきちんと導入に成功した事例を広げていくことが、普及に必要なのだろうな。日本では特に。


☆日本アパレル業界でのRFID導入の拡大


その意味で、日本のアパレル業界でのRFID導入が広がり、すべてではないとしても導入事例が公開されていることはとても心強い。去年のビームスとユナイテッドアローズに続き、今年はSHIPSもRFIDの導入を表明し、またそれがIT系のメディアで報道されている。これをベースに、アパレル業界以外にも「最近なんだかRFIDが盛り返してきているらしい」という認識が広がるといいなぁ。


☆EPC Gen2V2の制定


11月にGS1がEPCの新規格、Gen2V2を承認した(GS1がEPC Gen2v2を承認)。僕は存在は知っていたはずなのだが意識からすっぽり抜け落ちていて、報道を見た時にはずいぶんと驚いた。主な新機能は暗号化とユーザメモリの拡張なのだが、現在のGen2V1.2へのオプションとして実装されており、新規格が承認されたことですぐに何かが変わるわけではない。ただ、将来的に個品タグ付けがコンシューマーの分野に入っていくことを睨んだ規格であることは確かで、将来振り返ったときに本当の価値が理解されるもののように思う。


☆サトーのマゼラン買収


アメリカでは大手ベンダーがRFID専業メーカーを買収するという流れが昨年から続いていたが、サトーがマゼランを買収するという11月のニュースには意表を突かされた。日本のメーカーがこの分野でアクティブな行動に出たということを強く応援したい。日本の大手SIerがこの分野に参入してきても面白いと思うのだが。


☆地味だが着実な進歩


RFID Journal誌の Mark Roberti氏による今年のRFID業界の評(Another Year of Progress)。特にアメリカの視点で見た場合、そうなるのかなぁと思う。多くの業界で着実な普及が進む一方、アパレル分野では上述のJ.C.Pennyの挫折があり、ヘルスケアの分野では更なる普及には標準の不在が障害になるというレポートが発表された。外部のウオッチャーとしてみると、2014年には業務利用の分野でもワクワクするようなニュースが出てきてほしいなぁ。

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2013/12/19

RFID World Watcher Monthly October/November 2013

先月は執筆できず、2ヶ月ぶりの発行。申し訳なし。特集記事はEPC Gen2V2。2ヶ月溜めたのでニュースの件数は結構ある。

RFID World Watcher Monthly October/November 2013 (PDF形式、227KB)

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2013/12/07

GS1がEPC Gen2v2を承認

2013年11月7日、GS1はUHFパッシブRFIDの新規格EPC Gen2 V2.0(以下 Gen2v2)の規格を承認した(日本語版プレスリリース、RFID Journal: GS1 Ratifies EPC Gen2v2, Adds Security Features, More Memory)。

Gen2v2は現在のEPC Gen2 Ver.1.2と完全に互換性を持つ規格で、拡張機能はすべてオプションとして提供されている。ファクトシートに記載されている拡張機能は以下のようなものだ:

タグとリーダーの暗号化認証
ファクトシートの中で一番目を引く部分ではあるが、Gen2v2の中での記載は、RFIDのセキュリティサービスを利用する際のインタフェース部分を記載するにとどまっており、具体的な暗号化・認証方式は記載されていない。この部分は、外部規格であるISO/IEC 29167に準拠する形になっており、具体的な暗号化・認証方式は審議中の状態にある。

ユーザー・メモリの強化
ユーザー・メモリを複数の「ファイル」に分割し、それぞれに独立してアクセス制限をかける機能が追加された。この機能に対応しない場合、ユーザメモリは1つのファイルとして扱われる。

トレース無効化機能
データの一部を隠したりタグの読み取り範囲を縮小したりといったトレースを妨げる"Untraceable"設定を行えるようにする。

「取外し不能」フラグ
電子製品の埋め込みタグや衣類の縫い込み式タグで、製品を破壊せずに取り外すことができないことを示す"Nonremovable"という属性が追加された。

実はこの規格、自分でも忘れていたのだが、2011年8月の自動認識総合展でImpinjのCTOの講演で触れられていた(自動認識総合展2011)。当時の講演では同年10月にワーキングドラフトを公開し、年内に最初のIPレビューを終了。2012年6月に批准というスケジュールだと言われていたので、約1年半予定から遅れたことになる。

更に遡ると、2006年のRFID Journalのコラムで、EPC Gen3としてこの規格が取り上げられていた(The History of EPC's Future)。この時点で、Gen3でUHFパッシブタグがケース・パレットから個品へとアプリケーションを広げていくにはセキュリティが必要だときちんと説明されている。当時のRFIDチップの能力や価格を考えれば、あるいはWal-Martの当初構想の挫折や、その後のアパレル分野での復権が、少なくともメディアレベルでは認識されていなかったことを考えれば、規格策定者が将来を見通す力は凄いものだなと改めて尊敬する。

RFID Journalの記事によるとGen2v2のISO化は来年、対応製品は18ヶ月以内に登場を見込んでいるとのこと。Gen2v2の全ての機能を実装した製品が出てくるのではなく、例えばアパレル向けにはセキュリティ機能を、航空部品向けには拡張メモリー機能をサポートした製品が出てくると予測されている。だが、今後普及が進むにつれて全ての機能をサポートするチップが増え、新たなアプリケーションが出てくるのだろう。今後の展開が楽しみだ。

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