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2013/05/12

Marks & SpensorのRFID利用、その後

ご存知の通りこのBlogではRFIDの事例、それも海外の事例を追いかけているのだが、長期にわたって動向を追跡することができる事例は案外少ない。導入に失敗してうやむやになるのはまぁ当然なのだが、成功した事例でも案外その後の動向を掴めなかったりする。

なので、長期に渡りRFIDソリューションを使い続けている組織の話はとても貴重だ。一ヶ月ほど前にRFID JournalにMarks & SpencerのRFID利用の現状の記事が掲載された(Marks & Spencer Rolls Out RFID to All Its Stores)。ビジネスの観点からも、人の観点からもとても面白い事例なので、少し整理しておきたい。

Marks & SpencerのRFID導入について、初期の話は日本語で読める良い記事がいくつもある(【RFIDユーザーフォーラムレビュー1】6000点のスーツを1時間で棚卸し、スーツなどの在庫切れを削減第1回 3500万個を使い捨てても投資効果が得られた第2回 投資対効果は十分)。

同社が最初にRFIDを導入した分野は食料品のリターナブルトレイで、2002年の8月からサプライヤーと配送センターとの間で利用している。2005年の記事では対象のトレイは400万個となっていたが、2013年の記事では1,000万個に拡大、また花・植物のトラッキングにも利用されるようになっているとのこと。このソリューションではHFパッシブ技術が利用され、タグにはIDだけではなく搭載した商品情報(商品名、サプライヤー、賞味期限)などが格納されている。

次に同社が取り組んだのは衣料品へのタグ付け、しかも個品タグ付けだった。同社は衣料品を自社工場で製造しているためタグは工場で取り付け、店舗では品切れによる販売機械損失を防ぐための棚卸に利用されるという、今の目から見ても最先端と言っていいソリューションだ。2003年からイギリス貿易産業省の支援を受けつつパイロットを実施し、紳士服を対象に当初の1店舗から2004年には9店舗、2006年には42店舗、2007年には120店舗まで拡大されている。

なお、同社がこのソリューションで採用した技術はEPC Gen2ではなかった。同じくUHFパッシブではあるが、EM Microelectronic社のiP-Xプロトコルで動作するものだったのだ(RFID Journal:Marks & Spencer to Tag Items at 120 Stores のコメント欄など参考)。ちなみに、2005年の時点では、ハンドヘルドリーダーではなく、ショッピングカートに固定式リーダーと鉛蓄電池を積み込んで棚卸を行っていたとのこと。

当時のMarks & SpencerのRFID担当者だったJames Stafford氏のインタビュー(RFID Journal: A Conversation With Avery Dennison's James Stafford)によると、2007年の時点で、同社にとって衣料品RFIDシステムはすでに安定し、技術的面でのチャレンジは無くなっていたようだ。オペレーション能力の高い大企業であり、iP-X技術も「枯れた」技術ではあったにせよ、同時期のアメリカでのWal-MartやAmerican Apparelの苦闘と比較すると改めて驚かされる。同社はその後、対象店舗を550店舗まで拡大し、また対象品目を婦人服やカジュアルのラインに拡張していた。

2011年の末になり、同社は再び大規模なRFIDシステムの見直しに踏み切る。RFIDシステムをすべての店舗に導入すること(とはいえ同社の店舗数は760店舗なので過半数には導入済みだったが)、対象品目を家具、台所用品、アクセサリーに拡張すること、そして利用技術をEPC Gen2に切り替えることだ。最後のものについては、さすがにiP-X製品が時代遅れになったと言うことだろう。2013年に新システムを各店舗に導入し、2014年の春から新システムが稼動するという。

ちなみに上記のJames Stafford氏は、2007年の時点で「RFID技術を小売業界全体に広めたい」とMarks & Spencerを退社、同社にタグを提供していたAvery Dennisonに転職した。Marks & SpencerとStafford氏、そしてAvery Dennisonの関係は良好で、上記の2013年の記事にもMarks & Spencerの現担当者と並んでインタビューが掲載されている。ご同慶の至り。

Marks & SpencerのRFID利用の流れを見てくると、日本企業でのRFID導入の可能性と課題の分析のためにはこういう事例をちゃんと分析しないといけないなぁと感じる。そして、日本でもRFIDの導入に成功し活用分野を広げている企業が声をあげて欲しいなぁと思うのだ。

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