« 2012年11月 | トップページ | 2013年1月 »

2012/12/29

2012年RFID十大ニュース

毎年この時期にはRFID十大ニュースを書くことにしている。以前はRFID UpdateやRFID Journalに掲載されていた記事を翻訳してコメントを付けていたのだが、前者は廃刊して久しく、後者は去年から十大ニュースを取り上げなくなった。今年のRFID Journalの記事を読み返してみても確かにこれはという記事は少なく、十大ニュース的なものを書くのも難しいんだろうなぁと感じる。海外のニュースだけでは10項目を埋めることが難しいので、今年は日本のニュースも含めて10個を選んでみた。

☆大手総合電機メーカーによるRFIDベンダーの買収続く

Motorola SolutionsによるPsionの買収、HoneywellによるIntermecの買収と、大手総合電機メーカーによるRFIDハードウェアベンダーの買収が立て続けに報じられた。両者共にRFIDハードウェアの自社製品を持っており(Honeywellは参入直後だったが)、買収は新規参入のためではなく買収先のシェアを獲得することが目的だったのだろう。こういう大型ベンダーがシェアの拡充や製品ラインナップの拡大を急いで行う必要に迫られるほど欧米でのRFID市場は成熟化しているということか。

☆スマートフォンのNFCサポート方針が分かれる

iPhoneとAndroidでNFCサポートの動向にはっきりとした差が出た。Androidでは急速に搭載が進み、Google自社ブランドのNexus 7(これはタブレットだけど)を始め2012年の国内冬モデルでは半数以上が搭載。一方でiPhone5には事前の過熱気味の報道やリーク記事があったにも関わらず結局未搭載。個人的にはAppleはNFC機能を搭載することでAndroidとの差別化ポイントが無くなる事を懸念して間合いを計っているのだと考えている(参照:AppleのNFC戦略を大胆予測)。iPhoneへの搭載が遅れることはNFCの普及にとってはマイナスなので、思い切って搭載を決断して欲しいが…。

☆J.C.Pennyで顧客対応目的のアパレルRFIDアプリケーション

今年話題になった新たなRFIDアプリケーションで当面の影響が一番大きいのがこれだろう(参照:J.C.Pennyの全店舗・全商品RFIDタグ付け)。去年の初めぐらいからRFID Journalの社説でやけに「クリック&モルタル」(当時はまだO2Oという用語が定着していなかった)の話を強調していたが、どうやらこのあたりの話題をベンダーから仕込んでいたのではないかと今になって思う。オムニチャネル・リテールでRFID/NFCを使う事例はこれからどんどん出てくると思うし、そのころは「日本の店舗オペレーションは優秀だからRFIDなんて不要」と言っていられなくなるだろう(参照:アパレル分野でのRFID利用トレンドの変化)。

☆電子機器へのパッシブGen2タグの統合

今年話題になったRFIDの用途でもう一つ気になっているのがこれ。パッシブGen2タグにシリアルバスを取り付け、タグのユーザメモリを電子機器側から読み取れるようにしたもの。Intermecのラベルプリンタに採用されたり、Intelが出荷するWindows 8タブレットの基盤に組み込みが決まるなど、実際の事例が登場しつつある(参照:ディップスイッチのRFID化)。ディップスイッチ的な利用にとどまらず、パッチやクーポンの配布にも使えるので、今後どのように展開していくかを見届けたい。

☆プライバシー問題再び

テキサス州の高校で生徒の所在をアクティブRTLSで管理するシステムが導入され、宗教上の理由(獣の印!)で着用を拒否した生徒が退学になったという話が話題になった。現時点での報道は批判的なものでもおおむねこの高校の導入事例に焦点が当てられ、RFID全体への嫌悪感や拒否感には繋がっていない印象。これほど引火性の高い事例が出ても変な延焼をしていないのはSPYCHIPSの時代と比べてRFIDに関する知識が普及したからだろうか。

☆Americal ApparelのRFIDアプリケーションが全世界展開

アメリカでのアパレル個品RFIDアプリケーションの代表事例だったAmerican Apparelでいよいよ全店舗・全世界展開が始まった。事例規模としてはさほど大きくないのだが、アプリケーションの不具合・入れ替えや金融危機などを乗り越えて本格導入に至ったことを個人的に祝福したい。ぼちぼちとカンファレンスなどでの事例発表も出てきていて、長く取り組んできただけに重みのあるノウハウが含まれている。

☆日本で新周波数帯移行開始

2012年7月からソフトバンクが900MHz帯のサービスを開始した。今後ソフトバンクの補償で既存RFIDアプリケーションの周波数移行が進められていくのだが、現時点ではあまりはかばかしい進展の話が聞こえてこない(参照:ソフトバンクによるUHF帯RFID移行促進措置の現状)。携帯電話の割り当て周波数は国民共通の財産なので、関係者が知恵を出し合って早く移行が進むことを願いたい。

☆NFC対応ハードウェアの登場

Panasonicのスマート家電やOMRONのヘルスケア機器、Sonyのスマホ周辺機器などで、NFCを使ったハードウェアが続々と登場している。こういう分野はWiFiやBluetoothが強くNFCの出番はあまり無いのではないかと思っていた僕には予想外だった。また、単独ではなくBluetoothのペアリング用に使うなどの合わせ技もあり、まだ気づいていないアプリケーションもたくさん隠れているのだろう。

☆日本でも大手アパレルRFID案件が登場

夏から秋にかけビームスとユナイテッドアローズでのRFID案件が続けて導入された。どちらも知名度の高いブランドで導入内容も店舗業務全体をカバーする意欲的なものだったが、メディアでの反応は薄く悔しい思いをした。来年こそは…。なお、こういう案件が出てくる背景には国内でもノウハウの蓄積があり、例えばI.T.'S.internationalでは3年前に原宿店から始まった導入が既に全国13店舗すべてに展開されており、しかも生産委託先からレジまでの完全な一貫利用、そして試着室にリーダーを置いての試着履歴まで取得するという欧米の先端事例に負けない活用がなされている。

☆RFID/NFC Real Touch Shopオープン

今年の1月末に八重洲にRFID/NFC Real Touch Shopがオープンした。RFID/NFCのりアル店舗としては世界的にも珍しい存在だが、国内のRFID/NFCコミュニティの核として成長しているのが実に心強い(参照:RFID普及のためのもう一つのアプローチ)。個人的にも来年はもっと足を運んで最新の情報を勉強しようと思っている。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2012/12/22

Mojix Star System最新バージョン説明会

先日IBMの横浜北事業所でMojix Star Systemの最新バージョンの説明会が開催され、参加することが出来たので内容について簡単にメモ。

Mojix Star Systemはフェーズドアレイアンテナにより指向性の高いアンテナを用いることでUHFパッシブタグの所在を空間内でピンポイントで読み取るシステム。2008年にMojix社が開発した製品で、日本ではIBMが代理店になっている。製品の基本的な特性については以前に記事を書いた(参照:Mojix STAR System (超遠距離Gen2タグ読み取り+高精度位置情報)Mojix STAR System続報(RFID Journal LIVE! 2008製品発表))。

その後4年が経っているだけに製品もバージョンアップがなされており、9月に日本でリリースされた最新バージョンはMojix Star 3000という(IBMプレスリリース)。以前のバージョンからの変更点は、受信機と送信機の接続がワイヤレスに対応した以外は接続できるアンテナ数の増加や消費電力の削減、アンテナの耐環境製の増加などの地味なもので、興味深いことにシステムの基本的なスペックは最初のバージョンからほとんど変わっていない。システムの基本設計が優れていること、そして利用者からのフィードバックが着実に行われていることの反映だろう。製品スペックそのものではないが、日本市場の特性に合わせ小規模構成での価格の引き下げも行ったとのこと。

デモ環境は実際にサーバ製品の倉庫として使われているエリアの一角に設置されてあり、倉庫管理システムのデモ版が動作している。

これがタグからのデータを読み取る受信機。この中にフェーズドアレイアンテナが格納されている。以前のバージョンからちょっと小さくなっている。

Dscn0322

下の写真の右側がタグに電力を供給する送信機。以前のバージョンより劇的に軽くなった。ケースはおそらく厚紙だけど、屋内で使うのならこれで充分なのだろう。左側にあるのがケーブル分配器で、これを使って以前のバージョンより多くのアンテナを接続できるようになった。

Dscn0323

タグが特定の位置を通過したときに確実に読み取りができるようにセンサーとの連動機能も提供されている。一般的な工学センサーもあるのだが、これはカメラ。画像を分析して読み取りが必要になったことを検知する。

Dscn0321

デモとしては地味だが僕が注目した点は、Mojix Star SystemとIBMの倉庫管理システムSterling WMSとを自社のミドルウェアWebsphere Sensor Eventsで接続している点。Mojix Star Systemは一種のRTLSであり、ゲート式リーダーやハンディリーダーと比較するとゲート通過や棚卸などの処理が大幅に異なる。その処理の違いをWebsphere Sensor Eventsで抽象化・吸収することで、倉庫管理システムからは統一されたインタフェースで接続できるようにしているのだ(参照:モノとインターネットをつなぐミドルウェアの条件(IBM Websphere Sensor Events))。これは、既存システムとの統合や複数の入力デバイスを併用するシステムの構築にとって非常に重要な機能であり、それを自社の環境で実証してくれていることは大きな意義があると思う。

日本企業はプロセスの地道な改善を重視するので、エリア内のタグ(品物や機材・従業員など何にでも付けられる)すべての位置をリアルタイムで収集するMojix Star Systemの機能は、「凄いけどどう使ったらいいか分からない」と思われがちだったのかもしれない。だが、昨今のビッグデータのブームで、リアルタイムの位置情報を収集・分析することが業務のブレークスルーにつながりうる、という考え方が、日本企業にも徐々に広まってきているのではないかと思う。2013年には日本でもブレイクして欲しいな、Mojix Star System。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2012/12/09

RFID World Watcher Monthly November 2012

今月の特集記事はアパレルでのRFID利用の歴史。ブログのエントリに若干加筆しています。ニュースは11月の配信が3回だったので若干少なめ。アクティブの事例が少なかったのが気になるところ。

RFID World Watcher Monthly November 2012 (PDF形式、210KB)

| | コメント (0) | トラックバック (0)

« 2012年11月 | トップページ | 2013年1月 »