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2012/10/20

ソフトバンクモバイルとRFIDの周波数移動交渉まとめ

今週の月曜日に日経にソフトバンクモバイルのプラチナバンドでの周波数移動交渉に関する記事が掲載され(日本経済新聞買収の陰で…ソフトバンク、プラチナバンドに漂う暗雲)、その記事を見てかこのブログの記事(ソフトバンクによるUHF帯RFID移動促進措置の現状)が検索されずいぶん読まれたようだ。

twitterなどでコメントを見るとRFIDにあまり詳しくない方にも見ていただけているようで、せっかくなのでRFID関係者からこの話がどう見えているかを簡単にまとめてみたい。他の立場でこの問題に関心を持っている方にも何かの参考になれば。

そもそもRFIDって何?
SUICAやEdyの仲間みたいなもの。電波を使って識別番号などのデータの読み書きを行う。いろいろな周波数に対応するRFIDがあるが、プラチナバンドで使われるRFIDは読み取り距離が数メートルと長いので物品管理などが主な用途。物品に取り付けるものはカードではなくタグと呼び、読み取り機をリーダーと呼ぶ。

今話題になってる周波数移動交渉って?
TVアナログ放送の停波で空いた周波数を携帯電話で使うにあたり、そのままの周波数の利用は国際標準規格に違反するため行えず、いろいろな用途に割り当てられていた周波数を玉突きで移動させた。そのためRFIDが新しい周波数に移動し、その跡地の周波数をソフトバンクが利用することになる。現在ソフトバンクが使っているプラチナバンドは割当幅の3分の1、残りはRFIDなどの既存システムが移動してから利用開始となる。

ソフトバンクはイーモバイルを買収したし、もうプラチナバンドいらないんじゃ?
ソフトバンクはauとの競争のため当初は想定していなかったiPhone5でのテザリングの解禁に追い込まれた。イーモバイルの買収で得られる帯域だけでは今後の通信量の伸びに追従できず、プラチナバンドの早期の全面利用が必要な状況は変わっていない。

RFIDってソフトバンクに周波数を地上げされたんだ。大変だね。
そうではない。周波数移動自体は国策で、ソフトバンクが使わなくてもどこか別の携帯キャリアが使うことは決まっていた。その点ではソフトバンクに非があるわけではない。

じゃあ何が問題なの?
ソフトバンクが周波数を借り受けるに当たり、現在のRFIDの利用者の移動を促すため補償を行うと総務省に約束している。その補償や移動の交渉が進んでいない。

周波数移動の促進や補償は国がやるのが筋じゃないの?
ソフトバンクへの周波数割り当ての際には周波数オークションは行われず無償での引渡しとなった。その代わり補償は引き受けたソフトバンクが責任を持つ、ということになっている。

周波数が移動になると今のRFIDのシステムはどう変えないといけないの?
システムごとに異なる。要素ごとにまとめるとこんな感じ。

  • リーダーは必ず入れ替えになる。
  • タグについては新旧両方の周波数で読み取ることはできるのだが、読み取り距離が極端に短くなったり逆に遠くから読み取れすぎて不都合が出る可能性がある。読み取り距離はリーダーと組み合わせ実際に計測してみないとどうなるか分からない。
  • リーダーを制御するソフトウェアはメーカー依存。現在利用しているリーダーと同じメーカーで上位互換があればそのまま利用できる場合もあるが、メーカーが変わると作り直し。
  • 加えてリーダーを現場に設置するときに電波強度やアンテナの向きなどの調整が必要になる。この手間が結構大きい。

そんなに手間がかかるんだ、RFID業界としては災難だね。
必ずしもそうはいえない。従来プラチナバンドのRFIDが利用していた周波数は世界標準から外れたガラパゴスで、機材の種類も少なく価格も高かった。これが世界標準と揃うことで豊富な機材を安く手に入れることができる。これから新たにRFIDシステムを利用する人はもちろん、既存のハード・ソフトを入れ替えてもメリットを出せるケースも多いと思う。一方で生産管理系のシステムでラインが存在する間ずっと使っていきたいと思っていたユーザには辛い。

具体的な交渉の現状は?
電波法上は現在のRFIDシステムは2018年3月まで利用できることになっている。だがソフトバンクは早くサービスを開始したいため、2014年3月末までに現在の利用者に移動を要請している。早期の移動を促すことは総務省も認めている。だが、対象となるユーザ企業約800社のうち、合意に達した企業はまだほとんど無い模様だ。

その理由は?
補償費用を値切っているために交渉が難航している、という状態ではない。現時点ではやるべき作業を行えていないため交渉自体をまともに開始できていない、という状況のようだ。周波数割り当て申請のときに約束したRFID関係者への説明会は結局実施できなかったし、ユーザ企業からの問合せにまともに返事しなかったり勘違いした高圧的な態度を取ったりという話が聞こえてくる。7月には移動交渉が進んでいないことを把握した総務省も行政指導に乗り出したと報道された。

結局誰がどうすればいい?
一般論としては、周波数の移行が迅速に終わりソフトバンク・RFID共に新しい周波数でフル稼働する時期が早くなることは国民すべてのメリットになる。
既存のRFIDシステムについても2018年4月以降は電波法上利用できなくなるので「2014年と2018年の間に利用を終了し、そのまま廃棄する」というレアケース以外は、ソフトバンクから補償金を受け取って早いうちに改修した方が良いはずだ。
ソフトバンクが行うべきは、公正でありつつも早期移動が必要な重要ユーザに重点的な補償が行える補償体系を整備し、かつその体系に基づいて交渉を行える移行促進・補償チームを整備することだと考える。ソフトバンク独力では力が足りないというのであれば外部の業界団体の力を借りるのも一つの手ではないか。

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2012/10/08

RFID World Watcher Monthly August 2012

今月の特集記事はちょっと地味にNFCのセキュリティーに関して。そろそろまとまった記事を書けないかな、とちょっと思っている。

ニュースのほうはオリジナルが一回お休みだったこともありちょっと少なめ。来月に期待かな。

RFID World Watcher Monthly September 2012 (PDF形式、177KB)

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