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2012/06/23

AppleのNFC戦略を大胆予測

6月11日に開催されたAppleの開発者カンファレンス「WWDC」ではiPhoneへのNFC搭載についての情報は無かったのだそうだ。iPhoneがNFCリーダーを搭載するという噂が流れてから随分長い時間が経った。iPhoneがいつどのような形でNFC機能を搭載するのかはNFCの今後の普及に決定的な影響を与える。僕はApple製品のウオッチャーでは無いし、この会社が世間をあっと言わせるような商品を何度も発表してきたことを知っているが、今後の展開について自分なりの補助線を引いてみたい。

まず一番基本的なところから。Appleはハードウェアの販売で収益を上げる会社であり、サービスやソフトウェアは競合メーカーが模倣できない付加価値をつけて差別化を行なうための位置づけになっている。つまり、サービスやソフトウェアを広めてそこから直接間接の売り上げを上げるのではなく、Appleのハードウェアでしか使えないようにしてユーザを囲い込むことが目的になる。模倣が困難な付加価値を付ける方法は大きく分けて以下の2つになるだろう。

  • 使い勝手などアイデアが分かっただけでは真似が出来ない部分、具体的にはユーザエクスペリエンスを作りこむ。フリック・ピンチ、音声認識のSiriなどがこれにあたる。
  • 巨大なシェアと強力な知財能力を生かし、競争相手がアクセスできないインフラを作ってユーザを囲い込む。Dockコネクタ対応の周辺機器群などのハードウェア、またiTunes Storeなどのサービスがこれにあたる。

さて、NFCはこのどちらのモデルになるだろうか。

まずハードの方から見ていこう。もっともシンプルな囲い込みの方法は独自のNFCハードウェアをサポートすることだ。いかにAppleとはいえ今の時点でプロプライエタリな仕様を広めていけるのか、と疑問に思うのが当然だろうが、現行のNFC仕様は関係者間の綱引きのため複雑化し、交通系で求められる処理時間には対応できないという話がある(ASCII.jp:ロンドン地下鉄がNFCでの乗車券サービスを始められない理由)。仮にこれが正しければ、Appleが高速なMifareカード(海外のICカードアプリケーションの主流)のエミュレーションを行なう独自仕様のハードを導入するということも有り得る話かもしれない。NFCを採用したGoogleウォレットは携帯電話事業者の反対のため普及が遅れているが(CNET News:普及が進まない「Google Wallet」--米国における苦戦の理由を探る)、Appleであれば独自仕様を採用することも携帯電話事業者の反対を無視することも造作も無いことだろう。

もうひとつ、ハードウェアでユーザエクスペリエンスを作りこむというのはどうだろうか。可能性としてはありうるとは思うが現時点でその技術を持っているのはAppleではなく既存のICカード事業者グループ(特に日本の)が持っているだろう。彼らは携帯電話のハードウェアも持っている。Appleがそこに依存しようと思うだろうか。

それではソフト・サービスの面から見るとどうなるだろうか。今回のWWDCではPassbookという機能が発表され、それが将来のNFC搭載の布石になるのではという観測があるそうだ(マイナビニュース:【レポート】iOS 6の新機能「Passbook」とは何か? 将来的なNFC搭載の可能性を考察する)。Passbookはチケットやポイントカードを電子化し、関連情報の受信やハードウェアへの通知の統合的なインタフェースを提供するサービス。従来はこの種のサービスはサービス事業者が独立したアプリとして作りこんでいたが、それに対して標準のAPIを提供することがPassbookの目的だという(当然Passbook内に複数のチケットやポイントカードを格納できる)。現状はチケット類は二次元バーコードやテキスト情報として格納されているが、ユーザエクスペリエンス向上のためにはNFC対応も必要になるだろうというのが業界筋の見立てらしい。

さて、本稿で言いたいことが見えてきたのではないだろうか。そう、もしiPhone次期バージョンがNFCではなく独自のMifareエミュレーション機能を搭載し、そのエミュレーション機能にアクセスするAPIをPassbook経由で提供するとしたら?この場合、サービス事業者はiPhoneを持たない顧客に対してもMifareカードを用いてサービスを提供できるから独占と非難される筋は無い。だが、AppleはNFCの縛りを気にせず独自のサービスをPassbook経由で提供することができる。NFC事業者によるアクセスが困難な強力な囲い込みのインフラとなるだろう。

この場合、NFCの持つリーダー・ライター機能やP2P機能はサポートの必要が無い。Appleとしても既存のユーザエクスペリエンスを陳腐化させかねないこれら機能を積極的にサポートしたいと思わなくても全く不思議ではない。正直個人的にはあまり楽しい未来図ではないので、こういう方向には進んで欲しくは無いのだが…。

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2012/06/01

RFID World Watcher Monthly May 2012

今月号はまさかの特集記事3本。結構ネタを出し切った感があるので来月がちょっと心配ではあるが、RFID Journal LIVE!は終わったが新製品情報もそれなりに件数があり、それなりに充実した内容と思う。

RFID World Watcher Monthly May (PDF形式、323KB)

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