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2011/06/04

消費財RFIDビジビリティプロジェクトの総括

このブログでも何度か書いてきたとおり、UHF Gen2タグを用いた個品タグ付けはアパレル分野が牽引して急速に立ち上がりつつある。一方で、RFIDの話を業界外の人とするときには、日本はもとよりアメリカでも「Wal-Martの話って結局どうなったの?」という質問が出ることは避けられない。RFID Journalを初めとする専門誌では長く避けられていたテーマだが、そろそろきちんと総括してもいいのではないかと思っていた。

今年の3月にSuppy Chain Digest誌がその疑問に答える記事を掲載していた(RFID in CPG to Retail - What Really Happened?)。この記事はWal-Martブームのさなかに注目を集めていた企業や人物にコンタクトし、当時の動きや現在の状況を明らかにしようとしたもの。記事によればブームの渦中で注目を集めていた企業の多くがRFIDへの取り組みを放棄している。例えばサプライヤー側のリーダー企業だったProcter & Gambleは、現在RFIDの実案件もパイロットも行っておらず完全にRFIDから手を引いているとのこと。また、小売側ではTescoやMETROもこの3年間何も新しいプロジェクトを実施していないということだ。個人的にはMetroはかなり詰めたRFID導入プランを作っていたと言う印象があり、この記述にはちょっとショックを受けた。

消費財のRFIDサプライチェーンビジビリティプログラムの顛末に付き、この記事は以下のような分析をしている

  • Wal-Martはプログラム開始当時に「本当に5セントタグが実現したらRFIDの利用が採算に合うのか」というきちんとした分析を行っていなかった。
  • Wal-Martの動きにメディアやコンサル会社が乗っかり、ユーフォリア的な集団心理を作り出した。
  • 消費財メーカーは、店頭でのプロモーション管理などではRFIDの利用が有効だと考えていたが、Wal-Martはこの分野での利用を途中であきらめてしまった(参考記事: プロモーションパレットビジビリティの挫折)
  • Wal-MartはRFIDの導入手順についても適切な計画を持たなかった。RFIDの利用価値のある商品から導入するのではなく、何でもいいから一つの商品で貼付すればいいというアプローチを取った。

上記の分析は正しいとは思うのだがやや言葉を選んでいると感じた。この記事には、僕が気になった別のエピソードが掲載されており、そちらの方が真実を穿っているように思える。2005年頃、当時Wal-MartのCIOとしてRFIDプログラムを推進していたLinda DillmanにIBMのコンサルタントが"RFID: A Balanced Perspective"というレポートを提出した。このレポートはWal-Martの導入プログラムに関する運用面・コスト面の問題を指摘し計画の再考とペースダウンを求める内容で、消費財メーカー20社がスポンサーになっていた。だが、このレポートの説明会には4社しか参加せず、しかも1社は席上でWal-Mart側に寝返ったという話だ。

お得意様の「亭主のすきな赤烏帽子」に付き合わされる出入りの業者の悲哀というふうにも、あるいはジェフリー・ムーアが「キャズム」で指摘したビジョナリーのダークサイドという風に見ることもできる。いずれにせよ、あの華々しさの裏側にこういう話があったと思うと個人的には酸っぱい思いもある。こういうお祭り騒ぎは、少なくともRFID関係のテーマではもう出てこないんだろうなぁ。

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(追記:2011/6/18) コメントを頂き、METROのRFIDへの取り組みを再度確認してみた。同社は2008年夏にCash & Carry店舗にパレットタギングシステムをDHLと導入するプロジェクトを進めており、2009年7月にはドイツの全店舗とフランスの89店舗に導入を完了したという記事がRFID Journalに掲載されている(Metro Group Says New Tag Helped It Meet Its RFID Goals)。これら一連のプロジェクトを受け、METROのCIOは2009年10月開催のRFID Journal LIVE! Europeでキーノートスピーチを行った(Metro Details Some of Its RFID Successes)。このキーノートスピーチはかなり古いものを含めた過去プロジェクトの総括で今後の具体的な方向性には触れていないこと、その後にMETROのRFIDへの取り組みがぴたりとメディアに出てこなくなってきたことから、現時点でRFIDへの取り組みが停止している可能性は充分あると思うが、3年前(2008年)から新しいプロジェクトに取り組んでいなかったという記述は検証の必要があるだろう。

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コメント

丁度、3年前、ケルンのメトロ店舗で、UHF RFIDの実証実験を始めたばかりのところを見学させて頂きました。メトロ側の担当者によれば、その1年かけて検証するとのことで、実験項目の一つとして、売り場における商品のREALTIMEの在庫管理(枠内LOCATION管理を含む)とその可視化(従業員と客先双方への)でした。
その時いっしょに同行し、その前年ウオールマートを見学したことのある物流業の担当者は、ウオールマートよりずっと進んでいるとコメントしていました。
メトロがプロジェクトを進めていなかったということは
ありません。実証実験の評価は残念ながら知りません。

その視察旅行でフランス・リヨンでは、
イベント業者がのその貸出テント(非常に大型)と支柱構造物の流通管理において、RFIDを導入して、実証実験を行うとしているところを見学させていただきました
①貸出テント{流通管理と流通加工管理(洗濯と補修がSTEPごとに必要)}についてはRFIDを導入して、実証実験を行う。理由は以下
A.大型テントは折畳まれではバーコードが表に出ず
返納されてくる。
B.洗濯すれば、バーコードは段々見えなくなる。
C.テントには洗濯と補修という加工が必要でこれを管理する必要がある。

②いっぽう支柱構造物の流通管理においては、RFIDを導入しない。今までのバーコードで十分対応可能。バーコド貼り付け位置は決められておりまた損傷も少なく、読み取りで
問題は発生しておらず、データ入手の確実性とその伝達に
おいて問題なし。

イベント業者の担当役員は是非実験を成功させたいと
いっておられた。

非常に現実のニーズに応じた取り組みをするなと感心しました。派手派手しくないところで、現実のニーズとRFIDの特性を合致させた実証実験に取り組んでいるとことは他にもあると思います。

投稿: ハルナ | 2011/06/13 07:44

>ハルナさん、
コメント遅くなりすみません。Metroの件はこの記事でもっとも驚いたところです。ご指摘のような実証実験系の内容のほか、フランスのCash & Carry 89店舗にDHLと共にパレットタグシステムを実導入するというプロジェクトが動いており、RFID JournalにSCD誌の記述と矛盾する記事を見つけましたので本文に追記しました。

派手ではないところでRFIDの利用の成熟が進んできたというのはご指摘の通りですね。元記事にあるようにベンチャーキャピタルから資金が引き上げられる中、ベンダー・ユーザー共にこつこつと頑張ってきたからこそ現在花開いたのだと思います。

投稿: Koi | 2011/06/18 13:36

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