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2011/04/03

ハイチ大震災救援時の米軍のRFID利用

東日本大震災の後twitterなどのRFID関連の発言を見ていると「救援物資の輸送を効率的に行なうためにRFIDを利用できないのか」と言う話題がちらほら出ていた。一般論として、災害時のような混乱した環境下での物流オペレーションにはRFIDは有効なはずである。平常時の完全にコントロールされた環境で、オペレーションが全て記録され人為的なミスが発生しないのであれば、RFIDを利用するメリットは存在しないからだ(自動倉庫のオペレーションを想定して欲しい)。人為的に発生するミス(帳簿と現物の不一致)や悪意(窃盗)を人手を介さず自動的に発見できることこそが物流でのRFID利用のメリットの本質である。

だが、このようなメリットを得るためにはRFIDの採用だけではなくシステム全体の対応が必要になる。配送先(通常であれば店舗)や中継拠点(通常であれば物流センター)でまともな管理を行なうことができず、輸送経路や手段も全く信頼できない、仕入(救援物資の調達)もコントロールできないという状態では、通常の民間企業のサプライチェーン管理システムは使い物にならない。このような環境で運用が可能なのは軍事用の兵站管理システム、それもおそらく米軍のIn-Transit Visibility (ITV)だけだろう。以前に米軍のRFID担当者の講演を聞いたときに、米軍の兵站部門は突然砂漠の真ん中に店舗ができクリスマスがいつ来るかわからないWal-Martのようなものだという話をしていて、卓抜な例えに唸ったことがある。

それでは、ITVシステムが災害派遣に利用されたケースでのRFIDの具体的な利用方法はどのようなものになるだろうか。RFID Journalが米軍のハイチ大地震時の救援活動を記事にしている(In Haiti, RFID Brings Relief)。米軍の兵站活動やITVシステムの全体をカバーする内容ではないが、前線でのRFIDの利用という面ではいろいろ興味深い内容が含まれている。

ハイチ大地震の対応のために出動したのはアメリカ南方軍(USSOUTHCOM)。カリブ・中南米地域を担当する部隊で、土地柄災害救援任務が多い。2005年から2010年までに14回の災害救援出動を実施し、ハイチ大地震では2万人の救援部隊を投入した。その中でロジスティクスを担ったのは陸軍配備流通コマンド(Surface Deployment and Distribution Command, SDDC)であり、フロリダ州ジャクソンビルのSDDC兵站施設を策源地とした上で、ハイチにも南方軍との統合任務部隊(Joint Task Force, JTF)を投入、ハイチに搬入した物資をスムーズに配布するための作業を担当させた。

2010年1月12日の地震の発生から1週間後、1月20日に最初のSDDCの部隊がハイチに到着。その日のうちに発電機と衛星電話をセットアップし、ゲートリーダーとITV端末の稼動を開始した。翌日から到着コンテナの処理を開始したが、コンテナにはRFIDタグが装着されていないものがあった。これは、緊急で出荷したためにコンテナにタグを付ける余裕が無かったためである。だが、初動の混乱が収まると全てのコンテナにタグが取り付けられ、物資がスムーズに流れ始めた。最初に到着したのは水、調理済みの食料品、薬品で、続いて建機などが到着した。ジャクソンビルから送り出されたコンテナがハイチに到着するとゲートリーダーでコンテナタグを読み取り、ITVに到着を通知した。また、停電時の対応、ヤード内の棚卸しのため、ハンドヘルドリーダーも併用された。

一方ジャクソンビルでは補給物資・支援物資のコンテナへの搭載が行なわれていた。初動においては、コンテナに搭載する貨物の明細は手入力されていた、これは、最初に搭載する物資(ケース・パレット)には2次元バーコードが貼付されていなかったためである(作戦が進むにつれ納入されたケース・パレットに2次元バーコードラベルを貼付するプロセスが稼動しはじめた)。全ての貨物がコンテナに搭載されるとアクティブタグ(ISO 18000-7互換の433MHzアクティブタグ)がコンテナに取り付けられ、貨物マニフェストとタグIDをリンクさせてITVに登録された。また、他の兵站拠点から到着したコンテナについては、タグが未装着の場合には新規に取り付けた上で、コンテナがジャクソンビルを通過した事をITVに登録した。

輸送された物資の明細は明かされていないが、3000個を超える輸送単位(パレットから建機までの様々な荷姿のものを含む)が輸送された。

以上が記事に書かれている内容である。オペレーションに関する雑感のような内容になっているが、いくつか気付くことがある。

  • コンテナより小さな物品の管理についてRFIDは利用されていない。アメリカ国防総省は調達品についてケースやパレットへのタグの貼付を進めているが、記事にはまったく出てこない。もっとも、今回輸送された物品はバリューが低く純粋な軍需品ではないことに留意する必要がある。
  • ITVでは民需品で利用されているバーコード(UPCシンボルなど)を扱えないようだ。今回のように民需品を調達、輸送することも多いだろうに、ちょっと杓子定規ではないかと感じられる。
  • オペレーションそのものは実は商業物流とあまり変わりは無い。コンテナにケース・パレットを搭載し、搭載貨物の情報とタグIDを紐付けてビジビリティシステムに登録、仕向け地ではタグIDを読み取ってどのどの貨物が到着したかを確認する。
  • オペレーションがかなり雑である。アメリカ本土から近い場所への派遣であり、災害派遣慣れした部隊であるはずなのに、初動ではコンテナタグすら装着できていない。補給部隊の指揮官も「RFIDを積極的に利用する態度を養わねばならない。状況が早く変化する現場ではRFIDタグを取り付けようという努力が遅れがちになる」と述べている。

この記事に記載されているのは現場でのオペレーションであり、ITVを利用した意思決定の部分ではない。ITVを利用するメリットは、必ずしもタグ貼付などの条件が満たされていない状況でも、指揮官のインタビューにあるように「地球規模の全体的な展望」が得られることにあるのだろう。

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コメント

在日米軍今回災害救援におけるRFID利用
軍事機密のかかわることもあるので取材という訳にはいかないでしょうが、今回の米軍支援でRFIDがどう活用されたか後日レポートが上がること楽しみにしています。

投稿: 春名 | 2011/04/15 09:18

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