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2011/03/25

インレイ不要のスマートラベル製造プロセス

RFIDの普及が個品のサプライチェーン利用で進むにあたり、避けられないのはRFIDタグ価格の話題だ。昔ブームだった頃を覚えている人からは「で、いつ5セントになるの」という質問が必ず出てくる。その事情はアメリカでも同様のようで、先月にMITのオートIDセンターのディレクターがRFID Journalに寄稿記事を載せていた(Whither the Five-Cent Tag?)。

現在欧米のRFIDタグ価格の目安として業界で広く認知されているのはODIN technologiesが毎年作成しているRFID Tag Pricing Guide。2010年9月に公開された最新版では、100万枚単位で発注した場合のスマートラベルの単価は下値で9セントであり、それより安い値段(7~8セント)がマーケットで噂になっているが、同社が確認したところドライインレイ(粘着加工がなされておらず貼り付けが出来ない)のものであった。2年以内には月間100万枚の調達をコミットした顧客はスマートラベルを単価7セントで購入できるようになるだろうという見通しを示している。

一方で上記の寄稿記事では匿名の某大手ベンダーの話として、大ボリュームでインレイを購入した場合の単価は下値で5セントまで下がっており、それをスマートラベルに加工した場合の価格は6セントになるだろうという見方を載せている。学者さんがそういう業界筋みたいな話をメディアに流すのもどうかと思うが、記事になったということは一部でそういう値段が出ている/出たことがあるのは確かなのだろう。記事ではこれを受け、2011年の6セントはインフレを考慮するとブーム当時の5セントに相当するという理由で「5セントタグは達成された」と結論付けている。

この記事をどう読むかはともかく、業界全体として「後一押しで5セント」というムードがあるように思う。それを裏付けるような製品の記事がRFID Journalに掲載された。フランスのベンチャー企業TAGEOSが開発した、プラスチックインレイを用いずに紙ラベルの上に直接タグを構成した製品だ(Tageos Makes RFID Inlays on Paper, Eliminating Plastic Substrate)。上で少し述べたように、現在紙製のスマートラベルを製造するプロセスではプラスチックのシートにアンテナとタグを挟み込んだインレイを一旦製造し、それを紙ラベルに差し込むという手順を取っている。同社はこの手順を廃止することで価格を10パーセントから30パーセント引き下げることが出来るだろうとしている。

同社は4月から製品の出荷を予定しており、ジュエリー向け(EOS-100)、ヘルスケア向け(EOS-110)、アパレル向け(EOS-300)、ケース/パレット向け(EOS-500)の4つの製品ラインでスタートする。これらのタグが採用するチップはImpinjのMonza 4。7月には更にいくつかのモデルを追加する予定。同社はそれぞれのタグのパフォーマンスや単価については秘密としている。なお、一連の製品は今年のRFID Journal AwardsのBest in Showにノミネートされている。

インレイを用いずに紙の上で直接タグを構成する技術を開発したのはTAGEOS社が最初ではない。日本でも大日本印刷や凸版印刷が同種の技術を開発したと発表している。大日本印刷の技術(「大日本印刷 世界初 箔押し加工技術による低価格の紙製UHF帯ICタグを開発」)は2008年の5月に発表されたもので、アルミ箔のアンテナを箔押しで形成するという技術を用いており、同じくアルミ箔のアンテナを用いるTAGEOS社と似た構成ではないかと想像される。凸版印刷の技術(「国内初、UHF帯ICタグ用アンテナを紙器へ直接製造する技術を開発」)は2010年9月にプレスリリースがあったもの。タグの製造技術ではなくダイレクトタギングの技術としていること、アンテナの材質として銀を利用していることから、狙うのはTAGEOSや大日本印刷とは違うマーケットなのだろう。いずれのプレスリリースでも加工コスト・販売価格の30パーセント削減を謳っており、TAGEOS社の発表とおおむね整合する。

それではTAGEOS製品がなぜこれほど注目を集め、来月から製品販売が可能になったかというと、外部からは分からない細かな要素技術の違いだけでなくマーケットの波に上手く乗れたことも大きな原因だろうと思う。昨年からのブームとGen2タグの品薄状態を受けた安定調達のニーズがマーケットに存在し、そのニーズのうちTAGEOS社の身の丈に合った割合を上手く掴んで事業化できたということではないだろうか。

いずれにせよ、インレイを用いずに製造したスマートラベルの量産が始まったということはGen2による個品タグ付けが本格的な普及期に入ったことを示す象徴的な出来事である。上記のように競合メーカーが持つ技術もあり、10パーセントから30パーセントの価格低下は実際に達成されるだろう。額面での5セントタグ達成がいよいよ視野に入ってきたようだ。

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2011/03/18

RFID World Watcher Monthly February 2011

前回の更新から一ヶ月空いてしまった。申し訳ない。今回の特集記事はエントリを起こした欧州の新周波数とソーシャルメディア連携がテーマ。前者については少し手を入れエントリに比べ見通しが良くなっていると思う。
ニュースの方は製品紹介記事が少なくやや地味な内容に。毎年この時期ぐらいからRFIDベンダーはRFID Journal LIVE!でインパクトの強い発表を行うべくタイミングを見計らってくるのだ。RFID Journal Awardを見ると面白そうな製品もちらほらエントリされており、ここ1ヶ月ほどのネタばらしに期待というところ。

RFID World Watcher Monthly February 2011 (PDF形式、272KB)

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