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2011/01/16

モノとインターネットをつなぐミドルウェアの条件(IBM Websphere Sensor Events)

近年のスマートグリッド市場の活性化に引っ張られ、モノのインターネットに関わるコンセプトが注目を集めるようになった。Internet of Things、ユビキタスネットワーク、物聯網などなど、いくつもの用語があるが、業界外部の一般人も含めれば現在もっとも知名度が高いのはSmarter Planetではないだろうか。そう、IBMが大々的に宣伝しているあれだ。同社のサイトにある事例はちょっと定義を広げすぎではというものも入っているが、CMやポスターでは確かにモノのインターネットが生み出す世界のものだという事例が取り上げられている。

このSmarter Planet、コンセプトは分かるがそれを実現する技術はどうなっているのだろうと気になっていた。もちろん一つ一つのシステムを手組みするならどんなシステムでも作ることができるだろうが、それでは手間がかかりすぎるし、「インターネット」に必要な相互接続性も確保できない。なにより「Smarter」ではないよね。最近IBMのRFIDソフトウェア戦略を調べていると、Smarter Planetを支えるミドルウェアがRFID用のものと同じものだと知った。

そのミドルウェアの名前はWebsphere Sensor Events。以前からIBMのRFIDビジネスを追っている方ならWebsphere RFID Premises Serverという名前を覚えているかもしれないが、Websphere Sensor Eventsは同一ラインの後継製品だ。このミドルウェアの役割は自動認識システム(センサーデバイスを含む)が生成する生のイベント情報をビジネスイベントに変換すること。この処理を行うには一般的なミドルウェアが持つハードウェア固有APIの吸収や複数リーダーの連動などの機能だけでは不足する。

Websphere Sensor Eventsが利用する技術はCEP(Complex Event Processing)。CEPについては以前にこのブログでもエントリを書いた(ココ)。CEPが可能にする処理の一例は、作業者タグと工具タグが一定時間継続して同一リーダーで読み取られているというシステムイベントを、作業員が許容時間を越えて特定作業に従事しているというビジネスイベントに変換すること。以前にエントリを書いた時にCEPはシステムインフラ寄りの機能だと思っていたのだが、ビジネスイベントを業務システムと自動認識システムの双方から独立して定義するには確かにCEPがもっとも適している。この点をきちんと見抜いて製品を磨いてきたIBMはさすが卓見という他はない(いや、僕が鈍いだけか)。

また、CEPを利用すると、全く違う自動認識システムが生成するシステムイベントを同一のビジネスイベントに変換することができる。例えば特定のヒト/モノがある部屋に存在するということを、アクティブRFIDならアンテナ特定アンテナでの読み取りで、RTLSなら位置の測定で、パッシブRFIDなら特定のリーダの通過順番で判定することができるが、それぞれにCEPを定義することで同じ意味を持つイベントを生成させることができる。この特徴を利用すれば所在管理に必要な精度にあわせ複数の自動認識技術を使い分けても業務アプリケーション側では技術の違いを意識する必要がなくなる。それどころか、従来は全くの別物だと考えられてきたシステム(極端な例ではバーコードとGPS携帯電話とか)でビジネスイベント定義のノウハウを共有でき、同一のインフラ上で管理を行うことができるのだ。

実はこのような機能は従来のシステムでもサポートされている。例えば、上述のアクティブ/パッシブ/RTLSを統合したプレゼンス管理は、最近欧米で普及しつつあるヘルスケアRFID統合システムの多くが備えていると言われる。Websphere Seosor Eventsの優位点は、パッケージが存在しないアプリケーションに適用可能であること、あるいは企業全体で自動認識システムのインフラを統一することができる点にある。

Websphere Sensor Eventsは先端的なコンセプトを持つシステムであり、現在そのコンセプトが自動認識システムの開発に関係するエンジニアに共有された状況にはない。それを考えると開発者プールを自社で抱え込む必要があるし、そのためには企業全体の自動認識システムをWebsphere Sensor Eventsで統一することを睨んでおく必要がある。

現時点でそれができている企業は世界中を見渡してもおそらくAirbusしか存在しない。だが、このコンセプトは筋の通ったものであり、将来的には普及が進んでいくだろう。また、冒頭で述べたようにこの分野はスマートグリッドとして巨大な注目と資金を集めており、そちらの面から急速な普及、ノウハウの蓄積が起きることも予想される。今後の動向に注目していきたい。

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