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2010/11/27

日本のUHF帯RFID周波数の割り当て変更方針決定(2012年より915MHz~928MHzへ)

2011年11月25日に開催された総務省のワイヤレスブロードバンド実現のための周波数検討ワーキンググループ(周波数検討WG)において、700MHz/900MHzの周波数割り当て方針が決定された(日経ITPro: 日本の周波数政策が大転換、「LTEに周波数100MHz拡大」など700M/900MHz帯割り当て方針決まる)。日本の無線行政全体としてはワーキンググループ名が示すようにLTEに広帯域に国際標準の周波数が割り当てられたことが大きなニュースなのだが、このブログにとって重要なのはUHF帯RFIDへの割り当て周波数が915MHz~928MHz、すなわち920MHzを中心としたアメリカとハーモナイズする周波数になったことである。

中長期的に見ればこの決断は大英断と言っていい。900MHz帯の周波数再割り当ての動きがあることは知っていたが、既存のユーザーに配慮して小手先の改良しかできないだろうと思っていた。また、割り当て周波数幅も13MHzあり、他にもニーズが大きい900MHz帯でよくぞここまで思い切ったと思う。

今回の周波数割り当てのメリットはおおむね以下のようなものになるだろう。

  • 海外RFID製品の日本対応が従来より短期間で行われるようになる。現在海外ではUHF帯パッシブRFIDシステムの利用が急拡大しており、複数の調査機関が2009年から2011年の2年で全世界タグ出荷数が8~10倍になると予想している(こちらは別エントリで解説予定)。当然RFIDベンダーも繁忙を極めており、規格の違う日本からの注文は対応が後回しになりリーダー類では数ヶ月のバックログが普通になっている。
  • タグについては徐々にグローバル対応製品が増加しているが、旧日本周波数の950MHzが使われなくなるとグローバル対応周波数の上限が下がり、設計の難易度が下がることでパフォーマンス向上や価格低下が予想される。特に金属タグではグローバル対応と小型化の両立が難しく、優れた製品がなかなか出てきていないので、この変更が好影響を与えることが期待される。
  • 割り当てられた周波数幅が13MHzと、欧州の3MHzと比較しても圧倒的に広い。最終的なパフォーマンスはチャネルプラン、出力制限、干渉防止方式などさまざまな他の規制の影響を受けるにせよ、大幅なパフォーマンス向上が期待できる。
  • 世界の主要国が利用しているUHF RFID周波数割り当ては基本的にアメリカ型(920MHz前後)またはヨーロッパ型(865MHz)のいずれかで、日本は世界の孤児と言っていい状態であった。一部の日本のユーザーはこのような状態で日本でのUHF RFIDマーケットが維持できるのかということについて疑問を持っていたが、この変更によりそれら懸念が払拭される。

一方で、短期的な移行には懸念がある。移行スケジュールは上記記事によれば「2012年から開始し、2015年をメドとするものの、最終的には2017年度末までの完全移行を目指す」というもの。なまじ開始までの期間が短いため、とりあえず2011年の導入は見合わせようか、という動きが起こりかねない。

また、今回の周波数割り当て変更では、費用負担を移行後の事業者(つまりLTEキャリア、おそらくはソフトバンク)が負担するという方針が提示されているが、具体的な負担の内容についてはおそらく今後の議論になる。移行プラン(ファームウェアや本体改造での変更後の対応)をベンダーが検討する際に、政府の費用負担方針の決定を待ってからということになれば、なお短期的な導入意欲を削ぐことになろう。

上記のように現在海外のUHF帯パッシブRFIDマーケットは爆発しており、2011年に日本の市場がフリーズしてしまえば完全に世界のマイナーマーケットに転落してしまう。それは今回思い切った決断を下した関係者の期待に反することだろう。官民一体となり速やかに日本全体での移行プランが策定されることを望みたい。

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2010/11/21

アメリカ携帯電話大手による非接触決済システム立ち上げ(ISIS)

アメリカの携帯電話大手のVerizon Wireless、AT&T Mobility、T-Mobile USAの3社が共同で共通の非接触決済システムのジョイントベンチャーを立ち上げたというニュースがRFID Journalに掲載された(Mobile Carriers Launch Venture to Aid Adoption of NFC in Phones)。それなりの大ネタであるため一般紙にも掲載されており、日本のITメディアにも取り上げられている(日経ITPro Web: 非接触型モバイル決済の合弁会社、AT&TとVerizon、T-Mobileの3社が設立WirelessWire News: 米携帯通信大手3社、「おサイフケータイ」サービスのJV設立を正式発表)。特にWirelessWire Newsの記事が詳しく、あまり付け加えることも無いのだが、個人的な経験も含め気が付いたことを。

アメリカではEdyのようなプリペイドタイプの非接触決済システムはほとんど普及しておらず、QUICPayやiDのようなクレジットカードに紐付いたシステムが利用されている。アメリカの主要クレジット会社はPayWave(Visa)、PayPass(MasterCard)、ExpressPay(AMEX)、Zip(Discover)とそれぞれに非接触システムを導入している。但しこれらのシステムはクレジットカード内蔵、もしくはキーホルダータイプのもので、携帯電話のNFC機能とリンクはしていない。

日本のメディアでは全然立ち上がっていないと表現されるアメリカでの非接触支払いシステムだが、インフラの普及はそれなりに進んでいる。クレジット/デビットカードの発行者は非接触決済機能を内蔵したカードを積極的に発行しているし、大手チェーンのドラッグストア(日本の感覚でいうとコンビニとして使う)ではほとんどすべてが対応していると言っていい。結果、MasterCardのPayPassだけでも発行カード総数7800万枚、加盟店24万5千店という規模に至っている。もっとも実際の利用は小規模に留まっている。

携帯電話と組み合わせることでさまざまなプロモーションが可能になるということは業界で広く認識されており、従来から小規模なトライアルは続けられてきたのだが、本格的な取り組みには至らなかった。その理由は筆者にはよく分からない。アメリカは同一のヘッドセットをSIMを差し替えてを利用するという文化はヨーロッパに比べて薄く、また最大手のVerizon WirelessはCDMA方式を採用してきた関係でそもそもSIMに対応していなかったので、日本的なキャリア主導でのシステム導入は不可能ではなかったと思うのだが。

ISISプロジェクトには携帯通信会社3社のほか、大手の小売業数社、そして銀行としてBarclaycard US、クレジットカード会社としてDiscoverが参加している。RFID Journal記事中のインタビューによると初期ユーザーにはこの2社のブランドのサービスが提供されるが、将来的には他の銀行・クレジットカード会社の参加も想定しているようだ。

このプロジェクトの最大の注目点は、いままで将来性が謳われながら小規模なパイロットがだらだら続いていたアメリカの携帯電話非接触決済システム導入で、今後18ヶ月でISIS対応製品を投入開始すると期限を区切ったことにある。果たしてこの通り対応製品が登場するか、そしてその利用が広がっていくか。BlackBerryやAndroidなどのスマートフォンでも導入が明言されていることもあり、日本のユーザーにとっても他人事ではない。

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2010/11/16

RFID World Watcher Monthly September/October 2010

また2ヶ月更新間隔を空けてしまった…。この2ヶ月はハンドヘルドリーダーやタグのパフォーマンスレポート、また輸送用コンテナと自動車業界向け通い箱のRFID利用ガイドラインがリリースされるなど、いろいろ読み物が充実していた。特集記事が無いのは本当に申し訳なし。

RFID World Watcher Monthly September/October 2010 (PDF形式、165KB)

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