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2010/08/28

433MHzアクティブタグ標準化の現状(ISO 18000-7 Mode2/IEEE 802.15.4f)

433MHzアクティブタグの標準化に関し最近ISOとIEEEの両方に大きな動きがあった。現状枯れてしまったジャンルで大きな動きが無いだろうと思いあまり真剣にウオッチしていなかったため、これほどの動きを見過ごしていたのかとちょっとショックだった。まだ動きがある(特にIEEEの方で)とは思うが、現時点での状況を備忘的に記しておきたい。

まずは433MHz帯アクティブタグ市場全体について。この市場は日本では国際物流用途として認知されているが、海外ではIDカードや資産管理用途で利用されていることが多く、それら用途ではメーカーの独自プロトコルが利用されている。ISO標準規格18000-7は海上コンテナのみで使われる閉じた規格だと言ってよい(この関係は、長波帯パッシブタグ市場でISO規格11784/11785がほとんど家畜識別用にしか利用されておらず、マーケットの大半を独自規格タグが占めていることに似ている)。タグの機能も高いものではなく、IDの読み取りやセンサー情報の定期的な発信など単純な通信を想定したもので、通信速度も30kbps程度と遅かった。

この状況が環境の変化で変わりつつある。一つはスマートグリッドに牽引されるサブギガヘルツ帯(特に850~950MHz)通信市場の活性化。この市場を狙ってさまざまなメーカーが製品開発を強化しており、標準化においてもZigBee系の機能強化とWiFi系の低周波数帯対応の二つの動きが火花を散らしている。スマートグリッドではノード間で複雑な通信が発生するため、それに対応できるようIPプロトコルを乗せることが必須のようになっている。433MHzは僕の知る限りではスマートグリッド開発競争に巻き込まれてはいないが、競合する900MHz帯アクティブタグの方向性の変化・機能向上がコンセプトに影響を与えないはずがない。

もう一つは単純にチップの性能向上。ISO 18000-7がベースとしている技術は20年前のものであり、 最近のチップでは感度や処理能力が大幅に向上している。この新しい技術をベースにした製品を標準規格にし、改めて新しい市場を狙いたいという思いがベンダー側に出てきている。

これらの動きをそのまま反映させたのがISO 18000-7 Mode2。この規格については7月20日にプレスリリースが出されたが、実際には4月の時点でISOの最終投票(FDIS)が終わっており、後は発効を待つばかりとなっている。報道では2011年の末までに発効する予定となっている(RFID Journal: Dash7 Alliance Working on New Specification, Tags for ISO 18000-7)。現時点では規格の詳細はDASH7のサイトでは公開されていないが簡単なサマリーはダウンロードできる(PDF)。このサマリーによると下記のような大幅な機能強化が行われている。

  • 通信速度を最大200kbpsまで高速化
  • ピアツーピア、マルチホップ通信に対応(メッシュ構成には非対応)
  • IPv6などの高機能な上位プロトコルのサポート
  • 消費電力の低減
  • 測位機能のサポート

その反面、Mode2はMode1に対する下位互換性を持たない(マルチプロトコル対応のタグを容易に設計できるようにしたとは書いてある)。現在の資産ベースを切り捨ててまで大胆な機能拡張を行ったということだ。現時点ではまだ対応製品の発表が無いが、この魅力的なプロトコルをどのような製品としてどのような価格で実現してくるかは今後のお楽しみということになる。

一方、IEEEでも802.15.4fにて433MHzアクティブタグが審議されている。このTGはUWB、433MHz、2.45GHzの各周波数でRFID向けの物理層について議論している。2010年中のリリースを目的としているようだ。UWBについてはTimeDomain、Ubisense、ZESなどの主要ベンダーが参加しており、規格成立後そのまま業界標準になりそうな勢いだが、433MHzについてはカナダのGuardRFIDという会社が単独で参加している模様。802.15.4fの433MHzの最大通信速度は250kbpsとISO 18000-7 Mode2とほぼ同等。802.15シリーズのMACが乗るならISOとの重複が気になるが、RFIDタグとしてのシンプルな読み書きと位置測定を狙った物理層にするそうなのでそこで差別化が狙えるということなのだろうか。元々のISO 18000-7とIEEE 802.15.4を考えると方向性が入れ替わっているように見えるのが面白い。

いずれも現時点ではデファクト化につながる大きな採用の動きは存在せず、どちらが優勢になるのか、あるいはどちらも市場の支持を得られず独自規格タグが広く使われ続けるのか、しばらく動向をウオッチしていきたい。

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2010/08/12

RFID World Watcher Monthly June/July 2010

6月・7月は忙しかったこともあるが記事がすっかり夏枯れ。今月になりWal-Martの男性向けジーンズ・下着へのタグ付けやDASH7 Mode2などの大ネタが入ってきたので、次回は少しにぎやかになる予定。なお、キャズム理論によるRFIDマーケット分析は直接学会発表記事を書いてしまったので発表まで公開を見合わせます。

RFID World Watcher Monthly June/July 2010 (PDF形式、122KB)

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