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2009/11/30

オープンソースRFIDミドルウェアRifidi Edge

ちょっと旧聞になってしまうのだが、Rifidi EdgeというオープンソースのRFIDミドルウェアがリリースされたという記事が先月末のRFID Journalに掲載された(Pramari Launches Free Open-Source RFID Middleware)。オープンソースのRFIDミドルウェアといえば半純正ともいえるfosstrakの名前が最初に来るし(過去エントリ「Fosstrak(オープンソースEPC Networkアプリケーション)」)、その後に出たAspireRFIDのトラブルも記憶に新しい(過去エントリ「Yet Another オープンソースEPCISミドルウェアAspireRFID (の筈なのですが…)」)。

それではFosstrakとRifidiの差別点は、ということになるが、まずマニュアルを見る限りはRifidiはEPCIS機能は持たずALEとLLRPという低レベルAPIの部分に集中している。そして、Rifidiはバーコードリーダーやセンサー、カメラといった非RFIDの自動認識デバイスを取り扱えるようになっており、その処理のためにEsperというオープンソースのCEPエンジンを採用しているとのこと。(CEPについては過去エントリ「CEP (Complex Event Processing)」を参照)。

オープンソース製品なので当然無料でダウンロードして利用できるのだが、開発元のPramari社は5,000ドルの年間サポートを提供している。年間サポートを購入するとEdgeBoxというアプライアンス製品がおまけで付いてくる。現時点で医療機関やアパレルショップがトライアルを検討しているほか、共同で開発を行った多くの大学で利用が始まっているとのこと。

Pramari社はRifidi Edge以外にもRFIDオープンソースソフトウェアをリリースしている。その一つがRidifi Emulatorで、RFIDタグやリーダーの挙動をエミュレートし、ハードウェアが無くてもRFIDアプリケーションを開発することが可能になる(RFID Journal: SimCity for the RFID Crowd)。Ridifi EmulatorはRifidi Edgeに先行してリリースされており、FosstrakではALE/LLRP機能と一緒にインストールすることを推奨している。このエミュレータ上で利用する負荷テストツールTag StreamerやシナリオのGUI作成ツールDesignerなども配布されている。

Rifidi Edgeの実験的な機能といい、Ridifi Emulatorによるハードウェア無しのRFID開発といい、こういう製品を無料で利用できるというのは非常に意義深く、特に大学などでRFIDを研究しようとしている人はぜひ触ってみて欲しいと思う。

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2009/11/16

カード関連ビジネスの現状と将来展望2009 / 富士キメラ総研(著)

富士キメラ総研が作成した調査レポート「カード関連ビジネスの現状と将来展望2009」を読む機会があった。RFID全般ではベンダーの多くが海外企業であり、日本の調査会社はどうしても市場動向全体をカバーしきることは難しいのだが、この調査レポートはテーマがICカードに絞られているということもあってか必要な情報がみっしり詰まり「ここはもっと突っ込んで書いて欲しかった…」と感じる部分がとても少ない出来になっていた。

このレポートがカバーするのは決済サービスから各種のICカードソリューションとその周辺分野であり、特に周辺分野に踏み込んで書かれているのが非常に役に立つ。例えば決済サービスについてはクレジットカードや磁気プリペイドカードなどの競合商品、また利用先としてECサイトやオンラインゲームなどのオンラインビジネスが取り上げられている。企業事例も丁寧にポイントを突いて書かれており、どの企業がどのような戦略を持ちどのような分野に注力しているのが分かる。ICカードの世界は成熟しており、技術的な知識を元に対象分野を横串で見ることが難しいので、このような資料は「ICカード業界」という全体像を把握するために非常に有益だ。

先日のエントリでも触れたNECによる「かざす」ソリューションの中でのICカードと通常のRFIDタグとの利用の融合、また携帯電話用NFC機能の標準化とそれを受けたすべてのNFC規格に対応したチップの登場など、SUICA・Edyやおサイフケータイなどで良くも悪くもガラパゴスと思われていた日本のICカード業界にも動きが始まっているように見える。異分野からの新規参入者を迎え撃つのか、あるいは標準化をバネに外部にうってでるのか、いずれを選ぶにせよ足下の日本の現状を理解しておくことは非常に重要だろう。

10万円という価格は安いものではないが、この種の調査レポートとして入魂の出来だと思う。この分野のビジネスに興味のある方はぜひ目を通して欲しい(詳細な内容説明と申し込み・問い合わせ画面へのリンク)。

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2009/11/09

NEC C&Cユーザーフォーラム & iEXPO 2009

東京国際フォーラムで開催されたNEC C&Cユーザーフォーラム & iEXPO 2009に出かけてきた。大手総合ITベンダの中では最近RFIDに一番力を入れているNECだけに何か面白い製品なりソリューションなりが提示されているのではと期待してのことだったが、予想以上に面白い内容だった。とはいっても、一番面白かったのは製品やソリューションではなくNECがRFIDビジネスに取り組むコンセプトだったのだが。

フォーラムで行われたRFID関連のセッションは「利用者の『かざす』サービス構築支援!Paas型プラットフォームサービス『BitGate(TM)』と『RFIDマルチリーダライタ』」というタイトル。セッションタイトルにある「RFIDマルチリーダライタ」は今年の春のRFIDソリューションEXPO 2009で発表された13.56MHz・UHF・2.45GHzのマルチプロトコルに対応しながら1万円という戦略価格のリーダー。現時点ではRFIDマルチリーダライタはUSBリーダー・ゲートターミナル・KIOSKなどの形状ですでに提供が開始されているが、ハンドヘルド形式のものについては消費電力の問題でNEC・モジュールOEM先共に現在開発中だそうだ。

もう一つのBigGateはRFIDアプリケーション用のミドルウェア。タイトルにある「PaaS型」とはミドルウェアを顧客が自社のサーバ上で動かすのではなくインターネット上のサーバに接続して利用することを意味する。BigGateをRFIDマルチリーダと共に利用することで、以下のような処理を実施することができる。

  • 複数のプロトコル間の違いを吸収して単一のアプリケーションにタグデータを送信する
  • プロトコルを元に複数のアプリケーションの中からタグデータ送信先を決定する
  • 一つのタグデータ読み取りを複数のアプリケーションに送信する

コンセプトが面白い、と上で書いたのは、この2つの製品の組み合わせがNECのRFID戦略の狙いを明確に示しているからだ。一つはセッションタイトルに「かざす」とあるとおりGen2で可能になる数メートル以上での長距離読み取りをスコープ外にするということ、もう一つは複数のタグ規格が混在する環境を想定し、むしろそれを自社の強みとして積極的に訴求するということだ。

NECは、RFIDの普及がヒトからモノに、企業内利用から消費者サービスへと進むにつれ利用されるタグ数が増加していくと想定しており、上記の狙いはこの想定に合致している。つまり、消費者が利用するシーンでは消費者が意識しない長距離読み取りではなく意識的な「かざす」という動作が必要であり、また既に普及が進んでいるICカードとインレットの単価が10円を切ったGen2がそれぞれヒトとモノを識別するものとして併用されることが自然である、という考え方である。

セッションだけではなく、フォーラム会場には上記の「BitGate(TM)」と「RFIDマルチリーダライタ」を利用したソリューションの展示がなされていた。RFIDカンバンを用いた工程管理システム、ICカード入館証に連動する給与・勤怠管理システム、カードをかざすことにより表示が変わるデジタルサイネージシステムなど、上記の「かざす」戦略を反映したものばかり。反面、同社が最近取り組んだ実事例(ANAでの整備工具管理システム、手術器材管理システム)などについては展示がまったく無く、既存のソリューションの訴求・販売促進よりもコンセプトの提示・普及を意図していることが明白に見て取れる展示内容だった。

僕はRFIDの真価は遠距離自動読み取りだと考えており、NECのコンセプトに必ずしも同意するものではないが、Gen2技術の普及の成果をこのような形で利用できる可能性があるのは確かだろう。NECのような大手ITベンダーがこういう尖ったコンセプトを持ってRFIDマーケットにアプローチするのは非常に興味深く、今後の成り行きをウオッチしていきたい。

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