« 2009年5月 | トップページ | 2009年7月 »

2009/06/26

Location Estimation in a 3D Environment using RFID Tags / Adwitiya Jain (著)

AmazonでRFID関係の洋書を検索していて、RTLS関係らしいタイトルに惹かれて注文した本。到着してびっくり、何と修士論文をそのまま本にしたものだったのだ。「そのまま」とは文字通りの意味で、ぱらっとめくってみたらサインが3つ書いてあったので何かと思ったら指導教官のApproval Pageだった(笑)。

タイトルの通りRTLSによる屋内の3D位置検知をテーマにした論文で、「リーダー3つとリファレンスタグ、TOA方式のRTLSシステムの数値解析」「リーダー4つ、RSSI方式のRTLSシステムの実験結果」の2つを軸にして書かれている。どちらも内容のレベルは修士論文相当のもので、実務家がわざわざ読む内容ではないかもしれない。

調査の部分も正直微妙で、2006年に書かれた論文なのに実用のRTLSシステムとしてはWhereNetもAeroscoutもEkahauも出てこずSpotOn・Landmarcという僕が聞いたことが無い製品がリファレンスになっている(もっとも、大学・研究機関向けに使いやすいキットやライセンスを出している会社かもしれず、実務家の視点で普及度を評価するのはフェアでないかもしれない)。

文献調査の部分では知らなかった資料の存在を知ることもできたし、無料でダウンロードできるのだったら読んでもいいとは思うのだが、68ドル出して買うものじゃないだろというのが正直な感想。だいたい、屋内RTLSの論文なのに表紙が天体観測用のパラボラアンテナというのは詐欺だろう(苦笑)。RTLSの資料を探している人はご注意を。

ISBN-10: 3639074629 / $68.00

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2009/06/10

アメリカの万引き事情

アメリカのRFID導入事情をウォッチしている人なら、サプライチェーン用途において万引き防止が大きなテーマとなっていることは知っていると思う。ただ、このテーマはいわば「裏テーマ」と言うべきもので、導入企業の発表やその名前が出る研究で直接扱われることは案外少ない。考えてみれば当然のことで、企業が万引きについて語るというのは「うちのお客は手癖が悪い」と公言しているようなもの。いかなアメリカとはいえ気楽に口にできることではないのだろう。結果としてベンダーや第三者の研究機関がそれぞれに違う数字を引用して語ることになり、記事ごとに全然数字が違うちょっと困った状態になっていた。店頭での顧客の万引きのほか、従業員による盗難、オペレーションミスによる破損・紛失などが(場合によっては意識的に)ごっちゃに語られているのだ。

何かいい記事が無いかな、と以前から思っていたところにRFIDNews誌の特集を見つけた(Combating the 'five finger discount': the value of RFID as an electronic surveillance tool)。この特集記事には商品ジャンルごとの盗難率の表が含まれており、ギフトカードの4.70パーセントから家具の0.22パーセントまで様々な数字が並んでいる。記事本体も、RFIDに関する部分は他の記事にも出ているようなものだが、盗難そのものに関する記述、例えば現在のアメリカの小売業の本当の脅威になっているのは盗癖や生活苦による個人的な犯罪ではなく組織的な窃盗団によるものだ、などが数字によって説明されていて参考になった。

この表の参照元となっている本なり記事なりがあれば、と思ったが、どうも公開資料ではなくP&L Solutionsという会社のセミナー資料か非公開レポートによるものらしい。何か一つきちんとリファレンスできる資料があると良いのだが。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2009/06/04

Gen2タグの生産調整

先日ODIN Technologies社がRFIDタグの価格ガイドを公表した(RFID Tag Pricing Guide)。これは個別の製品やリセーラーの価格を提示するものではなく、以下の3つのジャンルの製品について購入数ごとに高値・安値・平均を記述したもの。例えばUHFのスマートラベルを1万枚発注する場合の平均単価は15セントになる。

  • HF 4" x 6" Smart Labels
  • UHF 4" x 6" Smart Labels
  • Metal Mount Tag

従来はこのようにはっきりと相場観を提示する資料はなく、その意味で非常に価値のある資料である。但し、この値段はアメリカでのもので、日本の価格はざっとこの2倍ぐらいになるのではないかという印象を持っている。

なお、この資料は上記のリンクから無料で入手できる(同社のオンラインショップに誘導されるがカード番号などの入力は不要)。

この資料ではUHFスマートラベルの最安値レンジが9セント(100万枚発注の場合)になるなど、アメリカでは着実にGen2タグ・ラベルの製品の価格低下が進んでいるように見えるが、ベンダーの側は楽ではないようだ。RFID Update誌に、サプライチェーンタグの爆発的な普及を見込んで生産設備に投資したベンダーがそれらの設備を休止させているという記事が掲載された(Slowing Sales Bring Change to RFID Smart Label Suppliers)。

この記事によると2009年のケース・パレット用途でのGen2タグの利用数は2億枚強。2003年時点ではWal-Martだけで2009年に350億枚利用するようになるだろうとの見込みが語られていたとのことなので、この規模に合わせて設備投資を行っていたらそれは辛いだろう。さらにこれらの設備はケース・パレット用のタグ・ラベルを前提としているため、利用が伸びている航空手荷物やアパレル単品にはうまく適応できないらしい。

生産調整の例として最初に取り上げられていたのはAlien Technology。同社は最新鋭のインレー製造プロセスFSAを採用したFargo工場を閉鎖し、通常型製造プロセスの工場に生産を集約させることとした。FSAとはFluidic Self -Assemblyの略語で、RFIDチップを液体と混ぜてフィルムの上に流すとフィルムの窪みにチップがはまっていくという製法。Alienではフィルムの上に直接アンテナを貼り付けているわけではなく、「ストラップ」と呼ぶずっと小型の部品に取り付ける。このストラップとアンテナを組み合わせてインレーに加工するのだが、この加工は通常の工作精度で行えるため、中間ステップを加えても最終的な製造コストは安くなるというのが当時の理屈だった。ただ、素人目にもこの製造方法は設備が複雑になるし、多数の種類のタグを少量ずつ切り替えて生産することには向きそうにない。このFSAプロセスは導入当時には「5セントタグを実現する切り札」として日本でも大きなニュースになった記憶があり、今回の報道を目にしていささか複雑な思いがあった。

他の企業の動向としては、Zebra Technologiesがスマートラベルの製造を4月末で打ち切った、大手スマートラベルベンダーのNashua社がCenveo社に買収されたなどのニュースが取り上げられていた。

これらのニュースはRFID業界全体の不振を示すものではない。Gen2チップのレベルではAlien Higgs 3、Impinj Monza 3、NXP G2XLなど新世代の製品が着実に投入されているし、タグの分野でもInvengo社が5.8セントのインレーを投入するなど新しいプレイヤーの参加も活発だ。このニュースの意味はWal-Martモデルが最終清算段階に入ったということだろう。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

« 2009年5月 | トップページ | 2009年7月 »