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2009/05/25

ODIN Blackbird (Gen2リーダー搭載スマートコンテナ)

先日開催されたRFID Journal LIVE 2009で、ODIN Technologies社のスマートコンテナBlackbirdが披露された(RFID Journal:ODIN Technologies Unveils End-to-End EPC Gen 2 Tracking for Supply Chains)。同社はこの製品にかなり力を入れているようで、通常のセミナーのほかBest in Showでの発表やベンダーワークショップなども利用して何度も発表を行っていた。特にBest in Showでは本物のコンテナ(TRICONという20フィートISOコンテナの3分の1のサイズの軍用コンテナ)を持ち込み、実際の設置の様子を見せていたほど。この製品は台湾のMTI社(Microelectronics Technology Inc.、日本の同名の会社とは別会社)が開発したそうで、ブースや発表会には同社のエンジニアも参加していた。

スマートコンテナといってもセキュリティ系の製品ではない。コンテナの内側にGen2リーダーを取り付け、コンテナに出し入れされるケース・カートンのタグを読み取るというもの。コンテナ内のケース・カートンの状況を知るための器材開発プロジェクトとしては"Secure Carton Initiative"が以前に話題になったが、Blackbirdはこのプロジェクトとは連動していない。

Gen2タグをコンテナに載せただけのアイデア製品じゃないの、などと言ってはいけない。Blackbirdは本体(Command and Control Unit, CCU)と2つのアンテナ一体型リーダー(Blackbird Wing)から構成される。本体とリーダーはPoE対応のイーサネットケーブルで接続され、磁石でコンテナに貼り付けることで1分でセットアップが完了する。つまりリーダーがアンテナの調整を自動で行う設定自動化機能を持っているのだ。さらに、1日1回の読み取りを行って1年間の電池寿命を持つと省電力性能も高い。この2点はGen2技術を知っているものにとってはかなり驚くべきブレイクスルーだと思う。

ひょっとしたら通信機能まで内蔵しているのか、と思ったのだがさすがにコンテナ内部から通信できるはずはなくコンテナ外部に取り付ける通信モジュールと連携するようになっている。現在連携可能な通信モジュールはISO 18000-7、Wi-Fi、携帯電話、衛星電話。この中ではWi-Fiへの対応が目を引く。Wi-Fiは高速通信が可能だが消費電力が大きいため、セキュリティ系のスマートコンテナでは通常は採用されないのだ。カートンから取得したタグ情報を蓄積し、拠点でまとめて読み取るといった運用を考えると、消費電力で妥協しても高速な無線通信インタフェースが欲しいということなのだろうか。

Gen2リーダーと通信機能のほかにはGPSを内蔵しており、更に光・温度・湿度・振動などの外部センサーを接続することができる。台湾・新竹からコロラド州デンバーまでBlackbirdを輸送したときのGPS情報をサーバに送信し、そのトラッキング記録をGoogle Mapで表示したサンプルを同社のサイトで見ることができる(ここ)。

こういう製品のスポンサーになるのはやはり米軍。海軍が100億円のプロジェクト予算を付けて評価し、そのビジビリティ用途での威力を"UAV for logistics"と表現したと展示会で話していた(UAVとはイラクやアフガンで活躍する無人偵察機)。相当に高い評価だな、と思っていたが、後で調べてみると評価していた部隊は施設工兵隊。彼らの任務は戦場まで出張っていって基地や飛行場の建設・復旧を行うことであり、そういう倉庫インフラが未整備な地域での部隊の移動が頻繁な任務であれば、移動可能なインテリジェント倉庫としてこの種の器材が非常に重宝であるというのは良く分かる。

一方で、民間企業、特に物流関連拠点にRFIDポータルを設置できる大手企業でのニーズはどの程度のものだろうか。大きな会社の人ほど「輸送中のコンテナの中に何が入っていれば分かるといいのに」という話をしたりするのだが、まぁ冗談というか愚痴のような話であって、普通は製造システムや販売システムと物流システムのデータを正しくリンクさせるというのがまともな解決策になる。ODIN社では「民需輸送の1%でもニーズがあれば市場は広大だ」としてニーズの掘り起こしを考えているそうだが、どうなのだろうなぁ。

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2009/05/20

RFIDソリューションEXPO 2009

東京ビッグサイトで5月13日から15日まで開催されていたRFIDソリューションEXPOに参加してきた。今回は出展者ではなく純粋に見物、しかも有料セミナーにも参加せずブースだけの見物だった。ブースの写真を撮るのも忘れた程度のかなり低いテンションで参加してきたのでエントリを起こすのも遅れてしまったのだが、気になる技術もありメモ程度の記録を残しておきたい。

【光学認識技術の進歩】

今回の展示会で一番驚いたのは、RFID関連技術ではなく、同時開催の他の展示会にも出展されていた画像認識技術の目覚しい進展だった。ビデオカメラが生成する動画をリアルタイムで解析して識別対象を抽出し、さまざまな分析する。例えば通路の動画をリアルタイムで分析し、通行者の性別や年齢を推定するなんてデモをNECが出店していた(もっとも、僕の顔を写して「男性:20-29歳」と表示していたので勝った!と思ったが)。まして固定的なマークの識別やデコードは、コンベア上で相当の速度で動くものでもお茶の子さいさい。

RFIDと比較したバーコードの欠点として従来語られてきた「一度に一つのバーコードしか読み取れない」「レーザーを正しく当てないと読み取れない」などは上記の画像認識技術を用いた方式では解決されている。このまま技術が進歩していくと、倉庫やヤードの器材管理などはハイビジョンカメラが記録する動画だけで充分ということになるのではないだろうか。

そして、このような光学認識技術の進歩、製品の低価格化は確実に進む。一般論だけの話ではない。これは自動車の自動運転の中核となる技術なのだ。今後も部外者が驚くようなものすごい技術が着実に出てくるのだろう。

【B-CORE光クロノコード】

光学認識技術のうちあえてRFIDソリューションのエリアに出展していたのがB-CORE社で、カラービットコード光クロノコードという技術を出展していた。

カラービットコードは3色の点で構成された線を用いてビット列のエンコード・デコードを行うもの。バーコードと違い上記のようにデジタルカメラで撮影した画像を処理して画像内の文字列を取り出す。線はぐねぐね曲がっていてもいいし点のサイズが違ってもいい(同一の色の点が隣り合わないというルールがある)。バーコードの付加が難しい対象に対して利用できる可能性がある。

僕が強い印象を受けたのは光クロノコードの方。3色でビット列のエンコードを行うというのはカラービットコードと同じだが、光源の時系列での色の変化を利用する。その光源を記録した動画の中から規則にしたがって発光している複数の光源を抽出し、さらに光源ごとの色彩変化のパターンでそれぞれのIDを識別するという技術。
この技術を用いると、例えばフォークリフトの天井、あるいは作業者のヘルメットにLEDの光源を取り付け、監視カメラを使って位置の取得を行うことができる。見通しが取れる利用環境での自動認識には非常に面白いソリューションではないだろうか。

【NEC・RFIDマルチリーダライタ】

今回のRFIDソリューションEXPOの目玉はNECのRFIDマルチリーダライタ。13.56MHz(ISO 15693/14443/18092)、UHF/953MHz(EPC Gen2)、2.45GHz(日立μ-Chip)の全てのプロトコルに対応し、量産価格は1万円以下というもの。詳細はプレスリリースを参照されたい(RFIDを活用したPaas型プラットフォームサービスを提供)。

その他、会場で聞いた内容は以下の通り。

  • 単価1万円というのはモジュール本体ではなくUSBタイプのリーダー製品のもの。実際のところ、リーダー製品はモジュールにケースとUSBケーブルを取り付けただけである。
  • 製品出荷は2009年10月を予定。
  • ファームウェアの更新によりプロトコルの追加・更新が可能。
  • UHF帯の海外対応は、利用している部品のハードウェアレベルで対応できないものがあるためFCCやETSIの認証を取るだけの話ではすまない。このため、現状では海外対応の予定は無い。
  • 出力は特定省電力対応。こちらも部品の制約があり供給電力を増やして出力を増した製品バリエーションを作成することはできない。
  • 基本的には読み取り距離数cmで使うシーンを想定した製品。その意味では、ライバルは数千円のFelicaリーダーであり、1万円という単価は決して安いものとは考えていない。

1万円という価格をどうしても出したかったのだとは思うが、海外周波数に対応しないというのはいかがなものか…。ともあれ、出荷されたらぜひ購入して使ってみたい。

【日立CEPエンジンuCosminexus Stream Data Platform】

日立が独自のCEPエンジンuCosminexus Stream Data Platformを出展していたので現在の利用状況について話を聞いてきた。CRPについては以前にエントリを書いたのでそれを参照(「CEP (Complex Event Processing)」)。現在の主な利用分野は記事を書いた2年前と同じく金融で、最近はサーバのログを喰わせてセキュリティーやパフォーマンスの監視に使うアプリケーション分野にも攻めていこうとしていると。残念ながらというか、RFIDデータを分析するようなアプリケーションについては議論もほとんど聞いたことが無いという話だった。

僕がCEPエンジンの用途として最近考えているのはコンテナセキュリティ分野。この分野でいつかスマートコンテナがGPS情報などを送信するようになるなら、CEPのようなストリーム処理が必須になるはずだ。だって、今でも船積み24時間前までにデータを揃えて提出しろと言っているのに、セキュリティリスクを判断するのがナイトバッチとか言ってたら話にならない(いや、現在ナイトバッチで処理してるから24時間前なのか…)。実際アメリカ国土安全保障省がその種のアプリケーションの開発を発注したというニュースもあり(RFID Journal: Queralt Developing Behavior-Monitoring RFID Software)、時々様子はチェックしようと思う。

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2009/05/02

RFID Journal LIVE! 2009 (Day 3)

遅くなってしまったがRFID Journal LIVE!の参加3日目(1日目の様子)(2日目の様子)。この日は会場でデジカメの電池が切れたのが判明。写真を撮ることができなかった…。

【セッション参加】

3rd Annual RFID Journal Award Winners

当展示会で2年前から行われるようになったRFID導入事例および展示会で発表された商品の中から優秀なものを表彰するイベント。ジャンルは"Best Use of RFID in a Product or Service"、"Best RFID Implementation"、"Most Innovative Use of RFID"、"Best in Show"の4部門が表彰された。

Best Use of RFID in a Product or Service: Vail Resorts

アメリカの大手スキーリゾート。アメリカのトップ10スキーリゾートのうち5つをを運営し、年間訪問者が120万人、年間売上高が12億ドルである。

同社では顧客利便性の向上のため、入場パスをハンズフリーで読めるようにするためのプロジェクトEasy Scanを2006年に立ち上げた。使用するの候補としてはバイオメトリック・バーコード・RFIDの3つを検討したが、スキーウェアの上から読める必要があるとのことでまずRFIDを選択、さらにRFIDの中でICカード製品やHFタグなども含めて評価を行い、コスト・柔軟性・利便性の点からUHF製品の採用を決定した。

同社のシステムでは、入場ゲートではハンドヘルドリーダーで、スキーリフトでは固定リーダーで入場パスを読み取る。特に入場ゲートでは、例えば子供連れで入場するときに子供のパスを出させてという面倒な作業がなくなったので非常に効果があった。

UHF技術を使うということもあり、顧客への告知には非常に気を使った。同社のRFIDポリシーやRFIDを基礎から説明する文書を作成して施設内各所やWebサイトに掲示し、またリーダーが存在する場所には大きな看板を設置した。

システムの効果としては、顧客の満足度や不正パスの発見率が向上し、また顧客の行動分析も効率よく行えるようになった。今後はリーダーのチューニングやデータの活動向上を進めていきたいと。

Best RFID Implementation: Charles Vogele Group

ヨーロッパのアパレル製造小売業者で、工場からレジまでRFIDで個品の統合管理を行うシステムをCheckpoint社の製品を使って導入した。非常に興味があったのだが、この事例は他のセッションで何度も発表しているということで事例説明は無く、記念品の受け取りと参加者の説明のみ。

Most Innovative Use of RFID: FOCUS Magazine

ドイツの総合情報誌による読者の反応分析システム。従来は雑誌の読者の反応を知る方法はアンケートはがきしかなく、テレビの視聴率調査のように実際に読者が取った行動は何かということは分からなかった。このシステムでは、雑誌の各ページにタグを取り付け、専用のリーダーと共に評価者の家庭に送ることで、いつ誰がどのページをどれだけの時間読んだかということを記録できるというもの。これにより雑誌やネットに遜色ない行動分析を取得できるようになった。現在は30人の評価者を対象としているが、これを100人に拡大する予定。

Best in Show: ODIN Technologies Blackbird

展示会出展製品からの受賞は初日に紹介したODIN Technologies社のスマートコンテナGen2リーダーBlackbirdだった。確かに技術的には凄く興味深い製品だけれど、平均的な展示会の参加者から見れば他にも面白い商品があったような気もしたのでちょっと意外だった。

Boeing Leverages RFID to Improve Supply Chains

ボーイング社の取締役によるプレゼンテーション。タイトルからは同社の有名な取り組みである航空機部品のGen2タグによる管理がテーマかと想像していたのだが、実際には講演者の国防総省勤務時代の経験が7割、ボーイングのRFID全体の取り組みが3割程度の、予想と全く違う内容だった。内容的にも踏み込みが足らず不満足な内容だった。

しかし、国防総省からボーイングにというのは日本的に言えばどう見ても天下りなのだが、そういう立場の人が公開の場にボーイングの人間として招かれて堂々と国防総省時代のことを話すのだなぁ。日本とはずいぶん感覚が違う。

【Best in Show Award候補製品プレゼン】

Tego

32Kbyteの大容量ユーザメモリを搭載したGen2パッシブタグ。この容量のメモリは富士通が先に発表したのだが製品の供給はTego社が先になった(富士通が出荷を開始したというニュースはまだ目にしていない)。メモリは大容量であるほか高温で保存しても20年間リフレッシュ無しで内容を保存でき、また電池を取り付けるとファイルシステムの動作やセンサーの接続が可能になるという。将来的には現在のUSBメモリのようなデータ交換メディアとしての用途に利用できるようにしていきたいとのこと。

Agile Tag

簡単に設置できる小型Gen2リーダー製品。電池およびWiFi通信機能を内蔵しており、配線の必要が無く棚に置くだけでスマートシェルフ的な機能が実現できる。このほかPOSレジ用のリーダーやアセット・店員管理用のアクティブタグも提供しており、店舗管理の総合ソリューションとなっている。プレゼンテーションだけでは技術の裏付けが充分把握できなかったのが残念。

【その他ベンダー情報】

SandLinks

UWB技術を用いたRTLSシステム。カタログ上は下記のような驚異的な性能を持つ。

  • 読み取り距離 屋内40m / 屋外200m
  • 読み取り速度 500タグ/秒
  • 双方向通信可能
  • 測位精度 1m
  • タグ価格 5ドル
  • 電池寿命 3~5年
  • メッシュ構成可能

特にメッシュ構成とこの電池寿命は本来であれば両立しないはずなのであるが、ブースで質問をすると「タグはビーコンではなくリーダーから呼び出されて動作し、また現時点ではメッシュではなく1段のスター(タグが1回だけ別のタグへの通信をする)構成になっているのでこの寿命が実現できている」そう。ただ、現在この製品は欧州と日本の電波規制には適合しない。

この技術の特徴は高密度環境に耐えられること。数万個のタグとある程度の速度で双方向通信ができる技術はちょっと他には思いあたらない。なお、タグのチップには外部回路を接続できるとのこと。

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