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2009/04/30

RFID Journal LIVE! 2009 (Day 2)

RFID Journal LIVE!の参加2日目(1日目の様子はこちら)。昨日書いたブースアテンドに加え、他ベンダーからの情報収集も勤務先の商売に直接絡むもので(値段とか日本対応とか)、昨日からさらにボリュームが減っているのはご容赦いただきたい。

【セッション参加】

The Department of Defense Benefits from RFID in the War Zone

米軍の配備流通コマンド(Surface Deployment and Distribution Command, SDDC)の少将によるプレゼンテーション。米軍のRFID利用プログラムのうち、433MHzアクティブタグを用いたRFID IIIを中心とした内容となっていた。

非常に興味深かったのが現在のアメリカの主要戦域であるイラク・アフガンへの補給線の説明で、パキスタンは非常に長い補給線を持つにもかかわらず補給線周辺の住民が米軍に敵対的であり、なおかつパキスタン国内への米軍の展開が政治的な理由から制限されているもの。リスクベースドアプローチからはいささか過剰にも見える米軍のコンテナの直接物理セキュリティへのこだわりの理由はここにあるのかということが実感できる内容だった。

Positioning Your Company for Success in Tough Economic Times

Motorolaによるプレゼンテーション。タイトルの通りこの不況下でどのようにRFID投資を進めていくのかというものだったが、短期的な効果と長期的な意義を兼ね備えた案件を選別して進めていくというもので、ある意味当然過ぎてあまりインパクトの無いプレゼンテーションだった。

Building a Smarter Planet

タイトルから想像がつくようにIBMのプレゼンテーションで、同社の新ビジョン"Smarter Planet"をRFIDの視点から見るとどうなるかを説明したもの。道路・水・ビルといった社会インフラに重点を置いたものだということが分かりそれは収穫だったが、それ以外の部分は踏み込みが足らず少し不満な内容だった。

How BP and National Oilwell Varco Are Using RFID Technology

石油・ガス業界でのRFID利用の事例に関する発表。この業界がユーザとベンダーが共同で参加するOil & Gas RFID Solution Groupを立ち上げたという話題と、BPおよびNational Oilwell Varco(NOV)がGen2技術を採用した経緯・内容についてのプレゼントを半々に混ぜたもの。

NOVは掘削器材の世界トップベンダーで、同社の器材をGen2タグで管理することを決めた理由の中に「バーコードは磨耗で読めなくなる」「視認が必要では作業が制限される」「器材のサイズが大きくLFやHFでは読み取り距離が足りない」というすぐに思いつく理由だけではなく「レンタル時にはレンタル先の会社の仕様に合わせて塗装するのでバーコードが塗りつぶされてしまう」というものが入っていたのが面白かった。こういう話はきちんとヒアリングを進めていくまではなかなか出てこない。

【Best in Show Award候補製品プレゼン】

Blue Spark / UPM Gen2セミパッシブタグ

両企業が共同で発表したGen2セミパッシブタグに関するソリューション。セミパッシブタグとしての機能については現在市場にある製品とさほど変わらず、読み取り距離が30m~60mとやや長いぐらいでサイズや価格はGen2セミパッシブタグの先行品であるPowerID社のタグに比べてむしろ劣っているという印象を持った。薄さ・折り曲げ易さや環境への優しさ(重金属を含まず一般ゴミとして捨てられる)あたりが優れているのだろうか。

IDS Microchip AG

センサー機能を統合したスマートラベル向けチップ。ISO 15693エアインタフェースおよびCool-Logログ取得機能に準拠し、温度センサーを内蔵している。パッシブ・セミパッシブに両対応しており、セミパッシブ構成にした場合はログを取得・保存しておくことができる。ユーザメモリのサイズは8kビット。外部センサーはスイッチ・電圧どちらのタイプも接続できる。

聞いたところはなかなか面白そうだったが、この製品が登場する前のマーケットの状況に詳しくないのでどの程度画期的な製品なのかが分からないのが残念。

【その他ベンダー情報】

VRF Holdings

アパレルの値札を想定した電子ペーパータグを作成している会社。現在手がけているのはGen2互換のセミパッシブタグで、数字の5桁×3行のディスプレイを持っている。表示データの送信はGen2標準のユーザメモリを用いており、データを書き込むとそれが表示される仕組みになっていると。

販売開始は6ヶ月後を予定しており、その時点での単価は2ドル。将来的にはパッシブ動作にして電池を不要にし、単価も30セントまで下げたいとのこと。

Dscn0453

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2009/04/28

RFID Journal LIVE! 2009 (Day 1)

Dscn0423 フロリダ州オーランドで開催中のRFID Journal LIVE! 2009に参加している。これまでの展示会と違い、今回は勤務先がブースに出展している。人数的には僕はセミナーに専念できるかと思っていたのだが、今日はトラブルが多発してそれどころではなかった。ブースで聞いたことはどうしても商売上外に出しにくかったりするので、去年までの参加報告より地味になるのはご容赦のほどを。

【セッション参加】

RFID Basics

展示会の本番は本日夕方からで、昼間に行われるセッションはプレコンファレンスという扱いになる。RFID Journal系のプレコンファレンスで最初のセッションとなるのが編集長Mark Roberti氏によるRFID Basics。RFIDの概念定義、基本的な用語の説明から周波数別の特徴、ISO・EPCglobalといった標準化機関の活動が45分という短時間にコンパクトにまとめられている。

プレゼンの内容は昨年8月に行われたRFID in FASHIONの時のものとほぼ同じ。タグの価格(アクティブタグで20ドル、パッシブタグで20セント)や読み取り距離(Gen2で6メートル)など、そろそろ数字を変えても良いものもいくつか含まれていると思うのだが、そこは保守的にということだろうか。

Creating and Deploying RFID Solutions Through Network Management and the Use of Middleware

プレコンファレンスRFID for IT Professionalの中のセッション。発表者はUCLAの教授で、同校がホストする無線技術研究所WINMECの成果物、特にヘルスケア業界向けのミドルウェアを中心とした内容になっていた。ただ、インド系の教授でプレゼンテーションが非常に早口で聞き取りづらかったほか、プレゼンテーションも内容を詰め込みすぎたものを早送りしていったので主張したい内容が何なのかをほとんど把握することができなかった。

Omni-ID On Demand: A Breakthrough Deployment Solution for Asset Tracking

データセンター向けIT器材アセットトラッキングソリューションについてのプレゼン。このソリューションはIBMとOmni-IDが完全に共同で行っており、この用途での主力製品であるOmni-ID Proxは両者が共同でデータセンター内での金属/非金属器材の利用のバランスを考慮しながら設計したとのこと。
同社のOmni-ID On Demandとは、厚みのためにプリンタでのラベル印刷が困難なOmni-ID Proxについて、本体とラベル部分を別途で提供、パートナーのZebra・SATOのプリンターでラベルを作成できるようにしたというもの。ユーザがラベル管理を外注したり、逆に汎用ラベルを貼り付けたりするのに比べてトータルのタグコストが低下するとのこと。
なお、このソリューションに関連し、IBMが「アセット1台につき年間10ドル節約」という主張をしているが、その根拠はアセット1台あたりの年間作業時間が10分から4分に短縮され、システム管理エンジニアの時給が100ドルというもの。

上にちょっと書いたが、ブース設営のトラブル対応のためこれ以降のセッションの参加はキャンセル。面白そうなものも多かったのだが…。

【Best in Show Award候補製品プレゼン】

Best in Show Awardの候補商品のプレゼンが展示ルームで行われた。

Intelligent Insites

Dscn0427 Enterprise Visibility Solutions for Healthcareというヘルスケア向けの統合ビジビリティーアプリケーション。患者、アセット、消耗品在庫を一つのアプリケーションで統合管理するというもので、技術的な凄さよりもコンセプトの説明に重点が置かれた内容だった。

最近は医療やアパレルといったRFIDの先進利用分野で統合ソリューションの話題が目立つようになってきた(エントリ「統合サプライチェーンRFIDシステムMerchandise Visibility Solution」も参照)。これらの分野ではここ最近は投資を短期間で回収できる単機能のアプリケーションを利用することが賢いといわれていたのだが、これは「個別には投資対効果が実証されていない用途を集めることで高い効果が出ると宣伝する」というその前のハイプにたいするアンチテーゼもあったのだろう。個別の用途ごとに投資対効果が見えるようになって来たならインフラを共用したほうが良いに決まっている。その意味で、技術的な面白みに欠けるとしてもBest in Show Award候補に値する商品なのだろう。

Franwell

Dscn0436 RFID Sleeveというリストバンド式のGen2リーダー。リストバンドにすることにより手を自由に使えることになり、ハンドヘルドリーダーと比べて25パーセント作業効率が向上するというもの。同じくリストバンドにセットしたハンドヘルド端末と組み合わせての倉庫作業のデモ動画を見たが、普通の作業で手を動かす中でタグが読めていくのが非常に印象深かった。

リーダーの重量は350グラム以下、電池の稼働時間は3~5時間。Bluetoothによって完全にワイヤレスで駆動する。腕が電波を浴びすぎないよう、リストバンドに電波シールドが組み込まれているとのこと。

ODIN technologies

Blackbirdというスマートコンテナ製品。スマートコンテナと言ってもセキュリティーセンサー系の製品ではなく、コンテナにGen2リーダーを取り付けてコンテナ内部の品物の在庫確認をリアルタイムで行うことを可能にしたもの。

Dscn0432 コンセプトとしてはSecure Carton Initiativeとして従来から提唱されていたものだが、この製品はコンテナの内壁にアンテナを磁石で取り付けるだけで動作する(アンテナの調整を自動で行う)設定自動化機能、そして1日1回の読み取りで電池寿命1年という省電力機能によりこのコンセプトを実用レベルに引き上げた。この2点はGen2技術を知っているものにとってはかなり驚くべきブレイクスルーだと思う。

本プロジェクトのスポンサーは想像の通り米軍。海軍が100億円のプロジェクト予算を付けて評価し、そのビジビリティ用途での威力を"UAV for logistics"と表現したとのこと(UAVとはイラクやアフガンで活躍する無人偵察機)。率直な感想として、物流関連拠点にRFIDポータルを設置できる民間企業でのニーズはどの程度のものかと思うが、ODIN社では「民需輸送の1%でもニーズがあれば市場は広大だ」としてアプローチを考えていること。

この製品は結構興味深いので、専用のエントリを一本立てるかもしれない。

【おまけ】

オープニングレセプションの会場に飾られていたマスコットキャラクターの氷。

Dscn0426

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2009/04/23

統合サプライチェーンRFIDシステムMerchandise Visibility Solution

小売業向けセキュリティベンダCheckpoint Systems社がサプライチェーン向けのRFIDビジビリティシステムMerchandise Visibility Solutionをリリースしたというニュースが流れた(RFID Update: RFID Baby Born from Checkpoint-OATSystems Marriage)、RFID Journal誌では現時点ではベタ記事扱いだが、これは来週開催されるRFID Journal LIVE!に合わせて大きく取り上げるということだろう。

このシステムは主にアパレル分野を対象とし、RFID技術を用いて統合的なビジビリティを提供するというものであり、同社のCheckNetインフラと連動して動作する。Baird社のRFID Monthlyの2009年4月号によると、その機能は以下のようになる。

  • 小売業者がCheckNet経由で発注を行うとRFID値札が自動的に作成されメーカーに送付される
  • メーカーはRFID値札を納品する商品に取り付ける
  • メーカーの梱包台にはRFIDリーダーが取り付けられ、商品と箱のタグを読み取って正しく梱包がなされたことを確認する
  • 出荷時にタグが再度読み取られ、ASN(事前出荷情報)としてCheckNet経由で納品先の小売業者に送られる
  • 小売業者の物流センターではASNとタグ情報を元に検品が自動的に行われる
  • 物流センターから小売店舗への出庫時も同様にRFIDリーダー付きの梱包台が利用され、梱包確認と検品が自動で行われる
  • 店舗のバックヤードから店頭への移動時にもゲートのRFIDリーダーが移動を読み取る
  • 販売された商品のタグはレジで取り外され、その時点で店頭在庫から取り除かれる
  • タグを付けたままの商品が店舗から持ち出されようとした場合はRFID-EAS(電子商品監視)ゲートで検出される

なお、Merchandise Visibility Solutionはモジュール構造になっており、必要な機能のみを選んで導入することができる。既にヨーロッパの小売業者のいくつかが製品の評価を開始しているとのこと。

コンセプトとしては決して目新しくない。また、一つ一つの機能は過去に発表され実用化が始まっているものでもある。だが、これが統合パッケージソリューションとして実際に販売を開始し、それを評価している顧客がいるというのは感慨深いものがある。RFID技術の導入リーダーは完全にアパレルになってしまったんだなー。

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2009/04/12

DASH7アライアンス(ISO 18000-7の普及団体)

2009年3月にISO 18000-7の普及団体であるDASH7アライアンスが立ち上がったというニュースが業界紙に流れた(RFID Journal: Dash7 Alliance Seeks to Promote RFID Hardware Based on ISO 18000-7 Standard)、(RFID Update: DASH7 Alliance Forms to Advance Active RFID Standard)。ISO 18000-7は433MHzアクティブタグのプロトコルで、アメリカ国防総省のコンテナトラッキングで大量に利用されているほか、民間でのコンテナトラッキングやアクセス管理にも一部利用されている。

DASH7アライアンスには、ISO 18000-7のIPを保有するSaviやアメリカ国防総省の調達でSaviからIP供与を受けているベンダーといったわかりやすい参加者に加え、半導体メーカーであるSTMicroelectronicsやTI、更にはダウ・ケミカルやミシュランといったユーザー企業も参加している。DASH7のサイトからホワイトペーパーをダウンロードして読んでみたのだが今一つ全体像がつかめなかった。プレスリリースのページで4月9日に日本でプレゼンテーションを行うことを知り、詳細を知るために参加してきた。

プレゼンテーションの内容はなかなか興味深いものだった。既存のコンテナトラッキング分野での標準化や市場開拓を行う、というのではなく、センサーネットワーク全体にうって出て勝負したいということを考えているらしい。現在この分野で主に利用されているプロトコルはZigBee(もしくはMAC層以下のIEEE 802.15.4)であり、プロトコルとしては中途半端と多くの人が考えながらも現状の用途でのノード密度やデータ量ではそれなりに使え、またチップ価格も1~2ドルと安いためにライバルになるプロトコルがなかなか出てこない。そうこうしているうちに2.4GHz ISMが無線LANの利用のためにどんどん使いづらくなってきており、433MHzで標準化されたプロトコルとしてそこを狙える可能性がある、と考えたようだ。

軍用製品のIPということでライセンス料を高くするつもりかと思い込んでいたのだが、DASH7でIPプールを作り、大量生産の目処がついたらチップの単価がZigBee以下になることを狙いたいとのこと。また、プロトコルとしての古臭さ(例えばキャリアセンスに対応していない)などについては、今後DASH7メンバーの間で議論を行い、有用なものは規格に取り込んで行きたいと話していた。面白かったのはNFCとの複合デバイスの話で、ISO 18000-7が使う433MHzはNFCが使う13.56MHzのちょうど32倍なのでクロックも含めて部品の共用を図る事が出来る、というちょっと気が付かなかった指摘がでてきた。

現時点ではまだ雲を掴むような話で、とりあえずはタイヤの空気圧監視システムの標準としての採用を狙っている(ミシュランはこの用途に興味を持って参加している)とのこと。ただ、センサーネットワーク系の技術にはZigBeeも含め決定的なものが存在していないことも事実。433MHzは日本での利用が制約されていることもあり、世界での標準化動向を気をつけて追っていきたい。

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2009/04/03

EPCネットワークによるセンサーネットワーク

今年の初めのRFID Journalに韓国のオートIDラボの研究者の寄稿記事が掲載された(An Internet of Senses)。この記事では、EPCネットワークでセンサーネットワークの情報を扱うことの潜在的な可能性の大きさに触れた後で、センサーネットワークはクローズドな製品としてすでに立ち上がっており、それをEPCネットワークで扱う場合の問題点として以下の3点を提示していた。

  • 現在のEPCネットワーク標準にはセンサー情報を扱うための標準が存在しない
  • センサーネットワークには時刻の同期、タグ及びネットワークでの省電力機能、タグへのミドルウェア搭載などの独自の特性がある
  • EPCISを含むEPCネットワークはサプライチェーンでの利用に特化しすぎている

いずれも興味深くかつ思い当たる点のある論点なのだが、この記事には問題認識に基づく研究成果は触れられておらず、研究の進展に興味を持っていた。

で、この研究の中間成果が先日行われたEPCglobalイベントの中で発表されていた(イベントへのリンク)。発表のタイトルは"EPC Sensor Network toward Next Internet of Things"(pdf形式)。この発表では、EPCネットワークにネイティブ対応しないZigBee/IP/独自プロトコルのセンサーネットワークをEPCネットワークに参加させる方法として、

  • LLRPには、センサーネットワーク情報を統一して扱うための拡張プロトコルを定義する
  • ALEには、拡張したLLRPのプロトコルをアプリケーションから利用できるようなプロトコルの追加を行う

という方法を提案している。

これにより、独自プロトコルのセンサーネットワークをEPCネットワークに接続する場合にはセンサーネットワークのベンダーが拡張LLRPへのインタフェースのみを用意すればよく、それ以降のデータの加工はLLRP/ALEのノウハウを持つEPCネットワーク開発者が行うことができるようになる。

なお、オートIDラボ韓国は、ZigBee上でIPv6を動かすためのプロトコルSNAILを開発している。これはIETF 6LoWPAN(RFC 4944)に準拠したもので、、「ここ5年ほど、センサー・ネットワークには独自プロトコルがはびこりすぎてきた。場当たり的に『標準』を作っていうくと、多数の変換層が必要になるため、システムが複雑かつ高価になってしまい、モノのインターネットには向かない」という問題意識に基づく活動の一環のようだ(EETimes Japan: 無線センサー・ネットワークの標準IP、IETFが策定へより引用)。Internet of Thingsの世界をIPv6の世界観で見るかEPCネットワークの世界観で見るか、そしてその2つの世界観をどうつないでいくのか、実は根が深い問題なのかもしれない。

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