« 2009年2月 | トップページ | 2009年4月 »

2009/03/29

RFID 100 Success Secrets / Rick Thomas(著)

本書は奇書である。タイトルの通りRFIDに関するQ&Aを100個まとめた本なのだが、内容が極端にぐだぐだなのだ。そもそも100個の記事の間で内容が重複しまくっているし、出てくる話題を確認できるソースも全く付与されていない。事実関係もめちゃくちゃで、プリンテッドタグやサプライチェーンでのアイテムタグ付け義務化が現実の話として書かれていたりする。かといってRFIDについて良くも悪くも何か思い入れがあり、その思い入れに沿って情報の誇張や歪曲が行われている(例えばSPYCHIPS)という訳でもない。全般に5年ほど前のWal-Martがらみのブームの時に世間に流布した俗説を元にしていて(でも出版は2008年なのだが)、RFIDについて特に興味は無いけれど何か意見を述べなければいけないという立場の人が一般紙の記事だけをソースに書き飛ばしたという感じなのだ。

どういうシチュエーションでこういう文章を書く機会があるのか、と思ったが、本には出版の背景とか著者の説明とかもまったく含まれていない。ただ、何となく投資関連の場(業界紙とかセミナーとか)で発表されたものではないかという気がする。固有名詞があまり出てこない中に会社名だけは出てくるのと、投資状況に関する記事が多かったというのがその理由。もっとも、そういう記事をなぜ本にまとめようかと思ったのかという肝心な点は謎のままなのだが…。

そういう訳でこの本には実用性は全く無い(Amazon.comに書評が2つ載っているがいずれも☆1つ)。反面教師としての価値さえないのだが、ただ実は暇つぶしとしては実は結構面白かったのだ。一つ一つのQ&Aは短いのでさらっと読めるし、そういえば昔はこういう風な印象を持たれていたなぁというのも昔の風俗をながめるように楽しめる。マニア向けにはお勧め(笑)。

ISBN 098051360X / $19.95

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2009/03/25

Yet Another オープンソースEPCISミドルウェアAspireRFID (の筈なのですが…)

先日のRFID Journal誌の有識者コラムにAspireRFIDというRFIDミドルウェアの紹介記事が載った(AspireRFID Can Lower Deployment Costs)。ヨーロッパの名前の通った研究機関がEUの研究プロジェクトAspireからの資金援助を受けて進めているプロジェクトで、EPCISやALE、LLRP、TDTのようなEPCネットワーク標準に加えEPCネットワーク非準拠のハードウェアを使うためのドライバ、ビジネスイベントの自動生成、ERPやWMSとのインタフェースなどを持っている。またNFC ForumやOSGi Alliance、JCPなどの団体の規格も取り込んでいる。

AspireRFIDは中小企業のRFID導入を支援するため低コストで導入できるRFIDミドルウェアを開発したいという動機で始められたプロジェクトで、ライセンスはLGPL v2.1のオープンソース。ギリシャのアパレルSPA会社Staff Jeansなどですでにパイロットが始まっているとのこと。

面白いプロジェクトだと思うけど、でもこれのコアの部分って以前に紹介したFosstrakと丸被りじゃん、何か関係はあるのかな、と思って調べてみると、AspireRFIDのサイトには「このモジュールはFosstrak由来で」みたいなことがモジュールごとに書いてある。繋ぎ合わせてみると、EPCISやALE、LLRPといったEPCネットワークのコアの部分についてはFosstrak由来らしい。が、全体としてFosstrakとAspireRFIDとの関係を示す文書はどちら側からも発表されておらず、両者の関係についての謎は深まるばかり。

本日Fosstrakの開発コミュニティの人に直接会ってこの話を聞く機会があったのがそこで話が斜め上の展開に。何と、AspireRFIDの側はFosstrakコミュニティに仁義を切らずに成果物を流用していて、Fosstrak側は非常に怒っていると。マジデスカ。僕も多少ITのバックグラウンドのある人間なのでオープンソースプロジェクトで本家分家争いが起きた話はいくつか知っているが、これはちょっと無しだろ系。筋論もともかくこういう形でプロジェクトを立ち上げられるとコミュニティの分断とか開発リソース・利用ユーザの分散とかが起きるので非常に困るとのことで、そりゃそうだろうなぁ。現在Fosstrak側では急遽広報担当者を置いて、近々声明を出すと共に交渉を開始する予定とのこと。

AspireRFIDの側の言い分は聞けていないので上記のFosstrakの言い分が正しいかどうかは確認を取れないが、少なくとも現時点で事故プロジェクトなのは確かなところ。AspireRFIDを使ってビジネスをしようとか考えているひとはしばらくは要注意と思う。AspireRFIDの独自部分も面白いので何とか話を付けてほしいと思うが…。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2009/03/18

プロモーションパレットビジビリティの成功: Walgreensの場合

先日のエントリでWal-MartとP&Gが進めていたプロモーションパレットの管理案件が挫折した、という話を取り上げた(プロモーションパレットビジビリティの挫折)。そのエントリの中で、プロモーションパレット管理をRFIDで行うこと自体に問題があるのではなくドラッグストア大手のWalgreensは同様のプロジェクトを進めているという、という内容に少し触れた。最近になって関連するニュースが幾つかアメリカのサプライチェーン・RFIDの業界紙に掲載されている(SupplyChainDigest: Is Walgreens the US Retail Leader in RFID Deployment?)、(RFID Journal: Walgreens, Revlon Affirm Value in Tagging Promotional Displays)。SupplyChainDigest誌の記事のほうは「アメリカ小売業界のRFIDユーザーの新しいリーダーはWalgreensか?」というなかなか刺激的なタイトルになっている。

前回のエントリではやや説明不足だったので、まずはプロモーションパレットのおさらいを。プロモーションパレットとはクリスマスや新製品発売などのイベントにあわせた特売商品を載せたパレットのこと。アメリカではこのような特売商品はパレットの上に商品が飾り付けと共に配置され、そのまま店頭に出して展示ができるようになっている。当然いつ店頭に出すかが非常に重要であり、事前に指示があるのだが、アメリカの小売店舗では指示が守られないことが頻繁にある。店頭に出すタイミングが早すぎたり遅すぎたり、ひどいときには飾り付けを外して通常の商品補充に使われてしまうことも。ある調査結果では特売商品パレットが想定したタイミング・展示方法で店頭に並ぶ比率は30パーセント以下とちょっと信じられない数字が出ている。

Walgreensは以前からこの問題に取り組んでおり、先日の発表でプロモーションパレット管理のためのシステムを導入可能な全店(5000店以上)に導入を終えたと公表した。同社が利用しているシステムはGoliath Solutions社が開発した低価格なRTLSシステム。このシステムについても以前にエントリで取り上げたが(RTLS価格破壊(Goliath Solutions))、独自規格のUHFセミパッシブタグ、タグの単価が2ドルでリーダーの価格が500ドルという低価格なもの。Wal-Martは汎用のインフラとして設置したバックヤードドアのGen2リーダを利用しており、もちろん価格は圧倒的に安いもののプロモーションパレット管理のために専用インフラを設置したことには覚悟を感じさせる。実はこのプロジェクトは同社が8年かけてじっくり取り組んできたもので、何年ものテストの結果投資対効果が確認されたので導入に踏み切った。同社のパートナーの一つ化粧品会社のREVLON社の案件では、プロモーションによる売上が200%から400%向上したとのことで、この数字はWal-Mart案件で語られてきたものとほぼ整合性がある。

Walgreensの事例とWal-Martの事例とを比べると、成否を分けたのはやはりRFIDシステムによるビジビリティの精度ではないかと以前の考えを改めた。Wal-Martのシステムでは「プロモーションパレットが店頭に出ていない」ということしか判らないが、Walgreens社のシステムではプロモーションパレットの現在の位置が大体判る。本部で問題を発見し店舗に作業を指示する際にどちらが効果的かは明らかだ。事例の効果の評価というのは、限られた情報で軽々に論じると落とし穴があると痛感した。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2009/03/10

スマートコンテナ製品の最近の動向

最近コンテナ・トレーラーに取り付ける無線セキュリティデバイス記事が続けてRFID Journalに掲載された。この種のデバイスとしては以前にHi-G-Tek社の製品を取り上げてエントリを書いたが(The Great RFID Game)、最近ニュースになった製品は2つとも米軍が関係している。僕の研究テーマでもあり自分の備忘も兼ねて記録しておく。

一つ目のデバイスはSavi Technology社のコンテナタグにNumerex社の低軌道衛星(LEO)電話機能を組み込んだST-694 GlobalTag(RFID Journal: Hybrid Tag Includes Active RFID, GPS, Satellite and Sensors)。Numerexと言うよりもOrbit Oneと言う方が通りが良いかもしれない。Orbit Oneは商用分野でセキュリティ・トラッキング製品を提供してきたベンダーだ。記事によるとST-694 GlobalTagは米軍標準のISO 18000-7アクティブ433MHzタグと低軌道衛星電話への接続を自動的に切り替え、GPS情報や不正アクセス情報を送信する。対応のアプリケーションはどちらの送信方法で送られた情報も統一して扱うことができるとのこと。この製品は現在米軍で評価中で、商用版の価格・投入時期は未定だそうだ。Savi社は必ずしも433MHzというハードウェアにコミットしているわけではなく、SaviNetworkの存在を考えるとむしろネットワーク・アプリケーションの分野で成長を狙っていると思われるので、この種の製品の投入は遅すぎたぐらいだという印象を受ける。

もう一つはImpeva Labs社とAgility社による製品(RFID Journal: U.S. Army Achieves Real-Time Visibility of Supply Trucks Traveling in the Middle East)。この製品はGSU(Global Sentinel Unit)とRSU(Remote Sensor Unit)という2種類のコンポーネントから構成される。GSUはGPS、衛星/携帯電話、メモリーなどを持つ本体部分であり、RSUはGSUに有線・無線で接続されるセンサーユニットである。GSUは本体で取得した情報にRSUから送られてきた情報を加え、衛星/携帯電話経由でステータスをサーバに送信する。アーキテクチャとしては拡張性が高い有力なもののように見える。この製品は商業版が開発されたというニュースが一ヶ月前に流れたが(RFID Journal: ARINC, Impeva Unveil Real-Time Supply Chain Tracking Solution)、この記事は軍用版がイラク戦域に送られ、アメリカ陸軍資材軍団が365台のトラックでテスト中であるというもの。

うーん、世の中の動きは早い。頑張って論文書かないとあっというまにネタが陳腐化しちゃうなぁ…。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2009/03/03

ソフトバンクXシリーズを使ったRTLSソリューション

先日のエントリ「MACアドレスによるユニークIDトラッキング」で紹介した高木浩光氏がBlootooth機器のMACアドレスをテーマに新しいエントリを作成されている(高木浩光@自宅の日記: Bluetoothで山手線の乗降パターンを追跡してみた)。エントリタイトルの通り山手線に乗車して検出可能になっているBluetoothデバイスの分析をしたもので、この問題の深刻さが分かる内容だ。僕が先のエントリで「見つけられなかった」と書いた英語圏の記事についても商業誌・学術誌共に記事へのリンクがあり、先のエントリに興味を持たれた方にはぜひご一読をお勧めしたい。個人的にBluetoothは土地勘の無い分野で、またRFIDのエアープロトコルとしては現状ほとんど利用されていない(いくつかのマイナーベンダーは利用している、またハンドヘルドリーダーとPCとの接続には広く利用されている)こともあって、これほど大きな問題が発生していることにはまったく気付いていなかった。

そんなわけでこのエントリでは土地勘のあるWiFiの話を。WiFi機器は読み取りゾーンによる大まかな位置検出のほか、電波到達時間差(TDOA)や電波受信強度(RSSI)を使った三辺測量によって高精度(3m~5m)の位置検出を行うことができる(ちなみにBluetoothは周波数ホッピングのためこの種の測位にはあまり向かない)。実際にWiFiを使うRTLS製品は現時点でマーケットの主流と言ってよい存在であり、製品の中には任意のWiFi機器をタグとして利用できるものがある。とは言えこの分野をウォッチしていない方にとってはあまりピンと来ない話だろう。そこで具体例を紹介したい。

ソフトバンクテレコムがWiFi RTLSのトップベンダーであるエカハウの製品を採用し、自社のアプリケーションスイートに組み込んだ(Ekahau RTLS to Empower SoftBank's Asset and Personnel Tracking Application)。そのアプリケーションスイートはソフトバンクのXシリーズ携帯電話を対象としたもので、Xシリーズの無線LAN機能と導入組織の無線LANインフラを使って位置検出を行うというもの。対象業界は医療、物流、製造、小売と多くのものが挙げられている。不思議なのは日本のエカハウもソフトバンクも本件についてのプレスリリースを出していないこと。エカハウ本社のプレスリリースには双方の日本人担当者がコメントを寄せているのだが…。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

« 2009年2月 | トップページ | 2009年4月 »