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2009/02/10

ユニークIDトラッキング問題をYouTubeを見ながらもう一度考えてみる

CASPIANの創設者Katherine Albrecht女史がオランダの検索エンジン企業Ixquickのアメリカ広報部門の責任者になったそうで、RFID UpdateやRFID Journalがベタ記事で取り上げていたのに笑った。なんだよー、なんだかんだ言ってみんなキャシーのことが大好きなんじゃないか(笑)。僕も彼女のことはいろいろなエントリで批判的に取り上げてきた。RFID反対活動のためなら嘘をついてもいい、という態度は不快だし長期的に活動の信頼性を下げることになると考えている。ただ、RFID業界の「向こう側」の人として馴れ合いを排して反対すべき点には反対する、というのはあるべき態度の一つとして認める。

で、このエントリの本題は「こちら側」の人の話。セキュリティ専門家のChris Paget氏が西半球旅行イニシアチブ(WHTI)カードの危険性を証明するため、サンフランシスコの街中でWHTIカードを車から読み取る実証実験を行い、そのビデオをYouTubeで公開している(Cloning passport card RFIDs in bulk for under $250, 5分31秒)というニュースがRFID Updateに紹介されていた(Latest Anti-RFID Video is Actually Worth Watching)。WHTIカードはアメリカの近隣国との旅行の際に利用する簡易パスポートで、多数の入国者を迅速に処理したいということで通常のe-パスポートで利用されるICカード規格であるISO 14443ではなくGen2を採用している(日経ITPro: 米国国土安全保障省(DHS)、パスポートカードに無線ICタグの導入を提案)。Paget氏はWHTIにGen2のような長読取距離・非保護の技術を使うのは間違っていると考えており(僕も全く同感)、その危険性を広く理解してもらうためにこの実証実験を企画したとのこと。

使用している器材は特殊なものではなく、eBayで250ドルで買ったというMotorola XL-400。これをラップトップPCに接続して車に搭載し、WHTIカードのヘッダに該当するタグを読み取っていくというのが実験の内容。このビデオでは20分ほどのドライブ後に2件の読み取りしかなかったが、彼がビデオの中で述べている通り今後WHTIカードの利用者が増えてくれば取得できる件数も増えてくるはずだ。

実証実験の内容自体は未知のセキュリティを警告するというものではなく、ある意味仕様通りの動作に過ぎない。移動中の車からUHFパッシブタグを読み取るのであれば、例えばデジタルカメラやGPS、加速度センサと組み合わせ、読み取ったタグIDを周囲を移したデジタルカメラの画像情報とリンクさせ、位置情報・タイムスタンプと共に保存するぐらいのことはやって欲しかったという気もする(エントリ「Yet Another Gen2-based RTLS (PINC Solutions Yard Hound」も参照)。

だが、UHFパッシブタグのユニークIDによって個人のトラッキングが行えてしまうことを実環境で証明し、それを動画で記録したというのは僕が知る限り今回が初めてだ。ユニークIDトラッキング問題はコンセプトについては日本でも5年以上も前に散々議論された(例えば結城浩氏の「固有IDのシンプル・シナリオ」という記事がユニークIDの問題を網羅的かつ分かりやすくまとめており理論の整理としては現在でも手を入れる点はない)が、この問題への具体的な対応は利用者の納得というかリスク感に依存する部分も大きい。実際に起きうる状態を目で見るとまた考え方も変わってくるかもしれない。

未だにWHTIカードとかEDL(Enhanced Driver's License、陸上国境を持つアメリカの州が発行するRFID免許証)にGen2タグを使うというクレイジーな話が現実になるこの世の中、このビデオはぜひ多くの人に見てもらってユニークIDトラッキング問題について考えてもらいたいと思う。

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コメント

=QTE=
RFID反対活動のためなら嘘をついてもいい、という態度は不快だし長期的に活動の信頼性を下げることになると考えている。

RFID業界の「向こう側」の人として馴れ合いを排して反対すべき点には反対する、というのはあるべき態度の一つとして認める。
=UNQTE=

上記文章の後段の意味はどういう意味でしょうか?
掲載されている文章全体を読んでも意味不明なのですが。

投稿: 春名 | 2010/11/13 07:51

こんにちは、春名さん。コメントありがとうございます。

ご指摘の通りこの部分意味不明になってしまっていますね。
このエントリを書いた当時(今でもですが)、RFID推進側のメディアは正当な批判に対しても「RFIDにはメリットもある。危険があるとしても総合的に判断すべき」という主張をしていたので、そういう正当な批判は正面から受け止めたいということを書きたかった部分でした。

投稿: Koi | 2010/11/14 16:17

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