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2008/12/25

RFID in Logistics / Erick C. Jones他(著)

商売柄タイトルに惹かれて買ってしまった本なのだが、結論から言うとRFIDのロジスティクスへの応用可能性について知りたいという目的は果たせなかった。この本はネブラスカ大学の教授が講義をまとめるという形で書いた本なのだが、単一のクラス向けの統一された教材となっているわけではない。むしろ、テーマがバラバラな複数の単発コースの教材をまとめ、テーマ別に並べ直したのでは、という内容になっている。特定の商品の紹介だとか、ロジスティクスとは関係の無い導入事例とか、そういったものが無造作に並んでいてかなり読みづらい。

そして、唯一理論的にまとまっている部分のテーマはロジスティクス全般ではなくサプライチェーン、それも在庫・発注管理である。紛らわしいことをせず、タイトルに"Supply Chain"と入れれば良かったと思うのだが、"RFID in the Supply Chain"という本が既にあるので被ってしまったのだろう(その本もぱっとしない内容だったが)。この部分は特に目新しい部分は無いものの必要な論点を手際良くまとめていて、目を通しても悪くはないかなという内容なのだが、該当する部分は45ページ(pp109-154)と500ページ強という全体ボリュームの1割以下。

それ以外の記事も部分部分では読むに耐えない、という内容ではないのだが、類書と比べてキラリと光るというわけでもない。わざわざ買うまでもないかな、という結論。余談ながら、この本の前に書いた2つの書評はドイツ人の大学教授が書いた本についてで、この本よりもかなりレベルが高い。ドイツ人の学者というのはさすがに偉いものだと思う。

ISBN: 0849385261 / $119.95

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2008/12/22

金融危機のRFID業界への影響・続(Baird RFID Monthly Dec. 2008)

前回の記事も参照のこと。今月のBaird RFID Monthlyで現在の金融危機がRFID業界に与える影響について論じられている。11月・12月の実績を見てから、という前回の論旨からするとやや早いが、数字や実例が入っていて興味深いのでまとめておきたい。

業界関係者へのヒアリングによると、投資対効果が明らかなプロジェクトについても景気悪化が原因の延期のペースが加速している。この状態が起きている業界は、小売、消費財、アパレル、物流、そしてメーカー(特に自動車産業)であるとのこと。

しかしながら、2009年全体を見るとRFIDの利用は拡大を続けると判断する。その理由は以下の通り。

  • 不況時には好況時に見過ごされていた過剰在庫やオペレーションの非効率が顕在化し、それがRFIDの導入を後押しする。同様の理由で2001年~2002年の不況時にも大規模な自動認識技術の導入が行われた。
  • 人員削減などの応急的なコストカット策には限界があり、それが落ち着いた時点で企業は生産性改善のための投資に手をつけざるを得ない。2001年~2002年の不況からの回復時には、自動認識技術企業の株価の回復は、株式市場全体の回復に1年先立って始まった。
  • 今回のプロジェクト延期の理由の一部は信用調達によるものだが、RFIDベンダーは資金の貸し出しやリースオプション・料金ベースでのサービス提供などに精力的に取り組んでいる(訳注: 確かにこの種のニュースは最近目にしていたが背景を深く考えたことは無かった。不勉強…)。
  • RFIDベンダーは不景気にも関わらず製品開発への投資を続けている。前回の不況時、IntermecとZebraは投資を続けて景気回復時に成長の波に乗ることができたが、Symbol社は製品開発への投資を絞ったために景気回復に乗れなかった(訳注: その後Symbol社はMotorolaに買収されてしまった)。
  • ヘルスケア業界はディフェンシブ銘柄ということで資金の問題が少ない。調査によってもヘルスケア業界で延期になったプロジェクトは見つかっていない。また、公共安全分野や金融分野でも堅調な投資が続いている。
  • 多くの分野で実施されたパイロットプロジェクトは前向きな結果を出しており、多くの案件では本格導入への障害は全般的な経済状況だけという状態にある。これらのパイロットのいくつかは大企業が実施しており、2009年にはそれらパイロットの結果が公表されて導入への勢いが増すだろう。

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2008/12/19

2008年RFID業界の主な出来事

例年RFID業界10大トレンドを発表していたRFID Update誌が2008年分の発表を見送った。今年は今後のトレンドを決めるような大きなニュースが無かったというのがその理由。個人的にも同じ印象を持っていたのでこの判断には納得できる。ただ、年末の締めくくりの記事を何も書かないというのも寂しいと思ったらしく、"9 Things RFID Will Be Remembered for in '08"として9つのトピックスを取り上げている(Part 1: #9-#7)(Part 2: #6-#4)(Part 3: #3-#1)。確かに十大ニュースにしなかっただけあり、地味な項目が並ぶ。個人的には発表時に目をつけてこのBlogで取り上げたテーマとほとんど重なっているのがちょっと嬉しい。

#9 - UWB Grows Up Fast
 2008年初めの時点ではUWB技術を使ったRTLS(エントリ「UWB RTLS」を参照)はニッチ技術だと考えられてきたが、この一年で大きく成長した。特に、Cisco SystemsやMotorola、AeroScoutといった既存のベンダーがUWB RTLS製品への対応を行ったことが大きい。現時点ではUWB RTLS製品を提供するベンダーはほんの数社であり、製品に互換性が無いことを考えると、これは驚くべき結果である。

#8 - Not Even Metal Blocks UHF Progress
 Gen2製品のパフォーマンスは2008年を通じて向上し続けた。特に注目すべき点は、金属環境で利用しても充分な性能を発揮するタグが登場した点である。その代表はOmni-ID社の製品であるが、他のベンダーの製品も独立したテストにより金属環境でのパフォーマンスの向上が確認されている(エントリ「メタルはイケてるぜ!!(even if you employ Gen2 technology)」を参照)。

#7 - Near Field Communication Get Nearer
 近距離無線通信規格(NFC)の大規模な普及はまだ実現していないが、普及に向けての障害は着実に取り除かれつつある。業界団体であるSmart Card AllianceとNFC Forumは活動を進めているし、AIRTAG社はアプリケーション開発キットをリリースした。また、RFIDタグ大手ベンダUPM Raflatac社はNFC製品のサポート拡大を公表した。

#6 - Startups Broaden RFID Spectrum
 今年は多くのベンチャー企業が興味深い製品を開発した。もっとも注目を集めたのはGen2タグを長遠距離から読み取るシステムを市場に投入したMojixだろう(エントリ「Mojix STAR System (超遠距離Gen2タグ読み取り+高精度位置情報)」を参照)。その他にも、Omni-ID社はスペーサーに頼らず金属・水分に強いタグを投入、セキュリティ強化タグや印刷タグの分野でもベンチャー企業の新製品が目立った。

#5 - Funding Flow Slows
 RFID業界のベンチャー企業への資金の流入が細っている。2008年のベンチャーキャピタルのRFID企業への投資は平均毎月970万ドルで、それに先立つ18ヶ月の平均毎月2410万ドルから大幅に低下した。この低下は9月の金融危機の前から観測されていたもので、目下の経済状況が2009年に改善される見込みがないこととあわせ、2009年はRFID企業の資金調達はこの10年間で最低レベルにまで落ち込むだろう。

#4 - Vendors Position Through Acquisition
 2008年には多くの買収が発生した。ImpinjによるIntelのGen2リーダーチップ事業の買収など、水平的な事業の統合案件もあるが、特に目立ったのは特定業界向け総合ソフトのベンダーが提供サービスを拡大するためにRFIDベンダーを買収するもの。小売向けシステムの分野において、Checkpoint Systems社がOATSystems社を、Sensormatic Electronics社がVue Technologyを、それぞれ買収したのがその代表例である。

#3 - Providers Proactive About Security
 RFIDのセキュリティーに関し、問題の先手を打って行動するベンダーが増えてきた。セキュリティーについての協業を目的とした業界団体RFID Security Allianceの立ち上げはその代表である。反面、海外の多くの公共交通機関で利用されているMIFARE Classicのセキュリティーが破られてクローンが作成されたり(エントリ「スマートカードMIFARE Classicのクラック」を参照)、RFID機器の医療機器への干渉が報告されたりという問題も発生した。

#2 - Trends on a Treadmill
 Mandate案件として業界の注目を集めてきた案件では、トピック的なニュースは報道されるものの実際の導入開始にはつながらないという繰り返しを今年も続けている。e-ペディグリーについては連邦議会決議やFDAの決定があったが、それは導入に影響を与えていない。Sam's Clubの案件(エントリ「Wal-Mart Mandateの新たな動き(Sam's Clubでの未着用パレットへの罰金化)」を参照)は業界で大きな注目を集めたが、多くのサプライヤーは罰金を払ってさえ様子見を続けている。国防総省の大規模な調達計画もマーケットには影響を与えなかった。

#1 - It's the economy...
 今年の秋からの景気悪化にも関わらず、経営破綻したRFIDベンダーは無いし、ほとんど全ての市場予測はRFID業界の2009年の成長を予測している。現在RFIDの主なソリューションは短期間で確実な投資回収が見込めるものであり、現在不況の真っ只中にある金融や小売セクターですら導入が増加する可能性があるというのがその理由(エントリ「金融危機のRFID業界への影響」を参照)。
 一方、足元の景気は市場予測が作成された時期よりさらに悪化しており、個人的な会話では来年のRFIDマーケットについて不安をもらす市場関係者も多い。来月末に10-12月四半期のレポートが出れば現状がいくらかクリアになるだろう。

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2008/12/11

TRONSHOW 2009

TRONSHOW 2009に出かけてきた。講演にはあまり興味を引くものが無かったため、展示ブースのみを見学。東京ミッドタウン開催ということであまり出展者が多くないのでは、と思っていたのだが、組み込みシステム関係を除くRFID関連部分だけでもかなりの数の展示があり、いくつか情報を仕入れることができた。全般的にハードウェアが前に出ていた印象。展示会の趣旨からいってGen2やISOなどの他のプロトコルを使った事例は出しにくいのだろうか。

以下、特に興味のあった展示についてコメント。

☆UWBアクティブタグデモンストレーション(YRPユビキタス・ネットワーク研究所)

UWB RTLSについては以前にエントリを書いたし、海外の展示会では既に何度も目にしているが、日本の展示会でデモを見るのはこれが初めて(日本の展示会にあまり足を運んでいないというのが大きな理由だが)。

スーパーの内部を模したデモで、3m角の展示スペース内にタグをつけた買い物カゴを3つ配置、そのうち一つにPDAを取り付け、カゴの位置に応じて目の前にある売り場の関連情報を表示させるというものになっていた。

話を聞いて出てきた内容は以下のようなもの。

  • 技術的には2009年の製品化を目指したい。但し2009年時点では日本では電波法が改正されていない可能性が高く、利用には実験局免許が必要になるだろう。
  • 4G携帯電話との干渉対策が必要とされている。現在4Gの方の規格が固まっておらず、UWBの側の干渉対策も固まらない状態である。
  • 利用している製品は日立のもの。最大30m程度の読み取り距離はあるが、実際の利用環境を想定すると、アンテナを10m間隔で設置して15cmの測位制度を得ることを目標としたい。
  • 世界で実用化が進み量産効果が出た段階で、タグの単価は1,000円を狙っている。

☆ICホログラム(凸版印刷)

凸版印刷のホログラム技術・クリスタグラムをミューチップタグ(Hibikiではない2.45GHzのオリジナル)のアンテナとしたもの。この製品の存在は知っていたので、Gen2への対応が可能かどうかに絞って質問してみた。

  • 基本的には対応は可能
  • 但し、通常のGen2タグではアンテナ部分に長さが必要になり、デザインに制約が出る
  • Near-Field Gen2タグについては可能性は大きいので研究を進めたい
  • もう一つの問題はチップのサイズ。現在入手できるGen2用チップはミューチップに比べて厚く、衝撃に弱くなってしまう。

特にファッション性の高い高額商品の偽造防止ソリューションとして潜在的なニーズは高いと思う。基本的にはオープンなサプライチェーンが主な導入先となるだろうから導入に必要なインフラが整うのはまだ先と見るが、とりあえずはミューチップで実績を積んで欲しい。

☆ミューチップ・タトルシール複合タグ(日立製作所)

展示の中で目を引いたのはミューチップを書類管理に利用するソリューション。1mm間隔で重ねたタグの同時読み取りができるソリューションも興味深かったが、図書館で利用される盗難検知システム・3M社のタトルテープとの複合タグが特に面白かった。複合タグというとどうしても不細工なものを想像してしまうのだが、このタグは自然に一体化がなされていてスマート。ただし、1個100円弱のタグ価格のうちタトルテープの価格が半分ほどになってしまうというあたりが泣き所だろうか。万引き防止以上の検知の確実性を求められ、かつ持ち出しの許可・不許可を何度も切り替える必要があるビジネスケースは図書館以外にも潜在的にはあると思うが、業務プロセスの詳細に入ると案外合わない点が見つかるのかもしれない。

☆Tagged World Project(ゴビ)

高齢者の生活状況の見守り、具体的には家庭内での移動履歴の取得を行うシステムの展示があった。タグの位置を固定アンテナで計測するRTLSではなく、スリッパ下に付ける13.56MHzリーダーとカーペットタグを組み合わせたものになっている。タグの位置とスリッパの位置がずれると読み取りができないのではないかと思ったが、多少ずれても読み取りができその点では問題ではないとのこと。但し、タグの数が少ないと移動情報の精度が上がらないので、コストとの兼ね合いでどれぐらいタグの数を増やせばよいのかが難しいそうだ。この用途であれば印刷タグが有力なソリューションになりそうだが。

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