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2008/11/26

RFID for the Optimization of Business Processes / Wolf-Ruediger Hansen他(著)

少し前から取り組んでいた本だったのだが、考えていたより読了まで時間がかかってしまった。B5版で280ページ、本編は250ページ強とさほどのボリュームではないが、良い意味で非常に重厚な内容で速読ができなかったのだ。

本書の内容はタイトルから想像できるとおり総合的なもの。RFIDの技術要素からセキュリティ、業務への応用の可能性や実際の導入事例などがカバーされている。本書が類書から明らかに優れている点は、業務への応用の可能性が丁寧に論じられている点だ。この程度のボリュームの参考書では業務への応用例に割かれるページ数は多くなく、販促パンフレットのような表面的な内容で終わっていることが多い。この部分の内容に見るべき点がある書籍では、現場のリアルな視点が含まれていることがその評価の理由になっていた。本書がそれらの書籍と違う点は、販売やマーケティング、生産管理などを理論と比較して丁寧に解説している点。これらの分野の勉強をした人であれば頷きながら読み進めることができると思う。ちなみに理論解説のモデルケースとして以下の3つの分野が利用されている。

  • Retail and Consumer Goods Industry
  • Packaging Industry
  • Container Systems and Returnable Transport Item Systems

反面、RFIDの技術解説やセキュリティなどは普通の内容。類書に比べてレベルが低いわけではないから一度じっくり読んでおいてもいいが、同様の内容の書籍を読んだことがあればざっと目を通すだけでよいと思う。前半100ページのためだけでも購入する価値はある。

ISBN: 0470724226 / $90.00

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2008/11/18

Fosstrak(オープンソースEPC Networkアプリケーション)

仕込んでからちょっと時間がたったネタなのだけれど日本語のニュースソースがまだ無いようなのでご紹介。先月参加したEPCglobalの総会でFosstrakというアプリケーションの発表があった。これはEPC Networkのオープンソース(LGPL)実装であり、以前はAccadaという名前だったのでそちらで聞き覚えのある方がいるかもしれない。

Fosstrakは現時点で以下のような機能を実装している:

  • EPCIS Repository
  • TDT (Tag Data Translation) Library
  • LLRP GUI Client
  • ALE Middleware (Filtering & Collection)

なお、FosstrakはオートIDラボの研究者が中心になって開発しているが、リファレンス実装というわけではない。

EPCISについてはVersion 1.0.1でEPCglobalの認証を受けており、EPCIS準拠のソリューションの提供に無料で利用することができる。また、シンプルながらデモアプリケーションも含まれており、学習用途にも適しているかと思う。動作環境はApache・Tomcat・MySQLで、インストールも簡単だ(発表では実際のインストール作業を5分ほどで見せてくれた)。

現在のバージョンでEPC Networkのコアコンポーネントが一通り揃ったので、今後は新モジュールの追加よりも既存のモジュールの改善を優先していきたいとのこと。JBossがJ2EEアプリケーションサーバの裾野を広げたようにFosstrakもEPC Networkの利用を広められるよう、業界を巻き込んで非営利の運営組織を立ち上げたいとのこと。

発表の時点では毎月180ダウンロードがあり、EU、北米、中韓台の東アジアからのアクセスが多く、日本のダウンロード件数は集計対象外だったらしい。このエントリを見た方は試してみてはいかが。

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2008/11/12

金融危機のRFID業界への影響

サブプライム問題の顕在化に端を発しこの10月にピークを迎えた金融危機がRFID業界にどのような影響を与えるかについては、コラムなどの形では既に業界紙で触れられていたが、今月に入ってある程度まとまった記事が出てきた。ここではRFID Update誌の記事(Part 1: Economic Meltdown Effect on RFID: Not Now, Not Ever?, Part 2: Tight Capital Could Squeeze Firms Out of RFID Industry)を元に簡単にまとめてみたい。この記事自体はおおむね業界関係者の理解の最大公約数になっていると思う。

まず、ユーザ側のRFID投資については大幅に縮小することは無いだろう。楽観的に聞こえるかもしれないがこれには以下のような理由がある。

  • 現時点でのRFID導入事例の中心は、導入に手間がかからず確実にコスト削減効果を見込める"Low-Hanging Fruit"である。投資回収期間が長く業務改革などのリスクも大きい戦略投資と比較して、このような案件は不況下で削減される必然性が低く、むしろ導入が加速する可能性がある。
  • 上記のような事例は投資の絶対額が低く財務上のインパクトも小さいため、信用収縮の影響も軽微である。
  • 現時点でのRFIDの主要ユーザーはヘルスケア業界などの不況に比較的強いとされている業界である。

実際、IntermecやZebra、MotorolaのEnterprise Mobility Solutions部門の足元の業績は堅調である。

一方、ベンダー側に与える影響は甚大である。RFIDベンダーの多くは現時点でベンチャーキャピタルから資本金の供給を受けながら上場や他企業からの買収(これらをエグジットという)を目指している。これら企業は事業からのキャッシュフローでは投資を賄うことができない(下手すると営業キャッシュフローがマイナス)ので、エグジットまでは資本金を食いつぶしていくことになる。

つまり、現在の不況および信用収縮の元では、RFIDベンダーはベンチャーキャピタルから資本の供給を受けることが非常に困難になる。上場の準備が整う前にベンチャーキャピタルからの資金供給が行えなくなるなら、その企業が生き延びるためには(おそらくバーゲン価格で)他の企業に買収されるしかない。

買収による企業の集約は、不況が深刻化する前から既に予想されていた。RFIDマーケットが成熟するにつれ、面白い技術やアイデアを持っている会社でも実際のキャッシュフローを生み出せないままでは存続が難しくなる、と考えられていたのである。が、この不況・信用収縮によりハードランディングの可能性が出てきている。被買収企業はゆっくりと交渉を行う時間が無く、買収企業はリスクに敏感になっている上に株式交換という手法を使いにくくなってきている。

Baird RFID MonthlyのReik Read氏は、信用収縮の状況がこの12月~1月までにどれだけ改善しているかが、ハードランディングが現実になるかの重要な目安となると語っている。しばらくはベンダーの動向に注目が必要のようだ。

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2008/11/10

Active RFID, RTLS & Sensor Networks 2008

Dscn0334 ダラスで開催されたActive RFID, RTLS & Sensor Networks 2008に参加してきた。参加者は80人程度、展示ブースの出展ベンダーは17社とそれほど大きな展示会ではなかったのだが、とても興味深い内容だった。クローズド・ループ用途、独自規格という見方がなされがちなアクティブタグ分野だが、「環境エネルギーを使い一次電池を使用しないタグ」「標準プロトコルとしてのIEEE 802.15.4」という二つの技術を抽出して中期的なトレンドを描いて見せたのは感心した。これらは技術要素としては知っていたがアクティブタグの要素としては個人的にもノーマークだったしRFID JournalやRFID UpdateなどのRFID業界紙で取り上げられることもほとんど無かったはず。

業界別事例として取り上げられたもののうち圧倒的に多かったのは病院向けシステム。提案された製品やソリューションを見比べてみると、それぞれの個性を持ちながら病院向けシステムとしての共通のコンセプトを持っており、この分野ではいわゆる「キャズム」を超えたのではないかと感じさせる。逆に言えば他の分野は、例えば何かと話題の多いアセット管理であっても、先進ユーザーとベンダーが手探りで取り組んでいるという状態は脱していないのだろう。

余談に近くなるが中国系の発表者が多かった。欧米企業の中国の拠点だったりアメリカの大学教授だったりで必ずしも中国地域の産業のレベルを代表しているわけではないのだが、インド系の発表者がほとんどいなかったこともあり印象に残った

それぞれのセッションが25分と短く、またセッションの内容が互いに重なるものも多かったので、いつものセッション別ではなくいくつかにまとめてコメントを。

【環境電池(光、温度差、振動)】

僕は従来アクティブ・セミパッシブタグの電源はせいぜいシート式の1次電池までしか想像していなかったのだが、光、振動、温度差などの環境エネルギー(Ambient Energy)を使った製品についてかなりまじめな研究がなされていた。Ambient Systems社、Dust Networks社はタグ全体の設計を、National Semiconductor社、Holst Centre社、Cymbet社、Infinite Power Solutions社は電池の設計を(環境エネルギーは安定しないため二次電池の併用が必須となる)、それぞれ発表していた。

実現までには発電ユニットや電池も含むワンチップ化といったハードウェアインテグレーション、そして省電力を前提としたプロトコルの開発などまだまだやることが残っているが、印象としては極端な未来の話という感じは受けなかった。関係者は印刷タグと同程度の尺での開発スケジュールを考えているのではないだろうか。

【IEEE 802.15.4(ZigBeeの物理層)】

今回の発表者の中で、Ambient Systems、Dust Networks、Jennic Ltdといった企業が通信プロトコルとしてIEEE 802.15.4を採用していると発表している。IEEE 802.15.4はZigBeeで利用されている物理プロトコルの規格。測位に使うには筋が悪いプロトコルと言われ、実際Ambient Systemsは測位に使うなら精度は10mと発表していたが、低価格・低消費電力である点に注目されているという印象。但し、802.15.4はあくまで物理層の規格であるため、準拠している製品の間で相互運用性が保証されるわけではない(この点がWiFiと違う)。製品間の相互運用性についての話題は出なかった。

また、decaWave社はIEEE 802.15.4aを利用したRTLS製品のロードマップを発表していた。この規格はZigBeeのプロトコルをUWBの電波の上で動かすためのもの。測位精度や電池寿命などはUWB RTLSとしてほぼ標準的なものだが、読み取り距離が見通しで最大500mという異常な値が出ている(現行のTimeDomainやUbisenseの製品はせいぜい100m程度)。プレゼンでは各国電波法との関係も説明していたのだが時間が短く充分理解できなかった。正式出荷が始まるのは2010年第1四半期とのことなので、何か隠し玉があるのかもしれない。

【CMOSマルチプロトコルタグ】

Innovision社とAxcess社がCMOS ICの上にプログラムを書き込んで複数の周波数・複数のプロトコルに同時に対応するタグを開発する環境を提案していた。このようなタグのビジネス上の価値についてはちょっと判断がつかないが、副作用として懸念されるのは暗号機能を持たないGen2のような規格のセキュリティ。Gen2規格では製造者が書き込みユーザーが上書きできないタグIDをユニークキーとして使おうという動きが一部にある。もちろん「エミュレートできる環境が出てくるまでのつなぎで」という保留はあったのだが、CMOSタグのような製品が出てきたということは前提条件がすでに崩れてしまったことを意味する。それどころか、タグの製造過程での個体差を使うようなセキュリティも、タグのメモリと論理回路でエミュレートできるものなら意味を持たなくなってしまう。タグのセキュリティはやはりそれなりの強度を暗号を使うという正攻法で行くしかないのではなかろうか。

【ベンダ別トピック】

[Convergence Systems Ltd (CSL)]

Dscn0332 RFID Updateの記事を元に先日エントリを書いた読み取り距離7メートルのハンドヘルドリーダーだが、会場で実物を見ることができた。1.2kgという重量だがバランスが良いのかそれほどの重さには感じない。アメリカ、ヨーロッパ、日本のそれぞれの認定を取っており、販売を開始している状況とのこと。

まだ計画中とのことだったが、同社のRTLS製品と組み合わせたバージョン、GPS/GPRS機能を内蔵したバージョンがラインナップに入っていた。これらの機能を持つことでリーダーの現在位置を取得できRTLS的に利用することができるはず。

[Q-Track]

中波帯(AM, 530-1710kHz)の電磁誘導効果を用いたRTLSという独自製品を紹介していた。この製品の特徴は金属が多い環境で確実に動作することで、同社の主なターゲットは工場や発電所などとのこと。読み取り距離は30~60mで精度は30cm~1mと通常の環境で利用するのであれば超音波RTLSとほぼ同等。

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