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2008/11/10

Active RFID, RTLS & Sensor Networks 2008

Dscn0334 ダラスで開催されたActive RFID, RTLS & Sensor Networks 2008に参加してきた。参加者は80人程度、展示ブースの出展ベンダーは17社とそれほど大きな展示会ではなかったのだが、とても興味深い内容だった。クローズド・ループ用途、独自規格という見方がなされがちなアクティブタグ分野だが、「環境エネルギーを使い一次電池を使用しないタグ」「標準プロトコルとしてのIEEE 802.15.4」という二つの技術を抽出して中期的なトレンドを描いて見せたのは感心した。これらは技術要素としては知っていたがアクティブタグの要素としては個人的にもノーマークだったしRFID JournalやRFID UpdateなどのRFID業界紙で取り上げられることもほとんど無かったはず。

業界別事例として取り上げられたもののうち圧倒的に多かったのは病院向けシステム。提案された製品やソリューションを見比べてみると、それぞれの個性を持ちながら病院向けシステムとしての共通のコンセプトを持っており、この分野ではいわゆる「キャズム」を超えたのではないかと感じさせる。逆に言えば他の分野は、例えば何かと話題の多いアセット管理であっても、先進ユーザーとベンダーが手探りで取り組んでいるという状態は脱していないのだろう。

余談に近くなるが中国系の発表者が多かった。欧米企業の中国の拠点だったりアメリカの大学教授だったりで必ずしも中国地域の産業のレベルを代表しているわけではないのだが、インド系の発表者がほとんどいなかったこともあり印象に残った

それぞれのセッションが25分と短く、またセッションの内容が互いに重なるものも多かったので、いつものセッション別ではなくいくつかにまとめてコメントを。

【環境電池(光、温度差、振動)】

僕は従来アクティブ・セミパッシブタグの電源はせいぜいシート式の1次電池までしか想像していなかったのだが、光、振動、温度差などの環境エネルギー(Ambient Energy)を使った製品についてかなりまじめな研究がなされていた。Ambient Systems社、Dust Networks社はタグ全体の設計を、National Semiconductor社、Holst Centre社、Cymbet社、Infinite Power Solutions社は電池の設計を(環境エネルギーは安定しないため二次電池の併用が必須となる)、それぞれ発表していた。

実現までには発電ユニットや電池も含むワンチップ化といったハードウェアインテグレーション、そして省電力を前提としたプロトコルの開発などまだまだやることが残っているが、印象としては極端な未来の話という感じは受けなかった。関係者は印刷タグと同程度の尺での開発スケジュールを考えているのではないだろうか。

【IEEE 802.15.4(ZigBeeの物理層)】

今回の発表者の中で、Ambient Systems、Dust Networks、Jennic Ltdといった企業が通信プロトコルとしてIEEE 802.15.4を採用していると発表している。IEEE 802.15.4はZigBeeで利用されている物理プロトコルの規格。測位に使うには筋が悪いプロトコルと言われ、実際Ambient Systemsは測位に使うなら精度は10mと発表していたが、低価格・低消費電力である点に注目されているという印象。但し、802.15.4はあくまで物理層の規格であるため、準拠している製品の間で相互運用性が保証されるわけではない(この点がWiFiと違う)。製品間の相互運用性についての話題は出なかった。

また、decaWave社はIEEE 802.15.4aを利用したRTLS製品のロードマップを発表していた。この規格はZigBeeのプロトコルをUWBの電波の上で動かすためのもの。測位精度や電池寿命などはUWB RTLSとしてほぼ標準的なものだが、読み取り距離が見通しで最大500mという異常な値が出ている(現行のTimeDomainやUbisenseの製品はせいぜい100m程度)。プレゼンでは各国電波法との関係も説明していたのだが時間が短く充分理解できなかった。正式出荷が始まるのは2010年第1四半期とのことなので、何か隠し玉があるのかもしれない。

【CMOSマルチプロトコルタグ】

Innovision社とAxcess社がCMOS ICの上にプログラムを書き込んで複数の周波数・複数のプロトコルに同時に対応するタグを開発する環境を提案していた。このようなタグのビジネス上の価値についてはちょっと判断がつかないが、副作用として懸念されるのは暗号機能を持たないGen2のような規格のセキュリティ。Gen2規格では製造者が書き込みユーザーが上書きできないタグIDをユニークキーとして使おうという動きが一部にある。もちろん「エミュレートできる環境が出てくるまでのつなぎで」という保留はあったのだが、CMOSタグのような製品が出てきたということは前提条件がすでに崩れてしまったことを意味する。それどころか、タグの製造過程での個体差を使うようなセキュリティも、タグのメモリと論理回路でエミュレートできるものなら意味を持たなくなってしまう。タグのセキュリティはやはりそれなりの強度を暗号を使うという正攻法で行くしかないのではなかろうか。

【ベンダ別トピック】

[Convergence Systems Ltd (CSL)]

Dscn0332 RFID Updateの記事を元に先日エントリを書いた読み取り距離7メートルのハンドヘルドリーダーだが、会場で実物を見ることができた。1.2kgという重量だがバランスが良いのかそれほどの重さには感じない。アメリカ、ヨーロッパ、日本のそれぞれの認定を取っており、販売を開始している状況とのこと。

まだ計画中とのことだったが、同社のRTLS製品と組み合わせたバージョン、GPS/GPRS機能を内蔵したバージョンがラインナップに入っていた。これらの機能を持つことでリーダーの現在位置を取得できRTLS的に利用することができるはず。

[Q-Track]

中波帯(AM, 530-1710kHz)の電磁誘導効果を用いたRTLSという独自製品を紹介していた。この製品の特徴は金属が多い環境で確実に動作することで、同社の主なターゲットは工場や発電所などとのこと。読み取り距離は30~60mで精度は30cm~1mと通常の環境で利用するのであれば超音波RTLSとほぼ同等。

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コメント

先週はお疲れ様でした。
RTLSの事例としては、やはり病院向けの事例が圧倒的に多かったですね。
今後もブログ楽しみにしております。

島藤

投稿: 島藤 | 2008/11/11 00:58

>島藤さん、

ダラスではありがとうございました。今後ともよろしくお願いいたします。

RTLS事例の件なのですが、WhereNet社などはそれなりに導入事例を持っているのに出てこないというのは、RFID業界系の展示会を販促の場としてはもはや考えていないのかもしれませんね。自分たちの強みはアプリケーションで、要素技術としてのRTLSを出展しても技術に特化した新興ベンダーには勝てないと。
この仮説が正しいなら、病院システムはそれなりにベンダーの数が揃って比較が出来るようになったので、販促の場としての価値があると判断して出展しているということなのでしょう。

投稿: Koi | 2008/11/11 20:11

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