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2008/10/01

RFID Europe 2008 (Day 1)

RFID Europe 2008に参加している。これは調査会社IDTechExが主催する展示会であり、RFID Journal LIVE! Europeと並ぶヨーロッパ最大のRFID展示会とされている。去年の参加者は300人ほどだったそうだが、本日講演ホールにいた聴衆は150人ほど、展示会の会場にもある程度の人数がいたので、今年も同程度の人数の参加だったのだろうか。

会場はイギリスのケンブリッジ。ケンブリッジ大学の講堂を借りてのものでちょっとミーハー心がくすぐられる。IDTechExがケンブリッジに本社を置いているのでこういうことができるのだろう。

セッション

Dscn0291 初日の講演のテーマはEnd Users。エンドユーザの立場で25分づつの持ち時間を使って発表を行っていく。持ち時間がやや短めで、多くの発表者が自社や業界の説明にも時間を使ったため、「もうすこし詳しい話を聞きたい」と思うものが多かった。

BGN (Boekhandels Groep Nederland)

オランダの書店チェーンによる店舗内でのアイテムレベルRFID導入事例。有名な事例で日本語のメディアでも何回か取り上げられていたのでシステムの概要は知っていたが、今回の発表では導入の裏側にあるコンセプトまで踏み込んでいたのが面白かった。BGNはリアル店舗でオランダ1位、インターネット販売でも2位の会社で、リアル店舗とインターネットを統合した顧客経験("brick and click"というちょっと変わった用語を使っていた)を融合していきたいと考えており、リアル店舗ではソファーでコーヒーを飲みながら目に付いた本を読むという体験を通じ、インターネットでは高度な検索機能を通じ、それぞれ購買意欲を刺激したい。それを統合するためには、インターネットからリアル店舗での本の所在を検索できたり、リアル店舗内のキオスクに本をかざすことで各種の検索が行える機能が必要であり、そのためにはRFIDによるリアルタイムの位置情報が極めて重要になる、というのが彼らの主張。
非常に面白いコンセプトだと思ったが、それを店舗内のオペレーションにどのように落とし込むかの部分がちょっと説明が足りなかったのが残念。

Container Centralen

デンマークの園芸用陳列棚のレンタル会社。顧客が店頭で使う陳列棚および一般的なリターナブル器材(ドーリー、トートなど)をレンタルしている会社であり、オペレーションに問題を抱えている。器材の棚卸に人手が取られる、年率5%~8%のシュリンケージが発生するというのは良く聞く話だが、安物の偽の器材を代わりに返却されるというのは今まで気づかなかった問題だった。そのほか同社がレンタル業者からロジスティクスプロバイダに業態を変更したいということもあり、2年間パイロットを実施した結果が良好だったので本格導入を決めたとのこと。

Laing O'Rourke

建設業バリューチェーンの研究報告。Swansea大学との産学協同事業ということで、産学協同プログラムKTP(Knowledge Transfer Partnership)の説明から入った。RFIDの利用テーマは二つで、最初はプレキャストコンクリートの識別。従来の紙ラベルでの識別に比べ、はがれてなくなってしまうことが無い、取り付け後も読み取ることができてトレーサビリティーの確保に役立つ。UHFタグを用い、取り付け成功率98%、読み取り率100%を達成したとのこと。もう一つはアセット管理であり、工事現場で紛失しやすい小型の工具をRFIDを用いて管理するというもの。従来アクティブタグで管理していたものをUHFパッシブタグに置き換えることで読み取り精度が上がったとのこと。
他の用途も含め、建築業界はRFIDの導入により改善できる業務が多数あると報告していた。

Scanology BV

ユーザ企業ではなくRFID・バーコードソリューションのSIベンダである。RFIDのニーズはセクターごとに多様化し、Gen2システムでは対応しきれないといことでいくつかの技術の説明を行った。
HF Magellan PJMは13.56MHz帯の新しいエアプロトコル。読み取り速度が毎秒500個に達し、スケーラビリティーや信頼性も向上した。ISO 18000-3 Mode 2やEPCglobal HFとしての標準化も進み、ダイヤモンドのトラッキングやドキュメント管理などの用途が想定されている。
I-PXは複数の周波数帯で利用されている独自プロトコル。UHF版はMarks & Spencerのアパレル案件で使われている。特定の業界、たとえばスポーツのタイム記録や自動車の電子ナンバープレートなどにフォーカスを当て、導入実績を積み重ねている。
アクティブタグ業界は成長しており、タグの価格の低下や電池寿命の向上(5年以上に)などの改善が見られる。現在の主要な用途はクローズループでのアセット管理であり、その一例としてPelican Case Solution社がIngecom社の2.45GHz製品を採用しているものがある。
RFIDとセンサーの組み合わせでは、GPS・温度・ショック・湿度などを組み合わせた製品が広がりつつある。データ形式は製品間で標準が無いため、Smart Active Label ConsortiumやISOなどの場で議論が行われている。また、リアルタイムでのデータ取得が重要視されるようになり、携帯電話(GPRS)のほか価格が低下している衛星電話ネットワークを利用する製品も増加している。将来はRFIDの応用という枠組みを離れて成長していくだろう。

Marshall Aerospace

世界最大の航空機整備会社。ケンブリッジ郊外に広大な飛行場併設の工場を持っている。この施設内でUbisenseのRTLSシステムが利用している。燃料タンクのテスト用設備が2つあり、その設備の間でテスト器材を共用しているのだが、30個ある器材がどちらのテスト設備(あるいは製造設備)にあるのかがわからず、作業効率が落ちていた。RTLSシステムを導入してどの器材がどこにあるのかをリアルタイムで把握できるようになったということ。
導入エリアは限られており、テスト設備は30m×54mにリーダーが10個、製造設備は35m×15mにリーダーが6個とのこと。トライアル的な位置づけなのだろう。

University of Cambridge, The Intelligent Airport

産学官連携によるWirelessテクノロジーの空港での利用に関するプロジェクト。RFID技術というよりも無線・有線を統合した通信インフラの話が中心だった。空港内で発生するデータ通信は、ビデオカメラ1500台、高解像度ディスプレイ500台、生体スキャナ500台がそれぞれ10GByte/secという莫大な通信データを生成し、他のデータを合わせると平均で66GByte/sec、ピーク時には100GByte/secに達するとのこと。現行のイーサネットインフラでは破綻するためMOOSE(Multilayer Origin-Organized Scalable Ethernet)というMACアドレスベースのスイッチング処理をするインフラを開発した。MOOSEではスイッチにぶら下がった機器のMACアドレスを付け替えることでMACアドレスベースでのヒエラルキーを構成し、ネットワーク内に8,000個のスイッチをサポートできるそうだ。

Lyngsoe Systems

香港・ミラノ・リスボンにRFIDを用いた手荷物処理システムを導入したベンダ。手荷物のハンドリングは簡単なものではなく、近接してリーダーを通った貨物の識別(Singulation)、金属製ケースへの対応などが必要とのこと。同社はこの問題に取り組むため、デンマークに本物の器材を設置した専用のテストセンターを持っているとのこと。読み取り精度は2000年の94%から今日の99%まで着実に向上している。

Progressive Gaming International Corp.

カジノ向けRFIDシステムのベンダー。カジノでのRFIDの利用の中心はテーブルゲームである。スロットマシンの管理は完全にネットワーク経由の集中管理になっているが、テーブルゲームはそうではない。リアルタイムのデータは取れないし、勝ち負けはディーラーのテクニックに依存する。さらにチップのやり取りも主導であるため盗難や騙しが入る余地がある。現在カジノの成長市場であるアジアではテーブルゲームの人気が高いため、この分野へのRFIDの導入が急務。
テーブルゲーム用のチップには15年前から長波帯(125kHz)の規格があるが、テーブルでの利用には向かない。テーブル上には1000個~2000個のチップが置かれており、それが重ねられるので、読み取り速度が遅く重なりにも弱い長波帯製品では対応できない。そのためにHF Magellan PJM技術を利用したチップを開発し、すでに商用導入が始まっている。不正の防止や業務の自動化などを通じ、6ヶ月で投資を回収できるとのこと。

Academic Medical Centre

先日大きなセンセーションを呼んだJournal of American Media Association (JAMA)への投稿、RFID製品のEMIがエマジェンシールームの機材に干渉するケースがあるという論文を書いた研究者。この人選はさすがというかRFID Journal系のイベントだと無理だろうなーという気がする。実際に自分で導入を検討する段になって先行研究が無かったので自分で調査した、一般の病室ではなくエマジェンシールームでの試験の結果である、過剰に騒いだのはメディアであって研究者に矛先を向けないで欲しい、その一方で標準の作成は必要でありRFID業界の中に試験結果を無視しようとする動きがあるのは残念だ、という内容の話をしていた。個人的にはどれももっともな話だと思う。

Royal Alexandra Hospital

病院内で利用する器材管理用のRTLSシステムの導入レポート。Gen2製品はEMIのリスクが大きいのでWiFi製品を選らんだということで、病院系のRTLSにWiFi製品が多いのはこの理由もあったのかと改めて腑に落ちた。CiscoとAeroscoutの製品を利用して、制度は+/- 5m程度とのこと。

St. Olavs Hospital

病院で利用する衣類のクリーニングの管理をRFIDで行う事例。従来の管理では回転が遅く衣類を返却しないところも多かったため、それぞれの衣類にRFIDタグを取り付け、衣類棚をスマートシェルフ化、返却口にリーダーを取り付けた。管理対象と比べて重装備に見えるが、投資対効果は出ているとのこと。

MBBS SA

過酷な環境で動作するRFIDタグということで、金属ケースに格納した長波タグ(30kHz-135kHz)製品を紹介していた。この会社はチップ・タグ・リーダー・ソフトウェアのすべてを自社開発しているとのこと。病院での器材管理やコンクリート埋め込みの事例を説明。

U.S. Navy

弾薬類の寿命管理をRFID・センサーで行う事例。軍需品は苛酷な環境で輸送・保存されるが、そのような環境の下では劣化が早く進む。従来は劣化の影響を大き目の物流単位ごとに見ていたのだが、その場合には影響を硬めに見ると使える製品を廃棄するリスクが、甘く見ると誤動作のリスクが、それぞれ高まってしまう。
よって、弾薬自身にセンサーとRFIDタグを持たせ、弾薬自身が自分の寿命を管理できるようにするというSSMD(Self-Sensing and Moniroring Devices)コンセプトの導入を検討している。現在の最大の課題は弾薬の寿命である25年間動作し続ける電池を開発すること。
非常に面白いコンセプトであり、民間への影響も含めて注意しておく必要があると思う。また、バッテリーの開発などの関連技術も民間器材への応用があるだろう。

展示

Dscn0292 ブース数は20個と少なめだったが、全般に活発な商談が行われていた印象。展示の中で一番面白かったのがFriendly RFIDというイギリスのベンチャー企業。従来のパッシブRFID技術とアクセス方法を変え、「自分のIDが呼ばれた場合にだけ返答する」というタグを利用することで、プライバシーの問題を極小化しようというもの。一見無茶に見えるが、多くのユースケースではタグIDがASNなどで事前に送られてくるわけで、これはこれで意味がある方法ではある。
このアプローチのキモはもうひとつあり、この機能を持つタグは2,000トランジスタで作成できるため、13.56MHz帯で動作する場合には印刷による製造が視野に入ってくること。既存のタグと全く互換性がないためすぐに導入が始まるとは思えないが、Printed RFIDの適用事例としては実現性が高いのではないだろうか。

Networking Gala

Dscn0298 参加者の懇親イベントとして夕食会が開催された。場所は会場よりもちょっと古めのカレッジの広間。とても雰囲気のある場所で楽しかったのだが、席についてコースが出てくるスタイルだったのでネットワーキングにはどうだったかな。まぁ、食前に長めのバータイムが取られていたのだが。

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