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2008/09/24

RFID in Manufacturing / Oliver Gunther他(著)

製造業のRFIDの利用は外部からでは様子が窺い知れない。特に製造現場での利用方法は各社の競争力に直結する企業秘密だという意識が非常に強いのではないかと思う。サプライチェーン業界やヘルスケア業界で行われているような事例のオープンな分析は行われていないし、業界紙の記事を読んでみても技術的な工夫は分かるが業務の中での位置付けがいまひとつ見えてこない。そんな問題意識を持っていたところにこの書籍がRFID Journalの書評で取り上げられているのを見つけ、早速注文した。この本はドイツの大学教授とSAP・HYDRAというソフトウェア会社の研究者の共著になっている。SAPについては説明は不要と思うがHYDRAというのは製造実行システム(Manufacturing Execution Systems, MES)の大手らしい。検索してもあまり日本語の記事が引っかかってこないのであるいは日本では広まっていないコンセプトかもしれないが、ERPと生産制御システムの橋渡しをするアプリケーションのことらしい。

この本はB5サイズで150ページほどと非常にコンパクトにまとまっている。SAPやHYDRAを導入済みの、主に自動車部品業界のドイツの製造業6社のケーススタディーの結果を踏まえて製造業でのRFIDの利用方法を考察する、という構成になっている。上に書いたように製造業でのRFID利用の具体的な動向を知りたいというのが購入の目的だったのだが、その意味では期待が外れた。導入にあたっての具体的なノウハウや、数値に基づくコストや利益の説明はほとんど含まれていない。かなり概念的なコストの構造や導入のメリット、またバーコードについての比較などで、正直なところ読み終わって何か身に付いた、という感覚はなかった。

が、考え直してみるとこういう書籍こそがまさに求められているものではないか、ということに思い至った。現時点では製造業へのRFID導入のメリットは上に述べたようにほとんどオープンに語られておらず、これは言うまでも無く導入の大きな障害になっている。そうであれば、議論のフレームワークをまず作り、その上に公開可能な情報を積み上げていくことが必要なのではないか。この書籍はそのための情報はきちんと提供している。製造業での社内利用が先行していると言われる日本にこそ、本当はこの種の書籍が必要なのかもしれない。

ちなみに、この本が提示している製造業でのRFID導入メリットは以下のようなもの。製造業全体をカバーするのであればやや偏っているかもしれないが、それなりに広い範囲を見ようとする意図は感じられる。

  • 作業対象からのデータ読み取り(スキャン)の高速化
  • 品質改善・作業効率化のためのデータ読み取りの拡大
  • リコール対象の限定のためのデータ読み取りの拡大
  • 紙でのデータ管理の削減
  • アセット位置管理の自動化
  • バックエンドシステムへのアクセスの削減
  • ラベルの統一

ISBN: 3540764534 / $59.95

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2008/09/15

RFID World 2008 (Day 3)

RFID World 2008の3日目のレポート。午前は業務がらみの商談がありブースを中心に廻った。セッションのほうは気をつけるべきものは無いと思っていたのだが、後でパネルの参加者をふと見ると見ておかなければいけなかった名前を発見。オリジナルのパンフレットにも折込の修正用紙にも名前が載っていなかったのでぜんぜん気づかなかった。こういう運営をされると本当に困る…。

展示ベンダーもきちんと商談はしていたものもRFID Worldに合わせて派手な新製品発表を持ってきたというところはあまり見あたらない印象を受けた。実際にはいろいろ細かな発表があり報道はされている(RFID Update: RFID World 2008 Announcement Wrap-Up, Part 1 / Part 2)。正直、このレベルだったら情報収集のために日本から出かける意味はあまり無いような気がする。

ブース出展ベンダ

[eviga]
ISO 18000-7、つまりSaviの433MHzアクティブタグの互換製品を提供するベンダー。DoDの調達にも応募するという報道があり、パンフレットにもDoD 18000-7 RFID equipment guidelinesに対応しているとなっていた。展示されていた製品はSaviのそれとほぼ同等のもので、DoDの調達に応募するために作業してきたのならそれも当然なのだが、商業利用もできるということでRFID Worldに出展したそうだ。Saviとの違いはカスタムチップ(ASIC)を使って大幅なコストダウンが可能になったことらしいが、そのあたりまではちょっと突っ込んでは聞けなかった。

[METALcfaft]

名前のとおりGen2メタルタグのベンダーなのだが、Omni-IDのような特殊なアンテナ技術を持っているわけではなく、金属環境で読めるようにするテクニックはウレタンのインスレーター、ハードケース、フラッグなどの一般的なもの、ただこれだけのソリューションが一社で揃うというのはなかなか便利だと思う。この会社の売りの一つは印刷の強さで、普通にプラスチックの上に印字したように見える文字やバーコードがカッターナイフで削ってもまったく傷も付かない。

[富士通フロンテック]

今回出展していた日本企業は日立、東芝テックに富士通フロンテック(OMRONと日立アメリカは日本人のいないブースを出していた)とちょっと少なめ。その中でも富士通フロンテックは日系に限らず全ブースを通して一番忙しそうにしていたブースで、OMRONの知り合いから紹介されていたので挨拶しに行こうと思っていたのにいつ行っても接客中だった。
今回彼らが持ち込んだのはソフトリネンタグでそれ一本に展示を絞っていた。6cm×1.5cm×1.6mmというサイズで、シリコンゴムにタグを埋め込んだ形になっている。この種の形状のタグは世界を見回しても他に例が無いらしく、ユニフォームに限らないいろいろな引き合いがあったらしい。この展示会までは海外での売り上げはたいしたことは無かったそうだが、これを機会に大いに海外に進出してくれると楽しい。

午後はセッションに参加。どちらも時間枠は50分になっていたのだが、講師は30分で準備してきたようだ。2つのセッション両方ともそうだったので運営ミスではないかと思う。

Mixed-Mode Passive RFID/Active RTLS in Transportation

Zebraによる発表。このテーマなのでGen2製品とWhereNet製品の組み合わせ方を説明しているのだが、MojixやPINC Solutionsなどの最近のブレークスルーを踏まえたものになっていなかったのは残念。
この発表ではRFIDの技術を以下の3つに分けていた。

  • Presence : 精度が10m以上でリーダーの読み取り範囲に存在、WhereNetやWiFi RSSI
  • Proximity : 精度が1m~10mでリーダーの読み取り範囲に存在、WhereNetやGen2
  • Location : 精度が1m~3mで三点測量。USB、WhereNetやWiFi TDOA

レンタカーの管理システムを例にとり、ゲートの通過や洗車場の利用はProximity、車両の位置管理はLocation技術で、と、終わってみれば当たり前の内容だった。

Inexpensively Deploying High Value RFID Projects in Manufacturing Facilities

プレゼンテーションスライドでのタイトルは"The Value of Simple RFID Projects"。内容はそのものずばりで、特に既存の基幹システムとのつなぎこみをせず単体で動作しながらも高い価値を持つアプリケーションを作って使ってみようという内容。
"No-Software" RFID Applicationというテーマでは、ある場所にモノが存在することだけを確認するアプリケーションで、リーダーのフィルター機能を設定することでアプリケーション不要で利用できるというもの。機材が正しい場所に置かれている、機械に正しい部品がセットされている、など、このようなシンプルなアプリケーションでも気をつけてみると高い価値を持つ用途が存在する。
"Software Lite" RFID Applicationというテーマでは、何かの数/分量を数えるアプリケーションということで、リモートでの在庫管理や、在庫の先入先出し/貯蔵期間管理をテーマにしたもの。ここではERPとデータを連動させないというのがキモ。一種の通い箱管理のソリューションを例に挙げていて、トレイの置き場にリーダーを設置、使用できトレイにはタグ付きのクリップを挟んで置き場に置き、使うときにはクリップをはずして金属製の箱に入れる、それでトレイの在庫状況をリアルタイムで確認できる、というもの。
とにかく1つか2つのリーダーを買っていろいろ試してみようというのが結論で、個人的にはとても共感した。日本人の、特に製造業畑の人にとってはこういうのは外道もいいところで、システムを入れずにカイゼンで対応するのが正しいという感覚なのではないかと思う。それが違うなどとは僕はとうてい言えないが、別の対応方法もあってよいのではなかろうか。

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2008/09/11

RFID World 2008 (Day 2)

RFID World 2008の2日目のレポート。ブースでの展示については3日目のレポートと合わせて書く予定。

[プログラム未記載の冒頭セッション]

主催者による簡単な挨拶かな、と思っていたら40分ぐらいのセッションだった。このあたり今回のカンファレンスではセッションの運営の不手際が目立つ。世界経済の概況から始まってマーケットソリューションのトレンドなどを説明。始まり方がイレギュラーだったのでメモをほとんど取ることができなかったが、これからしばらくのRFID業界のトレンドとして「コンサルタントがソリューションを開発する状況が続く」「合併によりベンダーが集約されていく」「大手企業が過大投資に苦しむ状況が続く」「新興企業が既存の製品を置き換える新しい製品を開発していく」という4点を挙げていた。

RFID and Cosumer Experience

Dscn0279 カスタマーエクスペリエンス系の製品を提供しているベンダーによる座談会。TimeDomainやAlienとかのおなじみの名前も並んでいたのだが、Total Immersionというベンダーがとりわけ目を引いた。動画の中に含まれる2Dイメージを認識し、その上に3Dイメージを貼り付けるもので、デモでの展示は自動車のカタログをビデオカメラで撮影すると、ディスプレイ上にはミニカーのような3Dイメージがカタログの上に乗っかっているように表示される。3Dイメージのサイズや向きはリアルタイムで自動的に処理され、実物が載っているのとまったく区別が付かない。しかもスーパーコンピューターではなくノートPCで処理している様子だったのが凄い。RFIDに直接関係無いといえばそうなのだが、スマートミラーの主要技術になるだろう。
議論の内容自体は座談会形式ということもありそれほど強い印象を受けた点は少ない。このテーマでは欠かせないプライバシーの問題については、一社でプライバシー問題の啓蒙を引き受けられる会社は無く、業界全体での啓蒙が必要ということ、また、Webでのクッキーの利用などを例に挙げ利用者は理解してくれれば利便性と引き換えに一定のプライバシーを提供することを拒絶しないのでは、ということを述べていた。

RFID at American Apparel / From Evaluation to Action

プログラム上は二つに分かれていたのだが実際にはほぼ一つの発表になっていた。前半はMotorolaの発表者によるRFID全体に関するもので、サプライチェーンでの利用にこだわらずに投資対効果を持つクローズループでの利用を目指すべきということでアセット管理を挙げた。それに利用される技術の現状については、"Validating the application, not the technology"、"Buying solutions/solution sets,  not a product"という表現で、要素技術は成熟しているのでそれをソリューションにまとめる部分に注意すべき、と述べていた。また、2008年にはこの種のアプリケーションの導入は先行導入者からフォロワーに移るので、フォロワーは先行導入者の経験を丁寧に調べることが重要とのこと。

American Apparelの発表は内容はRFID in FASHIONのものとほぼ同等(スライドなどは別のもの)。全米240店舗のうちニューヨークエリアの20店舗とサンタモニカの1店舗にはRFID設備を導入済みで、工場でのソースタギングも開始している。10月には全米の残りの店舗に導入を行うと。

Panel: RFID Security Should Not Be an Afterthought

RFID Security Allianceという団体によるセッションで、名前のとおりRFIDベンダーによるセキュリティーを扱っている。前半はスライドを使ったプレゼンテーションで、以下のような興味深い内容だった。

  • RFIDのセキュリティに関する攻撃パターン(Man-in-the-MiddleとかCode InjectionとかITセキュリティの知識のある人にはなじみの用語が並ぶ)
  • RFIDの物理特性をに依存したセキュリティを無効にする方法、たとえば書込み禁止のタグでもコピーを読み書き可能なタグに作成してから操作ができる
  • RFIDタグの挙動をソフトウェア的にエミュレートするSoft Tagという概念を挙げ、代表的な製品としてRFID Guardianを紹介

座談会で語られた内容のうち特に印象に残ったのは、50年以上使われてきたRFID技術で今なぜセキュリティーが大きなテーマになっているかという点に対し、消費者が直接利用するアプリケーションが普及し始めたこと、それを含め攻撃する価値のあるアプリケーションが増えてきたという回答。

Asset Tracking and Yard Management: An Integrated RFID Distribution Solution

PINC Solutions社によるGen2タグと構内作業車両を使ったヤード内RTLSシステム。今回は報道済みの事例の発表であり、基本的な内容については以前にエントリを書いた(Yet Another Gen2-based RTLS (PINC Solutions Yard Hound))。

その時から気になっていた精度だが、左右の駐車ロットの単位までは取れるそうだ。後はヤード管理アプリケーションの方で補正するらしい。なお、タグはGen2規格であるが、手のひらサイズのハードケースに格納、磁石でトレーラーに取り付ける。

How RFID Workd in Practical Environment

輸送分野でのRFIDの用途を羅列したもの。特にストーリーのようなものは無く要約が難しい。全体の感想としては、GPSタグへの言及が多く、それに見合って期待も強いように見受けられた。羅列された用途は以下のようなもの。

  • Truck Tracking
  • Container and Trailer Tracking
  • e-Seal Tracking
  • Driver Security
  • Asset Tracking
  • Equipment RTLS - ヤード外での移動情報を取得することでオペレーションや機材利用の最適化を行うもの
  • Gate Operations - RFIDによる認証によりゲートでの処理を高速化
  • Dock Door Verification - 正しいドックドアに入ったかどうかをチェック
  • Pallet/Trailer Validation
  • Yard Management
  • Automated Container Handoffs
  • Reefer Monitoring

Container Tracking: Advanced Solutions Behind NAFTRACKS

SAVR Communications社によるNAFTRACKSというパイロットプロジェクトの報告。これはアメリカの運輸省が実施したもので、携帯データ通信と各種センサー・GPS、そしてe-マニフェストを格納するメモリーを搭載したタグを用い、アメリカのトラック輸送の実貨物をトラッキングすることで実際に業務上の価値があることを証明するというもの。全部入りと言っていいタグの機能もさることながら、OnAssetという管理アプリケーションの出来が出色。貨物・車両・鉄道のトラッキング・マッピングに加え、天気と道路状況のリアルタイム表示、センサー情報のモニタリングと問題が起こった場合の関連機関への警報の送信、さらに各種レポートの自動生成機能まで付いている。タグの利用料金は本体のリース価格と携帯電話の使用量を込みにして月額30~40ドルと機能に比べて無茶な値段ではない。
しかし、アメリカはこの手のスマートコンテナ系プロジェクト多すぎ。

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2008/09/10

RFID World 2008 (Day 1)

Las Vegasで開催されているRFID World 2008に参加している。RFID WorldはもともとはRFID Journal LIVE!をしのぐほどの業界最大級のカンファレンスだったのだが、Wal-Mart・国防総省によるMandateブームとその失速をうまく乗り切ることができず、ここ数年は低迷していた。今年はイベントの創立者のTimothy Downs氏をアドバイザーに迎えて立て直しを図ったという。余談ながらこの事実からもアメリカでのRFIDマーケットの拡大を感じることができると思う。

会期は3日間なのだが、初日の昼間はプレセミナーという位置付けて3つのセッションが開催されている。テーマはRFID for Managers、Food Traceability、LF and HF RFID Payoffという3つ。どれも面白そうなテーマなのだが、出張で来ているもので個人的な興味で業務に関係ないテーマを選ぶわけにも行かず(苦笑)、RFID for Managersを選択した。

RFID Success: how a fighter pilot's principles can help you succeed

Dscn0275 マネージャー向けセミナーということでRFIDのプロジェクト管理戦略の紹介。なぜ「fighter pilot's principles」かというと、アメリカのパイロット出身の戦術理論家John Boyd氏の戦場での意思決定理論OODAを基にしているから。OODAとは、敵の行動を監視し(Observe)、行動の方針を定め(Orient)、具体的な対策を決定し(Decide)、実際に行動するというサイクルを回していくというもの。管理サイクルとして有名なPDCAと比べ、流動的な状況で相対的な優位を占めることに目的が置かれている(参考: Wikipediaのエントリ(英語)ジョン・ボイドのOODAループ - 海洋戦略研究)。

直接RFIDに関係のあるネタでもなく、ユーザーのRFID導入戦略の説明に使うにはあまり適切ではないと思うのだが(ベンダーの戦略には実にマッチしている)、そういうネタをうまくプレゼンに使うあたりがアメリカのこの種のセッションらしい。

RFID Ecosystem: what you will see at the show, what you need to know

RFIDベンダーにどのようなタイプが存在するかをツーリストとスペシャリストという例えを用いて説明。ツーリストは、RFIDは導入候補の中の上位製品の一つであり、製品分野に特化している。RFIDを専門に扱い技術を売り物にするスペシャリストに比べ、導入例の幅や件数が少ないため付き合うべきではないと。
ベンダーの選び方については、常識的な内容の他に、お金をもらっている顧客の数が50以上であること、第3者によってパフォーマンスの評価を受けていることなど、興味深いコメントが含まれていた。

RFID 101: the types of RFID and flavors that apply to different projects

RFIDアプリケーションの種類とカバー可能な技術、それを提供するベンダーを表にして比較したもの。アプリケーションの種類としてはRTLS/Long Range Event Monitoring/Short Range Event Monitoringの3種類、技術としてはUWB、WiFi、その他アクティブ、セミパッシブ、UHF、HFの6種類。この組み合わせをさらにベンダーごとに細分化し、読み取り距離は標準の存在、技術の成熟度や価格などの項目ごとに比較したもの。あいにくスライドの文字が小さく記録に残せず、このあたり内容を詰めきれていないと感じる。

RFID Essentials: how it works and what training can deliver benefits

RFID Revolutionという小さなRFID教育会社が、同社の提供するe-ラーニングの教材を用いてアンテナの極性を説明するというもの。教材はわかりやすいもので、アニメーションを使って直感的にわかりづらい部分のある極性をきちんと説明していたのだが、教材自体の説明とごっちゃになってちょっと冗長になったのが残念。

RFID Systems Architectures and Sofware Applicatoins

RFIDミドルウェアの動向についての説明。RFIDミドルウェアの機能をWorkflow and Application/Shared Services/Device Management/User Interfaceの4つに、製品の志向をWorkflow/Integration/Device Control/Networkの4つに分類し、現在IntegrationとNetworking志向の製品はWorkflowに統合されて2極化しつつあると。
ミドルウェアの導入に成功するためには、プロセスとハードウェアのスコープをきっちりしておくこと、ユーザインタフェースのガイドラインを作成しておくこと、ソフトウェアデザインのワークショップを行うこと、ミドルウェアベンダーのサイトを確認すること、パフォーマンスを基にした契約を行うことの4点だった。

RFID Use Cases: how you can learn from previous RFID success

RFIDの現在の導入事例について報告。導入事例が多量にある分野は、サプライチェーン、アセット管理、仕掛品管理、セキュリティーおよび偽造防止、社員・車両のアクセス管理とのこと。

Building the RFID Business Case

RFIDを用いて実際に導入効果を出すための設計方法。目的を明確にした後に物理的な制約(取り付け対象の詳細、読み取り距離、読み取りの間隔、チョークポイントかフリーロケーションか)などを確認する。その後に物理特性やサイトのレイアウトなどを詳細化していく。
費用の見積もりの失敗例として具体的な内容が挙げられており、ハードウェアについてはリーダーだけを見てアンテナやモーションセンサーを忘れること、設計費用についてはネットワークや電気配線、ゾーンの設定、ワークフローの再設計を見逃すこと、タグについては単価の安さに目がくらんで必要な個数をきちんと把握しないこと、ソフトウェアについては課金単位がリーダーやCPUになることや、ライセンスの更新・保守費用を見逃すことが挙げられている。

RFID Support: how to keep the system working and optimized

RFIDに関係するサポートがどのようになるかを説明したもの。サポートの種類を、事前に計画して実施するもの、監視者が見つけて対応するもの、利用者が見つけて対応を求められるものの3種類に分け、それぞれの詳細な種類と内容を説明した。

Getting Started: how to build an RFID project plan for implementation

RFID開発で陥りがちな罠を避けるというもの。アプリケーションの難易度別に問題点を例示し、購入パッケージをそのまま利用するレベルでは、実績の無いベンダーを避けること、データフォーマットなどの微妙な違いを見逃さないこと、アプリケーションの統合とサポートを軽視しないことの3点。標準ソリューションをカスタマイズする場合には、業務をソリューションにあわせるために無理に変更しないこと、デザイン段階を軽視しないこと、計画されたマイルストーンをきっちり守ってプロジェクトを進めること。最後に新しい技術を使った難易度の高いプロジェクトでは、使用をはっきりと文書化すること、利用者からのフィードバックを早く頻繁に行うこと、仮定にもとづいてプロジェクトを進めないことであった。

全般に興味深いテーマを追いかけているものの、スポンサーのODIN社やRFID Revolutionの説明と、教科書的に進めるべき内容がごっちゃになって、やや散漫な印象を受けた。それなりに時間のあるセッションだったので、内容を分けることでメリハリのあるセッションにできたと思うのだが、惜しい。

The Annual RFID Awards

6つの分野に対して授与されるもの。今回の対象分野と受賞者は以下のとおりであった。

Excellence in RFID Implementation
PM J-AIT (Saviによるアメリカ国防総省および同盟国向けのトラッキングシステム)

Excellence in RFID Pilot
Kimberly-Clark Yard Management System (PINC社の製品を用いたGen2利用のRTLSシステム。以前にエントリを書いた)

Excellence in RFID Technology
Sensormatic iREAD (EASとRFIDを統合した小売業向けポータル)

Most Inovative RFID Application
SkyeTek Secure RFID Reader (目の不自由な人向けのRFID利用情報読み上げ器)

Protecting the Environment
Hawaii State Department of Administration Quality Assurance Division (RFIDによる食品トレーサビリティー)

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2008/09/06

コンテナ監視器材に見る安全保障分野でのコンプライアンスリスク(日本物流学会全国大会発表)

日本物流学会第25回全国大会でタイトルの発表を行った。要旨は下の通りで、以前にここに書いたHi-G-Tekのエントリ(The Great RFID Game)を踏まえた内容になっている。これから論文に仕上げ、上手く受理されれば来年発行の学会誌に掲載されることになるのだが、はて。

予稿(pdf形式)プレゼンテーションスライド(pdf形式)

要旨

アメリカ同時多発テロ以降、コンテナの物理セキュリティの主目的は、物流関係者の損害の最小化からテロリズムの防止を目的としたコンプライアンスへの対応へと変化した。テロリズム防止の対策内容は普通の国民の感情的な安心・納得を中心としたものになりがちで、費用対効果の観点はしばしば無視される。また、コンテナ物理セキュリティの中核であるコンテナ監視器材は低価格化・標準化が急速に進んでおり、安全保障目的の製品と民需用の製品の区別があいまいになりつつある。現時点ではコンテナ監視器材の商業輸送分野への利用義務付け検討の段階にあるが、安全保障目的の器材が利用実績や安心感を理由として利用が義務付けられ、不必要なコストの増大や運用上の問題を生じさせる可能性がある。本稿では、民需と同じ技術を用いたコンテナ監視器材が安全保障分野で導入されている事例を紹介する。

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2008/09/03

中国の農民工居住カードプロジェクト

RFID Journal誌の社説で、SCIENTIFIC AMERICAN誌にCASPIANのKatherine Albrecht氏の記事が載ったと編集長氏が怒っていた(An Unscientific Article on RFID and Privacy)。やーキャシー元気かしかし何でこのタイミングでSCIENTIFIC AMERICANにと思いながら該当の記事How RFID Tags Could Be Used to Track Unsuspecting Peopleを読んでみたが、どうも校正が入って事実に反する部分が修正されたまま無理やりオリジナルの原稿を掲載したような感じで、論理展開が良く分からない文章になっている。記事前半の、カナダ/メキシコ国境通過用の運転免許証にGen2タグを利用するプロジェクトは誰に聞いても不適切だと言う話なので、その線で押していけば良かったのに。

とまぁ、これは前置き。この記事の中でNew York Times誌に中国の国民IDカードプロジェクトの記事が載ったということを知り、検索してみたら記事が見つかった(China Enacting a High-Tech Plan to Track People)。SCIENTIFIC AMERICANの記事には「国民IDカードには職歴、病歴、出産記録、宗教、民族、雇用状況、大家の連絡先まで記録されている」と書いてあったのでええっと思ったのだがNYTの記事を見るとこれは正しくない。国民IDカードのチップに確認されているのは名前と生年月日ぐらいらしい(ついでだが全ての中国国民はこのカードの携帯を義務付けられているとのこと)。

だが、この情報が嘘というわけではない。上記の記事にある項目は、深セン市の居住カードに登録されているのだ。このシステムは深セン市単独のものではなく、国家公安部のパイロットプロジェクト。2008年8月に深セン市の港頭地区から開始され、3年かけて全市に展開、最終的には全国の大都市に展開し、恒久的な都市部の戸籍を持たない出稼ぎ農民を管理するために利用するとのこと(Computer Business Review: China Public Security Technology wins Shenzhen card system contractも参照)。

これほどの個人情報をICカードの中に持たせるというのはちょっと信じられない。いくら中国でもこれはセキュリティ・プライバシーの観点から異常だろうし、その認識があるからこそ国民IDカードの登録情報は常識の範囲に収まっているのだろう。対象は全国民ではなく農民工だけだから良い、ということなのだろうか(NYTの記事では1億5千万人とある)。うーん。

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