« RFID in Fashion 2008 (Day 1) | トップページ | RFIDはハイプサイクルの谷を越えたか? »

2008/08/16

RFID in Fashion 2008 (Day 2)

RFID in Fashion 2008レポートの二日目分。初日分は前のエントリを参照のこと。

二日通して参加してみた感想は、現時点では単独業界のカンファレンスとしてRFID Journal LIVE!と分ける意味は無いのでは、ということ。2年前に開催された初回はコンセプトの確認を目的とした実験の発表が中心だったが、今回は実導入を前提としたパイロットが中心。それ自体は業界の成熟であり導入の前進なのだけれど、どこの企業でもやっていることには大差が無く、そのくせ発表が企業別の縦割りなので飽きてしまった。このような形式でのカンファレンスを行うのであれば、テーマごとに深く切り込んだ内容、例えば在庫切れの防止であれば複数の導入企業でのテスト結果を比較して何が原因だったのかを議論するとか、そういうものを期待したい。

もう一つ気づいたことは発表者の偏り。17人のスピーカー・パネラーのうち8人がヨーロッパの人だった。現時点でのアパレルRFID導入の状況を如実に感じさせる。ちなみに日本を含むアジアからの発表者はゼロ。初回は三越の実証実験などが華々しく取り上げられていたことを思うとちょっと寂しいものがある。

Welcoming Remarks

本日の注意事項の説明。ちなみに今朝は8時半からセッションが始まる。参加者の数もまだ前日の半分ほど。

APPAREL Maker Manages Maternity Departments With Smart Displays in Stores

Tomorrow's Mother Maternityというメーカーの事例。ここは名前の通りマタニティーウェアのメーカーで、多くの百貨店と取引があるのだが、売上データを把握できないのが悩みの種だった。取引先の百貨店と交渉をしてもデータは自社指定の方式でしか渡せないと言われ、自社のシステム部門の能力ではまったく対応することができなかった。

この現状を打破するために同社が選んだのが、百貨店のPOSシステムを通さずに直接データを取得する方式。同社は商品を展示するためのラックを自社の備品として百貨店に配置しているので、そのラックにRFIDリーダーと携帯電話を組み込み、ラックに吊り下げられた商品のデータを一日数回読み取って携帯データ通信で自社サーバに送信し、自動補充システムで処理する。従来は納品担当者がその時点の在庫をFAXで送信するという手法に頼っていたが、それと比較すると在庫切れの減少により売上が25パーセント向上した。リーダーも携帯電話も電池で動いており、納品担当者が電池を交換していると。
個人的にはこういうアプローチがあったのかと目から鱗だった。日本でもすぐにでも応用できる事例なのではないだろうか。

The Issues that Face Retailers Adopting RFID

パネルディスカッション。小売向けシステムベンダTyco、ドイツのコンサル会社GCS、Avery Dennison、Motorolaの代表の4人が参加者だった。アパレル分野はRFIDを導入しやすく投資対効果がはっきりしている業界だとして、単価が高くコスト負担力があること、無駄な在庫の削減によって正価販売率を上げるという強力なビジネスケースがあること、値札というかたちでタグを取り付けるプロセスが確立しているといった点を指摘していた。これに関連した議論で興味深かったのが「RFIDは共通インフラなので多様な業務改善に利用できる」「タグの価格は将来的には1個5セントを狙いたい」というスーパー雑貨(FMCG)向けのRFID業界のコミットメントがアパレル業界に誤解を生んでいるのではないかというもの。

今後の導入の方向としては、ハンドヘルドリーダーだけで実現できる簡便なソリューションでも投資対効果は得られるのでそういうアプローチをすべき、という意見のほかにも議論があった。GCSの発表者によるもので、ドイツでは大手サプライヤーは自社内利用でRFIDのコストを回収するめどを付けつつあり、かれらが導入を始めることで導入が他のサプライヤーやリテーラーなどサプライチェーン全体に広がっていくと考えていると。本当かな、という部分はあるのだが、ドイツの動向には今後も気をつけていきたい。

Global RFID Supply Chain - From Sources to POS

Photo_081408_002 Checkpoint Systems社のヨーロッパ担当セールスディレクターによる発表。同社は最近のOATSystemsの合併がニュースになったが、元々は盗難防止システム(EAS)の大手ベンダ。同社の資産をRFIDソリューションとしてどう提供できるかということに着目したセッションになっていた。
一つ目に出てきたのはCheck-Netというビジネス。これはリテーラーの代理でサプライヤーに値札を送り、どの値札をどのロットに含めたかというのをリテーラーに返信するという機能を提供するものだが、これをスマートラベルに応用するというもの。値札がRFID対応になり、リテイラーにはロットに対応するSSCC/SGTIN番号が送信される。顧客の業務プロセスを理解しており、Check-Netという既存の強力なインフラを持っているために、競争力の高いソリューションになっているとのこと。
もう一つはEAS/RFIDの統合ソリューション。EASを実際い運用するためには誤検知の防止が非常に重要であるが、Gen2リーダーでは反射の具合で読めてしまうこと(Stray Read)があるので、EASでのノウハウを元にGen2 as EASソリューションの開発を行っていると。現在でもまだ試行錯誤中のようだ。
OATSystemの合併後の位置づけについてはコンセプトの部分だけをさらりと説明。まだ検討中の部分があるのだろう。

Karstadt - Improving Sales Floor Processes by Using RFID

Photo_081408_003 Karstadtはドイツの最大のデパートチェーン。デュッセルドルフ店の子供服部門で2007年からパイロットを実施している。RFIDインフラを使っていろいろな分野での投資対効果を図ろうというもので、他の発表とかなりかぶっている。発表も総花式だったので、正直言ってあまり興味を惹かれなかった。
技術面で気になったのは、スマートシェルフでは80箇所の棚を142個のアンテナで管理しており、これら全てのアンテナをiReadというシステムを使って一台のリーダーで管理しているとのこと。また、POSではEAS/RFID統合リーダーを使用し、EASの無効化とGen2チップのKillコマンドの発行を同時に行っている。
パイロットによる業務改善の効果は、入庫処理: 1時間→8分、棚卸: 80分→20分、価格管理: 足掛け2週間の作業4日→1日のうち2時間、などが報告された。

Mojix Showcases New Visibility to Retail Goods

Mojixによる10分強のStar Systemのデモ。最初に5分ほどシステムの説明で、Gen2タグを使ったソリューションでは、チョークポイントとハンドヘルドによる管理では取得できるデータは不完全だが、Mojix StarSystemを使うと完全なデータを取得できるとのこと。なお、同システムは現在FCC/ETSIの認定を取得しているが、日本での認定はまだ。

デモは会場内で20m弱離れた場所にあるタグを読むというもの。演台にアンテナ本体があり、客席に送信機eNodeが二つ置かれている。eNodeのサイズはLPレコードジャケットで5cm厚、本体は25cm×80cmぐらいか。機能から想像していたよりは小さい。Mojix StarSystemにはRTLSの機能があるのだが、デモで展示されていたのはタグIDのリストを表示する通常のもの。テストとしては微妙で、60個のタグがあったのに30個ぐらいしか読めておらず、スキャンごとに個数が変わっていた。20メートル先のタグが読めるのは分かったが、実力の全貌が見えたわけではなかったのが残念。

Fashion Designer Benefits from Tagging Apparel Items

NP Collectionというフィンランドのアパレルメーカーの事例。店舗はスカンジナビア、ロシア、オランダ、ベルギー、ドイツにあり、DCはフィンランド、製造は東ヨーロッパと中国でそれぞれ行っている。第一段階では製造業者の参加の上でDCでRFIDを利用し、第二段階では店舗での利用のほか3PL業者を巻き込んだ。地味に見える第一段階で在庫切れの30%削減と入庫作業時間70%削減で6ヶ月で投資を回収できる効果を挙げたというのは以外だった。発表では「わが社は業務プロセスではチャレンジャーだがアプリ開発ではチャレンジャーではないのでReady Made Solution Packageが欲しかった」と言っていたが、どういうパッケージだったのかは結局あまり分からなかった。

The Keys to Achieving Benefits from RFID Today

展示会3つめのパネルディスカッション。今回の参加者はEPCglobalのディレクターとアパレル企業Lemmi社のCIO、そして昨日一番面白かったセッションを勤めたRFID Sherpasの代表者。3つもパネルディスカッションをしてどうなるのか、と思ったのだが、このセッションはEPCglobalの立場を説明するというのが趣旨らしい。ただ、パネリストのディレクターはアパレル業界についてあまりコミットメントが無い様子で、HPの事例を引いてアイテムタグ付けのメリットを説明していたりした。RFID Journal LIVE!のような一般コンファレンスであればともかく、アパレル向けのコンファレンスではちょっと痛い。特にRFID Sherpas氏の話が非常に面白かったので、ぎこちなさが目立ってしまっていた。

RFID Sherpas氏のアパレル業界でのRFIDのユースケースはこのコンファレンスを通してほぼ実務家の一致した意見と感じられるものだったのでまとめておきたい。現時点ではユーザーの興味はどうしてもスマートミラーなどのインタラクティブリテールに向きがちだが、きっちりした投資対効果が見えているわけではない。サプライチェーン中のビジビリティーを向上させ、在庫切れによる販売機会損失や過剰在庫による必要以上のマークダウンの発生を防ぐことが現時点では最大の効果を生む。それに続くのが自動検品などによるオペレーションの省力化であると。

How RFID Help Italian Brand Names

イタリアのパルマ大学のRFID Labの教授Roberto Montanari氏によるセッション。このRFID LabはオートIDラボのことではない。同じようにRFID研究機関を持つ大学が提携したグループなのだが、オートIDラボが各国のエリート大学クラブといった趣があるのに対し、RFID Labは実業に近い大学という印象がある。ちなみにアーカンソー大学もRFID Labのメンバー、日本から参加している大学は無い。RFID Labは大学だけの機関ではなくメディアや企業とも連携しており、研究の委託と実施のプロセスなどを詳しく説明していた。
パルマ大学は実験施設として物流器材を持つRFID Labとアパレル店舗を模したRFID Fashion Storeを持っており、今回の展示では前者での実験結果を展示していた。CoccinelleやLey Tricotといったブランドの製品を基にしてソーターでの読み取りテストなどを行ったもので、ここまでの展示内容と毛色が違ったのでちょっと違和感を持ったが、考えて見ればもちろん重要な機能ではある。前半のRFID Labの説明に時間を取られたこと、実験のスポンサー企業との関係で詳細な結果を出せないとのことだったのだが、次の機会ではそのあたりの問題をクリアして今回以上のセッションを望みたい。

|

« RFID in Fashion 2008 (Day 1) | トップページ | RFIDはハイプサイクルの谷を越えたか? »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: RFID in Fashion 2008 (Day 2):

« RFID in Fashion 2008 (Day 1) | トップページ | RFIDはハイプサイクルの谷を越えたか? »