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2008/08/14

RFID in Fashion 2008 (Day 1)

ニューヨークで開催中の展示会RFID in Fashionに参加している。RFID JournalとAmerican Apparel & Footware Associationが共催するイベントで、名前の通りアパレル業界でのRFIDの利用を対象としている。対象業界を絞っている分小規模なイベントになっていて、会場はFIT(Fashion Institute of Technology)という大学の展示室と教室を利用したものになっている。

会期は8月13日と14日の二日間。今回は13日の内容を簡単にレポートしたい。

General Session: RFID Basics

Photo_081308_001 初日の前半(以下Building an RFID Business Caseまで)はRFID Journal Universityと題したセミナーになっていて、アパレル業界に限らない一般的なRFIDの知識を紹介するものとなっている。料金も申し込みも展示会本体とは別になっているので参加者も少なく、ほぼ20名ほど。
最初のセッションはRFID Journalの編集長Mark Roberti氏によるRFIDの基礎的な知識を紹介するもの。RFIDの定義から始まり、ハードウェア・ソフトウェア・ネットワークといった構成要素の説明やアクティブ・パッシブおよび周波数による違い、さらにはEPCglobalのミッションとスコープまでを1時間でまとめていた。教科書どおりの手馴れたセッションで、僕もこんな感じでRFIDの概要説明をこなせるようになりたいなぁと思ったのだが、その手馴れたセッションの中にちょろっと現在のアメリカの業界動向を感じさせるものがあった。

  • 標準的なタグの価格として説明されたのが、アクティブタグで20ドル、パッシブタグで20セント。どちらも実勢価格はもう少し安いと思うのだが、セミナーで触れられる数字はこんなものか。
  • パッシブ、アクティブと並んでセミアクティブタグの特徴を説明したが、その中で機能の例としてセンサーの搭載を挙げ、用途として冷蔵輸送に触れていた。
  • 周波数の特徴について、LF・HF・UHFは説明したが2.45GHzは説明しなかった。

The Physics Behind RFID

イタリアのパルマ大学の教授Rossano Vitulli氏が担当。周波数帯や波長という概念の説明から入り、周波数ごとの特性、パッシブタグの電力受け取り方式、タグの構造(チップ・アンテナ・サブスレート)、Near FieldとFar Fieldの違い、金属や水の影響などを丁寧に説明していた。
金属と水の影響については、水は一定以下の距離では常に悪影響を与えるが、金属の場合では特定の距離では逆に感度を上げる場合がある、でもその挙動を予測するのは困難という説明で、ニュースからそうだろうと考えてはいたが実際に整理してもらうとすっきりした。もう一つ役に立ったのはEIRPとERPの区別。僕はごっちゃにしていたのだが、EIRPは球形の出力特性を持つ等方性アンテナを元にした数値で、ERPは8の字型(立体だからひょうたん型か)の出力特性を持つダイポールアンテナを元にした数値。両者の間にはEIRP = ERP × 1.64という関係がある。

Legislation and Standardization

引き続きRossano Vitulli氏が担当。電波(周波数帯)の利用規制と標準化、およびプライバシーなどに関連したRFIDの利用規制について説明した。放送・携帯電話などのLicenced Bandの違いとRFIDを含むUnlicenced Bandの違い、利用が比較的自由なISMという概念、LF(125kHz)・HF(13.56MHz)と異なりUHFでは国ごとに利用可能な周波数帯が違うこと、ITU・ISO・EPCglobalなどの各標準化団体とカバーする範囲、RFID利用規制の州ごとの違いなど。UHFの周波数帯は日米欧のほか南米やインドなどのふだん意識しない国のものも表示されたのだが、日本以外の国は欧米どちらかの周波数帯とほぼ重なっていて日本の特殊さを痛感した。州ごとのRFID利用規制はなかなか良くまとまっていて、参加者から活発に質問が出ていた。

Live Demonstration: RFID in the Real World

Photo_081308_002 Americal Apparelのアイテムタグ付けプロジェクトの発表。マンハッタンのColumbia University店でのトライアル結果で、トライアルでは在庫の整理(過去分および過剰在庫)の後に、店舗ですべての商品に手作業でタグをつけたとのこと。店舗と地下のバックオフィスとの間にポータルがあり、こことPOSとでタグの読み取りを行うほか、ハンドヘルドで読み取りを行う。トライアルの結果、読み取りのためにはハンガーの間隔を離したり畳んであるものはふわっと広げるなどの商品側での工夫、リーダーの電波出力や角度を調整したりシールドを作ったりという読み取り側での工夫を行う必要があったとのこと。効果はリアルタイムで自動取得できる在庫の精度が99%、棚卸にかかっていた時間が36人時から5人時に減少、店頭での欠品率が80~90%低下したなどが発表された。現在マンハッタンの15店舗に加えサンタモニカの1店舗がRFID対応になり、ロサンゼルスの工場でのソースタギングが開始されているとのこと。

Real-World Considerations

午前に引き続きRossano Vitulli氏が担当。実際のプロジェクトでの考慮点として、コスト、導入の問題、パフォーマンス(材質、タグの品質、環境ノイズ・干渉)、プライバシー、環境問題など幅広いテーマが取り上げられた。総花的な内容であったが具体的な数字がポンポン出てきて興味深かった。

  • タグの価格は、Gen2タグ本体は10セント以上、Gen2スマートラベルは20セント以上、HFスマートラベルは50セント以上
  • リーダーの価格は、UHFで1,000ドル~3,000ドル、HFで200ドル以上、ラベルプリンタは3,000ドル以上
  • Gen2タグのコストを下げる試みはいろいろなされているが、5セントを切る価格にするには多くのブレイクスルーが必要
  • Gen2リーダーのコストは200ドル以下(多分50ドル)まで下がるだろうと専門家は見ているが、その値段に見合った数量の出荷が見込めなければ値下げのための投資がなされない。
  • RFIDの実際の導入経験を持つ企業・エンジニアの数は限られている。リーダーはプラグアンドプレイではないし、テスト用のツールも限られている。導入の設定にベストプラクティスは無い。
  • 水や金属のほか、帯電防止容器は電波を吸収してパフォーマンスに影響を及ぼす。
  • タグの品質は徐々に改善しているが、現時点でも2%の不良品率は珍しくない。
  • 電波干渉を引き起こす原因にはコードレス電話や古い無線ネットワーク、モーターや蛍光灯などさまざまなものがある。電波環境の改善のために行うべき作業には以下のようなものがある: サイトサーベイ、モーターの電磁シールド、古い無線ネットワークの新しいものへの入れ替え、サイト内での金属の利用を減らす、電波遮断材を適切に使う、リーダーの出力を弱める、アンテナをタグに近づけて配置する。

Building an RFID Business Case

講師のMarshall Kay氏はアイテムタグ付けの専門家。小売業のコンサル会社KSAで4年間RFIDを担当した後2007年に独立。今日のプレゼンの中で一番ツボを押さえた聞かせる内容だった。スマートミラーなども含むアパレルでのアイテムタグ付け一般についてのセッションで、内容は3部構成になっていた。
最初のPre-Pilot considerationsはRFIDでそもそも何をしたくてどのような評価を行うかということを述べたもの。次のCost Frameworkは名前の通りコストを以下の5つの分野に分けて考察したもの:

  • Tagging
  • Reading Tags - Hardware
  • Reading Tags - Software
  • Business Consulting
  • Physical Layer Service

コンサルティングをBusinessとPhysical Layerに分けているのが実務家の知恵を感じさせる。Physical Layerに含まれるのは、サイトサーベイ・機器選定・機器の設置、オンサイトテストなど。Benefits Frameworkは利益がどのように発生するかというもので、筆頭に上げられていたのはマークダウン率の低下。店頭での欠品で売り上げ機会を逃してしまうとどんどんマークダウンをしていかないと売れなくなってしまうというもので、このあたりはアパレルの業務経験がないと深刻さが実感しにくい部分がある。あとは売上点数の増加、在庫減少、作業の効率化と盗難防止などの比較的理解しやすい項目が挙げられていた。

Welcoming Remarks:

主催者挨拶。内容は普通。ここから本体なので参加者はぐっと増えた。150人くらいか。

Opening Keynote: Kaufhof Tracks Items In-Store With Near-Field UHF Tags

Metroの百貨店部門Galeria Kaufhofのアイテムタグ付けプロジェクトの報告。このプロジェクト自体は有名なもpのでもちろん知ってはいたのだが、ヨーロッパの官民共同RFIDプロジェクト群Bridgeの一環であることはこの発表で初めて知った。百貨店の3階全体をトライアル対象とし、64リーダ、208アンテナ、3万個の商品というかなりの規模のトライアル。顧客体験の向上から店舗管理まで店舗でのアイテムタグ付けで想定されうる幅広いテストが行われたようだが、今回の発表は顧客体験の向上がメインだった。RFIDを利用して顧客に情報を提供する機能は3つあり、一つはスマートシェルフ上の在庫数を色やサイズごとに表示するもの。二つ目は試着室で商品説明や在庫状況(サイズ別・色別)そして関連したお勧め商品を表示するもの。最後がいわゆるスマートミラー。半年のトライアル実施後にアンケートを取ったところ、一番低機能に見えるスマートシェルフの好感度が一番高かったというのが面白かった。機能が直感的に分かりやすいというのがその理由らしい。タッチパネルで関連情報をたどっていくという操作性は必ずしもすべての顧客に受け入れられたわけではなかったそうだ。

RFID's Role in Loss Prevention

Wal-Martの研究で有名なアーカンソー大学RFID Research CenterのBill Hardgrave教授の発表。前半はセンター及び施設の説明で、読み取りテストの結果なども説明していたのだが、先のAmerican Apparelの数字などの業界の一般的な経験値と比べて異常に精度が高い、それもほとんどカスタマイズせずに実現したというあたり正直胡散臭いものを感じた。RFID業界企業の寄付で成り立っているセンターであり、直接顧客へのコミットメントがないだけ、一種広告塔のような役割を果たしているのではないか。

発表のメインはGen2タグ(Far Fieldの通常のもの)をEAS的に運用できないか、というもの。万引きでよくあるケースを想定してさまざまなテストを行った結果を発表していて、読み取り率だけを見ると肉体に密着させた場合を除きほぼ同等の精度を得られたとしている。もちろんGen2タグはEASと比べてタグ単体・リーダー共に効果なので単純な置き換えには投資対効果が無いのだが、Gen2タグをインフラと考えて他の用途と共有すると考えれば費用対効果はあるし、そうやって使えば何が盗まれたかが分かるなどのEASでは実現できない効果も期待できるというもの。

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