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2008/08/27

RFIDはハイプサイクルの谷を越えたか?

調査会社ガートナーが毎年発表している新技術のハイプサイクルで、RFIDが幻滅期("Trough of Disillusionment")の谷を超えていないということが業界でちょっとしたニュースになった(RFID Update: Gartner: Case/Pallet RFID Still in "Trough of Disillusionment")。ガートナーのハイプサイクルについてはオフィシャルの説明を参照されたい。ハイプ(誇大広告)という名前の通り、話題が先行する新技術について、技術の成熟度とユーザー・メディアの期待度・認知度をマップしたもの。幻滅期とは、当初の過剰な期待が剥落する一方で実際の導入を通じてのメリットが広まっておらず、新技術への期待度が最低になっている状態を言う。

Hypecycle2005Hypecycle2006Hypecycle2007 Hypecycle2008 







RFID Updateの記事に触れる前にハイプサイクルの中でのRFIDの位置づけの変遷を見ておこう。2005年のハイプサイクルではRFIDは"RFID(Passive)"として幻滅期の谷間をちょっと越えた位置にいる。これが2006年には"RFID(Case/Pallet)"と"RFID(Item)"に分かれ、どちらも成熟度の評価が後退、"RFID(Item)"は「過度な期待」のピーク直後にまで下がっている。2007年には両項目とも少し成熟度が増したが幻滅期の谷間を超えておらず、2008年には"RFID(Case/Pallet)"の成熟度がさらに少し増し、"RFID(Item)"はリストから削除された。結局この4年のハイプサイクルの中でRFIDはずっと幻滅期にいたことになり、またメインストリームへの普及にかかる期間も5年~10年で変わっていない。

業界メディアの中では比較的中立な立場を取るRFID Updateでさえケース・パレットでのRFID利用は啓蒙活動期に入ったと考えていたようで、ガートナーのこの報告には当初は驚いたようだ。まぁ中の人的には納得できない部分もままあるのだろうけれど、「ユーザー・メディアの期待度・認知度」という趣旨を考えてみれば個人的にはこんなものかなと思う。ケース/パレットでのRFID利用について、当初のハイプはほぼ剥がれ落ちてしまった一方、実導入の経験から分かった有用性は現在のところ店頭ディスプレイの管理ぐらい。ベンダーの淘汰も現在進行中だ。

むしろ、RFIDの区分の変化に注目すべきではなかろうか。"RFID(Item)"がリストから削除されたのは、期待される技術でなくなったことが理由ではなく、ユースケースがあまりにも多岐にわたりすぎてメディア・ユーザーの期待を適切に図ることができなくなったからだろう。例えば、宝石や自動車展示場での鍵の管理は期待度は低いながらも生産性の安定期、アパレルは啓蒙活動期に入ったところ、Sam's Clubでのケースへの適用は幻滅期の谷の手前、であるとか。

そういう視点から見ると、ケース/パレットでのRFID(というかGen2)利用をRFID全体のリーディングアプリケーションとして扱うことは先行する大マーケットの足を引っ張ることになるのかもしれない。今までマーケット全体を引っ張ってきた功績は認めるとしても。

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2008/08/16

RFID in Fashion 2008 (Day 2)

RFID in Fashion 2008レポートの二日目分。初日分は前のエントリを参照のこと。

二日通して参加してみた感想は、現時点では単独業界のカンファレンスとしてRFID Journal LIVE!と分ける意味は無いのでは、ということ。2年前に開催された初回はコンセプトの確認を目的とした実験の発表が中心だったが、今回は実導入を前提としたパイロットが中心。それ自体は業界の成熟であり導入の前進なのだけれど、どこの企業でもやっていることには大差が無く、そのくせ発表が企業別の縦割りなので飽きてしまった。このような形式でのカンファレンスを行うのであれば、テーマごとに深く切り込んだ内容、例えば在庫切れの防止であれば複数の導入企業でのテスト結果を比較して何が原因だったのかを議論するとか、そういうものを期待したい。

もう一つ気づいたことは発表者の偏り。17人のスピーカー・パネラーのうち8人がヨーロッパの人だった。現時点でのアパレルRFID導入の状況を如実に感じさせる。ちなみに日本を含むアジアからの発表者はゼロ。初回は三越の実証実験などが華々しく取り上げられていたことを思うとちょっと寂しいものがある。

Welcoming Remarks

本日の注意事項の説明。ちなみに今朝は8時半からセッションが始まる。参加者の数もまだ前日の半分ほど。

APPAREL Maker Manages Maternity Departments With Smart Displays in Stores

Tomorrow's Mother Maternityというメーカーの事例。ここは名前の通りマタニティーウェアのメーカーで、多くの百貨店と取引があるのだが、売上データを把握できないのが悩みの種だった。取引先の百貨店と交渉をしてもデータは自社指定の方式でしか渡せないと言われ、自社のシステム部門の能力ではまったく対応することができなかった。

この現状を打破するために同社が選んだのが、百貨店のPOSシステムを通さずに直接データを取得する方式。同社は商品を展示するためのラックを自社の備品として百貨店に配置しているので、そのラックにRFIDリーダーと携帯電話を組み込み、ラックに吊り下げられた商品のデータを一日数回読み取って携帯データ通信で自社サーバに送信し、自動補充システムで処理する。従来は納品担当者がその時点の在庫をFAXで送信するという手法に頼っていたが、それと比較すると在庫切れの減少により売上が25パーセント向上した。リーダーも携帯電話も電池で動いており、納品担当者が電池を交換していると。
個人的にはこういうアプローチがあったのかと目から鱗だった。日本でもすぐにでも応用できる事例なのではないだろうか。

The Issues that Face Retailers Adopting RFID

パネルディスカッション。小売向けシステムベンダTyco、ドイツのコンサル会社GCS、Avery Dennison、Motorolaの代表の4人が参加者だった。アパレル分野はRFIDを導入しやすく投資対効果がはっきりしている業界だとして、単価が高くコスト負担力があること、無駄な在庫の削減によって正価販売率を上げるという強力なビジネスケースがあること、値札というかたちでタグを取り付けるプロセスが確立しているといった点を指摘していた。これに関連した議論で興味深かったのが「RFIDは共通インフラなので多様な業務改善に利用できる」「タグの価格は将来的には1個5セントを狙いたい」というスーパー雑貨(FMCG)向けのRFID業界のコミットメントがアパレル業界に誤解を生んでいるのではないかというもの。

今後の導入の方向としては、ハンドヘルドリーダーだけで実現できる簡便なソリューションでも投資対効果は得られるのでそういうアプローチをすべき、という意見のほかにも議論があった。GCSの発表者によるもので、ドイツでは大手サプライヤーは自社内利用でRFIDのコストを回収するめどを付けつつあり、かれらが導入を始めることで導入が他のサプライヤーやリテーラーなどサプライチェーン全体に広がっていくと考えていると。本当かな、という部分はあるのだが、ドイツの動向には今後も気をつけていきたい。

Global RFID Supply Chain - From Sources to POS

Photo_081408_002 Checkpoint Systems社のヨーロッパ担当セールスディレクターによる発表。同社は最近のOATSystemsの合併がニュースになったが、元々は盗難防止システム(EAS)の大手ベンダ。同社の資産をRFIDソリューションとしてどう提供できるかということに着目したセッションになっていた。
一つ目に出てきたのはCheck-Netというビジネス。これはリテーラーの代理でサプライヤーに値札を送り、どの値札をどのロットに含めたかというのをリテーラーに返信するという機能を提供するものだが、これをスマートラベルに応用するというもの。値札がRFID対応になり、リテイラーにはロットに対応するSSCC/SGTIN番号が送信される。顧客の業務プロセスを理解しており、Check-Netという既存の強力なインフラを持っているために、競争力の高いソリューションになっているとのこと。
もう一つはEAS/RFIDの統合ソリューション。EASを実際い運用するためには誤検知の防止が非常に重要であるが、Gen2リーダーでは反射の具合で読めてしまうこと(Stray Read)があるので、EASでのノウハウを元にGen2 as EASソリューションの開発を行っていると。現在でもまだ試行錯誤中のようだ。
OATSystemの合併後の位置づけについてはコンセプトの部分だけをさらりと説明。まだ検討中の部分があるのだろう。

Karstadt - Improving Sales Floor Processes by Using RFID

Photo_081408_003 Karstadtはドイツの最大のデパートチェーン。デュッセルドルフ店の子供服部門で2007年からパイロットを実施している。RFIDインフラを使っていろいろな分野での投資対効果を図ろうというもので、他の発表とかなりかぶっている。発表も総花式だったので、正直言ってあまり興味を惹かれなかった。
技術面で気になったのは、スマートシェルフでは80箇所の棚を142個のアンテナで管理しており、これら全てのアンテナをiReadというシステムを使って一台のリーダーで管理しているとのこと。また、POSではEAS/RFID統合リーダーを使用し、EASの無効化とGen2チップのKillコマンドの発行を同時に行っている。
パイロットによる業務改善の効果は、入庫処理: 1時間→8分、棚卸: 80分→20分、価格管理: 足掛け2週間の作業4日→1日のうち2時間、などが報告された。

Mojix Showcases New Visibility to Retail Goods

Mojixによる10分強のStar Systemのデモ。最初に5分ほどシステムの説明で、Gen2タグを使ったソリューションでは、チョークポイントとハンドヘルドによる管理では取得できるデータは不完全だが、Mojix StarSystemを使うと完全なデータを取得できるとのこと。なお、同システムは現在FCC/ETSIの認定を取得しているが、日本での認定はまだ。

デモは会場内で20m弱離れた場所にあるタグを読むというもの。演台にアンテナ本体があり、客席に送信機eNodeが二つ置かれている。eNodeのサイズはLPレコードジャケットで5cm厚、本体は25cm×80cmぐらいか。機能から想像していたよりは小さい。Mojix StarSystemにはRTLSの機能があるのだが、デモで展示されていたのはタグIDのリストを表示する通常のもの。テストとしては微妙で、60個のタグがあったのに30個ぐらいしか読めておらず、スキャンごとに個数が変わっていた。20メートル先のタグが読めるのは分かったが、実力の全貌が見えたわけではなかったのが残念。

Fashion Designer Benefits from Tagging Apparel Items

NP Collectionというフィンランドのアパレルメーカーの事例。店舗はスカンジナビア、ロシア、オランダ、ベルギー、ドイツにあり、DCはフィンランド、製造は東ヨーロッパと中国でそれぞれ行っている。第一段階では製造業者の参加の上でDCでRFIDを利用し、第二段階では店舗での利用のほか3PL業者を巻き込んだ。地味に見える第一段階で在庫切れの30%削減と入庫作業時間70%削減で6ヶ月で投資を回収できる効果を挙げたというのは以外だった。発表では「わが社は業務プロセスではチャレンジャーだがアプリ開発ではチャレンジャーではないのでReady Made Solution Packageが欲しかった」と言っていたが、どういうパッケージだったのかは結局あまり分からなかった。

The Keys to Achieving Benefits from RFID Today

展示会3つめのパネルディスカッション。今回の参加者はEPCglobalのディレクターとアパレル企業Lemmi社のCIO、そして昨日一番面白かったセッションを勤めたRFID Sherpasの代表者。3つもパネルディスカッションをしてどうなるのか、と思ったのだが、このセッションはEPCglobalの立場を説明するというのが趣旨らしい。ただ、パネリストのディレクターはアパレル業界についてあまりコミットメントが無い様子で、HPの事例を引いてアイテムタグ付けのメリットを説明していたりした。RFID Journal LIVE!のような一般コンファレンスであればともかく、アパレル向けのコンファレンスではちょっと痛い。特にRFID Sherpas氏の話が非常に面白かったので、ぎこちなさが目立ってしまっていた。

RFID Sherpas氏のアパレル業界でのRFIDのユースケースはこのコンファレンスを通してほぼ実務家の一致した意見と感じられるものだったのでまとめておきたい。現時点ではユーザーの興味はどうしてもスマートミラーなどのインタラクティブリテールに向きがちだが、きっちりした投資対効果が見えているわけではない。サプライチェーン中のビジビリティーを向上させ、在庫切れによる販売機会損失や過剰在庫による必要以上のマークダウンの発生を防ぐことが現時点では最大の効果を生む。それに続くのが自動検品などによるオペレーションの省力化であると。

How RFID Help Italian Brand Names

イタリアのパルマ大学のRFID Labの教授Roberto Montanari氏によるセッション。このRFID LabはオートIDラボのことではない。同じようにRFID研究機関を持つ大学が提携したグループなのだが、オートIDラボが各国のエリート大学クラブといった趣があるのに対し、RFID Labは実業に近い大学という印象がある。ちなみにアーカンソー大学もRFID Labのメンバー、日本から参加している大学は無い。RFID Labは大学だけの機関ではなくメディアや企業とも連携しており、研究の委託と実施のプロセスなどを詳しく説明していた。
パルマ大学は実験施設として物流器材を持つRFID Labとアパレル店舗を模したRFID Fashion Storeを持っており、今回の展示では前者での実験結果を展示していた。CoccinelleやLey Tricotといったブランドの製品を基にしてソーターでの読み取りテストなどを行ったもので、ここまでの展示内容と毛色が違ったのでちょっと違和感を持ったが、考えて見ればもちろん重要な機能ではある。前半のRFID Labの説明に時間を取られたこと、実験のスポンサー企業との関係で詳細な結果を出せないとのことだったのだが、次の機会ではそのあたりの問題をクリアして今回以上のセッションを望みたい。

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2008/08/14

RFID in Fashion 2008 (Day 1)

ニューヨークで開催中の展示会RFID in Fashionに参加している。RFID JournalとAmerican Apparel & Footware Associationが共催するイベントで、名前の通りアパレル業界でのRFIDの利用を対象としている。対象業界を絞っている分小規模なイベントになっていて、会場はFIT(Fashion Institute of Technology)という大学の展示室と教室を利用したものになっている。

会期は8月13日と14日の二日間。今回は13日の内容を簡単にレポートしたい。

General Session: RFID Basics

Photo_081308_001 初日の前半(以下Building an RFID Business Caseまで)はRFID Journal Universityと題したセミナーになっていて、アパレル業界に限らない一般的なRFIDの知識を紹介するものとなっている。料金も申し込みも展示会本体とは別になっているので参加者も少なく、ほぼ20名ほど。
最初のセッションはRFID Journalの編集長Mark Roberti氏によるRFIDの基礎的な知識を紹介するもの。RFIDの定義から始まり、ハードウェア・ソフトウェア・ネットワークといった構成要素の説明やアクティブ・パッシブおよび周波数による違い、さらにはEPCglobalのミッションとスコープまでを1時間でまとめていた。教科書どおりの手馴れたセッションで、僕もこんな感じでRFIDの概要説明をこなせるようになりたいなぁと思ったのだが、その手馴れたセッションの中にちょろっと現在のアメリカの業界動向を感じさせるものがあった。

  • 標準的なタグの価格として説明されたのが、アクティブタグで20ドル、パッシブタグで20セント。どちらも実勢価格はもう少し安いと思うのだが、セミナーで触れられる数字はこんなものか。
  • パッシブ、アクティブと並んでセミアクティブタグの特徴を説明したが、その中で機能の例としてセンサーの搭載を挙げ、用途として冷蔵輸送に触れていた。
  • 周波数の特徴について、LF・HF・UHFは説明したが2.45GHzは説明しなかった。

The Physics Behind RFID

イタリアのパルマ大学の教授Rossano Vitulli氏が担当。周波数帯や波長という概念の説明から入り、周波数ごとの特性、パッシブタグの電力受け取り方式、タグの構造(チップ・アンテナ・サブスレート)、Near FieldとFar Fieldの違い、金属や水の影響などを丁寧に説明していた。
金属と水の影響については、水は一定以下の距離では常に悪影響を与えるが、金属の場合では特定の距離では逆に感度を上げる場合がある、でもその挙動を予測するのは困難という説明で、ニュースからそうだろうと考えてはいたが実際に整理してもらうとすっきりした。もう一つ役に立ったのはEIRPとERPの区別。僕はごっちゃにしていたのだが、EIRPは球形の出力特性を持つ等方性アンテナを元にした数値で、ERPは8の字型(立体だからひょうたん型か)の出力特性を持つダイポールアンテナを元にした数値。両者の間にはEIRP = ERP × 1.64という関係がある。

Legislation and Standardization

引き続きRossano Vitulli氏が担当。電波(周波数帯)の利用規制と標準化、およびプライバシーなどに関連したRFIDの利用規制について説明した。放送・携帯電話などのLicenced Bandの違いとRFIDを含むUnlicenced Bandの違い、利用が比較的自由なISMという概念、LF(125kHz)・HF(13.56MHz)と異なりUHFでは国ごとに利用可能な周波数帯が違うこと、ITU・ISO・EPCglobalなどの各標準化団体とカバーする範囲、RFID利用規制の州ごとの違いなど。UHFの周波数帯は日米欧のほか南米やインドなどのふだん意識しない国のものも表示されたのだが、日本以外の国は欧米どちらかの周波数帯とほぼ重なっていて日本の特殊さを痛感した。州ごとのRFID利用規制はなかなか良くまとまっていて、参加者から活発に質問が出ていた。

Live Demonstration: RFID in the Real World

Photo_081308_002 Americal Apparelのアイテムタグ付けプロジェクトの発表。マンハッタンのColumbia University店でのトライアル結果で、トライアルでは在庫の整理(過去分および過剰在庫)の後に、店舗ですべての商品に手作業でタグをつけたとのこと。店舗と地下のバックオフィスとの間にポータルがあり、こことPOSとでタグの読み取りを行うほか、ハンドヘルドで読み取りを行う。トライアルの結果、読み取りのためにはハンガーの間隔を離したり畳んであるものはふわっと広げるなどの商品側での工夫、リーダーの電波出力や角度を調整したりシールドを作ったりという読み取り側での工夫を行う必要があったとのこと。効果はリアルタイムで自動取得できる在庫の精度が99%、棚卸にかかっていた時間が36人時から5人時に減少、店頭での欠品率が80~90%低下したなどが発表された。現在マンハッタンの15店舗に加えサンタモニカの1店舗がRFID対応になり、ロサンゼルスの工場でのソースタギングが開始されているとのこと。

Real-World Considerations

午前に引き続きRossano Vitulli氏が担当。実際のプロジェクトでの考慮点として、コスト、導入の問題、パフォーマンス(材質、タグの品質、環境ノイズ・干渉)、プライバシー、環境問題など幅広いテーマが取り上げられた。総花的な内容であったが具体的な数字がポンポン出てきて興味深かった。

  • タグの価格は、Gen2タグ本体は10セント以上、Gen2スマートラベルは20セント以上、HFスマートラベルは50セント以上
  • リーダーの価格は、UHFで1,000ドル~3,000ドル、HFで200ドル以上、ラベルプリンタは3,000ドル以上
  • Gen2タグのコストを下げる試みはいろいろなされているが、5セントを切る価格にするには多くのブレイクスルーが必要
  • Gen2リーダーのコストは200ドル以下(多分50ドル)まで下がるだろうと専門家は見ているが、その値段に見合った数量の出荷が見込めなければ値下げのための投資がなされない。
  • RFIDの実際の導入経験を持つ企業・エンジニアの数は限られている。リーダーはプラグアンドプレイではないし、テスト用のツールも限られている。導入の設定にベストプラクティスは無い。
  • 水や金属のほか、帯電防止容器は電波を吸収してパフォーマンスに影響を及ぼす。
  • タグの品質は徐々に改善しているが、現時点でも2%の不良品率は珍しくない。
  • 電波干渉を引き起こす原因にはコードレス電話や古い無線ネットワーク、モーターや蛍光灯などさまざまなものがある。電波環境の改善のために行うべき作業には以下のようなものがある: サイトサーベイ、モーターの電磁シールド、古い無線ネットワークの新しいものへの入れ替え、サイト内での金属の利用を減らす、電波遮断材を適切に使う、リーダーの出力を弱める、アンテナをタグに近づけて配置する。

Building an RFID Business Case

講師のMarshall Kay氏はアイテムタグ付けの専門家。小売業のコンサル会社KSAで4年間RFIDを担当した後2007年に独立。今日のプレゼンの中で一番ツボを押さえた聞かせる内容だった。スマートミラーなども含むアパレルでのアイテムタグ付け一般についてのセッションで、内容は3部構成になっていた。
最初のPre-Pilot considerationsはRFIDでそもそも何をしたくてどのような評価を行うかということを述べたもの。次のCost Frameworkは名前の通りコストを以下の5つの分野に分けて考察したもの:

  • Tagging
  • Reading Tags - Hardware
  • Reading Tags - Software
  • Business Consulting
  • Physical Layer Service

コンサルティングをBusinessとPhysical Layerに分けているのが実務家の知恵を感じさせる。Physical Layerに含まれるのは、サイトサーベイ・機器選定・機器の設置、オンサイトテストなど。Benefits Frameworkは利益がどのように発生するかというもので、筆頭に上げられていたのはマークダウン率の低下。店頭での欠品で売り上げ機会を逃してしまうとどんどんマークダウンをしていかないと売れなくなってしまうというもので、このあたりはアパレルの業務経験がないと深刻さが実感しにくい部分がある。あとは売上点数の増加、在庫減少、作業の効率化と盗難防止などの比較的理解しやすい項目が挙げられていた。

Welcoming Remarks:

主催者挨拶。内容は普通。ここから本体なので参加者はぐっと増えた。150人くらいか。

Opening Keynote: Kaufhof Tracks Items In-Store With Near-Field UHF Tags

Metroの百貨店部門Galeria Kaufhofのアイテムタグ付けプロジェクトの報告。このプロジェクト自体は有名なもpのでもちろん知ってはいたのだが、ヨーロッパの官民共同RFIDプロジェクト群Bridgeの一環であることはこの発表で初めて知った。百貨店の3階全体をトライアル対象とし、64リーダ、208アンテナ、3万個の商品というかなりの規模のトライアル。顧客体験の向上から店舗管理まで店舗でのアイテムタグ付けで想定されうる幅広いテストが行われたようだが、今回の発表は顧客体験の向上がメインだった。RFIDを利用して顧客に情報を提供する機能は3つあり、一つはスマートシェルフ上の在庫数を色やサイズごとに表示するもの。二つ目は試着室で商品説明や在庫状況(サイズ別・色別)そして関連したお勧め商品を表示するもの。最後がいわゆるスマートミラー。半年のトライアル実施後にアンケートを取ったところ、一番低機能に見えるスマートシェルフの好感度が一番高かったというのが面白かった。機能が直感的に分かりやすいというのがその理由らしい。タッチパネルで関連情報をたどっていくという操作性は必ずしもすべての顧客に受け入れられたわけではなかったそうだ。

RFID's Role in Loss Prevention

Wal-Martの研究で有名なアーカンソー大学RFID Research CenterのBill Hardgrave教授の発表。前半はセンター及び施設の説明で、読み取りテストの結果なども説明していたのだが、先のAmerican Apparelの数字などの業界の一般的な経験値と比べて異常に精度が高い、それもほとんどカスタマイズせずに実現したというあたり正直胡散臭いものを感じた。RFID業界企業の寄付で成り立っているセンターであり、直接顧客へのコミットメントがないだけ、一種広告塔のような役割を果たしているのではないか。

発表のメインはGen2タグ(Far Fieldの通常のもの)をEAS的に運用できないか、というもの。万引きでよくあるケースを想定してさまざまなテストを行った結果を発表していて、読み取り率だけを見ると肉体に密着させた場合を除きほぼ同等の精度を得られたとしている。もちろんGen2タグはEASと比べてタグ単体・リーダー共に効果なので単純な置き換えには投資対効果が無いのだが、Gen2タグをインフラと考えて他の用途と共有すると考えれば費用対効果はあるし、そうやって使えば何が盗まれたかが分かるなどのEASでは実現できない効果も期待できるというもの。

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2008/08/08

Networked RFID Systems and Lightweight Cryptography / Peter H. Cole他(著)

オートIDラボに属する研究者の論文を集めた書籍。このタイトルだけだとちょっと内容が分かりづらいが、サブタイトルには"Rising Barriers to Product Counterfeiting"とあるように、基本的にはRFID技術を用いて偽造にどのように立ち向かうかがテーマになっている。論文集とは言え、RFIDやEPC Network、セキュリティの基本についての記述もあり、また偽造防止とは表裏の関係にあるプライバシーの問題についても一章が取られている。

Lightweight Cryptographyと言う用語はあまり馴染みの無い用語だが、掲載された論文の一つに定義がされている。リソースの制限が厳しいデバイスでの動作を目的とした暗号で、なおかつ充分な強度を持ったものだという。僕の基礎的な暗号の知識では強い暗号は多くの演算を要求するはずなので、はて手品の種は何だろうかということをまず最初に思った。結局は、ハードウェア処理が簡単な転置処理を多用すると共にソフトウェア的なリソースを消費する要素を小さくすることで、リソース制約下で充分な強度を持った暗号を扱うということらしい。それらしいプレゼンを見つけたので参考に置いておく(pdf)。

もっともこの書籍に掲載されている論文はLightweight Cryptographyのものばかりではない。業務・アプリケーション設計による上位での対策や、ノイズを用いた品質の高い乱数の生成まで、いろいろなソリューションが含まれている。もちろん論文なのでかなり敷居は高いのだが、興味のある技術トピックがあれば最先端の研究者による興味深い世界が広がっているだろう。そこまでの興味は無いという人も、冒頭30ページのサマリーを読むと各論文の内容が手際よくまとめられているので現在のセキュリティー問題を見渡せる有益な知見を得ることができると思う。

ISBN: 3540716408 / $79.95

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2008/08/05

Gen2対応低価格リーダー(日立、ThingMagic) / 日立セキュアRFIDプロトコル

最近Gen2対応固定型リーダーの低価格製品が相次いで登場した。従来はアンテナ込みで30万円/$3,000からというあたりが相場だったのだが、新製品はいずれも$1,000を切る価格を戦略的に提示している。

発表が早かったのは日立の製品。HE-MU384-RWM001という型番で、価格が税別98,000円となっている。アンテナを内蔵して22cm×20cm×4.5cmと非常にコンパクトなサイズにまとめており、200mWの出力で最大1mの距離まで読み取りができる。インタフェースはLANのみで、ON/OFFの端子が付いているあたりが芸が細かい。

もう一つの製品がThingMagic社のAstraで、こちらも$995という同様の価格レンジを狙っている。アンテナ一体型にして省スペース化を図っているのは日立の製品と同じだが、26cm×26cm×7.6cmとややサイズが大きいのはお国柄だろうか。その分強力ではあり、出力は最大1W、LANアダプタだけではなくシリアルポートや外部アンテナ端子を持っている。もう一つの特徴はイーサネット給電(PoE)に対応していること。サイズや出力を考えると日立の製品の方がサポートしていてよい機能かとも思う。RFID Journal誌ではベタ記事扱いだったがRFID Update誌では独立記事として取り上げられた(New ThingMagic RFID Reader Cuts Cost, Size, and Power)。

従来Gen2システムをHFシステムと比較した場合、大きな不利の一つがリーダーの価格差だったので、この動きは歓迎すべきものだし、もう少しニュースになってもよいと思う。

また、日立がμ-Chip Hibiki用に開発した「セキュアRFIDプロトコル」がこの低価格リーダーでもサポートされている(PDF資料)。この機能、名前だけは知っていたがメディアで詳細が取り上げられることが少なく全容を知らなかった。

日立のセキュアRFIDプロトコル基本的には2つの機能からなるもので、一つはコマンドにより通信距離の制限を設定・解除できるというもの。従来はアンテナを物理的に破壊することで読み取り距離を短くするというアイデアはあったが、それらの実装では通信距離を回復させることができなかった。ソフトウェア的に通信距離を変えられるのであればこの問題を回避することができる。

もう一つの機能は、ユーザメモリブロックを拡張し、Gen2標準プロトコルでアクセスできるブロックに加えて5つの拡張ブロックを定義するというもの。拡張されたブロックにはそれぞれに読み取り・書き込みのパスワードを設定することができる。

どちらも面白い機能だと思うので、ぜひサポートする製品が増えて欲しいものだが、さて。

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