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2008/05/26

グッバイVeriChip

VeriChipについては先日オンライン医療情報の新サービスを取り上げたばかりだが(VeriChipが(また)やってきた。ヤァ!ヤァ!ヤァ!)、急転直下廃業することになったというニュースが飛び込んできた(RFID Journal: VeriChip to Place Implantable Division on Block, RFID Update: VeriChip Sells an RFID Business, More Change May Come, RFID Update: Implantable RFID Business 'Not Self-Sustainable')。

記事を読んでみると親子関係のある会社がいろいろ出てきてややこしい。まず、VeriChip自体は本体のビジネスであるVeriMed HealthLinkを行っているほか、一般的な医療分野にRFIDシステムを導入しているXmarkという子会社を持っている。さらに、VeriChipはDigital Angelというペット・家畜向けの生体埋め込みタグのメーカーの子会社になっている。

このXmarkは安定したキャッシュフローを生んでおり、本体のビジネスであるVeriMed HealthLinkが全く収入を生んでいない状況でVeriChipが存続できるのはXmarkの存在あってのことだった。だが、VeriChipはXmark部門の売却を決定。それによって得られた利益はVeriMed HealthLinkビジネスではなく、負債を返済した後は株主への特別配当に廻す。VeriMed HealthLinkは自力での存続を諦め、現在買い手を待っている状態とのこと。

冷たい言い方になるが、潰れて良い会社だった、ということだろう。生体埋め込みのRFIDという技術を雑に扱って可能性を潰してしまった罪はあまりにも大きい。その一方で、会社の関係としても複雑な親子会社を作り、収益の見込みの無いまま上場させた後1年ちょっとでの廃業ということで、何かの詐欺なのではないかとすら思ってしまう。

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2008/05/20

RFIDファイアウオールRF-Wall

アメリカのNeoCatena Networksというベンチャー企業がRFIDのファイアウオールを開発した、という記事がRFID Journalに載った(Startup Designs Firewall to Ensure RFID Network Security)。その後RFID Updateもこの記事を取り上げており(Startup Says System Can Detect, Block Cloned RFID Tags)、現時点での若干の感想を書いておきたい。

RFIDとネットワークの双方にある程度の知識のある人間なら「RFIDファイアウオールって何をするのか」と思うのではないだろうか。この製品の名前はRF-Wall、同社のサイトを訪問してみたが、現時点では詳細な技術資料は無く、1ページ程度の簡単な説明があるだけだ。

RF-WallはTCP/IP接続されたリーダーコントローラーとミドルウェアサーバーの間に配置するアプライアンスとして提供される。1台のRF-Wallアプライアンスには15台までのリーダーを接続することができる。現時点でサポートする通信プロトコルはEPCglobal Low Level Reader Protocol(LLRP)および2社の独自プロトコル。今後独自プロトコルをサポートしていくそうだ。製品としてはHF・UHFどちらにも対応しているそうだが、説明を見る限りはサプライチェーン内でのパッシブタグの利用をターゲットにしているように思われる。

RF-Wallの機能は大きく二つに分けられる。一つは不正な、あるいは悪意あるデータを検出し、システムへのデータの進入を防ぐというもの。ファイアウオールというよりはアンチウイルスソフトの機能になる。もう一つはタグのデータにデジタル署名を行うというもの。読み書きを行うリーダーの双方にRF-Wallを接続し、タグのユニークIDを用いて書き込みデータにデジタル署名を付加、読み取り時にデジタル署名と合わないデータを検出、接続を拒否するというものだ。

さて、このRF-Wall、現時点でのニーズはどんなものだろうか。まず最初の機能、RFIDアンチウイルス機能については、当然ながらRFIDウイルスの脅威をどう評価するかに依存する。本件については以前にエントリを書いた(「RFIDウイルス」のハッタリ)。このエントリから2年が経ったが現時点でも僕の意見は基本的に変わっていない。航空部品のメンテナンス履歴管理などで大容量のタグが登場してきており、将来的にRFIDアンチウイルスソフトの必要性が出てくる可能性はあるが、それはRF-Wallに現時点で投資対効果があるということは意味しない(本当に必要になったときには陳腐化しているのではないか)。もう一つのデジタル署名については、現時点でアプライアンスが持つ必要のある機能とは思えない。ミドルウェアで実装すべき機能だろう。

将来RFIDインフラストラクチャーが広く普及してからアンチRFIDウイルスやデジタル署名の必要が明らかになり、既存のインフラをいじらずにそれら機能を追加したいというニーズが出てくることがあれば、RF-Wallのようなセキュリティーアプライアンスの必要性が出てくるかもしれない。だが、幸か不幸かRFIDインフラの本格普及はこれからだ。現在RF-Wallが提供しているような機能はRFIDミドルウェアが標準として取り込んでいくのではないかと個人的には考える。

ちなみに、NeoCatena Networksの設立者の一人Lukas Grunwald氏は、タグデータのダンプ出力を取るツールRFDumpの開発者であり、2006年にはドイツのe-パスポートのクローンを作成したということで業界に騒ぎを引き起こした人物(RFID Update: New RFID Passport Scare -- Does it Matter?)。個人的な感想としては、これらの騒動で提起した問題への解答がこれかよ、とは思わないでもない。

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2008/05/09

VeriChipが(また)やってきた。ヤァ!ヤァ!ヤァ!

RFID Journalに久しぶりにVeriChipの記事が載った(VeriChip Markets Its Implantable RFID Tags and Services Direct to Consumers)。おなじみのVeriChipタグにHealthLinkというブランド名を付け、オンライン医療情報サービスと合わせて個人に直接売り込むという。HealthLinkのサービスは個人の医療記録を格納するデータベースと連動し、意識を失った状態で病院に運び込まれた際にVeriChipタグを元に医療情報を元にデータベースを検索、適切な治療を行うというもの(オプションで尊厳死の希望などの遺言情報もデータベースに登録できる)。なお、この件についてVerichip社からプレスリリースが出ている(VeriChip Corporation to Launch Direct-to-Consumer Campaign)。

VeriChipタグは従来と同じ134kHzの米粒大のパッシブタグ。16桁の識別番号のみを格納する。現在は南フロリダの16の病院がこのプログラムに参加しており、200の病院に導入中、900の病院が導入に同意しているという。このプログラムに参加を希望する人は提携先のHearUSAの施設に行き、VeriChipタグを右上腕部に埋め込む。手術費用は149ドル、データ保管料として毎月9.99ドルがかかる。同社は南フロリダ地域で1,000人の加入者を目標としている。

ふざけたタイトルを付けたし、なんでこの会社はプライバシー問題が微妙に盛り上がっている時期に動き出すのか、ひょっとして狙ってるのかとか思ってしまうのだが(狙ってるとしたらPR効果は高いよなー)、VeriChipの利用法の提案としては真正面からのものでその点は評価したい。認知症患者のように正常な判断力を失った人たちに適用すべきソリューションではないし、まして同社の社長が以前にテレビで語ったような「出稼ぎ労働者にVerichipを移植せよ」というのは論外だ。しかし、正常な判断力を持った人間があくまで自分の判断でタグを埋め込む、というソリューションであれば、その意義を正面から検証すべきだろう(一般人相手でも一旦使われはじめれば次は必ず弱い立場の人に強制される、という懸念は当然ありうべきと了解している)。

このサービスの評価を下す前に、アメリカのオンライン医療情報サービスの現状を知っておくべきだろう。現在、大手のネットワーク業者によるオンライン医療情報サービスの提供が相次いでいる。Googleは2008年2月にGoogle Healthサービスの開始を発表したし(CNET Japan : グーグル、「Google Health」を発表--個人健康記録を集約)、昨年にはマイクロソフトが同種のサービスHealthVaultを発表した(CNET Japan : マイクロソフト、医療情報オンライン管理サービス「HealthVault」を発表)。このようなオンライン医療情報サービスに医療情報を保存する最大のメリットは何か?自分の意識があるときであれば、例えばかかりつけの医者の連絡先を伝えて情報を受け取ってもらえば住む。つまり、自分の意識が無い状態で緊急治療室に担ぎ込まれた時が一番重要な利用タイミングになる。その際に医師や看護婦にどうやって医療情報へのアクセスを許すか。ICカード?落としたらどうする。意識が無いわけだから当然パスワードによる認証は行えない。ならば人体に埋め込むのが結局セキュリティが最も高いのではないのだろうか。このあたりの考え方を書いた技術ブログを見つけたので紹介しておく(ZDNet Between the Lines : VeriChip goes consumer with its implantable RFID chips; Would you buy?)。

僕はキリスト教徒では無いので獣の印という嫌悪感は無いが、やはり認識番号を含む異物を体に埋め込むことには気が引けるし、まともな認証機構を持たないタグを体に埋め込むというやり方は技術者として許せないと思う。あなたはどう考えるだろうか。

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2008/05/07

Yet Another Gen2-based RTLS (PINC Solutions Yard Hound)

先日紹介したMojix Star Systemに続き、Gen2パッシブタグを使ったRTLS製品をもう一つ紹介。PINC Solutionsが提供するYard Houndシリーズだ。名前の通り倉庫ではなくトレーラーヤードを対象とした製品になる。Yard Houndは最近RFID Journal誌で異なる企業への導入事例が続けて取り上げられた(Cost Plus World Market Finds RFID Sweet Spot in Yard Management, Kimberly-Clark Sees Positive Results With PINC Trailer Tracker System)。

通常のアクティブタグを用いたRTLSでは対象となるトレーラーにアクティブタグを取り付け、ヤード内に立てた複数のアンテナがタグの信号を受信して三辺測量を行う。タグとアンテナの間の距離の測定方法は、信号の到着時間を調べるTDOA(Time Difference of Arrival)と信号の減衰を調べるRSSI(Received Signal Strength Indicator)の2つがあり、それぞれの方法に一長一短があるため併用する製品も多い。使用する周波数帯やプロトコルにより測位精度は異なるが、共通することは多数のアンテナを立てなければならないこと。しかもそれぞれのアンテナについて位置や高さ、向きを精密に測定しておく必要がある。言うまでもなく金と手間と時間のかかる作業だ。

Yard Houndシリーズはこの問題を解決したというのをセールスポイントにしている。ヤード内に測位用のアンテナは不要、トレーラーに取り付けるのはGen2パッシブタグで良いという。これだけではあまりに嘘くさいが、手品の種は構内作業用のトラック。このトラックに無線LAN対応のリーダーを取り付けて作業のついでに近くを通ったトレーラーのGen2タグを読み取るのだ。構内作業用トラックのリーダーにはGPSや二次元加速度センサーが取り付けられており、読み取ったタグの信号強度をトラックの移動情報で補正した上で(おそらく)RSSIで測位を行い、高い精度を得ることができるという。取得した情報は一旦ローカルに保存し、無線LANのエリアに入ったところでまとめてアップロードするので、ヤード全体を無線LANでカバーする必要は無い。

実際にどれだけの精度が出るのかとか、構内作業用トレーラーが通らない場所にあるトレーラーの位置をリアルタイムで把握できないのではないかとか、いくつか疑問はあるのだが業務上許容できるのであれば上手い手だと思う。アクティブタグで必要となる高価で手間のかかるインフラ整備を省くことができるし、その一方で作業フローを変えずに現在位置を自動的に取得できるというRTLSのメリットも享受できる。Mojix Star Systemが高度技術を使ったブレイクスルーだとすれば、このYard Houndはシステム設計の妙を見せてくれるもの、と言えるだろうか。

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