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2008/01/26

Wal-Mart Mandateの新たな動き(Sam's Clubでの未着用パレットへの罰金化)

先日の2007年RFID業界10大トレンドの記事でも触れたが、海外のRFID業界では、業界全体の中でいわゆるMandate案件の占める割合は低下し、低下した中でもMandate案件をリードするのはMETROを初めとする欧州勢だというのがコンセンサスになっていた。以前にRFIDビジネスの顔だったWal-Martは、調達額こそ大きいもののRFID業界のチェンジリーダーというポジションを失った、と考えられていたことになる。

そのWal-Martで年明けに動きがあった。ディスカウントストアを運営する子会社Sam's Clubが、2008年1月7日にタグを取り付けていないパレットについて罰金を徴収する、というレターをサプライヤーに送付したのだ(RFID Journal: Sam's Club Tells Suppliers to Tag or Pay, RFID Update: Sam's Club Wants Item-Level RFID Tagging by 2010)。
現時点で出ている情報を総合すると以下のようになる。

  • パレットへのタグの取り付けが義務付けられるのは、最初はテキサス州Desotoの物流センター。第二段はNew Reaunfels(TX), Dayton(TA), Villa Rica (GA), Kansas City(MO), Hattiesburg(MS), Seacry(AR)の6つの物流センター。第三段で全ての物流センターが対象となる。
  • Desotoでの義務付けは2008年1月30日、第二段の6箇所では2008年10月、第三弾は2009年1月がターゲットである。
  • Desotoに納入されたパレットのうちタグが取り付けられていないものに付いては、2008年2月1日からは2ドル、2009年1月1日からは3ドルがタグ代実費として徴収される。
  • ケースへのタグ付けの要求は、Desotoでは2008年10月、第二段の6箇所では2009年1月、第三弾は2009年10月がターゲットである。
  • 「アイテム」単位(Sam's Clubは箱売りを行っているためダース単位等になる)については、Desotoでは2009年2月、第二段の6箇所では2009年10月、第三弾は2010年1月がターゲットである。

奇怪なのは、これほどの大きな方針変更であるのに、Sam's ClubおよびWal-Martからはプレスリリースが出ておらず、業界紙による取材要求も拒否していることだ。今までの報道はレターを受け取ったサプライヤーやSam's ClubにRFIDシステムを導入しているというXterprise社からのコメントに基づいて書かれている。

今後どのように動いていくかは分からないが、現状のコメントとして。

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2008/01/20

RFID: Item Level Management; A Practical Approach / Gary Andrechak他(著)

B5版・200ページほどのコンパクトな書籍だが、内容は濃く実に良くまとまっている。今までに「大学のテキストに使える」という書評をした本は何冊かあるが、同僚や部下のエンジニアがRFIDの担当になったなら、今ならこの本をまず読んでもらう。実務家がほとんど知識の無い状態から読んで技術及び関連作業の概要を把握し、そして今後知識を広げていくための知識が、必要充分な内容で丁寧に書かれている。

タイトルは"ITEM LEVEL"となっているが、実際にはMandateによるパレット・ケースタグ付け以外のほとんどの事例を対象としている。5部構成となっており、第1・2部でRFIDに関する基本知識、第3部で個品タグ付けの特性と適用分野、第4部でプロジェクトの運用・進め方、第5部でプライバシー・セキュリティ・コストといった導入に関する問題点をそれぞれ扱っている。

RFIDに関する基本知識は前提知識が無くても分かるようにきちんと書かれており、特にNear FieldとFar Fieldの動作原理に関する部分の説明が素晴らしい。プロジェクト運用の部分はプロジェクト管理についての知識を前提としているのでここだけ読んで具体的な作業をすべてイメージできるとは行かないが、知識を持った人が要点を確認するにはきちんとした内容になっているし、それで充分だろう。プライバシー・セキュリティ・コストについての記述も目配りが利いており、はっきり発言すべき部分ははっきりしているのが気持ち良い。

この本の著者は日立アメリカのエンジニア。従来のRFID本には学者や評論家が書いていて足に地が付いていない印象を受けたり、EPCglobalを妙に持ち上げすぎていて気味が悪かったりするものも多いが、それらに比べて冷静でエンジニアとしての確かさを感じさせるのにはそういう背景というか視点もあるのだろう。日立でこの本を日本語化してくれないだろうか。

ISBN: 0971209901 / $35.00

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2008/01/02

RFID in the Supply Chain / Judith M. Myerson(著)

読み終わってこの手の本を書く人は世の東西に関わらずいるものだと苦笑してしまった。タイトルからするとこの本のテーマはRFIDのサプライチェーンでの利用、ということになるかと思うが、その視点からの知見を求めるならこの本は正直なところあまり役に立たないと思う。

おそらく原稿を書き終えたのが2006年初めで、その時点でのサプライチェーンへのRFID利用の雰囲気を踏まえて書かれているので、Mandateへの熱が冷めた現時点で見るとそれだけでちょっと苦笑を誘う。だが、それだけが内容への違和感ではない。筆者はEISやミドルウェアの専門家、しかも上流分野の専門家である。章立ておよび記述のレベルからは、本を書くことが決まった時点でRFIDの資料を集め、それを元に自分の知識をむりやり結びつけて一冊の本にした、という印象を強く受けた。RFIDの総合的な解説書で、例えばRFIDの電波の特性よりも圧倒的に多いスペースを割いてDBMSの説明をしているというのはちょっとどうかと考える人は多いだろう。いっそ30ページぐらいのパンフレットにまとめればある程度読む値打ちのあるものになったのかな、とは思うのだが、ハードカバーの単行本で出すことが最初から決まっていたらしく、ひどく薄い内容を無意味に引き伸ばしている。全体で420ページのうち本文は半分以下の180ページ。そして付録部分は資料集として整理がされていない商品のカタログの孫引きが雑然と並んでいる。

RFIDの専門家にとっては遅く出すぎたブーム便乗書籍としか見えない書籍かと思う。だが、上流のコンサルタント、そして彼/彼女らに調査を依頼するエグゼクティブたちはRFIDというか先端技術をこう見るだろうという意味では、とても良くできたサンプルではあるのだ。良い喩えではないかもしれないが、例えば中小企業庁でRFIDの施策パンフレットを作ったらおそらくこんな感じになるだろうと思う。技術系の人にとっては偉い人たちがRFIDをどのようなフレームワークで理解するかの参考になるだろう。そのために英語の文献を読むべきかどうかは難しいところだが。

ISBN: 0849330181 / $79.95

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