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2007/04/30

RFID: Applications, Security, And Privacy / Simson Garfinkle他(編)

RFIDのプライバシーに関連する記事を32本集めた書籍。カバーする分野はとにかく広範で、プライバシー関連でこのテーマはどうなっているかな、という思い付きに対応する記事はとりあえずは見つかるだろう。分野だけではなく立場としても賛成から反対まで幅広い。特筆すべきは反対派の言論もきちんと収めてあることで、CASPIANのKatherine Albrechtもそれなりに(少なくともSPYCHIPSよりははるかに)読むに耐える記事を寄稿している。RFID反対派はそもそも議論の土台に乗ってこずにプロパガンダのみを声高に叫ぶことが多く、この種の記事は実は貴重だ。取り上げられているトピックスにも面白いものがある。「企業のプライバシー」という概念は今までRFID関係の雑誌で見たことがない。例えばスマートシェルフが導入された店舗で、ライバル企業のスパイが定期的に店を訪れて棚をスキャンすることで入れ替わった商品を知ることができ、それにより商品回転率を計算することができるという。なるほど道理だ。

この本の長所と短所は共に有識者による32本の記事を集めた書籍、という点にある。単純に記事を集めるだけならインターネットで検索しても似たようなものが作れるように思えるが、そこまでレベルの低い本ではない。すべての記事についてある程度のレベルが確保されているし、単発の記事では書けないような分野にも目が行き届いている。だが、なにぶん一つ一つの記事が短い。記事の中に面白いテーマを扱うものを見つけても、個々の記事のボリュームでは全然喰いたりないのだ。かといって記事はそれぞれ独立しているので、他の記事を読めば不足している部分が補われるというわけではない。

RFIDプライバシーの研究・調査が専業の人にとっては間違いなく必読の書籍だ。だが、そうでない人にとっては「それなりの厚さの割には…」と思えるかもしれない。この本が示す内容はプライバシー分野の問題意識も解決策もまだまだ混沌としている、ということであるので、自分に必要になったときには環境が変わっているだろう、と割り切ることもできるだろう。

ISBN: 0321290968 / $54.99

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