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2006/05/30

Daniel Engelsへのインタビュー(「『RFIDウイルス』のハッタリ」への補遺)

以前に取り上げたRFIDウイルスの話(「RFIDウイルス」のハッタリ)について、「あの記事を読んで心配しなくて良いことが分かりほっとした」という反応をいくつかのところで頂いた。そういうわけでもないんだけどな、と思いつつも上手く問題意識をまとめられずにいたが、最近になり良い記事を見つけたので紹介がてらコメントしたい。

RFID: At Risk from Viruses? - As part of an information system, even the lowly RFID tag is vulnerable.(MIT Technology Review)

このインタビュー記事の相手はDaniel Engels。オートIDセンターの創設者の一人でありEPCプロトコルの開発を担当した人物だ(現在はODIN Technologies勤務)。

ごくごく短い記事だしわかりやすい表現なので原文を読んでいただきたいのだが、僕が言いたかったことはまさに以下の通り。

It is incumbent upon the information system to authenticate the data and verify that the format and structure of the data are appropriate for the applications using it.

データを有効であると判定し、その書式・構造がアプリケーションでの利用に適切であることを確認するのは、情報システムの責任である。

RFIDウイルスの記事で僕が引っかかったのは、短いバイト数の中に自己複製コードを収められるとするために不自然な仮定を重ね、なおかつ扇情的な取り上げ方をしたからで、RFIDシステムが安全だと思っていたからではない。タグのデータの取り扱いかたがいい加減であれば、システムをハングアップさせるタグやシステム中のデータを破壊・消去するタグは簡単に作れてしまうだろう。

その意味で、RFIDのデータ構造、例えばEPCなどが持つ潜在的な脆弱性(もし存在するのなら)をきちんと評価していく地道な作業が研究者に必要とされているのだと思う。もちろん実務側の人間は既知の脆弱性をアプリケーションに作りこまないようにする必要があるのは言うまでもない。

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2006/05/22

ニューヨークの非接触決済システム事情

最近ニューヨークでは非接触決済システムの宣伝がカード会社側・店舗側の両方で目に付くようになってきた。Mastercard PayPassやAmerican Express ExpressPayなど、日本のニュースでも取り上げられているのではないかと思う。が、どんな風に利用されているのかというのはRFID Journalを毎号読んでいてもピンと来ない。日本のニュースだけではなおさらだろう。なので、印象論になるが簡単にニューヨークでの事情に触れたい。

まず店舗側。ニューヨークではDuane ReadeとCVS Pharmacyの2つの大手ドラッグストアがサポートしたのが大きい。日本で言うなら大手コンビニチェーンがサポートを始めたというぐらいのインパクトがあるのではないか。この他にマンハッタン内の大きめのMcDonaldはほとんどサポートしているし、チェーンの映画館でも旗艦店で利用できるようになっている。トライアルレベルはもちろん通り越し、無いと不便というほどではないが「持ってると便利かな」と多くの人が思うレベルには達していると思う。ニューヨークではこの夏から地下鉄でPayPass仕様に基づく改札のトライアルが始まるので(但しPayPassのシステムには繋がらないのでトライアル参加者しか利用できない)、大規模導入に向けた先行投資という側面があるのだろう。

一方カード会社側。アメリカの非接触決済システムは基本的には電子マネーではなくクレジットカードの小額決済($25以下)手段という性質を持つ。一応プリペイドカードがあったり決済用のキーホルダーをメインのカードの他に持てるようにはなっているそうだが、カード会社はそれらを全然宣伝していない。今のところ消費者に認知されているのはクレジットカード内蔵方式のみだろう。ニューヨークで認知があるカードはChase BlinkとAmex Blueシリーズ。まだまだ選択の幅が狭い。今年の夏にかけて小売チェーンなどがストアカードとの複合機能を持つクレジットカードを投入すると言われているので、それに期待というところだろうか。

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2006/05/14

QDR(Quadrennial Defense Review)とRFID

QDR(Quadrennial Defense Review)とはアメリカ国防総省が4年ごとに作成する国防戦略見直しレポートのこと(DoDの公式サイト)。表紙も含め113ページのボリュームの中に米軍の現状認識だとか対応策だとかがきっちりと詰め込まれている。

もちろんQDR全体のレビューをするのはこのBlogでは全然場違いなので興味をお持ちの方は全体を対象とした記事を見つけていただきたい(例えばやじゅんの世界ブログ:QDR(Quadrennial Defense Review)について思ったこと)。このBlogでQDRを取り上げるのは、RFID Journal LIVE!で米軍の担当者がQDR中でRFIDについて触れた個所があると発表していたからだ。QDRはPDF形式で簡単にダウンロードできる(ダウンロード先)。ロジスティクスに関する記述は1ページほどの分量で、単語自体は平易なのだが、特殊な概念に関連すると思われる部分があり気が抜けない。用語を確認しながら試訳を作ってみたので興味がある方は目を通してみて欲しい。経営的な視点が明確になっており、軍事や政治に興味が無くても得るものはあると思う。RFID関連の技術として取りげられているのが業界で騒いでいるいわゆるDoD Mandateではなく軍用機部品の在庫可視化であることが興味深い。

Managing Supply Chain Logistics

2001年のQDRを受け、国防総省は部隊の維持・展開のための有効性・効率性の向上を目的とした多くのアクションを開始した。これらのアクションは展開プロセスの改善、そしてロジスティクスの範囲と関連するコストの削減のための努力を含んでいる。また国防総省は、司令部に対し、統合されたロジスティクスの全体像を提供するために努力しており、ロジスティクスの意思決定ツールの作成を加速している。過去4年間に国防総省はロジスティクスシステムの決定、ドクトリンや部隊構成の要件定義などの作業を進め、実地の運用と実験の統合のレベルを引き上げた。加えて、既に述べたように、国防総省はロジスティクスの業務手順を、現行の作戦の必要性に適応したものに変更しつつある。

これらのアクションの結果として、国防総省は能力に基づいたロジスティクス手法への移行に向けて大きく進歩した。このQDRでは、国防総省はサプライチェーンロジスティクスのコストとパフォーマンスの可視性を高めること、そして継続的なパフォーマンス改善の基礎を築くことに焦点を合わせた。これらの目的を達成するための最初の戦略は、資材とサプライチェーン内での活動を紐付け、発生するコストを理解することである。また、国防総省は、民間のサプライチェーンの測定基準を評価し、資材の配送に必要なコストと所要時間を引き下げる目標値として利用できるかどうかを判定する必要がある。有望な既存のアクション、例えば単独の展開プロセス責任については、改善を継続し加速しなければならない。

最後に、資金投入とプロセス改善の手引きとするため、焦点となるロジスティクス能力について現実的かつ戦略的なパフォーマンス目標値を設定する必要がある。

国防総省はサプライチェーンの要求を満たすことを目的とした多くのアクションを実行中である。例えば、アクティブおよびパッシブのRFID技術は、自動化された資材の可視性と管理とを通じ、軍用機を対象とする知識ベースのロジスティクス支援において、国防総省のビジョンを実現するために重要な役割を果たしている。RFIDは戦術レベルから戦略レベルまでのデータの共用、統合および同期を可能にするようにデザインされており、サプライチェーン中の全ての拠点に情報を提供する。この情報は、資材と即応性の間の因果関係についてのより優れた考察を与えなければならない。このような事実に基づく考察は、リーン方式・シックスシグマ・パフォーマンス基準のロジスティクスなどの継続的なプロセス改善手法の導入と組み合わせられることにより、国防総省のサプライチェーン全体を最適化する助けになる。

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2006/05/10

CDTのプライバシーガイドライン

アメリカのプライバシー擁護団体CDT(Center for Democracy and Technology)がRFID利用についてのガイドラインを作成したという記事がRFID Journalで取り上げられていた(Policy Group Spearheads RFID Best Practices)。これについては日本のサイトでも報道されている(日経ITPro:消費者プライバシ保護に重点を置いたRFID活用ガイドラインを公開)(computerworld.jp:米国消費者団体、RFIDのプライバシー保護ガイドラインを公開)。実はRFID Journal LIVE!ではCDTのセッションを最後の5分だけ(苦笑)受講することができ、ガイドラインの印刷版を貰ってくることができたのでその簡単な感想を。

ガイドラインはA4で11ページほどのあっさりしたもの(RFID Best Practice)。作成者にはIBMやIntel、Microsoftのようなベンダ、クレジットカード会社のVISA、米国図書館協会や全米消費者連盟などの団体が名を連ねている。内容はRFIDの正当な利用を前提としたもので、日本で議論になっている、例えば盗聴を前提として特定の利用方法を危険とするものではない。カバーするRFIDの利用範囲や用語の説明をした上で、収集する情報やその利用方法はきちんと消費者に告知しましょう、データやアプリケーションはきちんと保護しましょう、といった、いわば当たり前の内容が書かれている。が、RFID Journalの記事には全米小売業協会がこのガイドラインへの署名を拒否したと書いてある。

このような一般的なガイドラインのどこを不味いと思ったのかと思いつつ読み直してみるとそれらしい部分を見つけた。

Consumer choice about the use of the RFID technology

  • The consumer should be informed in a clear, conspicuous and concise manner when there is an option to remove, de-activate, or destroy a tag and, when there is, how that option may be exercised.
  • In such instances, the option to remove, de-activate or destroy an RFID tag must be readily available to the consumer and readily exercised.
  • By exercising choice to remove, de-activate or destroy a tag, the consumer's ability to return an item, benefit from a warranty, or benefit from the protections of local law should not be compromised. Exercising this choice should not result in any damage or defect to a product

つまり、消費者はタグの取り外しを要求できるし、それによって返品やユーザーサポートで不利な取り扱いを受けてはならない、と規定されている。

なるほど、これはちょっと厳しい制限だ。例えばアメリカの小売業界のRFID導入の目的の一つとして不正返品の防止が考えられている。アメリカでは返品の制限がゆるく、多少日が経ったり少し使ったものでも簡単に返品ができる。これを悪用し、個人レベルでの小規模な盗難では、盗品を返品センターに持ち込んで換金するという犯罪がかなり存在するそうなのだ。確かに個人がこれらの品物を闇ルートで換金しようとするとひどく買い叩かれるだろう。タグの取り外しを拒否できず、そのための不利益も許されないとすると、不正返品の防止にはRFID技術を利用できない。

個人的な感想を言うとこれはやりすぎではないかと思う。プライバシーと利便性の両立ではいくつもの技術的な取組みがなされているわけで(computerworld.jp:IBM、無線到達範囲を変更できる新RFIDタグを発表へ)、そういった可能性を無視するのはいかがなものか。ただ、一方でそこまで思い切らなければ消費者の信認を得られないのがアメリカの実情なのかもしれない。

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2006/05/08

CompTIA RFID+ベータ試験合格

アメリカのIT業界団体CompTIAが、主にSlap and Shipを対象としたエンジニア認定資格RFID+の試験の提供を開始した。RFID Journal LIVE!でもトレーニング会社RFID4Uと提携したセミナーが開催されていた(通常は3日程度のコースを1日に詰め込んだようでかなり駆け足だったそうだが)。この試験の概要については日経ITPro:ICタグ導入の“現場”の知識を測る米国新資格に詳しい。

僕もこの試験のベータ試験を去年受験しており、先日合格通知が届いた。900点満点で合格点が630点のところ786点。ほとんど手がかりのない状態から準備して受験した割にはまずまずの成績だったなと思う。間違えた解答があった分野は以下の通りとのことだ。

  • 2.2 Identify reasons for tag failure
  • 9.1 Describe installation and configuration of RFID printer
  • 9.2 Describe ancillary devices/concepts
  • 1.3 Define anti-collision protocols (e.g. number of tags in the field/response time)
    4.2 Given a scenario, select the optimal locations for an RFID tag to be placed on an item
  • 6.1 Given a scenario, describe hardware installation using industry standard practices
  • 6.2 Given a scenario, interpret a site diagram created by a RFID architect describing interrogation zone locations, cable drops device mounting locations
    7.1 Given a scenario, demonstrate how to read blueprints (e.g., whole infrastructure)
  • 1.4 Given a scenario, solve dense interrogator environment issues (domestic/international)
  • 5.1 Given a scenario, predict the performance of a given frequency and power (active/passive) as it relates to: read distance, write distance, tag response time, shortage capacity
  • 7.3 Given a scenario, analyze environmental conditions end-to-end
  • 2.1 Given a scenario, troubleshoot RF interrogation zones (e.g., root-cause analysis)
  • 1.1 Describe interrogator functionality

後日合格者向けに認定証などのパッケージが送られてくるとのことで楽しみ。

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2006/05/07

Wal-Martキーノートスピーチ (RFID Journal LIVE! Day 3)

英語のカンファレンスに朝から夕方まで通しで出ると3日目には正直キャパを超えてしまう。2日目までと比べるとかなり荒いレポートになってしまうがご容赦されたい。

- Leveraging RFID Data to Create Business Value
 Wal-Martの情報システム担当副社長によるキーノートスピーチ。業界雀に「導入計画を持て余しているんじゃないの」などと言われながらも「店頭在庫切れの防止」という目標に向かい愚直に進んできた馬力に改めて感服した。現時点での対応サプライヤは300社であり、6月末にはGen1のサポートを打ち切って完全にGen2に移行する。
 店頭在庫切れの減少や補充作業の効率化については大学などの検証結果を参照しており、別セッションでの発表もあったようだ。大学の検証についてはいささか疑義がある。RFIDシステム導入の単純な費用対効果ではなく、他の方法で店頭在庫切れに対処した場合の機会利益と比較しないと本当にRFIDを利用すべきだったかどうかは分からないだろう。大学が検証作業に参加する意味はそういう第三者的な視点を提供するためのはずだ。
 個人的な興味としてはセンサータグによる生鮮品の品質管理に触れていたのに気になった。この分野でもWal-Mart主導で導入が進むのだろうか。

- Oracleのテレメトリックユニット
 展示ブースでのセッションでの発表。OracleのRFIDへの取り組みだが、同社のOracle Fusion MiddlewareがRFID単独ではなくセンサー機能を包括して取り扱うというコンセプトがなかなか面白いと感じた。また、Windows CEベースのテレメトリックユニットMicroedge Serverを発表していて、各種のセンサー・GPSを内蔵、衛星電話とGSMで世界中どこでも通信可能という仕様になっている。IBMとMearskがパイロット中のTrekに似ているが、Oracleがどこかのキャリアと組んでいるという話は耳にしない。海運会社と協力しないと現実的なテストはできないと思うのだが。

- Case Study: Securing Cargo with E-Seals
 三井物産によるSaviのE-Sealを中国~北米西岸トレードに適用した事例の発表。三井物産のRFID全般への取り組みにも触れられていた。今年のRFID Journal LIVE!でアジア企業のセッションというのはこれだけではなかったか。日本の事例を英語で発信していくことには大きな意味があると僕は思うので、この取り組みは素晴らしいと思うし、来年はより多くの日本企業がセッションでの発表を行うことを望む。

- RFID Standards for Freight Transportation in North America
 大学・海運会社・RFIDベンダからの3人のパネリストによるパネルディスカッション。一番期待していたテーマだったのだが内容はかなり薄く期待外れ。先日訳したRFID Journalの記事に付け加えるべき知見はほとんど出てこなかった。この分野は参加者が少ないため外からは本当に中身が見えにくい。

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2006/05/04

RFID@Work Gen 2 Demonstration Center (RFID Journal LIVE! Day 2)

RFID Journal LIVE!二日目。今日から本格的にいろいろな企業のセッションが始まる。朝から夜まで空き時間を作らずにセッションを受講したのだが、あまりピンと来なかったものもあり、面白かったものをピックアップしてレポートしたい。

- Securing RFID Systems

 大手ベンダThingMagis社の設立者が主にGen2タグのセキュリティについて語ったもの。最近RFIDのセキュリティ関連でセンセーショナルな報道が続いていたが、それらの報道の対象になった内容も押さえた上でセキュリティ全般にきちんと目配りをした内容で好感が持てた。RFIDの文脈でMan-in-the-Middle攻撃について語った資料を見るのは初めてのような気がする。 Gen2の評価は「現在のようなバックエンドでの利用であれば我慢できるが、ユビキタスやアイテムレベルタギングを睨むと不十分」というもの。妥当なところではないだろうか。そして、次世代のセキュリティとして必要な項目に、暗号の強化と認証の導入を挙げている。これも同意するほかない。

 個人的には電力解析攻撃についてのコメントを期待していた。上記のような文脈の中できちんと触れはしたものの、認証や暗号化に比べ優先度が低いということで僕が期待したほどには細かくは説明してくれなかった。きちんと聞き取れなかったのだが、電力解析攻撃の影響を受ける応答時間の遅延に付いてはプロトコルで定義がなされてないことが原因だが、ここをきちんと定義しようとすると通信速度が可変という柔軟性が失われる、と言っていた気がする。頭のどこかに入れておこう。

- RFID@Work Gen 2 Demonstration Center

 展示ブースで開催している20分程度の短いセッション。2箇所でやっていて、一つはベンダの共催、もう一つはRFID Alliance Labの主催。ベンダ共催の方は名刺を入れるとiPodが当たるようになっていて盛況だったのだが、内容はRFID Alliance Lab主催の方が面白かった気がする。僕が出た4つのセッションの内容は次のようなもの:

  • Gen1とGen2の比較。カタログスペック上は通信速度や通信距離の大きな改善があったGen2だが、実製品で比べてみるとタグやリーダーの製品の差が大きく、プロトコルによる差は観測できない。Gen1レベルの仕様でも実装技術が追いついていない感あり。
  • マルチプロトコルリーダーの動作。基本的にはGen1とGen2は全く別のプロトコルなので、タイムスライスなどで順番に読んでいくに過ぎない。Gen2タグのみが存在する場合はGen2専用モードにしないとパフォーマンスが下がり周波数帯域を無駄に使うことになる。また、マルチプロトコルモードではGen2のDenseモードが使えない。
  • 転送速度の最適化。Gen2ではFM0とMiller(M=2/4/8)の読み取り方式をサポートしており、読み取り速度は40-640kbpsと可変である。但し、現在入手可能なリーダーはこれらの読み取り方法を選択することができず、実質的にはユーザーによるチューニングは不可能である。
  • Gen2のQ値の動作原理や使い方。読み取り範囲内のタグの個数により理論的な最適値は異なるが、実際にはリーダーの修正アルゴリズムが上手く働くため、ユーザが明示的にいじる必要はほとんど無い。

- Tracking High Value Assets in Challenging Environments

 PowerIDというイスラエルの企業のセミパッシブタグ製品の説明。一般的なUHFパッシブタグ互換(Gen2には来年対応)なのだが、印刷技術で薄く折り曲げ可能な電池を取り付けており、読み取り距離や反応速度が劇的に向上するというもの。通常の環境ではアメリカの出力規制の下で純粋パッシブの読み取り距離が4mに対しPowerIDの製品は18mと。また金属や液体との共用にも強い。クレジットカードサイズで普通のタグよりちょっと厚め(だけど柔軟性あり)、電池寿命が1年程度で価格が1個150円というのは、潜在的には非常に大きなマーケットがある分野ではないだろうか。例えばオリコンなどの物流器材だ。印刷で電池を作成するといった特殊な印刷は日本メーカーも強そうな気がするのだが、日本でも開発の動きはあるのだろうか。

- Procter & Gamble's EPC Advantaged Strategy

 P&G GilletteによるRFID導入効果の評価。今後は製品をRFID適用によるROIのレベルに合わせて3グループに分け、それぞれに応じた導入戦略を取っていくと。

 今までのパイロットで特に効果的だったのはプロモーションや新製品の立ち上げであると。たしかにそれらでは店頭の動向がリアルタイムでつかめた場合に大きな効果があるのは分かる。しかし、例えば小売店に送ったPOPや陳列台が正しく展示されているかどうかとか、どうしてRFIDタグを付けるだけで分かるのだろうか?その当たりはもちろん独自ノウハウなのだから公開する必要はないのだが、何かごまかされている気がする。

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2006/05/02

RFID Acedemic Convocation (RFID Journal LIVE! Day 1)

5月1日から3日まで、RFID Journal主催の業界カンファレンスRFID Journal LIVE!がLas Vegasで開催されている。日経RFIDテクノロジ誌を含むいくつかの日本語メディアでも報道されるだろうけれど、個人的な参加の感想を書いてみたい。

初日に僕が参加したのはRFID Acedemic Convocation。これはRFID JournalとMITのオートIDラボが共催するイベントで、大学や企業の研究施設とユーザ企業とを集め、RFIDを取り巻く研究課題を確認しようという趣旨のもの。個人的にはこういう学際的な分野に強くなりたいと思っている。社会人で業務外の時間を割いてRFIDを眺めている以上、研究施設に勤めている人や実際の商談をまわしている人と同じことをしていても追いつける訳は無いので、自分がやることに意味がある分野を上手く見つけてすそれに注力しなければ。また、それにも関係するが、僕は今社会人大学院に通っていて、その卒論の題材をRFIDにしたいと考えている。そういう分野に役立ついろいろを~ホットなテーマとか人脈とか引用元にできる学会誌とか~入手できないかというのもあった。

結論からいうとやや期待はずれ。開催目的が「RFIDを取り巻く研究課題の確認」だったからか、普通の業界カンファレンスのセッションと変わらず、学術発表っぽい内容・作法があったわけではなかった(僕は学部卒で文系就職してしまったので「学会」の雰囲気というのはほとんど知らないのだが…)。また、メインの目的だったアクティブタグの分科会(3時間半)が中止され、30分ほどの全体発表に入れ替えられていたのは大誤算だった。

以下各発表の内容を簡単に。個人的な備忘になってしまうがご容赦されたい。

以下は全体発表。各セッションの所要時間は15~20分。

- Networked RFID and Sensors
 NISTの研究者による発表。IEEE 1451 (Smart Transducer Interface)を例にとり、標準化団体での標準策定のプロセスを説明。

- EPCGlobal Standards Update
 EPCGlobalとは何ぞや、とかオートIDラボとの関係とかを説明。

- EPCglobal Industry Development
 EPCglobalの中でのBAG(Business Action Group)の意義、具体的な作業内容、どのような業界団体がどうBAGを立ち上げているか、など。

- Multi-Hub Supply Chain
 IBMの研究者による発表。EPC-ISの役割と、信頼性の欠けた環境でのEPC-ISを利用する場合の限界。

- Business Application Perspective on Auto-ID Technology
 SAPの研究者による発表。Device-Oriented MiddlewareとData-Oriented MIddlewareを分離したSAP Auto-ID Infrastructureの解説など。

- HF/UHF Research Roadmap
 アイテムレベルタギングでマーケットリーダーを目指すTagsys社の立場から、HF・UHFのタグをどのような業界のどのような用途に使おうとしているかを説明。

- Introduction to AIM Global and ISO/IEC SC31
 遅れてきたそうでAIM Globalのミッションを簡単に説明して終わり。

- R&D Opportunities in the Aerospace Industory
 航空業界でのRFID利用を目的とするプログラムAero-ID(イギリスに本拠を置いているようだ)のさまざまな活動。航空機そのものの部品の管理、航空貨物コンテナの積み下ろし、旅客便の空港オペレーションなどさまざまな分野での適用可能性。

- Univ. Research in the Technology of RFID Tags, Readers and Applications
  Pittsburgh大学の研究者。RFID技術のうちどのようなものを研究対象にしているかの報告。

- Privacy and Opportunity in Passive RFID: Authentication Using CDMA
  Kansas大学の研究者。面白そうなテーマだったのだが時差ボケに耐えられず居眠りしてしまった…。

ここから分科会に分かれる。上に書いたように目当てのアクティブタグの分科会が中止になったため、EPCネットワークの分科会に参加。スケジュールにはパネルディスカッションとなっているも実際には通常のプレゼンテーション形式だった。

- Emerging Technologies for Business Value:
  インテルによる発表。物流器材中の階層構造に着目し(例:海上コンテナ→パレット→ケース→個品)、上位の器材が下位の器材の情報を包括する形で情報を提供し、かつそのタイミングは定期的なものと例外起動によるものの両方をサポートする必要がある。

- RFID Network (正式タイトル取れなかった)
 午前の全体発表にも参加したIBMの研究者による発表。RFIDに関するネットワークのさまざまな実例を述べる。ePedigreeには電子署名や認証が必須であるとか、EPCネットワーク中ではEPC-DSと呼ばれるEPC-ISのフロントエンドになるサーバが必要になるとか、面白いコンセプトもいくつか出てきた。

- Raining Date - Rationable information and intelligence
 SUNの技術者による発表。軍の指揮命令システムを例に取り、ヘテロなシステムが構成する分散環境で意思決定システムを構築する場合どのようなアーキテクチャを使うべきか、というもの。SOAとXMLとフレキシブルなインフラで…という至極普通のものに落ち着いてしまったが。

- Business Application Perspective on Auto-ID Technology(再)
 こちらも午前の全体発表に参加したSAPの研究者による再発表。新たな内容は、タグの読み取りによって自動的に発生するイベントを各種の業務アプリケーションに適用しようとする場合、莫大なセマンティック情報が必要になるというもの。なるほどその通りだと思うと同時に、SAPのようなERPベンダがRFIDに熱心な理由がようやく飲み込めた。こういったセマンティック情報を全社システムに対し矛盾無く定義するのはERPでないとほぼ不可能だろう。

- Building a Global RFID Network Simulator
 オートIDラボの助教授による発表。EPCネットワークの概念の説明。

 出る予定の無かったEPCネットワークの分科会だが中々面白かった。正直ほとんどのユーザ企業はEPCネットワークなんてまだ夢の世界だと見切っているだろうし、今回参加したのもどうやら普段から顔をつき合わせているインサイダーばかりだったようだ。そんな状態のレベルの議論を外部の人間が批評するのはフェアじゃないかもしれないが、正直言うとまだまだコンセプチュアルだなと。僕は運輸関係のシステムを少し知っているが、例えば輸送器材の階層関係とセキュリティとかも特殊な例外状況はおろか一般的なビジネスケースすら全部拾えてないのではないか。しばらくは様子見で不必要に振り回される必要はなさそうだ。

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