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2006/03/26

The Spychips Threat / Katherine Albrecht他 (著)

本書の前作のSpychips(以前の記事)はハードカバーだったがこちらはペーパーバック。それに見合って値段も安い。一般論として本が軽装になると言うことは多くの人に売れる・売りたいということだろう。どういう層に売りたいかということはサブタイトルが示している。「Why Christians Should Resist RFID and Electronic Surveillance 」。つまり以前の記事で書いた「宗教的な嫌悪感」・RFID技術は黙示録の獣の印だという恐怖感を煽ってキリスト教原理主義者の間にRFID反対運動を広げたい、というのがこの本の本来の目的だった。この本の出版はSpychipsが世に出た時点で予告されており、RFIDや一般IT系の雑誌コラムにはこの結びつきを警戒する論調が結構あったことを記憶している。が、実際に本書が発売された後は全然話題になっていない。Amazon.comで売上を調べるとSpychipsよりやや低いというレベルのようだ。どういうことだろうかと不思議に思っていた。

本書を一読して納得。これは愚書である。RFID技術に関する記述は前作Spychipsと同じで、違いはキリスト教とRFIDの関係についての記述になるはずなのだが、自分で付けたサブタイトルの問に全く答えられていないのだ。取って付けたような聖書の引用が最初と最後の章に入っているが、具体的にRFID技術が獣の印として計画されたものだという検証は無し。また、「不信心者が獣の印を身に着けるのは最後の審判と神の国が近づいた証拠だからキリスト者には歓迎すべきことではないか」という質問を自分で取り上げておきながらまともに反証できていない。確かにアメリカでのキリスト教では本来の教義と善きアメリカ人としてのライフスタイルが渾然一体となっている。しかし、単に「プライバシー侵害反対」という主張だけを行い(この主張自体は当然尊重されるべきだが)、まともにキリスト教の教義との比較もせずにこのサブタイトルを付けるようでは著者としての誠実さを疑われよう。

ぶっちゃけ、作者のKatherine Albrecht氏はキャリアを見る限りバリバリのリベラル活動家で、南部あたりのキリスト教原理主義者のことは愚民だとしか考えていないと思う。本書の中でも、CASPIANは宗教中立の団体であるとか、プライバシーの侵害は信教に関わらず全ての人に脅威だとか、その手の言い訳がましい言葉がいっぱい並んでいる。そういったインテリらしい踏み込みの弱さがこの本の説得力の低さに繋がっているのだろう。リベラル活動家とキリスト教原理主義者の共闘というのは簡単ではなさそうだ。

ISBN: 1595550216 / $14.99

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2006/03/17

海上コンテナでのRFIDの利用(6 of 6)

RFID Journalの海上コンテナでのRFIDの利用に関する記事、最終回です。先に(1 of 6)・(2 of 6)・(3 of 6)・(4 of 6)・(5 of 6)をお読みください。言ってることは正しいとは思いますが、煮え切らないと言えば煮え切らない、そんな感じの結論です。「電子シールの導入には関係機関の人材の充分な教育が不可欠」「アメリカ政府の中心的な関与がなければ進展は無いだろう」。確かにそうなんですけどね。
目的がセキュリティであることはある面でコストを度外視しての導入ができるということでもありますが、反面中途半端は意味が無いということにもなります。私は海上コンテナのマーケットは国土安全保障省主導で早期に立ち上がるかと思っていたのですが、その見方を考え直す必要がありそうです。

今回翻訳分の記事のURLはこちら↓
http://www.rfidjournal.com/article/articleview/2120/6/82/

強制無しの規制は無意味

「信頼せよ、しかし、検証せよ」というのは税関国境保護局の決り文句だ。フォーラムの参加者は、C-TPATの応募者が申請した技術や手順を実際に利用しているかを確認するためにアメリカ政府がリソースを投入すべきことに同意した。しかし、C-TPATの認証を受けた後でさえも、幾つかの会社はコストを削減したり厳密な手順を避けたりしたいと考える。適当な抜け道を探したいというのは人間の本能である。ある参加者は「コンテナシールはしばしば運転手に手渡され、荷積みを終えた後に自分で封印するように指示される」と語っている。税関国境保護局はC-TPATの認証を受けた企業を再審査することを約束しているが、再審査はまだ行なわれていない。

会議の参加者は、強制に向けての公的部門での更なる投資に加えて、公的・私的両部門において貨物セキュリティ技術と政策についての教育への投資が、結果を出すために必要であると同意した。最も適切に設計された電子シールであっても、それを利用する人間が充分に扱い方を知らなければ正しく動作しない。「シールの取付者と検査者はありうる攻撃シナリオについて実物を使ったテストに参加する必要がある」と参加者の一人は述べた。

そしてもし災害が避けられないとしたら? 最後の、しかし最良のセッションでは、災害の管理方法を公的・私的部門の人間にトレーニングを行なう必要性が強調された。このセッションではCrisis Simulations International社(CSI)が開発した革新的な新しい危機シミュレーション製品のデモが行なわれた。このデモはCSIが作成したオレゴン州ポートランド市でのケースを扱ったものだった。これは市の指導者を対象にしたもので、市の公共交通機関にテロリストの攻撃が行なわれた場合の危機管理を体験するためのものだ。会議の参加者から2人が参加して市長と警察署長の役割を演じ、橋の爆破を生々しく再現したシナリオで市に求められる役割を果たすために協力した。彼らのそれぞれの決断は大スクリーンに映し出され、観客は釘付けになった。

「典型的な企業・政府組織内での危機管理演習は、参加者それぞれの役割に応じた一連の作業手順を記憶すること、そしてめまぐるしく変わる環境のもとで他者と最低限の相互作用が必要とされる」とCSIの上級取締役Chris Hatziは述べた。「それらの演習はは他者の決断による驚きを充分に入れていない。当社のシミュレーションでは、特許出願中のDXMA技術により、実際に起こりうる実世界の混沌を取り扱うことができる。それは高位のリーダーがリアルタイムで対応しなければならないものだ。」

貨物のセキュリティは共通の義務

eyefortransport主催の"North American Cargo Security 2005 Forum"では、どれだけの投資が「充分な」貨物の保護に必要かどうかについて明確な結論が無く終わった。しかし、全ての参加者はやるべきことが多数残っており、アメリカ政府が中心的な役割を果たすべきことに同意した。YRCのScott氏は次のように述べた:「荷主も物流業者も自らの正当な責任は喜んで果たすだろう。しかし、貨物のセキュリティのためにやるべきことは莫大だ。国際物流がますます競争的になり設備が混雑するなかでは、政府による優先順位付けと費用の分担が鍵になる。」

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2006/03/16

海上コンテナでのRFIDの利用(5 of 6)

RFID Journalの海上コンテナでのRFIDの利用に関する記事、5回目です。先に(1 of 6)・(2 of 6)・(3 of 6)・(4 of 6)をお読みください。今回分は「標準ができたら、それでどうなの?」という話です。電子シールができたとして、企業だけではなく各国の公的機関も対応する必要があるわけで、予算をつけるだとか正式な封印とみなすために法律を改正するだとかで10年ぐらいはすぐにかかってしまうと言うのはその通りだと思います。後は、全体最適を待つのではなくアメリカが単独で導入してしまうのか、ということなんですが、まぁアメリカが腹を括れば他の政府はともかく輸出企業や物流企業は対応せざるを得ないので急速に普及が進むというのも事実でしょうが。

今回翻訳分の記事のURLはこちら↓
http://www.rfidjournal.com/article/articleview/2120/5/82/

電子シールのISO 18185標準が公布されればコンテナは安全になるだろうか

フォーラムの参加者はこの標準が最初の確かな一歩だと考えているが、この先にやるべきことが山積していることも理解している。まず、港湾などのコンテナ取り扱い施設はリーダーと必要なインフラに投資しなければならない。相互運用性のテスト、財政的な支援、法律の制定などが公的機関の機器の購入に必要とされ、それらには10年あるいはそれ以上の時間がかかるだろう。

次に、ISO 18185が(いまだ議論中である)データの暗号化と整合性を提供できるとしても、他の技術や標準が開発される必要がある。電子シールは許可されない侵入を検出することができるが、その結果を知ることはできない。同様に、コンテナの横にある穴を見つけることもできない。さらに、どのような追跡データを誰に(例えば国土安全保障省のような機関に)提出するかも定義しなければならない。また、レポート作成システムにも支出が必要である。

最後に、コンテナ関連技術は貨物のセキュリティを向上させるために必要な技術のうちの一つに過ぎない。同等あるいはそれ以上に重要なのは、海外部分の情報の収集である。物流企業YRC Worldwideの国際部長であるSandra Scott氏は「役に立つのはギャップ分析だ」と述べている。

国土安全保障省はコンテナ技術開発のための初期費用を拠出する

国土安全保障省は先端的なコンテナセキュリティ技術と分析ツールの開発を加速するためにいくつかの計画を立ち上げた。それらの計画のうちいくつかはベンダーのコンペを含んでいる。計画の一つは「高度なコンテナセキュリティ機器」と呼ばれ、コンテナの6面全てと危険品の監視・報告に焦点を絞っている。別の計画は「未来のスマートコンテナ」と呼ばれ、海上コンテナ追跡タグシステム(MATTS)というシステムのサポートを行なう。これはコンテナに取り付けられたタグの信号をまとめて積み重ねられた場合でもはっきり送受信し、人工衛星を用いて現在位置の把握と送信を行なうと言うものである。「安全なカートンのための計画」は、複合輸送中でも籠の中の個別の箱を監視しようというものである。

市場のニーズや国土安全保障省の奨励策に応えるため、大小さまざまの企業が施錠・追跡・監視・報告・管理などさまざまな目的を持つ多くの電子製品を開発している。12月のフォーラムでは4社のアメリカ企業がそれら製品を展示していた。Container Security Inc.、iControl Inc.、Sciguard及びSafefreight Technologyである。

明らかになりつつある新たな規則

多くのアメリカの輸入者がC-TPATへの参加を拒否しており、コンテナシールと追跡技術の標準化のペースがゆっくりしたものであるため、アメリカの輸入貨物の均一な保護は何年も先の話のように思える。だが、この状況は変わるかもしれない。「税関国境保護局の命令に注意しておくように」とDoug Doan氏は述べた。彼は国土安全保障省の国境・輸送安全のビジネス案件の前渉外担当官である。税関国境保護局による導入の義務付けの見込みこそが、疑いなく多くのコンテナ関連ベンダーがこの分野のビジネスを諦めていない理由である。

(6 of 6に続く)

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2006/03/14

海上コンテナでのRFIDの利用(4 of 6)

RFID Journalの海上コンテナでのRFIDの利用に関する記事、4回目です。先に(1 of 6)・(2 of 6)・(3 of 6)をお読みください。今回の記事でいよいよISOの各種の規格が出てきました。記事に含まれていない説明も含め、出てきた規格を紹介しておきましょう。

  • ISO PAS 17712 - コンテナを封印するための物理シールの規格。電子的なものは含まない。
  • ISO 18185 - コンテナを封印するための電子シールの規格。ISO PAS 17712に準拠予定。読取専用。パッシブ862〜928MHzとアクティブ433MHzが提案されているが2.4〜2.5GHzを提案する陣営が出てきて混戦模様。
  • ISO 10374 - コンテナそのものの識別に用いるためのRFIDタグの規格。読取専用。パッシブタグで850〜950MHzと2.4〜2.5GHz。標準化済だが普及はしていない。
  • ISO 17363 - サプライチェーン中での輸送容器としての視点からのRFIDタグの規格。サプライチェーンでのRFID利用は個品からコンテナまでシリーズで審議中であり、ISO 17363〜17367という番号が振られている。ISO 17363自体は読み書き可能な433MHz帯アクティブタグとして提案中。

また、今回出てきた内容に関する資料として、以下のようなものをお勧めしておきます(どちらもPDFです)

ECOM News No.7
http://www.ecom.jp/news/ECOMNewsNo7.pdf

物流業界における電子タグ実証実験
http://www.meti.go.jp/policy/it_policy/tag/tag_jisshou/logistics01_.pdf

今回翻訳分の記事のURLはこちら↓
http://www.rfidjournal.com/article/articleview/2120/4/82/

コンテナセキュリティ技術の採用には国際標準が不可欠

世界税関機構では物理シールの仕様としてISO PAS 17712を支持している。ISO/PAS 17712はまだ批准されたわけではないが、既に実質的な標準として利用されている。世界税関機構の判断に基づき、アメリカ税関国境保護局でもISO PAS 17712の利用をC-TPAT参加の条件としている。

電子シールの利用はC-TPATで義務付けられているわけではないが、幾つかの企業は電子シールを利用している。最近ボーイング社などの先進企業のグループが税関国境保護局の要請を受けて電子シール利用のトライアルを開始した。ボーイング社のC-TPAT担当課長であるKen Konigsmark氏は海上貨物で2種類の電子シールをテストしたと述べた。一つは自社製であり、もう一つはGE製のCommerceGuardである。さらに、氏は税関国境保護局は2006年の第一四半期に本件および他のトライアルの結果を発表するだろうと述べた。

電子シールは物理シールに比べて明らかに多くの利点を持っている。電子シールはコンテナの識別に用いることができるし、コンテナへの侵入を自動的に検知することができる。さらに、電子シールはセンサーと接続することができ、取り付け面とは異なる面からの侵入や、更には放射性物質・化学・生物学上の危険の判定にも利用することが可能である。

しかしながら、電子シールの国際標準は幾つかの枝分かれのためまだ公布されていない。第一に、すべての国で電子シールのために利用できる共通の周波数が存在しない。McGuire氏は「世界税関機構は各国の制度を揃える必要がある」と述べた。次に、異なるベンダーの製品の相互運用性は保障されていない。最後に、ほとんどのコンテナ取り扱い施設では電子シールのリーダーなどのインフラを整備する費用を正当化できない。

その結果、世界中で利用できる電子シール製品は存在しない。何人かの参加者は「電子シールの利用に必要となる大規模な投資は現在では割に合わないだろう」と述べている。加えて、電子シールの機能についての国際的なコンセンサスも存在しない。サプライチェーンのソリューションプロバイダCNF社の副社長Randy Mullett氏は、「幾つかのコンテナセキュリティ製品のメーカーでは、標準が存在しないため複数の独立した技術を組み合わせた『スイスアーミーナイフ』のような製品を出している。このような製品は現実的な価格にならない」と述べている。

電子シールのISOでの標準化には時間が必要

ISOはコンテナの電子シールの規格ISO 18185の標準化に6年もの間取り組んでいる。この規格はISO 18000「品物管理のためのRFID」グループに含まれる。ISO 18185は上で述べたISO 17712に適応することになるだろうが、コンテナへの侵入や破壊の証拠は物理的にではなく電子的に記録されることになる。ISO 18185で利用されるタグは読み取り専用で、価格、読み取り距離や機能の違いに対応するためパッシブとアクティブの両方のプロトコルが含まれる。パッシブでは862〜928MHzのUHF帯がおそらく利用され、アクティブでは長く米軍がコンテナ追跡に利用してきた433MHz帯が提案されている。だが、アメリカを含むヨーロッパ以外の国では433MHz帯の海上コンテナでの利用はまだ認められていない。

2005年中に重要な進展があったが、ISO 18185の発効にはまだ時間がかかる。ISOではTC104と呼ばれる専門委員会が海上コンテナ関連の標準化を担当しているが、そのTC104への新規参加メンバーが現時点での規格の内容に疑問を呈した。疑問の中にはデータの整合性や暗号化による機密性といった機能の欠如などが含まれており、これらの提案を取り扱うためにテスト期間が延長された。

コンテナ追跡を目的とした自動コンテナ識別のためのISO標準は既に存在している。90年代の前半に作成されたISO 10374という規格であり、読み取り専用のパッシブタグで850〜950MHzと2.4〜2.5GHzの二つの周波数帯に対応している。コンテナ追跡技術はセキュリティの向上に役立つが、それは電子シールとは別の技術であり、世界税関機構でもアメリカ税関国境保護局でも利用が勧告されているわけではない。現時点ではISO 10374に対応したタグを取り付けているコンテナはごく僅かである。ISOでは、コンテナの耐用期間中メンテナンスなしでタグを利用できるようにという要求に応えるため、ISO 10374の開催作業を行なっている。また、荷主と荷受人の間で利用される読み書き可能なコンテナタグとして、ISO 17363の標準化も進んでいる。

(5 of 6に続く)

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2006/03/12

海上コンテナでのRFIDの利用(3 of 6)

RFID Journalの海上コンテナでのRFIDの利用に関する記事、3回目です。先に(1 of 6)・(2 of 6)をお読みください。少しだけスマートコンテナの話は出てきますが、まだビジネス上の要件の話題が中心です。

今回翻訳分の記事のURLはこちら↓
http://www.rfidjournal.com/article/articleview/2120/3/82/

C-TPATに参加することによる税関国境保護局以外からのメリット

税関国境保護局が提供できるメリットが僅かなのであれば、なぜ企業はC-TPATに参加するのだろうか? P&G・ボーイング・スターバックス・Kmartなどからの参加者は、ビジネス面で充分な意味があると強調した。C-TPATに参加することは貨物の安全についての「道徳的な義務」を果たすことであり、自社のブランドを守ることになる。もしも自社の貨物がテロリストの攻撃に関係していたり異物の混入がなされていた場合、それが消費者への被害に繋がればその企業への信認は破滅するだろう。

だが、アメリカの輸入者5万社のうちC-TPATに応募しているのは4千社に過ぎない。全ての輸入者が高額貨物を扱っていたりブランドイメージに依存していたりするわけではなく、多くの中小業者はC-TPATに対応するための手間や費用を出すことに乗り気ではない。これはリスク要因になる。Saks Fifth Avenueの前副社長Ray McGuireは「サプライチェーンのうちC-TPATに参加していない企業が担う部分は特に脆弱である」と述べている。

貨物セキュリティへの支出は効率化に繋がるか

貨物セキュリティへの投資がサプライチェーンの効率化に繋がると示すことが出来れば、貨物セキュリティへの投資を正当化することはずいぶん楽になるだろう。何人かの参加者は既にそのような事例を持っている。P&Gとスターバックスの代表者は電子化された貨物追跡システムのトライアルの中でセキュリティと効率化の相乗効果を得られたと語った。P&Gの通関担当チームのRon Miller氏は「RFIDは加工・流通管理を確実にするだけではなく、必要な作業量も減らすことが出来る。貨物に触るとコストが発生する。貨物ごとに発生するコストは貨物に触れることに依存している」と述べた。P&Gは全ての取引企業にC-TPATへの参加を義務付けている。

スターバックスは「喋るスマートコンテナ」を利用し、同社の高品質なコーヒーの生豆や茶葉の清潔さや新鮮さを保障している。加えて、ある出展者は、アメリカの輸出入企業トップ100社の調査の結果、自動的に追跡が出来るコンテナを利用することによる利益はコンテナ一本当たり1,150ドルになると指摘した。この利益は在庫の削減や在庫切れの予防、そして作業待ち時間の減少と設備使用率の向上によるものとしている。

しかし、会議に参加した運輸業者は機材・システムの開発者に対し、貨物のセキュリティに関する要求と輸送機材の有効活用に関する要求を明確にするよう強調した。ある参加者は世界海運評議会(World Shipping Council)がこの問題について述べた資料に触れた。2004年に世界海運評議会が発行した報告書では、「コンテナ内部への許可されない侵入を防ぐための電子シールは、読取専用であり再利用は許されない。もしも提案にあるように電子シールにマニフェストや他の船積書類を格納できるようにした場合、セキュリティ面での脆弱性は非常に大きくなる」としている。

報告書はさらに以下のように続けている。「電子シールは物理シールと同様に税関などで内部の検査を行なうために輸送中に頻繁に破壊される。もしも電子シールに書き込み能力を持たせ、開封後に再度利用できるようにするなら、それは脆弱性を減少ではなく増大させてしまう。再利用のためには書き込みの権限を多くの関係者に与える必要があるが、その権限が漏洩せず適切に管理されているかどうかを把握することは不可能なので、データの改竄やその他のセキュリティ面での脆弱性を排除することができない。加えて、データの書き込みを許すことは、セキュリティの強化に一切役立たないままコストを大幅に引き上げることになる。

(4 of 6に続く)

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2006/03/10

海上コンテナでのRFIDの利用(2 of 6)

RFID Journalの海上コンテナでのRFIDの利用に関する記事、2回目です。先に(1 of 6)をお読みください。但し、まだRFIDの具体的な利用の話は出てきません(笑)。このあたりの内容については以下の記事が参考になるでしょう。

関税局「国際貿易のセキュリティ強化に向けた国際的な取組みについて」
http://www.mof.go.jp/finance/f1704h.pdf

今回翻訳分の記事のURLはこちら↓
http://www.rfidjournal.com/article/articleview/2120/2/82/

9/11以降のアメリカの4つの取組み

9/11以来、アメリカ政府は自国の管轄下での規制の基準を整備すると共に、他の政府と共同して国際的な基準の整備を行なってきた。

税関組織はこのような規制の適用で中心的な役割を果たしている。世界税関機構(World Customs Organization, WCO)は最近「国際貿易の安全確保及び円滑化のための『基準の枠組み』」を策定した。この『基準の枠組み』では各国政府に対し、自国のセキュリティガイドラインを満たす荷主や輸送会社をオーソライズドオペレーター(authorized economic operator, AEO)として認める仕組みを作るよう要求している。AEOとその取引企業は「信頼済み」とみなされ、貨物の通関作業の簡略化が認められる。この仕組みにより、各国の税関は信頼度の低い貨物の調査に重点的に取り組むことができる。

WCOの取組みに合わせ、アメリカでは国土安全保障省の税関国境保護局が以下のような4つの取組みをはじめた。(1)C-TPAT(Customs-Trade Partnership Against Terrorism)、これは輸入貨物を対象とした船社・フォワーダー・荷主の任意ベースでの取組みである。(2)海上コンテナ安全対策(Container Security Initiative, CSI)。これは港を中心とした税関と税関の間での取組みである。(3)Smart Box program。これは海上コンテナのセキュリティを高める技術を支援する取組みである。(4)Advanced Trade Data Initiative(ATDI)。これは荷主に対し船積書類を船積み前に提出することを義務付ける取組みである。これらの取組みが組み合わさって、サプライチェーンにかかわる企業や貨物の内容を詳細に知ることが出来る。税関国境保護局は高度な分析ツールを用い、これらの情報を元に危険性の高い貨物を把握することが可能になる。そして、X線やガンマ線のような非破壊検査技術を用いてそれら危険な貨物を調査することが出来るのである。また、貨物のトラッキングや封印技術の高度化により、危険物の混入を防ぐことも出来るようになる。

12月のeyefortransportの会議では参加者の関心はC-TPATに集中した。企業は自社と取引先のサプライチェーン関連業務が標準的な評価基準を満たすことによりC-TPATに参加することができる。必要な業務の一つは海上コンテナに取り付けるコンテナシールをC-TPATが指定したものにすることだ。現時点ではこれらコンテナシールは物理的なもので、新しい電子的なシールは指定対象になっていない。だが、税関国境保護局は電子シールの利用を促しており、将来は利用を必須にするかもしれない。

C-TPATに参加するメリットは何か?

C-TPATの参加条件を満たすためには、世界中から情報を集めなければならず、プロセスや取引先の変更も記録しなければならない。これらはどれもかなりの費用のかかる作業である。カナダの物流企業H&R Transport社の副社長Stephen Evans氏は、コンファレンスの席で、最近の調査によるとカナダの物流企業だけで4億ドルをC-TPAT対応のために支出していると述べた。

それでは、C-TPATに参加するメリットは何だろうか?税関国境保護局によると最低4つのメリットがある。輸入貨物の検査回数の減少、「グリーンレーン」を利用できることによる国境・港湾での迅速な手続き、災害時に閉鎖された港湾での再開時の優先的な取り扱い、そして書類のペーパーレス化。現時点で実現しているのは検査回数の減少のみである。

検査回数の減少が輸入業者の費用の削減に繋がることは疑いがない。RFID技術による国際物流分野でのセキュリティシステムを提供するContainer Security社によると、ある大手小売業者では貨物の非開封検査を受けないで済んだ場合、コンテナ当たり300ドルのコスト削減になるとしている。これは貨物が早く到着すること、および検査に対応するための人件費が節約できることによる。開封検査を受けないで済む場合には、コスト削減額は1,000ドルになる。この小売業者では全体の20パーセントのコンテナが調査の対象になっている。

だが、実際にC-TPATへの参加は検査の減少に繋がるのだろうか?いくつかの企業はそうだといい、他の企業は確信が持てないとした。だが、全ての企業は、グリーンレーンが広く利用可能になった場合にははっきりとした違いが出てくるだろうことに同意した。しかし、現時点では、グリーンレーンは何ヶ所かの国境で利用できるに過ぎず、港湾には一つも設置されていない。既に多くの国境や港湾は非常に混雑しており、そこにグリーンレーンを導入するには多額のインフラへの投資を行なうか、何か考えつかないようなアイデアを捻り出して既存の貨物と共存させるしかない。国土安全保障省の元高官は「グリーンレーンは高校生にとってのセックスのようなものだ。誰もが話題にするが誰も実際にどうやるかは知らない」と語った。続いて壇上に立った税関国境保護局の担当者は、グリーンレーンをすぐに設置する予定はないと述べた。

連邦議会を通じて改善の動きがあるかもしれない。Supply Chain Operations Preparedness Education SCOPE)の代表であるIrvin Varkonyi氏は、North River ConsultingのMichael Wolfeが作成した「グリーンレーン会場貨物セキュリティ法」の現状に付いて述べた。この法案はワシントン州選出の民主党議員Patty Murray氏と、メイン州選出の民主党議員Susan Collins氏により昨年11月に上院に提出された。「議会はグリーンレーンの控えめな導入でさえも予算の割り当てが必要なことを理解している」と彼は述べた。「法案は正しい道を進まなければならない。業界が実際に投資できないような分野で何かを約束してはならないし、メリットなしで規制に従うことを要求することもできない」。彼は、この法案が「何らかの形で」今春に可決されると予言した。

(3 of 6に続く)

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2006/03/08

海上コンテナでのRFIDの利用(1 of 6)

RFID Journalに掲載された国際物流(主に海上コンテナ)分野へのRFID技術の適用の記事の翻訳を掲載します。この記事はゲストコラムなので日経RFIDテクノロジ誌にはまず転載されないでしょう。しかし、この手の情報は日本ではまだ充分に流れておらず、これだけレベルが高くまとまった記事が日本で注目されないのは損失です。いちおう全訳しますが内容については保障できないので興味をもたれた方は必ず原文に当たってください。元記事のページ構成に合わせ全6回とします。今回の記事のURLはこちら↓

http://www.rfidjournal.com/article/articleview/2120/1/82/

国際物流の難問

by Leslie K. Downey

貨物のセキュリティを「適切に」判断できるようにするためには何が必要なのだろうか?電子的なコンテナシール(コンテナの封印)は妥当な投資だろうか?

これらの質問は、eyefortransportの主催によりワシントンで開催された"North American Cargo Security 2005 Forum"で取り上げられたものだ。このフォーラムにはボーイングやP&Gといった大手荷主のほか、船社や物流業者、またITベンダやコンテナシールのメーカーが参加した。全ての参加者が一致する結論が得られたわけでないが、この分野におけるアメリカ政府の投資の増加が民間企業の投資の増加に必要であることには同意が得られた。

9/11以降の貨物セキュリティ分野での地殻変動
会議に参加したサプライチェーンのセキュリティの責任者たちは、貨物のセキュリティの目的が9/11以降変化したことに取り組んでいると語った。9/11以前は貨物セキュリティといえば盗難防止と密輸対策であったのが、テロリストとの戦いに変わったのだ。この新たな脅威は評価が極めて難しい。テロリストが大量破壊兵器をアメリカ向けの貨物に忍び込ませることに成功した場合、それが多大な人命の損失と経済の破壊に繋がることに疑う余地は無い。9/11以来アメリカでは大規模なテロは発生しておらず、複数の発言者は油断が広がっていることを認めた。幾つかの会社ではコスト削減圧力のためセキュリティ関係の予算が削減され始めている。

従来より脆弱になったサプライチェーン
アメリカの企業が貨物セキュリティへの支出を渋りつつあることは、多くの出席者に憂慮された。9/11以降のセキュリティ改善への努力にも関わらず、アメリカの企業のサプライチェーンの脆弱性は増しつづけてきる。

その理由は何か。まず、世界の貿易はここ数年年率10%で増加している。貨物の90%を輸送するコンテナの個数から見た場合でも、年間の増加率は7%だ。さらに、アメリカの輸入は輸出以上のペースで増加している。2005年にアメリカに輸入されたコンテナは1000万個以上になるし、専門家はこの本数が2010年までに倍増すると予測している。

次に、それら輸入コンテナの多くは発展途上国からのものであり、セキュリティについてあまり信用が出来ない。Kmartの資産保護課長であるJeff White氏は次のように述べている「セキュリティというのは文化ごとに異なる。幾つかの国ではセキュリティとは何もしないことだ。」

最大のセキュリティの間隙は、工場または物流センターでコンテナに貨物が積み込まれた時点から港で船にコンテナが積み込まれるまでの間に存在する。アメリカの輸入者は、コンテナ数のあまりの多さや国家主権のため、この間隙を閉じるための充分な能力を持たない。

Unisys社はセキュリティ及びトラッキングテクノロジーの投資対効果を判定するためのガイドライン「セキュリティコマースロードマップ」を作成した。同社のサプライチェーンセキュリティ課長であるTed Langhoff氏は、この資料に触れながら国際物流の複雑さがセキュリティ確保のための障害になっていると述べた。「典型的な国際貨物は、司法管轄権に加え、20回以上の管理主体の切り替わり、25種類以上の書類、200種類以上のデータ項目、そして複数の公的・私的な業界慣習が関係してくる。」

(2 of 6に続く)

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2006/03/06

RFID Essentials / Bill Glover他 (著)

O'Reillyから出版されたRFID本の新刊、とはいえ1月に出ていた本なので速報というにはちょっと今更かもしれない。この本の存在を知ったのはUbicomp+ShoppingのO'ReillyのRFID本というエントリーで。

著者二人はSunのRFIDコンサルタント、というと以前に紹介したRFID Sourcebookと比較してしまうが、さすがO'Reillyというべきか内容ははるかにしっかりしている。RFID Sourcebookと同様教科書として使える網羅性を持った本だ。注目すべきはソフトウェアに関する解説が非常に充実していること。タグやリーダの動作に関係する各種のプロトコル、あるいはEPCGlobalの標準ミドルウェア仕様であるALE(Application-Level Events)など、一次資料以外できちんとした説明を読めるのはひょっとしたらアメリカでもこの本が初めてではないだろうか。少なくともRFID JournalやRFID Insightなどの雑誌ではここまでの説明記事を見たことが無い。僕のバックグラウンドはハードウェアではなくソフトウェアなのでこういった本が出たことは素直にうれしい。あいまいにしか理解できていなかった技術について、この本を読んでスッキリと分かったことがかなりあった。

RFIDのソフトウェア関連の仕事をしている人はぜひ読むべき、とはいえそういう数少ない人たちはとっくに読んでしまっているか…。これからソフトウェア規格が変わっていくとしても通用する普遍的な考え方で書かれていると思うので、直接ミドルウェアの開発をしているわけではないが、というレベルの人にとっても今読んでおくべき本だろう。

ISBN: 0596009445 / $39.99

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