2016/12/04

小売業でのRFIDソリューション導入目的の変化

今年のRFID業界をリードした企業を一つ上げるとするとMacy'sだろう。1月に1月にRFIDを利用したオムニチャネル戦略プログラム「Pick to the Last Unit」(P2LU)を公表し(参考:Macy'sのRFIDオムニチャネル戦略の背景)、その後も業界のカンファレンスなどで活発な発信を続けている(まぁRFID Journal誌が注目して取り上げている、ということかもしれないが)。少し前の話になるが、彼らが発信した情報でちょっと気になることがあり、備忘として記載しておこうと思う。

10月に開催された今年のRFID in Retail and Apparelの席上で、Macy'sの物流・オペレーション担当のSVPであるBill Connell氏が同社のRFID導入の進捗状況について述べた(RFID Journal:Macy's to RFID-Tag 100 Percent of Items)。全店舗・全商品へのRFIDタグの貼付を2017年末までに実施し、2016年末の時点での進捗率が60パーセントになるという話だったのだが、その背景として、同社が最初にRFIDを導入した目的は定番商品の自動補充だったが、その後オムニチャネルコマースへの動きが強まったため、店頭在庫の正確な管理によるマークダウンの防止が重要になり、自動補充を行わないファッション商品にもRFIDの貼付を拡大するという選択がなされたという背景が説明された(RFID Journal:A Conversation With Macy's Bill Connell)。

当然ではあるのだが、同じRFIDを利用した小売ソリューションであっても、導入目的が違えばオペレーションの内容が変わってくるのだ。

オペレーションが変わる例としては、上記のタグ付け対象の違いの他に、棚卸時の読み取り漏れの扱いなどもあるだろう。定番商品の自動補充が目的なら。、まずは商品を補充することが第一で理由の調査や読みとれなかった商品を探すことは二の次だ、という判断もありうるだろう。次回の棚卸し時に読みとれるかもしれないし、その商品はいつかは売れる(定番商品なので)。

だが、マークダウン前の売り切りを考えるなら、一時的にでも商品の所在が不明になることは大きな損失になる。所在が不明な間に貴重な販売チャンスを逃すわけだから。

小売業でのRFIDの導入メリットとしてはさまざまなものが挙げられてきたが、定番商品の自動補充による店頭欠品(販売ロス)の防止はその中でもLow Hanging Fruitsとして広く語られてきたものだ。そして、オムニチャネルコマースへの対応もやはり導入メリットの主流として広く認知されている。どちらのメリットを主な導入目的とするかで、オペレーションを含むソリューションの全体像は大きく変わる。実際、RFIDの利用目的の変化を理由とした既存のRFIDシステムの入れ替えも報告されるようになってきている。

RFID技術(特にUHFパッシブ)の成熟が進む一方で、上記のような導入目的ごとのソリューションの分化が進むと、RFIDソリューション導入にあたって一番重要な知識はRFIDの技術的な知識ではない、という時代になるのだろう。そういう時代に、より技術的に困難な分野に進むことでRFID技術の専門性を生かすのか、あるいはコモディティ化を受け入れて業務ノウハウの強みを磨くのか。まずはアメリカでどのような動きになるのか、今後の動向を見守っていきたい。

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2016/11/26

RFID World Watcher Monthly October 2016

今月の特集記事はBluetoothを利用したRTLSシステム。ニーズさえあれば技術的な突破口は必ず出てくるとはよく言われることだが、こういうソリューションを見ると本当にその通りだと実感する。ニュースは先月と同様に製品・事例紹介ともに幅広い技術や業種が取り上げられている。

RFID World Watcher Monthly October 2016 (PDF形式、329KB)

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2016/11/24

RFID Journal 抄訳 2016/11/24号

今週驚いた記事は何といってもRFID Journal誌がビジネス展示会運営会社Emerald Expositions社に買収されるというものです。主要スタッフは継続するようなので運営スタイルは当面変わらないのでしょう。同誌にとっても、そしてMark Roberti氏にとっても良い方向への動きでありますように。

今週はUHFパッシブRTLS製品の記事が2件掲載されました。最近このジャンルの製品がじわじわ増えている気がします。背景となる技術的なブレイクスルーがあったりしたのでしょうか。今後の普及にはむしろ新しいユースケースを作り出すことが必要かもしれません。

なお、元記事はこちらになります。

Tire Industry Works Toward Global RFID-Tagging Standards

タイヤ業界がISOでのRFIDタグ関連の標準整備を進めています。ISO 20909から20912までの4つの標準で、UHFパッシブタグの取り付け方法やデータ構造、機能・性能要求などを定めるものです。こらら標準は2015年10月に新業務項目(NP)として提案されました。標準作業はミシュラン社と中国Mesnac社が中心に行っています。

Amcor Uses NFC RFID for S.M.R.T Pill Dispenser

包装メーカーのAmcor社は薬瓶に出し入れする錠剤の数をNFCで確認するソリューションS.M.R.T Bottleを開発しました。これは薬瓶の口に錠剤のカウンターとNFCタグとを取り付け、医師がスマホで出し入れの結果を確認できるようにするものです。

RFID to Help Consumers Know if Olive Oil Is Really Extra-Virgin

イタリアのトスカナ地方の複数のオリーブオイル生産者はThinfilm社のNFCラベルを採用します。NFC対応のスマホで読み取ることにより、偽造品でないことの確認と、そのオリーブオイルの情報とを得ることができます。このラベルを付けたオリーブオイルは来月から店頭に並びます。

PervasID Releases RFID Readers for RTLS, Portal Applications

ケンブリッジ大学が設立したイギリスのベンチャー企業PervasID社はRTLS機能を持つUHF RFIDリーダーSpace Ranger 9100を開発しました。この製品は1台で商品棚のような高密度エリアでは40平方メートル、低密度エリアでは400平方メートルをカバーできます。

RFID Journal Announces Acquisition by Emerald Expositions

RFID Journal社は大手のビジネス展示会運営会社Emerald Expositions社に買収されました。RFID Journal誌とWebサイト、そして各種のRFID Journal LIVE!イベントはEmerald Expositions社が運営するようになります。編集長のMark Roberti氏と主要編集メンバーはEmerald Expositions社で業務を継続します。

Registration Now Open for RFID Journal LIVE! 2017

2017年5月9日~11日にアリゾナ州フェニックスで開催されるRFID Journal LIVE! 2017の登録が開始されました。今回のコーナースポンサーはZebra Technologies社で、8つの分野別トラックを実施、事前・事後セミナー12件などの規模で開催されます。

RFID in Aerospace and Defense 2016 Report(有償記事)

RFID in Aerospace and Defense 2016が10月20日にカリフォルニア州ロングビーチで開催されました。当日の発表スライドとビデオを公開します。

On the Road to Secure, Standardized Tolling

有料道路の料金徴収システムには従来独自ソリューションが多く使われてきましたが、最近はUHFパッシブタグの費用が国際的にもアメリカの中でも広がりつつあります。従来はセキュリティ機能の不足が問題となっていましたが、Gen2v2仕様の制定によりこの課題も解決されました。

Precisely Monitoring Livestock-and More

Clairvoyant Technology社はアメリカ農務省の支援プログラムを利用して高精度のUHFパッシブRTLSの研究を進めています。このRTLSは市販のUHF RFIDリーダーを利用してタグの位置を5cmの精度で測定できるもので、受信した信号の周波数、位相シフト、信号強度を元に位置を計算します。

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2016/11/18

RFID Journal 抄訳 2016/11/18号

今週興味深かった記事は、IATAが出した航空手荷物管理へのRFID導入のメリットに関する記事です。本件に関する決議はすでに出ていて、導入期限は2018年なんですね。実際のところ導入は進んでいくのでしょうか。

識者投稿はIoT器材が通信プロトコルの乱立にどのように対処すべきか、という記事。短いですが論点がよく整理された記事で、一読をお勧めします。

なお、元記事はこちらになります。

River Island to Deploy RFID Across All 280 Stores

ヨーロッパのファッション小売りチェーンRiver Island社は全280店舗にRFIDを導入します。同社が導入するのはNedap Retail社のUHFパッシブRFIDソリューションの!D Cloudです。

Utility Company Uses RFID to Identify Underground Pipes, Wires

シアトルで地下施設のメンテナンスを行うBravo Environmental社はRFIDを用いてメンテナンス場所の管理を行っています。同社は計測地点にOmni-ID社のDura 3000 RFIDタグを配置、RFIDリーダーで読み取ってメンテナンス記録を自動で更新します。同社が採用したのはInfraMarker社の資産管理ソリューションです。

Airline Industry Study Is Upbeat About RFID-Based Baggage Tracking

航空業界の国際団体IATAは、手荷物規則の決議753号に従って手荷物のUHFパッシブRFIDによる管理が進んだ場合、2022年までに手荷物の取り扱いミスが25%減少し、効率化と相まって30億ドルの節約が可能になるというレポートを発表しました。決議753号の導入期限は2018年ですが、導入責任は航空会社にあるもののインフラ設置は空港が行うという構造から導入が遅れ気味で、このレポートは導入を推進する意図も含んでいます。

Iatasita1

Malibu to Enable Consumers to Order Drinks With a Twist

ココナツ風味のラムを製造する酒造メーカーMalibu社は、バーでのカクテルの追加注文を自動化するソリューションCoco-nectを提供しています。これはココナツ型の同社の専用カップにBluetoothタグを埋め込み、お代わりを注文したいときに台座を捻ると注文が自動的に送信され、バーテンダーが近くに来ると台座が発行して所在を知らせるというものです。このソリューションを開発したのはSharpEnd社で、Bluetoothタグはメッシュネットワークを形成し、位置を判定する機能も持ちます。

RFID Journal Updates Categories for 11th Annual Awards

RFID Journalは来年のRFID Journal LIVE!で発表されるRFID Journal Awardsのカテゴリを変更しました。従来のBest RFID Implementation賞を、小売り、製造業、物流/流通、ヘルスケア、その他の業界の5部門に分けて表彰することになります。また、Most Innovative Use of RFID、Best NFC Deployment、Best Internet of Things Deployment、RFID Green Awardの各賞は廃止されます。

RFID News Roundup

  • デンソーがNFC対応のPOSスキャナを発表
  • Suprema社がセキュリティ認証向けのRFID/指紋スキャナでAndroidをサポート
  • Smartrac社がセキュアID&トランザクション事業をLinxens社に売却
  • GS1 USが医薬品のアイテムレベルのトレーサビリティ向けのガイドラインを発表
  • Digi Int'l社が温度管理トラッキングソリューションのFreshTemp社を買収
  • HID Global社が官公庁ID向けの複合技術カードを導入

Health-Care Labs Get Healthier(有償記事)

医療検査機関で組織片の管理を行うソリューションとしてRFIDが存在感を増しています。RFIDを利用すれば冷凍庫の中にある試験管の所在の管理が行えるからです。RFIDは実験機器の管理にも利用されます。

New RFID Journal Awards

RFID Journal Awardsは今年で10周年を迎えました。新たな10年に向け、カテゴリーの見直しを行いました。これは、RFID業界で起きているトレンドをより良くとらえるために実施するものです。

Does the Internet of Things Need a Standardized Communication Architecture?

IoT器材の相互通信に用いられる標準プロトコルは複数存在しており、異なるプロトコルを利用する器材同士で通信が行えないという問題が発生する可能性があります。この問題に対処するためには、以下のいずれかの方法を選択する必要があります。

  • デファクトスタンダードが成立するまで待つ
  • 利用する技術を決め、それを利用してクローズドなエコシステムを作る
  • ゲートウェイを導入し、他のハードウェアとのプロトコル変換に利用する
  • プログラムの階層化を徹底し、プロトコルを簡単に入れ替えられるようにする

Signs RFID Is Nearing a Tipping Point in Apparel Retail

アパレル分野においては、RFIDの導入が本格的な普及段階に近づいている兆しがあります。

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2016/11/13

Bluetoothビーコンを使った位置測定システム

AppleがiBeaconを発表して3年が経つ。Appleが当初想定していた(と思われる)自社エコシステムへの囲い込みについては上手く行っているという雰囲気は無いが、Bluetoothビーコンをスマホやタブレットから利用する独自アプリケーション(スマホがタグになるものとリーダーになるものと両方)は着実に導入が広がっている。おそらく現時点では標準プラットフォームによる囲い込みは時期尚早なのだろう。

Bluetoothビーコンを用いたソリューションで最近注目していることは、位置測定システムへの浸透が進みつつあること。従来は、Bluetoothは周波数ホッピング方式などの技術的な特性から位置測定が他の技術と比較してあまり得意ではないという認識が優勢だったが、技術が普及を始めると今まで難しいと思われていたことも何とかする人が出てくる、という法則は今回も当てはまったようだ。

最近このことを改めて感じたのは、中古車ディーラー向けソリューションのプロバイダーMyDealerLot社がBluetoothビーコンを用いた駐車場内車両位置管理ソリューションを開発したという記事を読んだこと(RFID Journal:MyDealerLot Offers Beacon- and Drone-based Vehicle-Management Solution)。同社はもともとパッシブUHFを利用したソリューションにも取り組んでいて、駐車場内車両位置管理ソリューションも2011年から提供してきた(RFID Journal:10 Fields Automotive Dealerships to Adopt RFID)。その同社がBluetoothビーコンに取り組んだのは、パッシブUHFを使ったソリューションはインフラ投資が重たくなり中小規模のディーラーでは導入が難しいから。車両に取り付ける再利用可能なビーコン(1個5~10ドル)と、壁に取り付ける位置ビーコン(30ドル、1個で5~10台分の駐車位置をカバー)があれば、あとは従業員のスマホやタブレットを使ってクラウドアプリにアクセスすることで利用が可能になるそうだ。

技術的な測位精度という点では、3点測量を用いる従来のアクティブ型RTLSとは異なる、フェーズドアレイレーダーを用いたソリューションの登場が始まっている。Mist Systems社が開発した製品がそれで、アクセスポイント1台で250平方メートルをカバー、1~3メートルの精度で位置測定を行うことができる(RFID Journal:Mist's Virtual Bluetooth Beacons Get a Try-out)。この製品は位置測定を行うだけではなく、特定の位置にバーチャルBluetoothビーコンを設定することができ、ある位置に来たスマホの持ち主にピンポイントで情報を届けるといったユースケースに対応することが可能だ。

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位置情報とBluetoothタグを組み合わせたソリューションはまだ発展の途上で、これからも「その手があったか」と驚くようなアイデアも出てくるだろう。今後の展開が楽しみ。

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2016/11/11

RFID Journal 抄訳 2016/11/11号

今週興味深かった記事はMyDealerLot社のBluetoothビーコンとドローンを組み合わせた駐車場在庫管理ソリューションです。ドローンは現時点ではオプション扱いのようですが、従来パッシブUHFを利用していたソリューションでも、リーダーコストを考えるとBluetoothビーコンの方が割安になるというのはへぇーと感じました。

特集記事はRFID Journalの読者を対象にした導入状況調査。全般的な導入状況を知るというよりも、導入をした/している企業がどのあたりを重視し、どこで困っているか、という点でとても示唆に富みます。まとめることが難しく、また有償記事の具体的な内容を公開するのもはばかられましたので、ご興味のある方はぜひ記事を購入してご確認ください。

識者投稿はアメリカの食品安全強化法(FSMA)について。この手の法律で定められた記録の取得にRFIDが有用なのは鉄板ですが、私はそもそもこの規制を知りませんでした。食品業界でのRFIDへのニーズを大きく変えるものなのか、気になります。

なお、元記事はこちらになります。

MyDealerLot Offers Beacon- and Drone-based Vehicle-Management Solution

中古車ディーラー向けのSIベンダーMyDealerLot社がビーコンとドローンを組み合わせた駐車場在庫管理ソリューションBloodhoundを開発しました。同社は従来パッシブUHFタグを利用した同様のソリューションを販売していましたが、利用のためにはRFIDリーダーを設置する必要があり、インフラコストが嵩むという問題がありました。Bluetoothビーコンを使う新製品ではリーダーとしてスマホやタブレットを利用できるためインフラコストが安くなるメリットがあります。

Grace Medical Center Uses ZulaFly RTLS to Prevent Food, Medication Loss

テキサス州の病院Grace Medical Centerは冷蔵食品の管理のために温度センサー付きのRTLSを利用します。採用したのは CenTrak社の製品で、1万5千ドル分の食品の廃棄を防ぐことができました。

Filter Manufacturer Senses an Opportunity

業務用フィルターのメーカーDonaldson社はワイヤレスの圧力センサーとクラウドベースのソリューションを用いてディーゼル燃料向けのフィルターの寿命管理を行います。ソリューションを提供したのはATEK Access Technologies社です。

RFID Brings Visibility to LCD Flat Display Manufacturer

台湾のLCDメーカー群創光電は製品の入出庫管理にRFIDを利用します。UHFパッシブタグをトラックとパレットに貼付して管理を行います。ソリューションの開発はEPC Solutions Taiwan社が担当し、タグとリーダーにはAlien Technology社の製品が採用されました。

RFID News Roundup

  • Confidex社がNFCタグ向けサービスConfidex Linksを発表
  • William Frick & Co.社がRFIDアセット管理用のアンドロイドアプリを発表
  • PANMOBIL社がRFID物流・アセット管理用アプリを導入
  • Avery Dennison社のRFID売上が第3四半期に35%上昇
  • Pepperl+Fuchs社が危険エリア向けRFID機器ベンダecom instrumentsを買収
  • TransCoreがニューヨーク市の橋・トンネル向けにRFID支払いシステムを導入

End Users Speak Out(有償記事)

RFID Journalは、読者を対象に、RFIDの導入状況や、導入・運用に関するシステムベンダーとの関係について、アンケートを実施しました。

RFID Helps NFL's Competition Committee

NFLではゴールポストの幅を狭めるべきかどうかという議論にUWB RTLSで計測されたデータが使われています。RFIDによって得られるデータは他の業界においても正しい意思決定を行うために利用されます。

Complying With the Food Safety Modernization Act

アメリカ食品医薬品局は9月19日に食品安全強化法(FSMA)を施行しました。これは傷みやすい食品を対象にトレーサビリティ情報の取得を義務付けるものです。手作業で対応するためには膨大な人件費がかかるため、パッシブRFIDを用いて自動的にデータを取得することが現実的な対応になります。

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2016/11/04

RFID Journal 抄訳 2016/11/04号

今週のビッグニュースはやはりQualcomm社のNXP社買収でしょう。ソフトバンクによるarm社の買収がアクティブ系のIoTを視野に入れたものなら、こちらはNFCとスマホとより緊密な統合を睨んだものになるでしょうか。今後どういうコンセプトが出てくることになるか、楽しみに待ちたいと思います。

識者投稿はIoTデバイスのセキュリティ。インターネットに接続されたデバイスはセキュリティが不十分だと踏み台として加害者になる、という話は、TCP/IP系のネットワークエンジニアにとっては何をいまさらという話ですが、センサータグのクローズドなネットワークからスケールアップした人にとっては意識が追いついていかない、という状態なのでしょうか。先日発生した史上最大のDDoS攻撃のツールMiraiが作者のAnna-senpaiによって公開された事件なども踏まえて説明されています。

なお、元記事はこちらになります。

Qualcomm Buys NXP

通信用半導体大手のQualcomm社が同業のNXP社を買収します。買収金額は470億ドルで、これによりQualcomm社は世界最大の半導体メーカーになります。これによって想定される効果の一つは、Qualcomm社のスマホ用半導体にNFC機能が統合されることです。

RFID Keeps Quarry Drivers Moving

イギリスの鉱山会社Longcliffe Quarries社は、鉱山に入るトラックの識別にRFIDを利用しています。利用しているのはHID Global社のパッシブLFタグで、ソリューションはアメリカのCommand Alkon社が提供しました。

Clothing, Car-Cover Manufacturers Track Work-in-Progress via RFID

自動車向け織物メーカーのCovercraft社はNFCを使った工場の仕掛品ソリューションを導入しました。これは、作業員にNFCバッヂを配布し、仕掛品にQRコードを貼付することで、いつ誰がどの作業を行ったかをトラッキングするものです。システムはShopfloorが提供するもので、端末にはGoogle Nexus 7を採用、NFCとQRコードの読み取りや、仕掛品への作業指示だけではなく完成イメージなどの表示を行います。

Medacta USA Tries RFID for Parts Tracking

整形外科向け移植器材のメーカーMedacta USA社は病院に貸し出す器材キットの管理にRFIDを利用します。同社が採用したのはTerso Solutions社のソリューションで、スーツケースにUHFリーダーと携帯電話モデムを組み込み、スーツケース単体で開閉や格納状況を読み取り、クラウドに送信するものです。

Large Apparel Retailers, Wholesalers See Sharp Rise in RFID Adoption, ROI

調査会社Kurt Salmon社は欧米の大手小売・卸売60社を対象としたRFID導入状況調査を行いました。2年前の調査と比べ、RFIDの導入がパイロット段階以降まで進んでいる企業は34パーセントから73パーセントへと上昇しました。RFIDの導入により大幅な改善が見られたKPIとしては、利益率(60.7%上昇)、在庫切れ防止(40.6%)、盗難防止(33.7%)などがあります。

RFID News Roundup

  • MEPS Real-Time社がIntelliguard Linked Visibility Inventory Systemを提供
  • Invengo社がSMLの株式10%を取得
  • 富士通のUHF RFIDリネンタグがMRIで利用可能なことが確認
  • Vizinex RFID社とBrady SmartID社が航空機向けタグを発表
  • UAB MedicineがConnexient社の屋内向け案内システムを導入
  • NISTがIoT向け軽量暗号規格へのドラフトを募集

RFID in Retail and Apparel 2016 Report(有償記事)

RFID in Retail and Apparel 2016が10月6日にニューヨークで開催され、100人の参加者を集めました。その席ではベンダーやユーザー企業による様々なプレゼンテーションが行われました。プレゼンテーションと発表資料を公開します。

The Network Effect

RFIDの価値は、導入企業が増えてタグや情報を共有できるほど広がります。RFID Journalはイベント会場でのコネクションミーティングなどでRFID導入のネットワークが広がることをサポートしています。

Zombie Outbreaks, Inoculations and the IoT

セキュリティが不十分なIoT器材がインターネットに接続されると攻撃の踏み台に利用され、インターネット全体の脅威になります。出荷時のID/パスワードでインターネットに接続できる程度でもその脅威は恐るべきものになります。インターネットに接続する器材は、その持ち主とインターネットの両方に対して安全であるべきです。

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2016/11/01

RFID Journal 抄訳 2016/10/31号

先週はうっかり本誌が休刊だと勘違いして配信が遅れてしまいました。申し訳ありません。本来の今週分もできれば今週中に出します。

今週興味深かった記事は識者投稿の「指示的アナリティクス」。見かけない用語なので調べてみたところ、IoTがらみで去年ごろから注目され始めたキーワードのようです。レポートや書籍もいろいろ出ているようで、ちょっと読んでみたいと思います。

編集後記はRFIDの導入メリットを生かすには業務の対応が必須というお話。本誌では定番のテーマですが、なかなか改善はしないものなのですね。

なお、元記事はこちらになります。

RFID Automates Payments at Regina's Snow Dump

カナダのレジャイナ市では除雪した雪の投棄の支払いにRFIDを利用します。同市は雪の投棄場で車両のサイズごとに定められた料金を徴収していますが、登録車両にUHFパッシブタグを貼付することで読み取りを自動化しました。

UMass Med Center to Use Beacons to Track Naloxone

マサチューセッツ大学の医療センターでは配布した薬剤の管理にRFIDを利用しています。管理対象のナロキソンはオピオイド系麻薬の過剰摂取によるショック症状を治療するために利用されますが、患者や家族の中には使い方が分からないからと捨ててしまう人もいます。同センターはナロキソンを含む医療キットにBluetoothビーコンを取り付け、病院からバス停までの数か所にアクセスポイントを配置することで、病院の敷地内で廃棄されていないかどうかを検知します。

High Tech Fire & Safety Manages Equipment Inspections via NFC

カナダの機材管理・メンテナンス企業High Tech Fire & Safety社は消火器の点検にNFCを利用します。同社は従来点検記録を紙でつけていましたが、消火器にNFCタグを貼付し、NFC対応のスマホで読み取ることで、機材番号の入力を自動化し結果をその場でクラウドに送信できるようにします。システムはTap Report社が開発しました。

RFID Locks Up Visitor Interest at Horsens Prison Museum

デンマークのホーセンス監獄博物館では展示にRFIDカードを利用しています。館内には病院や教会など8箇所にRFIDリーダーを搭載したビデオ再生システムが設置されており、来館者は囚人のカードをリーダーにかざすことでその囚人ゆかりのエピソードを再生することができます。利用されているのはMifareのタグで、Arduinoでハードウェアが制御されています。

Leading Retailers to Share RFID Case Studies at RFID Journal LIVE! Europe 2016

11月10日にロンドンで開催されるRFID Journal LIVE! Europe 2016では、Marks & SpencerやDecathlon、Sport Zoneなど大手リテーラーによる事例発表が行われます。

RFID News Roundup

  • NXP社がRFIDチップ製造用に大型のシリコンウェハーを提供
  • Smartrac社とFinnCode社が子供用の音楽絵本にNFC技術を提供
  • CYBRA社がスタッフ・資産向けのRTLS対応安全管理ソリューションを提供
  • RAIN AllianceがRFIDリーダーの感度計測に関する新たなドキュメントを発表
  • Extronics社が危険エリア向けのUHF RFIDハンドヘルドリーダーiRFID500を発表
  • Avery Dennison社がフレキシブル電子部品のPragmatIC社に出資
  • イタリアのバス会社がBluetoothビーコンを使ったマナー向上アプリを提供
  • Janam社のRFID対応耐久型モバイルPCがIntelliTrack社アプリの対応機器に認定
  • ハチドリの渡りの研究にRFIDが採用

NFC Helps Charity With Fundraising Event(有償記事)

サンフランシスコで募金イベントを開催する団体Tipping Pointは、同団体が開催する最大規模の募金イベントで参加者の寄付の意思の表示確認をNFCリストバンドで行います。募金イベントの参加者はスタッフが持つハンドヘルドリーダーにリストバンドを読み取らせるだけで寄付ができるので、手際の悪さによって寄付をもらい損ねることがなくなります。

Navigating a Critical Road in the Dark

多くのユーザー企業は業務をどう改善するかを考えずにRFIDを導入します。例えばRFIDによって得られた情報をどのように参照し、それによってどのような行動を起こすかが定まっていなければ、RFIDを導入する意味がありません。SIベンダーはユーザ企業のすべての事情を知っているわけではありませんし、RFIDを理解した優秀なアナリストは多忙でアサインすることが困難です。自社でRFIDをどのように利用するかは他社の事例などを参考にしながらユーザ企業自らが決める必要があります。

On the Marriage of IoT and Prescriptive Analytics

IoTによる業務の変革を期待して導入に踏み切る企業は多いですが、収集される膨大なデータを分析する当てがないままIoTを導入するのは読めない本を購入するのと同じです。10年前のRFIDブームの時にも同様の失敗が起きましたが、これはデータ分析手法が当時は未発達だったためです。IoTのデータ分析を活用するには、分析結果から次に行うべき行動の推奨まで行う指示的アナリティクス(プレスクティブ・アナリティクス)などの手法を導入すべきです。

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2016/10/31

RFID World Watcher Monthly September 2016

今月も特集記事はお休み。ぼちぼち書いてみたいなというネタは出てきているのだけれど間に合いませんでした。ニュースは製品・事例紹介ともに幅広い技術やジャンルのものが掲載されていた。次のトレンドになりそうな話を模索している、という印象を受けます。

RFID World Watcher Monthly September 2016 (PDF形式、198KB)

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2016/10/20

RFID Journal 抄訳 2016/10/20号

今週気になった記事はMacy'sの全商品へのRFIDタグの貼付。当初は自動発注での利用を想定していたので再発注を行わないファッション品目は貼付の対象から外していたが、オムニチャネルコマースでの店頭在庫売り切りが課題になることで状況が変わった、という編集後記とあわせて興味深く読みました。当たり前ですがビジネス環境が変わるとRFIDの利用方法も変わるのです。

新技術という点ではMist Systemsのフェーズドアレイアンテナ技術を使ったBluetoothアクセスポイント。技術的には出てきておかしくない製品だと思っていましたが、測位精度1~3メートルで自由に仮想ビーコンを作れるという話を聞くとやはりワクワクします。あっと驚くようなソリューションに使われて欲しいですね。

懐かしかった記事は広大な物流ヤード内でのコンテナの所在をパッシブUHFタグと構内作業車搭載のリーダーで管理するという記事。ベンダーのPINC Solutions社は以前注目していてRFID Journal LIVEの会場で簡単なヒアリングもしました。活動を続けているようで何よりです。

なお、元記事はこちらになります。

Macy's to RFID-Tag 100 Percent of Items

米大手デパートのMacy's社がすべての店舗で全商品へのRFIDタグの貼付を2017年末までに実施すると述べました。RFID in Retail and Apparelで登壇した中での発表です。同社は今年の年末時点で商品の60パーセントにタグを貼付する状況になっており、サプライヤーに対してマニュアルを配布するなど導入準備を進めています。

East Coast Warehouse Tracks Shipping Containers via RFID

East Coast Warehouse & Distribution 社は24万平米の物流ヤード内に存在する1千個以上のコンテナの所在をRFIDで管理します。同社が導入したのはPINC Solutions社の製品で、コンテナにOmni-ID社のUHFパッシブタグを、構内作業車両にRFIDリーダーとGPS・携帯モデムを搭載し、コンテナの所在をクラウドに送信します。

Mist's Virtual Bluetooth Beacons Get a Try-out

ベンチャー企業のMist Systems社はフェーズドアレイアンテナ技術を使ったBluetoothアクセスポイントを開発しました。このアクセスポイントは1台で250平米をカバーし、カバーエリア内を論理的に分割して複数の仮想アクセスポイントを定義できます。仮想ビーコンごとに通知内容を変えたり、エリア内にいるBluetooth機器の位置を確認したりすることができます。仮想ビーコンの測位誤差は1~3mです。

RFID Spices Up Sales for Maille Mustard

マスタードの専門店Mailleでは顧客が試食したマスタードの感想の記録にRFIDを利用します。同店の顧客のほとんどは再訪することのない観光客であり、同店はオンライン上でのリピート注文を誘導する施策を検討していました。同店が導入したシステムは、試食用のスプーンにLFパッシブタグを貼付し、サンプルの瓶の前にリーダーを置いて試食後にタッチ、スプーンを使用済み箱に返した時に再度読み取りを行い、横に置かれたiPadに感想を入力して自分のメールアドレスに送信する、というものです。

Delta Air Lines, U.S. Air Force, Northrop Grumman and Others to Share Best Practices for Using RFID Technologies

10月20日にカリフォルニア州ロングビーチで開催されるRFID in Aerospace and Defense 2016では、Delta Air Lines社、Northrop Grumman社、アメリカ空軍などの航空・国防分野のキーマンが発表を行います。

RFID News Roundup

  • Thinfilm社がアメリカで大規模工場の買収を発表
  • Custom BioGenic Systems社がVersAlert社の無線温度センサーを導入
  • バーチャルBluetoothビーコンのMist社が2800万ドルの調達を終了
  • GAO RFID社がハンズフリーの駐車場管理システムの改善版を発表
  • NFC ForumがNFC機材のISO 14443/18092対応に関する新しい技術仕様を発表
  • AIMが医療機器に対するRFIDの影響を評価する基準を発表

RFID Helps Secure Dignity for Senior Community Residents(有償記事)

オレゴン州の高齢者居住施設McLoughlin Placeでは、入居者の尿漏れの確認にRFIDセンサータグを利用したソリューションBriefWiseを利用します。認知症患者にとって下着の尿漏れ検査を受けることは精神的な負担となるため、服を脱がせずに検査を行うニーズがありました。下着に張り付けるのはシール式のUHFパッシブセンサータグで、読み取りはiPod Touchのイヤフォンジャックに差し込んで利用するU Grok It社のリーダーが利用されています。

A Conversation With Macy's Bill Connell

先週開催されたRFID in Retail and ApparelでMacy's社のBill Connell氏が同社のRFIDの背景について語りました。同社が最初にRFIDを導入した目的は商品の自動補充でしたが、その後オムニチャネルコマースへの動きが強まったため、店頭在庫の正確な管理によるマークダウンの防止が重要になり、自動補充を行わないファッション商品にもRFIDの貼付を拡大するという選択がなされました。

How Fitness Trackers Can Prevent Heart Attacks

心拍計機能を持つフィットネストラッカーの市場規模は医療用心拍計の10倍以上になります。専用の分析アプリケーションを利用することで、フィットネストラッカーが心臓疾患の予兆を検出することができるようになります。

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